選択教材が占める高校音楽教科書の特徴とその課題
— 参照可能な教材の分量に着目して —
石 原 慎 司
Working with high-school music textbooks in which optional teaching materials predominate and related issues:
Focusing on the number of reference materials
ISHIHARA, Shinji Abstract
In high school education, in contrast to compulsory subjects, there are no common teaching materials for music classes. All the contents of specific teaching materials are left to the discretion of the teacher. For this reason, publishers of high-school music textbooks have to consider the extent of a teacher's discretion in deciding materials and include materials of varying complexity in the music textbooks. In other words, they have to include more than which can be feasibly covered within a year. This issue particularly affects Japanese instrumental music classes that teach performance skills. Though it is an optional subject, it is challenging to expand the class content relying only on the standard teaching materials, materials that are often inadequate in terms of both quality and quantity. It is often the case that even if a teacher chooses one of the teaching materials published in the textbooks, he or she has to supplement the course content with material from a different source. To create more useful and appropriate textbooks, the teaching guidelines and the textbook system need to be considered from an educational engineering perspective.
Key words : optional teaching material, music textbook, textbook system
はじめに
共通教材が一切指定されていない高等学校芸術科の音 楽の教科書は,多くの教科担当教員にとってどの程度使 用することが可能なように構成・編集されているのであ ろうか。教師は必ずしも掲載されている教材から授業を 行う必要がなく,教科書外から教材を探してきて使用す ることもできるからである。中には教科書の使用を効果 的ではないと考えている高校教師も少なからずおり,結 城(1998)は「生徒たちが歌唱意欲を持って」学習にあ たらせるためには「合唱教材の精選」が必要とし,教科 書以外の曲目リストを例示している。つまり,教科書教 材よりも自前の教材の方が有効だと考えているわけであ る。勿論こういった姿勢は教師の自発的で前向きな教材 準備に拠るもので,決して間違ったことではない。
さて,教科書使用の有無による教育効果やその是非に ついての考え方は様々あろうが,義務教育校の教科書は 国民の税金で,そして,高等学校の教科書は保護者に直 接購入させているわけであるから,経済的及び道義的に 言えば,教科書の多くの部分を有効に授業で使用できて
