資料 :秋田大学医学部保健学科紀要13(2):50‑57,2005
老年看護学 における教育方法 の検討
‑ デ ィベー トの教育効果 について‑
煙 山 晶 子 小笠原 サキ子
要 ヒ日ユ
高齢者を支える援助者 として質の高 いケアを提供す るために,高齢者 に対す る権利擁護,身体拘束 の心身への弊害 を理解す ることは重要である.身体拘束 は人権擁護 の観点か ら問題があるだけでな く,高齢者のQOL(生活の質) を根本か ら損なう危険性が指摘 されているが,高齢者 ケアの現場で身体拘束が廃止 されているとはいえない.身体拘 束のもっ様々な問題 に対 して,学生 自身が積極的に課題 に関心を示 し, 自分 な りの考えを持っ事がで きる事が必要だ と考え,ディベー トを実施 した.その教育効果を学生の評価を もとに検討 したところ,デ ィベ‑ 卜の導入 は,学生の 他者の意見を聞 き取 る力を養 い,高齢者の身体拘束 に対す る見識を広 げる事 に効果があると学生 自身が実感 していた
ことがわか った.
Ⅰ. は じめ に
老年看護学 において,高齢者 ケアの現状で考え るべ き倫 理 的課 題 に は,高 齢 者 自身 の意 思 の尊 重 ,虐 待 , 成年後見制度, さ らに身体拘束 の問題 な どがある.高 齢者 を支え る援助者 と して質 の高 いケアを提供す るた めに,高齢者 に対す る権利擁護,身体拘束 の心身への 弊害 などを理解す ることは重要 である.身体拘束 は人 権擁護 の観 点 か ら問題 が あ るだ けで な く, 高齢者 の QOL(生活 の質) を根本 か ら損 な う危 険性 が指摘 さ れて い る1). しか し,高齢者 ケアの現場 で は全面 的 に 身体拘束が廃止 されて い るとはいえない2).将来,何 らかの形で高齢者 ケアに関わ る学生 は,身体拘束 の も つ様 々な問題 につ いて知 ってお く必要が ある. さ らに 単 に事 の是非 を教授す るだ けで はな く,学生 白身が積 極 的 に関心 を示 し, 自分 な りの考えを持っ事がで きる よ うにす る ことが必要 だ と考 え, デ ィベー トを授業 に 取 り入れた. その教育効果 につ いて学生 の評価 を もと
に検討す る.
デ ィベー トは一般的 に受 け取 られているよ うな単 な
秋田大学医学部保健学科看護学専攻
150
る議論 や討論 で はな く,論理的 に思考 し表現す る技術 であ り,調査 の方法 を学 び,問題 の発見か ら分析,解 決策 の提示 と比較検証 をす るとい う一連 のプ ロセスを い う3). 事 前 の準 備 期 間, 『論 題 の決 定 』,『資料 デー タ の収集 と分析』及 び 『論理 の構築』 に取 り組み,『デ ィ ベー ト討論会』 に参加す る. さ らに 『審判団 による判 定』 を加 えた5つ のプ ロセスを経 て行 われ る4).前半 の4つのプ ロセスが広義 のデ ィベー トといわれ るもの で ある.看護教育 において デ ィベー トは脳死 の是非5)
や倫理教育67)などに導入 されてい る.
Ⅱ.目 的
デ ィベー トの体験 が,学生 の高齢者 の身体拘束 に対 す る視点 や認識,授業 に対す る参加意欲 に影響 したか を明 らか にす る.
KeyWords:老年看護学 デ ィベー ト 身体拘束
秋 田大学医学部保健学科紀要 第13巻 第2号
Ⅲ.方 法
1.授業 の概 要 授業 の位 置付 け
「老年 介護 演 習」 は, 老 年 看護 学科 目に位 置 づ け ら れてお り,老年看護学概論 ,老年看護方 法論 の既習 内 容 と密接 に関連 す る.
