チミンDNAグリコシラーゼ遺伝子不活化による自然
突然変異生成のメカニズムの解析
著者
上原 芳彦
素
チミンDNAグリコシラーゼ遺伝子不活化による
自然突然変異生成のメカニズムの解析
(13680754) 平成1 3年度∼平成1 4年度科学研究費補助金基盤研究(C) (2)研究成果報告書 平成15年5月 研究代表者 上 原 芳 彦 (東北大学大学院医学系研究科)チミンDNAグリコシラーゼ遺伝子不活化による
自然突然変異生成のメカニズムの解析
(13680754) 平成1 3年度∼平成1 4年度科学研究費補助金基盤研究(C) (2)研究成果報告書 平成15年5月 研究代表者 上 原 芳 彦 (東北大学大学院医学系研究科)はしがき 生物はその遺伝情報を保持するために正確にDNAを修復するメカニズムを 持っている。それにもかかわらず、全ての細胞DNAには一定頻度の突然変異 (自然突然変異)が存在する。それらはランダムな変異ではなく、特異的な変 異が多く見られる。本研究では、そのような自然突然変異の中で最も多く見ら れる変異種に注目し、自然突然変異生成のメカニズムについて考えたい。 研究組織 研究代表者:上原 芳彦(東北大学大学院医学系研究科 助手) 研究分担者:小野 哲也(東北大学大学院医学系研究科 教授) 交付決定額(配分額) (金額単位:千円) 直接経費 亊I ィニ N 合計 平成13年度 テs 0 テs 平成14年度 テ3 0 テ3 総計 釘テ 0 釘テ
研究発表 7.学会誌等
1. Mechanisms of Ageing and Development, 123 (12): 1543-1552 (2002)
Tetsuya Ono, Yoshihiko Uehara, Yusuke Saito, Hironobu lkehata
Mutation theory of aging, assessed in transgenic mice and knockout mice・
2. 1ntemational Journal of Radiation Biology, (投稿中)
Tetsuya Ono, Hironobu Ikehata, P・ Vishnu Priya, Yoshihiko Uehara
Molecular nature of mutations induced by i汀adiation with repeated low dose of
X-rays in spleen, brain and testis of JdcZ-transgenic mice・
ィ.口頭発表
1. 1ntemational Conference on Environmental Mutagenes (平成13年10月21-26
日、静岡市)
Tetsuya Ono, Yusuke Saito, Yoshihiko Uehara, Yoshitaka Kinouchi, Tom Shimosegawa
Tissue-specificity ln age-dependent increases of spontaneous mutation in
lacZ-transgenic mice.
2. Intemational Conference on Environmental Mutagenes (平成13年10月21126
日、静岡市)
Yusuke Saito, Yoshihiko Uehara, Misao Suzuki, Takehiko Nohmi, Tetsuo Noda,
Tetsuya Ono
The effect of thymine glycosylase deficiency onmice・
3.日本放射線影響学会第45回大会(平成14年9月18-20日、仙台市) 賛藤祐介、上原芳彦、竹田直樹、鈴木操、能美健彦、関政幸、榎本武美、 野田哲生、小野哲也 ミスマッチ修復酵素チミンDNAグリコシラーゼ(TDG)のマウス発生過程に おける機能
-2-ウ.出版物
1.わかる実験医学シリーズ(平成14年1月1日)井出利憲(編)、羊土社 小野哲也、上原芳彦「DNAの損傷と老化」
研究成果による工業所有権の出願・取得状況 なし