いなければならないであろう。特に高等学校の多くの場 合,教科書の採択に向けた選考は,授業を計画・実施す る音楽担当の教師自身が行っていることがほとんどなの で1),選択肢が少ないながらも自らが選んだ以上,その 教科書を無駄なく使うよう努力する責任はあると思われ る。しかし,さらにもう一歩進んで考えると,なぜ「努 力」しなければ使えないような状況が生じ得るのであろ うか。その場合,教師の「努力」で教科書の多くの部分 が使えるようになるという問題なのであろうか。そこで 本論では高校の音楽の教科書が元来どの程度使えるよう な構成になっているのかについてその内容を分析すると ともに,教科書を取り巻く様々な制限(要因)を考察し,
この問題に関わる課題の所在を明らかにしたい2)。
1 教科書の使用可能な割合の解明に向けて 1. 1 共通教材がない学習指導要領と教科書の関係 前述の通り高等学校の芸術科音楽の学習指導要領は,
義務教育校にある「共通教材」が元々存在しない。した がって,全国どこの学校においても絶対に使用すること
になる教科書のページが存在しないということなのであ る。歌唱・器楽・創作・鑑賞各領域の具体的な内容,つ まり,授業計画における題材の選択や教材の選択につい ての全ては担当教師の自由裁量というわけである。この ことから生じる顕著な例としては,教科書に掲載されて いない楽器を教材とした場合,教科書内の器楽のページ の全てが使用できなくなる,つまり,不要になってしま うことを意味するのである。
『高等学校学習指導要領解説』(文部科学省 2018)に よれば,各領域の「教材については,学校や地域の実態 等を考慮し,・・・ 様々な音楽から幅広く扱うようにする」
(p.60)ことになっており,担当教師が幅広く扱う努力 を払って教科書外教材を利用することは正に規定の想定 内でもあるのだ。前学習指導要領以前からこの部分の規 定は概ね同じ内容であり,担当者により量の多寡はあっ ても,従前より教科書外教材の利用はよくある光景だっ たのである。因みに,教材に関する情報や知識が多岐に 亘る教師ほど,教科書という狭い範囲からだけでなく,
自分が知り得る全ての知識・情報の中から,より適切な ものを選ぶことが容易に出来てしまうので,そういった 意味で優秀な教員であるほど教科書を使用しないといっ たことが生じ得たといえよう。教科書をあまり使わない 傾向を教育制度自体が強めてしまうというパラドックス が生じているわけである。
以上のような教科書外教材の利用は,「教科書の使用」
という観点からは課題があるものの,学習指導要領に 従って熱心に教材研究に取り組み,その上で有意義な授 業を実施しようとする努力の結果なのであれば,そのこ と自体はむしろ適切であり,賞賛されるべきことではあ る。義務教育校で「共通教材」の必修曲数が削減(小学 校)もしくは全廃(中学校)された平成 10 年告示の学 習指導要領下においては,旧文部省教科調査官や教員養 成大学の研究者から教材選択等に関しては教科書以外か らの選択を次のように示唆,あるいは,推奨していたこ とはこの点を補足している。
「平成 10 年の学習指導要領改訂は,大綱化の考え方に 基づくとともに,弾力的な指導の実現を目指して行われ た。そこでは,具体的な教材名や教育内容をできるだけ 本文に示さないように〜(した)。」(金本 2006)
「これまでの共通教材以外の教科書掲載曲やその他の 楽曲の中には中学生の音楽鑑賞曲として適当な楽曲も数 多く存在するはずである。そのような曲の中から,生徒 の実態や授業の形態に応じた楽曲を選ぶことは大変重要 なことである。」(森橋他 2009)*下線太字は筆者による
1. 2 教科書の分析―いかなる選択肢でも使えるか―
前述の通り,全国各地で非常に多様な教材による授業
が展開されているものと思われるが,そのような状況下 にある教科書は多くの教師にとってどの程度の使える部 分を有しているのか,その目安となる数値をここで見出 したい。そのため,ここ約 20 年の内容を把握すべく,
平成 10 年告示の学習指導要領及び平成 20 年告示の学習 指導要領下の音楽Ⅰ,Ⅱの各社の教科書を対象とし,一 定の基準を設けて分析した。なお,音楽Ⅲは選択によっ てはほとんど使用しない教科書となってしまうことが最 初から判っているので,ここでの分析からは除外した。
まず,分析に当たっての方針を述べる。抽出したいデー タはどの教師にとっても普遍的に使いやすい教材が含ま れているかという高度なものではなく,工夫は必要だが 如何なる選択肢においても最低限「使うことが可能な部 分」がどの程度かあるかというものである。つまり,選 択肢によっては「工夫しても使えない部分」が一方には あり,それを除いたページの合計が「誰にとっても使え る」可能性のある部分ということになる。その割合がど の程度なのかを各教科書から観察すれば,教科書や教材 の特徴が理解でき,課題点を考察できるであろう3)。 各教科書の分析方法だが,掲載されている教材を次の 2つのグループに分類して,その合計ページと教科書内 の割合を算出すると,教科書の誰にでも使える絶対的な 割合が判明すると考えた。第 1 のグループは,教師が教 科書以外から教材を選択した場合,または,教科書内教 材をどのように選んでも,最低限参照することは可能な 教材(以下「参照可能教材」)である。第2のグループは,