教授対象 お よび開講 時期 は,3年次前 期 の選択授業 で あ る.科 目の 目的 は 「施設 および在宅 にお け る高齢 者 の尊厳 を支 え るケ アのあ り方 につ いて考 え る ことが で き, ケ アを提供 す る保健 ・医療 ・福祉 チ ームの協働 者 と して の看護 の果 たす役割 と方法 につ いて演習 を通 して理解 す る.」で あ る. この 目的達成 の ため, 高齢 者擬似体験 や加齢 によ る喪 失体験 な どの演習 を行 って
い る.
デ ィベ ー トに関係す る授 業 は,全15回 の授業 の うち の,ll‑13回 目に行 った. デ ィベ ー ト討論会 は13回 目 に実施 した. この単元 の 目的 は,事例 を き っか けに し て 「高齢者 に対 す る身体拘束」 の現状 を把握 し,高齢 者 ケアにあた る看護職 と して 「高齢者 に対 す る身体拘 束」 に対 す る考 え と態度 を持 て るよ うにな ること, と
した.
2.デ ィベー トの進行 1)事前学 習
学生 が イ メー ジ しやす いよ うに身体 的拘束 を受 けて い る事例 を紹介 し, どの よ うな状況 なのか を 説 明 した.(図1) ま た, デ ィベ ー トに参加 す る 準備
(
『資料 デー タの収集 と分析』8)以下,事 前学 習 とす る) と して,課題 に取 り組 む よ うに指示 し た.事前学 習 の課題 は以下 の通 りで あ る.① 事例 のRさんの気持 ちを推 し量 る.
② 身体拘束 を何故 して はな らないのか を調 べ る.
③ 「身体 拘 束 とは」, 「い った い何 が身体 拘 束 にあた るのか」,「緊急 やむを得 ない状況 とは」
及 び 「切迫性,非代 替性,一 時性」 につ いて 調 べ る.
④ 高 齢者 はなぜ 「身体拘束 され る」 ことが多 くな るのか を調 べ る.
⑤ と られて い る身体拘束 の方法 につ いて調 べ る.
⑥ 身体拘束 はやむを得 ない とす る立場 の言 い 分 を挙 げ る.
デ ィベ ー ト討論会 まで の準備期 間 と して2週 間 の時間 を与 え た.学生 には事前 学習 へ の取 り組 み 方 を説 明 し,拠 り所 とな るよ うに複数 の参考文献 を紹介 した. また,文献 の検索方法 な ど,学 習 の 進 め方 に対 して適宜,助言 した.
2) デ ィベー ト討論 会 の実 際
デ ィベ ー ト討論 会 に参加 したの は,学生26名 と 老年看護学担 当 の教員2名 で あ る.
論題 は,身体拘束 の行 われて い る状況 や本 人及 び家族 の抱 え る問題 につ いて討論 す るため 『高齢 者 にお け る治療 ・看護 で は,身体拘束 をす るべ き で あ る.』 と設定 した9).
デ ィベ ー ト討論会 の進行 は教員1名 が行 った.
デ ィベー ト討論会 は後述 のルールに則 って行 った.
本来, デ ィベ ー トは聴衆 を 自分 の論述 で説得 す る 事 を 目的 と して勝敗 を競 うもので あ る. しか し,
【事 例】
夫婦二人暮 らしのRさんは,79歳の男性です.妻は76歳です.4ヶ月前に視床出血を発症 し,かなりの後遺症が残 り,痩 養型病院に入院中です. もともと,不整脈 と睡眠時無呼吸があり,また誤嘩性肺炎を起 こすなど容態が不安定であったため,
リ‑ ビリテーションが遅れでいます.左半身麻棒があり,左下肢は自分で全 く動かす ことはできません.左上肢は多少の自 動運動ができる状態です.右上肢は自由に動かすことができています.喋下障害があり,3ヶ月前より胃ろうより経管栄養 をおこなっています.ゼ リーを昼に一個,経口摂取できています.構音障害があり, ことばが聞き取 りに くく,言葉による コミュニケーションはとれにくい状態ですが,家族や看護師,理学療法士の話す ことは理解できますが,忘れて しまうこと が多いようです.尿意や便意 はあるようですが,はっきりと表現することができないため,おむっを使用 しています.皮膚 の掻痔感があり,胃ろうチューブ周囲を掻 くような動作,オムツの中に健側上肢を入れて掻 き,おむっをはずす動作がみ ら れています. この病院に転院 した夜に,ベ ッドの下に降 りていたところを看護師が発見 し,それ以来4本のベ ッド柵がっけ られ, 4本 とも紐でむすばれてはずすことができないようになっています.同時期に胃ろうチューブと経管栄養ボ トルの接 続管をはず し,管を口にくわえていたところを発見されています. これ らのことか ら,看護師は一 日8回の経管栄養中は自 己抜去を予防するという目的で, ミトン手袋を両手にはめさせています.最近は,それ以外の時間 も, ミトン手袋を両手 に はめさせています.家族が見舞 うたびに ミトン手袋を外すのですが,手に異臭があります.看護師は家族が帰宅するときに は, ミトン手袋を両手にはめさせて帰 るようにいっています.現在は左膝蓋部に柵による擦過傷が点在 しています.病棟節 長は 「身体拘束はしてはいけないといわれていますが,自己抜去されたら大変だか ら ・・・」 と家族に言 っています.
