62 (7) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
シ ミズ トモ エ清水智江(昭和1
医学博十 乙第1085号平成2年5月18日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
Proliferative state and radiosensitivity of h㎜an myeloma stem cens
(ヒト骨髄腫巨細胞の増殖機構と放射線感受性) (主査)教授 滝沢 敬夫
(副査)教授杉野信博,平山峻
論 文 内 容 の 要 旨
目的 近年,骨髄腫コロニー法が開発されたが,それは骨 髄腫幹細胞の性質を調べ,定量的に測定するのに適し ていると考える.私は骨髄腫幹細胞のカイネティクス と放射線感受性を明らかにする目的で骨髄腫コロニー 法を用いて検討した. 方法 1)培養法:9例の多発性骨髄腫患者(lgGκ型7 例,IgGλ型1例, IgAλ型1例)から骨髄穿刺で骨髄 細胞を採取した.この細胞をフィコールコンレイを用 いた比重遠心法で85~95%の骨髄腫細胞を含む単核細 胞層を分離した.1~5×105個の単核細胞を20%ウシ胎児血清,20%のPHA-TCMおよび4・MEM培養液
を含む0.8%のメチルセルローズに埋め込み37℃,5% CO2,100%の湿度の条件で10日間培養した.コロニー刺激因子として用いたPHA・TCMは,正常ヒト末梢
血からTリンパ球をE・ロゼット法で分離し,1%
PHAと共に3日間培養した上清である. 2)増殖細胞の同定:培養終了後,20個以上の細胞か らなるコロニーを顕微鏡で算定した.各コロニーはパ スツールピペットで取り出し,リン酸緩衝液に浮遊さ せた.その形態をギムザ染色後に観察した,また,細 胞内免疫グロブリンの種類はFITC標識抗血清を用 いて免疫染色し,蛍光顕微鏡で同定した.3)DNA合成期にある細胞の測定:培養前の骨髄
腫細胞を高比活性の3H一チミジンと20分間艀置後に過 量のチミジンを加えた.その細胞を前述の方法で培養 し,骨髄腫コロニーの形成を観察した.加えた3Hチミ ジンの量は20μCi/m1または100μCi/mlである. 4)骨髄腫幹細胞の放射線感受性の測定:培養前の 骨髄腫細胞に60Coで0.5~2Gy照射した.その細胞を 前述の方法で培養し,骨髄腫コロニー数を算定した. 結果 9人の骨髄腫患者から採取した10の骨髄サンプルで は,培養した2x105個の細胞当り,209~2,022個の骨 髄腫コロニーが形成された.コロニー構成細胞はリン パ形質細胞様で,細胞質内免疫グロブリンは培養前の 骨髄腫細胞のそれと一致していた.PHA-TCMの添加 量を増すとコロニー数は直線的に増加し,20~30%の PHA・TCMの添加でプラトーとなった.骨髄腫幹細胞 のうち21~45%がS期にあった.2例の患者で骨髄腫 幹細胞の放射線感受性を調べたが,Doは1.00Gyと 1.63GyでN値は1.6と2.0であった. 考案 骨髄腫幹細胞のうち21~45%がS期にあり,この値 は穎粒球系幹細胞のそれに近く,多能性幹細胞のそれ よりは高い.一方,白血病性幹細胞は50%以上がS期 にあり,多発性骨髄腫幹細胞のそれより高い.この事 実は,急性白血病ではS期に特異的な薬剤を用いる必 要があるが,骨髄腫ではそうではないことを示してい る.骨髄腫幹細胞の放射線感受性を調べるとDoはヒ ト多能性幹細胞や穎粒球系幹細胞のそれと同じであ り,特殊な状況での放射線治療が有効である可能性を 示している. 一672一63
論文審.査の要旨
本論文は,最近開発された骨髄腫コロニー法を用いて,骨髄腫幹細胞のカイネティクスと放射線感受性につ いて検討を行い,骨髄腫幹細胞の21~45%がS期にあること,また骨髄腫幹細胞の放射線感受性は正常骨髄幹 細胞とほぼ同じであることを明らかにしたもので,学術上価値.がある. 主論文公表誌Proliferative state and radiosensitivity of human
myeloma stem cells(ヒト骨髄腫幹細胞の増殖機
構と放射線感受性)
British Journal Cahcer Vo1.45 679-683 頁,(1982年発行)
副.論文公表誌
1)H㎜an myeloma in vitro colony growth:cell kinetics and radiation sensitivity(ヒト骨髄 腫のin vitroにおけるコロニー増殖:、細胞動 態と放射.線感受性)
Acta Haematol J 49(8):1800-1807,1986
2)Biochemical properties of human urinary magakaryocyte colony-stimulating factQr
and erythropoietin:the role of sulfhydryl groups.and disulfide bonds(ヒト尿由来の meg・CSFとEpoの生化学的特性:スルフヒ ドリル基及びジサルフィド結合の役割) Expl Cell Biol 54:281-286,1986
3)Neuraminidase and hematopoietic factors
from hulnan urine(ヒト尿由来のノイラミニ ダーゼと造血ホルモン)
Expl Cell Biol 54:225-23S,1986
4)Iso】ation and characterization of genomic and cDNA clones of human erythropoietin (ヒトEpo遺伝子cDNAクローンの単離と 特性) Nature 313:806-810,1985 5)家族性高脂血症(WHO IIb型)を有し,飲酒に よりGross Hypertriglyceridemiaを呈した 女子糖尿病の1例 糖尿病 23(12):1131-1136,1980 6)無踏言様運動を呈したIII・IV Pharyngeal Pouch症候群の1例 東京女子医科大学雑誌 50(12):1095-1102, 1980 一673一