そういった場合には参照することすら難しい教材(以下
「参照不能教材」)である。補足だが,参照可能教材は教 科書以外の教材を用いても参照することが可能な教材 で,総合的・体系的な特徴がある。参照不能教材は他の 教材を選択した場合にはそこが全く使えなくなる教材で ある。例えば,前者は楽典や音楽史の資料が該当し,後 者は三味線の奏法、歌の楽譜などがこれに当たる。ペー ジのカウントに当たっては,同一ページ内に異なる項目 がある場合は掲載面積に応じて1/3ページまたは1/
4ページ単位(近似値)で計算した。表紙の裏や口絵,
中表紙等で,目次に記載がない部分については分類対象 から外し,教科書の合計ページに加えなかった。
「参照可能教材」は次の8分野に細分した。
①日本・西洋音楽史の総合的または体系的な説明・資料。
②日本・郷土の音楽の総合的または体系的な説明・資料。
③作曲家や曲種に関する総合的・体系的な説明・資料。
④諸民族の音楽の総合的または体系的な説明・資料。
⑤歌曲や合唱に適した歌唱・発声方法の説明・資料。
⑥日本語の歌・伝統的歌謡に適した歌い方・発声方法に 関する説明・資料。
⑦創作の方法や作品の形式・分析・ソルフェージュに関する総
合的な説明・資料。
⑧楽典・西洋の楽器や編成・指揮法・言語活動・機器の 活用・著作権に関する総合的な説明・資料。
「参照不能教材」は次の8分野に細分した。
①歌や合唱の楽譜とその資料。
②器楽曲の楽譜とその資料。*歌も伴っても,伴奏がピ アノ以外の楽器であればこの項目に算入する。
③特定の楽器の奏法説明・資料。
④特定の芸能・音楽分野や作曲者・演目・曲目の説明・
資料。
⑤特定の民族歌謡に適した歌唱・発声方法の説明・資料。
⑥特定の創作方法のみに絞った単独の説明・資料。
⑦特定の奏者や歌手・楽器・建物の口絵。
⑧その他,必ずしも参照する必要のない単独の事項。
分析した教科書は次の通り4)。「a」の付くものは平成 10 年告示学習指導要領下の「旧教科書」で,「b」が付 くものは平成 20 年告示学習指導要領による「現行教科 書」である。
[音楽Ⅰ]
教科書 1a=音楽之友社『高校生の音楽 1改訂新版』(平 成 18 年検定済)。
教科書 1b=音楽之友社『改訂版高校生の音楽 1』(平成 28 年検定済)。
教科書 2a=音楽之友社『高校の音楽 1改訂新版』(平成 18 年検定済)。
教科書 2b=音楽之友社『改訂版 ON!1』(平成 28 年検 定済)。
教科書 3a=教育出版『音楽Ⅰ改訂版 Tutti』(平成 18 年 検定済)。
教科書 3b=教育出版『音楽Ⅰ改訂版 Tutti』(平成 28 年 検定済)。
教科 書 4a= 教 育 出 版『 高 校 音 楽 Ⅰ 改 訂 版 MUSIC ATLAS』(平成 18 年検定済)。
教科書 4a=教育出版『高校音楽Ⅰ改訂版 Music View』
(平成 28 年検定済)。
教科書 5a=教育芸術社『高校生の音楽 1』(平成 18 年 検定済)。
教科書 5b=教育芸術社『高校生の音楽 1』(平成 28 年 検定済)。
教科書 6a=教育芸術社『MOUSA1』(平成 18 年検定済)。
教科書 6b=教育芸術社『MOUSA1』(平成 28 年検定済)。
[音楽Ⅱ]
教科書 7a=音楽之友社『高校生の音楽 2改訂新版』(平 成 19 年検定済)。
教科書 7b=音楽之友社『改訂版高校生の音楽 2』(平成 29 年検定済)。
教科書 8a=音楽之友社『高校の音楽 2改訂新版』(平成 19 年検定済)。
教科書 8b=音楽之友社『改訂版 ON!2』(平成 29 年検 定済)。
教科書 9a=教育出版『音楽Ⅱ改訂版 Tutti』(平成 19 年 検定済)。
教科書 9b=教育出版『音楽Ⅱ改訂版 Tutti』(平成 29 年 検定済)。
教科書 10a=教育出版『高校音楽Ⅱ 改訂版 MUSIC ATLAS』(平成 19 年検定済)。
教科 書 4a= 教 育 出 版『 高 校 音 楽 Ⅱ 改 訂 版 Music View』(平成 29 年検定済)
教科書 11a=教育芸術社『高校生の音楽 2』(平成 19 年 検定済)。
教科書 11b=教育芸術社『高校生の音楽 2』(平成 29 年 検定済)。
教科書 12a=教育芸術社『MOUSA2』(平成 19 年検定済)。
教科書 12b=教育芸術社『MOUSA2』(平成 29 年検定済)。
2 教科書の分析―参照可能な教材の割合―
分析結果を表1〜4に示した。これをもとに教科書に 占める参照可能教材と非選択可能教材の傾向を概観する。
2. 1 歌唱・器楽の学習に関する教材の傾向
異なる時期の各社教科書全ての総合的な結果として は,音楽Ⅰの参照可能教材の割合が全教科書通して低く,
