<特集><社会調査の社会学>特集のことば
著者
古川 彰
雑誌名
先端社会研究
号
2
ページ
i-ii
発行年
2005-03-25
URL
http://hdl.handle.net/10236/11444
特集のことば
本号は社会調査の方法論と方法、実践をめぐる多様な議論を特集しまし た。創刊号が「幸福/不幸」の諸相をとおして社会調査を考えようとしたの と逆に、2 号では社会調査の議論をとおして「幸福/不幸」を考えてみたい とおもったのです。「幸福/不幸」と社会調査を図と地の関係で捉え返して みるという 2 回の試みであったわけです。 さて、「社会調査の社会学」は、社会学においては常に古くて新しい問題 であり続けています。「社会調査」をめぐる最近の議論では、社会実在主義 と社会構築主義という認識枠組みを巡る問題と、社会調査における調査者― 被調査者関係、つまり〈ポリティクスと倫理〉問題がホットな話題でしょう か。調査者に外在する唯一の社会的現実を想定して創りあげられてきた実証 主義的な社会調査方法論にたいして、そうした社会的現実こそは調査者と被 調査者の相互作用によって構築されたものではないかという議論です。もう ひとつはこれに大いに関わるのですが、社会調査におけるセルフの問題で す。これまで調査される社会の法則性と一般性を示す関係の網の目としての 社会構造を解明してきた調査方法にたいして、個人の創発性への注目と、そ れによって喚起される調査するものの自己意識、バイアスへの着目によって 導かれる調査方法への反省です。つまりそれまで不問に付されてきた、調査 する側とされる側のセルフがともに問題化されてきたわけです。 このふたつの論点はこれまでの質問紙調査から参与観察までのさまざまな 調査方法論に革新を迫ります。再帰的近代論が提起した問題群がそのまま再 帰的社会調査を迫っている状況ともいえます。人類学において実験的民族誌 の方法が 80 年代から 90 年代にかけておおいにもてはやされたのも、社会学 におけるライフヒストリー手法もそうした認識論のバリエーションの反映で した。しかし、こうした調査方法、記述方法の開発が十分に先の問題に応え iているわけではありません。手法そのものが、先に述べたような問題群を乗 り越えるにはまだまだ方法的革新には成り得ていないのか、それとも革新の 方向が違うのか。 本号の特集は、すでに古典的だがいまも片づいたとは言えない問題から、 このような新たにテーマ化されてきた最近の議論、さらには社会調査が置か れている社会や社会学の風土にいたるまでの議論を下敷きにして、社会調査 の置かれている状況をあらためて振り返り、わたしたちがあらたな社会調査 の可能性へと開かれる道を探るために編まれました。