Title
Outcomes of Patients with Stable Low-Risk Coronary Artery
Disease Receiving Medical-and PCI-Preceding Therapies in
Japan -- J-SAP Study 1-1 --( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
谷畠, 進太郎
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第661号
Issue Date
2006-03-15
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14482
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氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 谷 畠 進太郎(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 661 号 平成18 年 3 月 15 日 学位規則第4条第1項該当
Outcomes of Patients with Stable Low-Risk Coronary Artery Disease Receiving Medicaトand PC[-Preceding TherapiesinJapan
-J-SAP Studyl-1-(主査)教授 藤 原 久 義 (副査)教授 竹 村 博 文 教授 森 田 啓 之 論文内容の要旨 安定冠動脈疾患の大多数を占める低リスク冠動脈疾患は,LAD入口部病変を除く1枝または2枝病変と定義さ れる。ACC/AHA/ACP-ASIMガイドラインでは,低リスク冠動脈疾患に対する治療は,まず十分な抗狭心症 薬により狭心症発作のコントロールを試み,効果が乏しい時に初めて冠動脈インターベンションを考慮すべきと している(薬物先行治療)。一方,わが国の多くの施設では初期治療として経皮的冠動脈インターベンション (PCI)を最初から行い,薬物療法も併用するというPCI先行治療が一般的である。本研究の目的は,日本人の低 リスク冠動脈疾患に対する薬物先行治療とPCI先行治療とを長期予後と経済学的な観点から比較検討することで ある。 対象と方法 2000年に薬物先行治療を受けた低リスク冠動脈疾患連続190症例とコントロールとして年齢,性別,狭心症症 状の重症度,雁患枝数を合わせたPCI先行治療を受けた低リスク冠動脈疾患192症例を全国横断的に34施設から 後ろ向きに2001年に登録した。各症例の薬物先行治療またはPCI先行治療の選択は,各施設の医師と患者で判断 し,急性冠症候群(ACS)は除外した。平均追跡期間は薬物先行治療群:1,219±184日,PCI先行治療群:1,235 ±180日であった。本研究は岐阜大学倫理委員会の承認を受けた。それぞれの治療群において,1次エンドポイン トである心臓死またはACSを認めた症例の割合をKaplan-Meier法を用い比較した。平均年齢と狭心症症状の重 症度の変化は,ANOVAを用いて比較した後,unPaired-t検定でp<0.05で有意とした。その他は,Chi-Squared testで比較した。 結果 薬物先行治療群とPCI先行治療群間で患者の年齢,性別,初期狭心症症状の程度,雁患枝数,基礎疾患の分布 は同等であった。陳旧性心筋梗塞症例は両群共に約30%認めた。また,薬物療法の内容は両群とも同等であった。 平均3.4年の追跡期間中,薬物先行治療群90.6%が薬物治療のみであったのに対し,PCI先行治療群では33.2% に何らかの新たなインターベンションが行われ,有意に追加治療を必要とした(p<0.05)。1年後の狭心症症状は 両群とも改善した。 薬物先行治療群15例(7.9%),PCI先行治療群11例(5.7%)が死亡した。JL、臓死は薬物先行治療群3例(1.6%), PCI先行治療群5例(2.6%)で有意差を認めなかったが,非心臓死は薬物先行治療群12例(6.3%)で,PCI先行 群6例(3.1%)より有意に多く認めた。 ACSの発症は,薬物先行治療群1例(0.53%),PCI先行治療群4例(2.1%)であり同等であった。心臓死と ACSを併せると,薬物先行治療群4例(2.1%)であり,PCI先行群9例(4.7%)と有意差はなかった。
-71-1年目の両群の総費用は,薬物先行治療群863,540±1,259,840円,PCI先行治療群3,756,450±2,274,700円,二 年目には薬物先行治療群365,760±476,750円,PCI先行治療群1,115,750±621,020円であった。総費用はPCI先行 治療群の万が一年目4.4倍,二年目には3.1倍高額であった。 考察 本研究により,低リスク冠動脈疾患の大多数で狭心症症状は薬物先行治療だけでコントロールでき,JL、臓死お よび心臓死とACSを併せたイベント発生率は両群に有意差はなく予後は両群で同等であることが判明した。2群 間のKaplan-Meier curvesの傾きは治療後200日以上でほぼ同じになったが,200日以内の心臓死とACSの発症率 はPCI先行治療群で高かった。これは,2群は同じ薬物治療を受け,基礎疾患や危険因子も同じであったことよ り,PCI後の急性または慢性再狭窄によると考えられる。いずれにせよ,PCIは低リスク冠動脈疾患症例の長期 予後に影響を与えない。これらの結果は,日本人であってもACMEやRITA-2といった欧米の試験の結果と相違 ないと考えられる。 また,本研究において日本人の低リスク冠動脈疾患症例の長期予後は欧米と比較し良好であったが,これは日 本人の冠動脈硬化の程度,薬物やステントのようなデバイスの最近の進歩によるかどうかは不明である。また, 日本の医療保険制度の相違によるものかも知れない。 本研究により,わが国の低リスク冠動脈疾患に対する治療費は,PCI先行治療群の万が一年目4.4倍,二年目 には3.1倍高額であることが判明した。この結果も日本人であっても欧米の試験での結果と同等であると考えら れる。 結論 低リスク冠動脈疾患に対する薬物先行治療は,日本人であっても長期予後や医療経済学的にPCI先行治療より 有用であると考えられる。 論文審査の結果の要旨 申請者 谷畠進太郎は,低リスク冠動脈疾患に対する薬物先行治療は,日本人であっても長期予後や医療経済 学的にPCI先行治療より有用であることを明らかにした。このことは,現在わが国の大多数の施設で行われてい る低リスク冠動脈疾患に対するPCI先行治療に関して警鐘を鳴らすものである。この知見は,わが国における冠 動脈疾患治療のガイドラインの改訂に不可欠なものであり,循環器病学の発展に少なからず寄与するものと認め る。 [主論文公表誌]
Outcomes of Patients with Stable Low-Risk Coronary Artery Disease Receivlng Medical-and PCIT Preceding TherapleSinJapan-J-SAP
Studyl-1-CirculationJourna170,365-369(2006).