18.0 〜 39.7%であった。平均は旧教科書で 24.3%,現行 教科書で 26.0%。それぞれ1種類だけ3割越えの教科書 があるが,それを除けばさらに低い数値となる。音楽Ⅱ では旧教科書が 11.4 〜 30.4.5%で,平均は旧教科書で 15.3%,現行教科書で 23.5%となっており全体としては 音楽Ⅰよりも低い。いずれにせよ多くの割合のページが 選択性の高い教材,つまり,他の選択をした場合は扱わ れない可能性が極めて高い「参照不能教材」ということ になる。
以上の中で多くの割合を占めているのが歌の楽譜の ページで,音楽Ⅰでは 50 〜 74 ページとなっており,最 高値と最小値は両年度群でほぼ同じであった。「我が国 の音楽科教科書をみると,体系的に何かを教えるという 内容にはなっておらず,歌曲集になっている」と評価す る研究者もいるように(吉富・三村 2009),そのような 傾向が教科書作り,あるいは,授業方法の伝統として残っ ていることを窺わせる数字がある。明治 44 年の『尋常 小学唱歌』が全6冊 118 曲,昭和7年の『新訂尋常小学 唱歌』が全6冊 162 曲,国民学校時代になった昭和 17 年の教科書では内容が調整された上で全 132 曲各学年 22 曲となったが,いずれも歌集的な教科書であった。
そして,昭和 22 年の戦後初の教科書は,内容の大幅な 改訂を経たにも関わらず,歌の曲数は全 132 曲となって おり,曲数的には国民学校時代と全く変わらずに踏襲さ れたのである。
現在の高校の音楽Ⅰの教科書にはそれ以上の曲数が掲 載されていた。特に教科書1,教科書2は合唱を含めて 両年度それぞれに 50 曲以上も掲載されていた。全校種 各学年の教科書中,最も多い曲数の掲載ではないか。関 連して後述するが,この部分が教師裁量を長年の伝統と してきた高校教科書の最たる特徴なのである。
なお,これほど多くの歌の楽譜が掲載されている割に は,学習指導要領で指示されている「曲種に応じた発声 の工夫」についての説明が少ない。西洋の歌曲や合唱に 適した歌唱・発声方法の説明・資料について0〜 3.25 ペー ジであった。西洋の発声等がこの程度であるから,日本 語の歌・伝統的歌謡の説明は旧教科書にないものがあり,
現行教科書でも1/4ページにも満たないものが存在す る。加えて,特定の民族歌謡に適した歌唱・発声方法の 説明・資料については全ての教科書で皆無であり,この 分野はほとんど教師個人のスキルに依存していると考え られる。総じて歌の楽譜が全教科書で非常に大きな割合 を占めているにも関わらず,歌う方法論に関する説明が 非常に少ないものが多いのが新旧教科書ともに言える特 徴のひとつである。
次に器楽の楽譜教材であるが,音楽Ⅰ・Ⅱともに 10 数ページが割かれており,それなりの分量はある。しか し,西洋の楽器ではリコーダーやギターが多く,よくあ る一例としてマンドリン等を選択した時点でそれらの ページの全てが使用できなくなるのである。また,和楽 器の楽譜として独立して掲載しているのは旧教教科書で は教科書6だけで,和太鼓・三線・三味線・篠笛 ・ 筝そ れぞれの奏法解説と共に2〜3曲が掲載されている。こ の教科書以外での和楽器の実習指導に当たっては,ほと んどの楽譜教材を教師が別に準備する必要があったので ある。現行教科書は全体的には改善されてはいるものの,
それでもある楽器を選択してしっかり取り組むには少な い内容及び分量であり,引き続き課題が残っている。
2. 2 鑑賞の学習に関する教材の傾向
鑑賞に関する教材としては,大きくは作品の背景を知 るための音楽学的な資料と,個々の作品の説明資料の二 種類に分けられる。表の分類上では,前者が主に参照可 能資料の①,後者が参照不能教材の④に該当する。
まず,参照可能教材の①「日本・西洋音楽史の総合的 または体系的な説明・資料」については音楽Ⅰでは旧教 科書で6〜 12 ページ,現行教科書で 7 〜 26 ページと増 えている。この部分は教科書以外からどのような楽曲を
選択しても,「歴史的な背景」を考察する際に参照でき る部分である。各教科書の掲載率は,音楽Ⅰでは旧教科 書で約5〜 10%程度,音楽Ⅱになると全てが5%未満 と少ない。現行では2種類が2倍以上に増加して改善し ているが,日本と西洋を別々にすればその分量は限られ る。日本音楽史に至っては,教科書 1aでは 1.33 ページ のみであり,教科書以外から選んだ鑑賞曲の「歴史的背 景」を考察する場合には情報量が極めて少ない。その代 り,教材として選ばれないリスクがあるにも関わらず,
それらの情報を,特定の芸能や演目,作曲家などに焦点 を当てる参照不能教材④の中に織り交ぜる形で工夫して いる様子が窺えた。同じ発行者の教科書 1a / bと 7a / b ではいずれも 22 ページあり,教科書 5bと 11bは最も多 く,32 ページと 26 ページで,2年度分合わせると相当 の分量がある。このような編集方法を採る教科書が多い 理由は,後述する学習指導要領や教科書検定からの影響 が考えられる。
