Title
Comparative Effectiveness of Emergency Resuscitative
Thoracotomy versus Closed Chest Compressions among Patients
with Critical Blunt Trauma : A Nationwide Cohort Study in
Japan( 要約版(Digest) )
Author(s)
鈴木, 浩大
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第1019号
Issue Date
2016-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/54579
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Repository(Form4)学位論文要約
Extended Summary in Lieu of the Full Text of a Doctoral Thesis
甲第
1019 号
氏 名:
Full Name鈴 木 浩 大
Kodai Suzuki
学位論文題目
:
重症鈍的外傷患者における緊急開胸蘇生術と閉胸胸骨圧迫の有効性の比較検討: 全国観察研究Thesis Title Comparative Effectiveness of Emergency Resuscitative Thoracotomy versus Closed Chest Compressions among Patients with Critical Blunt Trauma: A Nationwide Cohort Study in Japan
学位論文要約:
Summary of Thesis 外傷は病院前搬送や管理の質が向上しているにも関わらず,依然として死亡率は高く,また一旦心停止し た外傷患者の生存率は低い。 外傷死の半数以上は交通事故などによる高エネルギー外傷に起因する鈍的外傷であり,多因子かつ複雑化 した損傷機序が鈍的外傷患者の高い死亡率の原因となっている。緊急開胸蘇生術 (ERT: emergency resuscitative thoracotomy) は,瀕死もしくは心肺停止直後の患者に 行われる救命手段であり,その目的は心タンポナーデの解除,胸腔内血管損傷や心損傷の止血,大量空気塞 栓や気管支胸膜婁の管理,開胸心マッサージ,一時的な下行大動脈遮断である。鈍的外傷患者に対する緊急 開胸蘇生術は,生存率に対する効果についての検討が不十分であり,適切な蘇生術については不明な点も多 い。 本研究の目的は,重症鈍的外傷患者に対する緊急開胸蘇生術が転帰と関連するかどうか,日本外傷データ バンクを用いて閉胸胸骨圧迫 (CCC: closed-chest compressions) の効果と比較検討することである。 【対象と方法】 対象は 2004 年 1 月から 2012 年 12 月までに日本外傷データバンクに登録された患者のうち,緊急開胸蘇生 術を施行された患者(ERT 群)と閉胸胸骨圧迫のみ施行された患者(CCC 群)とした。ただし,病院到着時にすで に心停止していた患者,鈍的外傷でない患者,救急救命室に到着後 24 時間以上経過した後に蘇生術を施行さ れた患者,現場で緊急開胸蘇生術を行われた患者,重要項目の欠損値がある患者は除外した。主要評価項目 は救急救命室到着 24 時間後生存とし,多変量一般化混合効果回帰分析を行った。また傾向スコアマッチング 法を使用した感度分析も行った。病院間の緊急開胸蘇生術の質が一定でないことについてはランダム効果モ デルを導入し,病院が異なることによる効果を調整した。交絡因子は年齢,性別,受傷年次,搬送経路,搬 送方法,受傷原因,病院到着時の収縮期血圧,呼吸数,脈拍,グラスゴーコマスケール,体温,injury severity score,外傷時の迅速超音波検査,24 時間以内の輸血とした。 【結果】 対象患者 1377 名のうち,ERT 群が 484 名,CCC 群が 893 名であった。ERT 群は CCC 群と比較し,平均年齢, 収縮期血圧は有意に低く,呼吸数,脈拍,外傷時の迅速超音波検査陽性数,injury severity score は有意 に高かった (各々,P < 0.001) 。24 時間生存率,28 日生存率はともに CCC 群と比較し,ERT 群で有意に低 かった (4.5% vs 17.5%, 1.2% vs 6.0% ,各々,P < 0.001) 。多変量一般化混合効果回帰分析を用いて解析 し, CCC 群と比較して ERT 群で有意に死亡オッズが高かった (P < 0.001) 。
【考察】 本研究で鈍的外傷患者に対して緊急開胸蘇生術を行うと,閉胸胸骨圧迫のみの患者と比較し生存率が低下 することが明らかとなった。これまでも鈍的外傷患者において,緊急開胸蘇生術後の生存率が低いことは報 告されてきたが,統計手法を用いて閉胸胸骨圧迫との比較検討したものは本研究が初めてである。 閉胸胸骨圧迫は 1960 年に初めてその有効性が報告されてから,開胸心マッサージに代わる一般的な蘇生手 段として行われるようになった。 一方で緊急開胸蘇生術は重症外傷における蘇生法として確立されているが,過去の報告では鈍的外傷に対 する緊急開胸蘇生術の生存率は低いとされている。それ故,Advanced Trauma Life Support ガイドラインで も鈍的外傷に対する緊急開胸蘇生術は,心波形に関わらず推奨されていない。しかし,臨床の現場では,依 然慣習的な緊急開胸蘇生術が行われている。不適切な緊急開胸蘇生術は,患者を蘇生できないばかりか,結 果として費用の増加,資源の浪費,医療従事者の血液感染リスクの増加を引き起こす。 本研究の結果は,緊急開胸蘇生術と比較し閉胸胸骨圧迫の方が鈍的外傷患者に対してより高い生存率をも たらすことを示すと同時に,蘇生手段として閉胸胸骨圧迫がより有益である可能性を示唆している。 【結論】 鈍的外傷患者において,緊急開胸蘇生術よりも閉胸胸骨圧迫の方が蘇生手段として有益である。この結果 は鈍的外傷患者に対する緊急開胸蘇生術施行を再考する一助となることで,不適切な緊急開胸蘇生術で生じ る有害事象を減少させる可能性がある。