図1 身体拘束の現状をイメージするために紹介 した事例
今回 はデ ィベー ト討論会 に参加す る事 によって コ ミュニケー シ ョンの方法 を学ぶ ことがで きる, と い うメ リッ トに注 目 し, 勝敗 を決 定 す る判定者 (ジ ャ ッ ジ) は置 か ず , 終 了 後 に コ メ ンテ ィ クー10)(今 回 は教員) が デ ィベ ー ト討論会 を傍聴 して感 じた ことを コメ ン トす ることに した.
参加学生 は くじを引 いて 『肯定派 (身体拘束 は 行 われてよい)
』
『否定派 (身体拘束 は行 われて は いけない)』の どち らか に属 し, それぞれの立場 の座席 に着席 して参加者全員が発言 す ることに し た. くじで所属す る立場 を決定 したの は,身体拘 束 を肯定す る立場で発言す る役割 を担 って くれ る 学生 は少数 で はないか と予測 し,少数 の学生が多 数派 との討論 にな ることを避 けたためである.発言 の際のルール は下記 のよ うに設定 した.
① デ ィベー ト討論会 は, 口論で はな く, その 人 を責 め るので はないとい う認識 で参加す る 事.
② 他者 の意見 に賛 同 した り,前 の発言者 の発 言 内容 に補足す る形 での発言で も構わない.
参加者 は必ず一回 は発言す る事.
③ で きるだ け多 くの人が発言 で きるよ うに発 言項 目は一つ とす る事.
発言 時間 は,進行役 の教員が肯定派,否定派 の 両者が等分 となるよ うに配慮 しなが ら進 めた.
3.デ ィベー トに対する学生 の評価
デ ィベー ト討論会終了後,参加 した学生 に無記名で 下記 の5項 目の設問11)に対 す る5段階評価 と理 由, さ らにデ ィベ ー トに参加 した感想 を記述 して もらった.
設問1 人 の意見 を聞 きたい, あるいは自分 の意見 と比較 したい とい うニーズが生 まれたか 設問2 新 たな考 えや視点が得 られたか 設問3 身体拘束 に関す る認識が深 ま ったか 設問4 自分達で授業 を作 っているとい う一体感が
あ り参加意欲がでたか
設問5 機会があれば再 びデ ィベー トをや りたいか デ ィベー トに参加 した感想
5段階評価 は質問 ごとに単純集計 した.各設問 に記 載 された理 由や感想 な どの記述 について は意味内容で 分類 してま とめた.分類 にあた って は研究者間で協議 を重 ね,意 味内容 に適 した タイ トルをっ けた.
4.倫理的配慮
著者 らは,参加者全員 に対 して,上記 の各設問の集 計結果 と理 由をまとめた ものを示 し,今回実施 したディ
ベー トを導入 した経緯をまとめ報告 したい事,ディベ‑
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トに参加 した印象及 び身体拘束 について記述 した内容 の使用 についての了承 を得 た.表現 につ いて は個人が 特定 され ることがないよ うな例示 の しかたを取 ること と,協力 の可否 によ って評価 に影響す ることは一切 な い ことを説明 した.