研 究 成 果 研究の目的 これまでにマウスにおける自然突然変異を解析した結果、変異の大部分は (5,-)CG(-3,)配列部位のシトシン(C)がチミン(T)に変化したものであるこ とが明らかとなった。他方、様々な人の遺伝病における原因遺伝子での変異、 また癌組織での癌抑制遺伝子(p53等)の変異でも、その多くが同じC-T変 異であることも明らかにされている。この変異の原因としては、 Cのメチル化 と脱アミノ化によるTへの変化、並びにそれによって生じるG/Tミスマッチ 対合部の修復の不完全さによると推測されているが直接的な証明はされていな い。この研究では、 CG部位のG/Tミスマッチ対合部のTを特異的に除去す る活性を持つ「チミンDNAグリコシラーゼ(TDG)」の遺伝子ノックアウト マウス(KOマウス)を作成し、その修復活性欠損マウスでC-T変異のみが 特異的に正常個体よりも増加するかどうかを調べることにより、メチル化した C (mc)の脱アミノ化が晴乳動物細胞DNAに生じる自然突然変異の原因かど うかを明らかにすることを目的とした。 材料と方法 71dg遺伝子欠損マウス Tdgの活性発現に必要な領域をコードしているエクソン7から8がneo耐 性遺伝子に置き換えられる形で71dg遺伝子が欠失しているへテロ欠失ES細 胞クローンを複数単離し、それらのへテロ欠失ES細胞由来のキメラマウス を作成した。 C57BL/6正常雌マウスと交配することにより生殖細胞キメラ であることを確認し、キメラ由来のヘテロ欠失マウスをPCR、サザン法によ り選別し、それらどうしの交配によりホモ欠失マウスを作成の作成を試みた。 Tdg活性の測定 Tdg活性は、内部に一ヶ所G:Tミスマッチを含む合成オリゴDNAを基質
ー4-としたNickingAssayによりグリコシラーゼ活性として測定した。 突然変異頻度の測定 突然変異頻度の測定のために、大腸菌gpt遺伝子がゲノムに組み込まれた 突然変異検出用トランスジェニックマウスとの交配により、 gpと遺伝子を持 った71dgへテロ欠失マウスを作成した。マウスゲノム上のgpt遺伝子を入 ファージDNAとして回収、大腸菌に導入し、選択培地上でそのコロニー数 を算定することによりg〆遺伝子上の突然変異頻度を求めた。 結 果 71dg遺伝子欠損マウス Tt短へテロ欠失マウス同士を交配しホモ欠失マウスを得ることを試みたが ホモ欠失マウスは生まれてこず、 7噛ホモ欠失マウスは胎生致死であった。 致死時期を検討した結果、胎齢11.5 日までにほとんどのホモ欠失胎仔が死 亡することがわかった(表1)。 71dg欠損胎仔でのグリコシラーゼ活性 胎齢10.5 日胎仔の粗抽出液中のグリコシラーゼ活性を測定した所、ヘテ ロ欠損胎仔では野生型胎仔の活性の約60%、ホモ欠損胎仔では約8%であっ た。すなわち、細胞内のG-Tミスマッチグリコシラーゼ活性の90%以上は Tdgが担っているものと考えられた。 ホモ欠損胎仔での自然突然変異率 胎齢10.5日胎仔ではTdg活性がほぼ失われていたため、次にその突然変
異頻度を測定したところ野生型とホモ欠損の間に有意差は見られなかった
(表2)。genotype stage(dpc 調 イイ 耳耳 ツメ litters alive(dead) 10.5 ll.25 ll.5 12.5 13.5 cs #茶B bヲ ニツ C ッ 3C 17 5 6 5 1 表1.妊娠中期における胎仔と遺伝子型の相関 TDGへテロ欠損マウス同士を交配し、それぞれの胎生時期から 胎仔を摘出L PCR法にて遺伝子型を決定した。胎仔の生存は心臓 の拍動を指標にした。 dpcはdays postcoitus-交尾日数である。 → 31:
遺伝子型 個体 (TDG) No. 総コロニー数変異体数 芸.-6, ;Vxelr.?,e ±S・D・ +/+ I/-1 415,000 2 1,265,000 3 552,000 1 702,500 2 935,000 3 87,500 4 9.6 3 2.3 2 3.6 5.17 ±3.89 5 7.1 2 2.1 1 11.4 6.87 ±4.65 表2.胎生10.5日における胎仔の自然突然変異頻度
考察と今後の課題 Tdgホモ欠失マウスは胎齢11.5日までにそのほとんどの個体が死亡するが、 胎齢10.5日胎仔では有意な突然変異頻度の上昇は見られず、 TdgがDNA修復 以外にも発生過程で重要な働きを担っていることが示唆された。我々は予備的 なデータよりTdgがカテコールアミン類の代謝、合成に関与しているのではな いかと推測している。ホモ欠損個体は胎齢11.5日までに死亡するため、胎齢10.5 日での突然変異頻度しか測定できない。そこで活性が半分のヘテロ欠損個体で の突然変異頻度を調べたが、若齢個体(約6ケ月齢)ではやはり有意差は見ら れなかった。 Tdgと自然突然変異との関係を明らかにするための今後の課題と しては、コンディショナルノックアウトマウスが必要であると思われる。 _81
TOUR : Tohoku University Repository コメント・シート 本報告書収録の学術雑誌等発表論文は本ファイルに登録しておりません。なお、このうち東北大学 在籍の研究者の論文で、かつ、出版社等から著作権の許諾が得られた論文は、個別にTOUR に登録 しております。 TOUR