Ⅳ.結 果
ディベー トに対す る質問への回答 は以下の結果 となっ た.(図2,表1‑ 5)記述 内容 のデー タ化 に対 して
25名が同意 を示 した.
デ ィベー ト討論会 での否定派 の発言 は,高齢者本人 や家族 に対す る影響 や身体拘束 を回避す るための工夫 などを紹介す るものであった.肯定派 の論点 は身体拘 束が必要 な状況や安全が保証 で きない場合,経済的な 問題 や看護や世話 をす る人員 の不足 とい った高齢者 ケ アの現状 をどのよ うに解決 してい くのか, とい う問題 提起 が主 な ものだ った.肯定派 の立場での発言 で も, 高齢者 ケアの現場 において,何 の検討 もな く身体拘束 が行 われていいのだ, とい う,人道的見地 か ら逸脱 し た意見 を述べ る学生 はいなか った.
事前学習 と して提示 した課題 の達成状況 は, ほぼ全 員が高齢者 ケアでの身体拘束 に関す る必要事項 に触れ,
自分 の意見 も記述す る事がで きて いた.
次 に各設問 に対す る回答 を述べ る.
「設問 1 人 の意見 を ききたい 自分 の意見 と比較 したい とい うニーズが生 まれたか」 で は参加者全員が
『非常 にそ う思 う』, 『そ う思 う』 と回答 して いた.理 由 と して記述 されて いた内容 は 「他者 の意見, 自分 と 違 う意見 を聞 く事 で新 たな視点が得 られた」,「様 々な 意見が ある事 を知 った」,「実際 に拘束 を受 けた家族 の 事例 を聞 いて意見が変わ った」,「他者 の意見 に関心が あ った」,「他者 の意見 を聞 く事 の意義 を感 じている」
であ った.
「設 問2 新 たな考 えや視点 が得 られ たか」 で は大 多数 が肯定 して いたが,『考 え方 に変 わ りはない』 ま た 『考 えがゆ らいだ』 とい う回答 もあ った.
「設 問 3 身体拘束 に関す る認識 が深 ま ったか」 で は,参加者全員が 『非常 にそ う思 う』,『そ う思 う』 と 回答 して いた. 理 由 と して記述 されて いた内容 は,
『重要 な問題 だ と深 く考 え るよ うにな った』,『自己学 習す るまで拘束がいけない こと,論議 されていること を知 らなか った』 な ど 【問題 の重要性 の認識】 を理 由 に挙 げて いた.【事前学習 ・デ ィベー ト】 によ って, 身体拘束 に関す る認識が深 ま った とい う記述 もあ った.
さ らに 『自分達が変 えていかなければな らない』 とい う 【援助者 と しての立場】か らの回答 もあ った.
秋 田大学医学部保健学科紀要 第13巻 第2号
設問5
機 会 が あ れ ば再 び デ ィ ベー トをや りたいか
設問4
日分速で授業 を作 ってい るとい う一体感があ り参 加意欲がでたか
設問3
身体拘束 に関す る認識が 深 まったか
設問2
新 たな考えや視点が得 ら れたか
設問1
人の意見を聞 きたい, 自 分の意見 と比較 したいと い うニーズが生 まれたか
25% 50% 75% 図2 デ ィベー ト終了後の感想 n‑25
田 5 非常にそう思う 因 4 ややそう思う 国 3 どちらともいえ
ない
E】2 ややそう思わな い
[コ 1 全く思わない
表1 設問1の自由記述 (人の意見をききたい 自分の意見 と比較 したいというニーズが生 まれたか) n‑25 他者の意見, 自分 と違 う意見
を聞 く事で新 たな視点が得 ら 11 れた
他人の意見 と比較す る事で違 った意見が見え るか ら 自分 と違 う視点 で考えている人 もいて参考 にな った
人の意見を聞 く事で 自分で気づ けなか ったところがわか った
人 の意見を聞いて 自分 の考えが広が り, 自分 の意見がよ り強 くな った 様 々な意見がある事 を知 った 2 同 じ肯定派,否定派で も発言の内容 に違 いがあ ったため
思 いっかなか った意見がた くさんでて きた
考 えをまとめる事がで きなか ったので,他者 の意見 に関心があ った 自分の意見 との違 いを兄 い出そ うと している
他者の意見 に関心があ った 5 やむを得 ない場合 にどのよ うに判断す るのか他者 の意見 に関心があ った 他者の意見 に興味があ った
自分の意見 に反対派が どのよ うな発言 をす るか興味があ った
他者の意見 を聞 く事 の意義 を 感 じている
参加者 の体験 を聞いて意見が 変わ った
自分の意見だけで結論 を出すのでは不十分で,他者 の意見 を聞 いて視野 を広 げる ことがで きる
自分の意見だけで結論 を出すのは不十分で成長 で きない 自分の考え方だ けでは物事 を一面で しか とらえないか ら
それぞれが違 う意見を もっている 他者 の意見 を聞 く事 は意味がある 1 実際に拘束 を受 けた家族 の事例 を聞いて意見が変わ った
表2 設問2の自由記述 (新たな考えや視点が得 られたか) 様 々な視点で考え る事 がで きた
考え方 には変わ りはない 考えがゆ らいだ
記載 な し
22111
n‑25
(数字 は記述 した人数)
(数字 は記述 した人数)
表3 設問3の 自由記述 (身体拘束 に関する認識が深 まったか) n‑ 25
重要 な問題 だ と深 く考 え るようにな った
問題の重要性 の認識 自己学習す るまで拘束がいけないこと,論議 されていることを知 らなか った 自分で は拘束だ と思 っていなか った事が拘束だ と知 って驚いた
事前学習 ・デ ィベー ト
511
事前学習,意見交換 によ って認識が深 まった 事前学習 によって意識が高 まった
拘束 の現状 を知 ることがで きた 両者 の立場がわか って きた 違 う情報 を持 ち込む ことがで きる
援助者 と しての立場
53321
意見 を聞 いて 自分 の考 えが はっきりした 自分達が変 えていかなければな らない 自身 の看護観 を振 り返 った
記載 な し な し
111
(数字 は記述 した人数)
表4 設問4の 自由記述 (自分連で授業を作 っているという一体感があ り参画意欲がでたか) n‑25 発言 に対す る条件設定 につ いて
参加者の発言 について
全員が発言で きてよか った
条件のため発言 している人が多 いのではないか 発言 に対す る慣れ ・勇気が必要
学生が司会 を して もいい デ ィベー トの進行 について
教員 の進行 について デ ィベー トについて お もしろか った 一体感 につ いて
慣れて くると良か った
意見があ って も発言す る勇気がなか った 学生が司会 して もいい
教員が進行 していたのでよか った
意見交換す るのは学生主体 の形態だ と思 った お もしろか った
デ ィベー トは参加 している感覚があ った デ ィベー トは参加 している感覚があ った 事前学習 した ことで一体感があ った
参加人数 について 人数 について 記載 な し
事前 に調べて きたことや討論で授業 を作 ってい るとい う一体感があ った
人数が多 い
人数 はち ょうどいい
表5 設問5の自由記述 (機会があれば再 びデ ィベー トをや りたいか) n‑25
一31㌻3一3r2INIcl一l一2
2 1 1 (数字 は記述 した人数)
肯定的意見
視野がひろが った
デ ィベー トの意義 を実感 した 楽 し い
発言す る事 で意識で きる事がある 苦手 な発言 を克服す るためにも必要
否定的意見
154
85221
発言への抵抗感 :緊張す る 恥ずか しい 少人数で実施 したい
テーマが難 しい 混乱す るので はないか
∩.一l11
記載 な し 2
(数字 は記述 した人数)
秋 田大学医学部保健学科紀要 第13巻 第2号
表6 ディベー トに参加 して感 じた事 n‑25 他者の意見を聞く事は大切だ
自分の意見が明確になった
肯定派,否定派両者の立場が理解できるようになった
自分の意見と反する側での発言だったが,自分では気が付かない点に気が付 く事ができた
8514
否定派だったが揺れ動いた
自分の意見と反する側での発言だったため,考えが揺れた
自分の意見と反する側での発言だったため,意見が出て来なかった
312
そ の 他 1
「設 問4 自分達 で授業 を作 って い る とい う一体感 が あ り参加意欲がでたか」に関 して は,『お もしろい, 楽 しい
』
『事前 に調べて きた ことや討論 で授業 を作 っ ているとい う一体感があ った』 とい う一体感,参加意 欲 に関 す る記 述 以外 に, 【参加 者 の発 言 につ いて】【デ ィベー ト討論会の進行 について】挙 げ られていた.
『参加者 は一 人一 回 は必 ず発言す るとい う条件 を負担 に感 じたので はないか』 とい う内容 と逆 に 『全員が発 言 で きて よか った』,
『
(条件 のため)発言 しよ うと し た』 とい う記述があ った. また 『緊張が伴 い,場 に慣 れて くるに従 って参加 で きるよ うにな った』 とい うも の,『意見が あ っても発言す る勇気がなか った』, とい うものがあ った. さ らにデ ィベー ト討論会への 【参加 人数】 につ いて は 『ち ょうど良か った』 とい うもの と『多か った』 とい う記述が あ った.
「設問5 機会 があれば再 びデ ィベ ー トをや りたい か」 に対 して理 由 と して記述 されていた内容 には 『意 見交換 の良 い場 にな った
』
『意見交換 す る機会 が ない ので必要 だ』
『苦手 な発言 を克服 す るために も必要』な どがあ った.反面 で 『緊張す る
』
『恥 ずか しい』発言への抵抗感 を理 由にあげているもの もあ った.
「デ ィベー ト後 の感想」 は 『他者 の意見 を聞 く事 は 大切 だ』 とい う内容が最 も多か った.肯定的な意見 と して は 『自分 の意見 が明確 にな った
』
『肯定派,否定派両者 の立場 が理解 で きるよ うにな った
』
『自分 の意見 と反す る側 での発言 だ ったが, 自分で は気が付かな い点 に気が付 く事がで きた』 などが あ った. デ ィベー トに参加す る事 で 自分 の考 えが揺 れ動 いた, とい う記 述 は,肯定派,否定派 の双方 で見 られ た.『発言 す る 側 の決定 は意思 とは違 ったため,発言が しに くか った』
とい う記述 もあ った.
Ⅴ.考 察
高齢者 の身体拘束 をテーマにデ ィベー ト授業 を導入 し,事前学習 およびデ ィベー トに参加 した学生 の視点
(数字は記述 した人数)
や認識 に影響が あ ったか,授業 に対す る参加意欲 がで たか及 びデ ィベー トに対す る関心 につ いて検討 した.
「設 問1 人 の意見 を ききたい 自分 の意 見 と比較 したい とい うニーズが生 まれたか」,「設問2 新 たな 考 えや視点 が得 られ たか」 で は, 『他者 の意見 を聞 く 事で, 自分 自身が全 く注 目 していなか った視点 に気づ か された』 とい う記述が多 く,参加学生が他 の学生 の 意見 に関心を示 していることがわか った.教育 ディベー トにおいては,相手 を論破す る事が重要 なのではな く, 議論 を通 して様 々な意見 の良 い ところを認 めてい くと
い う態度 を養 う事 に目的がある. さ らに, デ ィベー ト 討論会 に参加す る事 によ り,傾聴力が身 に付 き, 自説 の主張だ けで はな く相手 の論点 を把握す る訓練 に もな るとされて い る12). 『事前学習 の段 階で は考 えを ま と める事 がで きなか ったので,他者 の意見 に関心が あ っ た』 と記述 していた学生 もいた. こうい った記述 は, 身体拘束の行 われ る状況 に対す る自分 の意見 を持 って デ ィベー ト討論会 に臨んで はいるが,身体拘束が なさ れてい る状況 の学習 を深 めるほど,様 々な立場や状況 を考慮 しなければな らないのだ と認識 され,一言 で は 表現で きない, と感 じたためであろ う. また, 自分 の 意見が他学生の意見 と食 い違 っていないか,関心を持 っ て聞 くことによ って,事前学習で不足 していた身体拘 束 の抱 え る複雑 な要因を とらえ るにつなが ったと考 え る.
「設 問3 身体拘束 に関す る認識 が深 ま ったか」 で は,身体拘束 はやむを得 ない状況でのみ行 われ る処置 であるとい う,重要性 を認識 している記述がみ られた.
今回の授業で は,学生 は事前学習 に加 えて, デ ィベー ト討論 会を体験 す る事 によ って, 「身体拘束 は禁止 す べ きだ」 とされている現状 には様 々な要因が伴 うこと や,本当に身体拘束が必要 なのかを検討す ることが必 要 だ とい うことを強 く認識 した もの と考 え る.
‑設問4 自分達 で授業 を作 って い るとい う一体感 があ り参加意欲がでたか」 で は,全員が事前学習 に取 り組 み,意見 をまとめて参加 した事 で一体感 を感 じた
よ うだ った. デ ィベー トを実施す るためには,身体拘 束 を肯定す る立場 で発言す る者が必要 であ るが, その 役割 を担 う学生 は少 ない事 が予想 された. このため, 学生 自身の考 えが否定派 ・肯定派の どち らかに関係 な く, くじで決定 した. この点 について,学生 の感想 に は 『自分の意見 と反対の立場だ ったため発言 しに くか っ た』,『発言 で きなか った』 とい う記述 や 『反対 の立場 で発言す る事で気がつ く事 もあった』 という記述があっ た. デ ィベー ト討論会で は本人 の持論 とは関係 な く発 言 の立場 を決定す る場合 もあ る
1 3 ) .
しか し,学生 の身 体拘束 の是非 とい う論題 に対す る関心 やデ ィベー ト討 論会への参加意欲 を考慮す ると,肯定派,否定派 の どち らの立場 で発言 したいかを確認 した うえで実施す る 方法 もあった と考え る.
参加意欲 に関す る記述以外 には 【参加者 の発言 につ いて】 【デ ィベー トの進行 につ いて】が挙 げ られてい た.『多数 の前 で発言す る ことに緊張 し,発言 に勇気 が必要 だ った』 とい う記述 や, 『ひ とり一 回 は必ず発 言す るとい う条件 を負担 に感 じたので はないか』 とい う記述があ った. また 『発言 には緊張が伴 い,場 に慣 れて くるに従 って参加 で きるよ うにな った』 とい うも のや 『なかなか発言で きなか った』 とい うものがあ っ た. デ ィベー ト討論会 に参加す ることによ って,パ ブ リック ・プ レゼ ンテーション形式でのコ ミュニケーショ ンの方法 を学ぶ ことがで きる, とされて いる14).多 く の人 の前で話す ことに慣 れていない学生 は積極的 に発 言 しよ うとせず, よ く発言す る学生 と発言 しない学生 に分かれて しまいがちで ある. デ ィベー ト討論会 で は 発言す る時間 と順番が決 め られているので発言せ ざる を得 ない. そのため, 自ず と発言す ることにな り,吹 第 に コ ミュニケー ション方法 を身 につ ける事がで きる 事 を期待 してい る. デ ィベー トを進 め る過程 が, 自分 の意見 を他者 に理解で きるよ うに表現す る技術 を学ぶ 機会 となることを学生 に意識づ ける事 も必要であろう.
また参加 人数 につ いて も, 意見 が分 かれて いた.
「設問5 機会があれば再 びデ ィベー トをや りたいか」
において も,多 くは好意 的な表現でデ ィベー トに興味 を もってい るととらえたが,や は り発言 に対す る抵抗 感が記述 されていた.多 くの人 がいる場 で発言す るこ
とを,苦痛 に感 じる学生 も含 まれている事 を考慮 し, デ ィベー ト討論会 に慣 れ る事 を期待 して,少人数,短 時間で実施 す るとい う方法 を導入 してみ ることも考 え てい る.
「デ ィベ ー トに参加 した感想」 で は,他者 の意見 に 耳 を傾 ける事 の重要性 の他, デ ィベー ト討論会 に参加 す る事で考 えが揺 れ るとい う記述があ った.事前学習 によ って,一旦, まとま っていた考 えが デ ィベー ト討
156
論会 に参加す る事 で,揺れ動 き,身体拘束 を否定す る 立場 にあ って も, 『単純 に考 え ることので きない問題 だ とい うことに気がついた』 とい う記述 も多か った.
これ らは,複雑 な背景や状況で様 々な立場 で判断す る ことが求 め られ ると実感 したため と考 え る. このよ う な実感 は講義 や 自己学習だ けで は得 られない効果であ り, よ り現実感 を伴 って問題 の起 こっている状況 を検 討す る機会 にな った と考え る.
Ⅵ.おわ リに
デ ィベー トの導入 は,学生 の他者 の意見 を聞 き取 る 力 を養 い,見識 を広 げる事 に効果があると学生 自身が 実感 していた ことがわか った.今後 は,高齢者 ケアの 現状 で起 こりうる,倫理的課題や,他職種 との協働 な どをテーマに, デ ィベー ト教育 を実施す る事 も考 えて いる.課題 と して,多人数 の面前 での発言 に抵抗があ る学生への配慮が必要 であったが,少人数,短時間で, 数度実施す るなどの工夫 を しなが ら, デ ィベー トの も つ教育的効果 を生 か していきたい.
文 献
1)厚生労働省 「身体拘束 ゼ ロ作戦推進会議」:身体拘束 ゼ ロへの手引 き.厚生労働省,2001
2)三宅貴夫 :痴呆の人の医療 ・福祉サービスにおける
「拘束」の実態一介護家族の立場から (調査報告書). 呆けをかかえる家族の会,京都,1999
3)北岡俊明 :ディベー ト入門.日本経済新聞社,東京, 1995,pp16‑19
4)岡本明人 :授業ディベー ト入門.明治図書,東京, 1992,pp16‑45
5)川島みどり :「脳死」をめぐる公開ディベー トを実施 して,看護教育33:571‑573,1992
6)宮脇美保子,宮林郁子,吉持智恵 :看護倫理教育にお ける教育方法の検討‑ディベ‑卜の教育効果について‑I, 鳥医短大紀要31:59‑64,1999
7)近藤裕子,近藤美月,岩本真紀他 :ディベー ト授業に おける学生の学び一討論者 ・判定者 ・傍聴者の立場か
ら‑,香川医科大学看護学雑誌 6:7‑ll,2002 8)前掲3),pp53‑54
9)前掲3),pp58‑67
10)安藤香織 :実践アカデ ミック ・ディベー ト 批判的思 考力を鍛える.田所真生子 ・他編,ナカニシャ出版, 東京,2002,pp30‑31
ll)前掲10),pp132‑136
12)茂木秀昭 :ザ ・ディベー ト 自己責任時代の思考 ・表
秋 田大学医学部保健学科紀要 第13巻 第2号
現技術,筑摩書房,東京,2001,pp34‑41 13)前掲10),p15
14)前掲10),p125
Di s c us s i o no fMe t ho do l o gyi nGe r i a t r i cNur s i ng TheEduc a t i o na lEf f e c t i v e ne s so fDe ba t e
ShokoKEMUYAMA SakikoOGASAWARA
Nursingcourse,SchoolofHealthSciences,AkitaUniversity
In order to offer a high standard of care when supporting elderly people,it is important to understandtheirrightsandtheadverseeffectonmindandbodyofphysicalrestraint.Physicalrestraint isnotonlyproblematicfrom thepointofview ofhumanrights:thereisalsothedangeroffundamentally damaging an elderly personsQOL (qualityoflife),butphysicalrestrainthasnotbeen abolishedfrom geriatriccare.Asstudentsexpressedaninterestinthemanyissuessurroundingphysicalrestraintandit wasfeltimportantthattheydevelopedtheirindividualideasonthesubject,weorganisedadebate.When weinvestigatedtheeducationaleffectivenessbasedonstudentevaluations,Wefoundthatthestudentswere moreabletolistentotheopinionsofothersandhadagreaterawarenessofphysicalrestraintingeriatric nurSlng.