さて,このような傾向の中,教科書 5aは多くの教科 書がその割合を高めてしまった参照不能教材④を少なく して,僅か2ページである。代わりに参照可能教材③「作 曲家や曲種に関する総合的・体系的な説明・資料」を工 夫し,そこに 22 ページを費やしている。鑑賞曲例が掲 載されてはいるが,それは例として見ることも可能な構 成で,曲種などが共通していれば他の作品を持ってきて も参照資料としては使用が可能であり,独特の工夫がな されている。しかし,現行の教科書 5bではより検定基 準に適合させた為か,その特徴を無くし,逆に新旧併せ た中で参照不能教材④が最も多い 32.75 ページになって いる。
2. 3 楽典・西洋の楽器説明等に関する教材の傾向 多くのページ配分がなされているわけではないが,参 照可能教材の⑧に分類している楽典等に関する内容は全 ての教科書にあり,一部の教科書では西洋の楽器紹介や 楽器学の解説もなされていた。しかし,ここで特徴的な のは,中学校以前の学習内容との重複部分が多いという ことである。特に音名,音符と休符の種類,拍子,長音 階,短音階,強弱記号,速度・発想の用語などで重複が ある。確かに高等学校用として内容が付け加わっている 部分はあるものの,音符の種類など,基礎・基本的な内 容の再掲載部分が多くある。これは義務教育段階での学 習の積み上げが十分でないことに配慮した編集であると 思われる。吉冨他(2009)は平成 21 年に全国の中学校 と高等学校の教師に対して行った大規模な調査を踏ま え,「小学校学習指導要領・音楽科」に示された音符・
休符・記号等の知識」については,20%弱の正答率し かなく,他教科では考えられない数値の低さであること
を指摘している。杉江(2009)も読譜関連の力について 同様の報告をしており,高校で授業を円滑に行うために は既習部分に対する一定の配慮,つまり,限られたペー ジ内でも既習部分を重複させる必要性が現実的にはある と言える。もっともこの配慮は新旧学習指導要領共に整 合性があり,平成 20 年の総則の第6款2の(4)の方を 参照すれば教科・科目の内容に関する事項において,基 礎的・基本的な事項に重点を置くなどその内容を適切に 選択して指導することができる」と記されている。また,
平成 30 年告示の新学習指導要領から高等学校には「共 通事項」が加えられ,既習事項を繰り返し活用する機会 がさらに増えてくるだろう。ただし,復習の必要がない 場合にはあまり活用する機会がないと思われる。
3 教科書を規定する周辺事情の考察
これまでに述べてきたように,誰にとっても使える教 科書教材の割合は,数値としては低いものであった。ま た,その低い数値を構成する参照可能教材にしても,あ くまで参照は「可能」というだけであり,参照しやすい とは限らない。情報量が少なく内容が浅ければ,授業を 深化させたい,興味深く多角的で横断的に理解させたい といった高次の目標を有する教員からすると,それだけ に頼って授業を行うには不足の感が否めない。ただし,
教科書を取り巻くその他の周辺事情を観察すると,現行 以上に教科書の構成や編集内容を工夫することは容易で ないことに気付く。いくつかの教科書を取り巻く要素,
つまり,総体としての「教科書制度」が,図らずも教科 書の構成や編集内容にまで規定することになっているの である。ここでは教科書を選定する教師に配慮する発行 者の立場、そして,教科書内容を直接規定する学習指導 要領と教科書検定,教科書の内容量を制限する教科書定 価の3つの側面から教科書への影響点を考察する。
3. 1 使われないことを前提とした教科書編集 各表を見ると,前述のように歌関係の楽譜に 70 ペー ジ以上も割いている教科書がある中,器楽の楽譜は各教 科書とも 20 ページ未満である。学習指導要領の「内容 の取扱い」をみると,特に音楽Ⅰの場合は「それぞれ特 定の活動のみに偏らないようにする」と規定されており,
この分量の差は尋常ではない。確かに,発行者が例示し ている「年間指導計画例」あるいは 「シラバス」 の例を 見ると,その教科書1冊で通年の授業を行うことができ,
しかも各単元の内容がバランスよく配列されている。し かし,例えば2種類用意されている教科書6の年間指導 計画例を見ると(教育芸術社 2011a,2011b),「年間指 導計画例1」 で取り上げられている歌や合唱に関する楽 譜教材については,教科書の目次に記されているものの
うち,26 曲も取り上げられていないものがあった。また,
このうちどちらの指導計画例にもない1曲(《翼をくだ さい》)を除く残りの 25 曲は,「年間指導計画例2」の 方にのみ掲載があった。これだけ見ても教科書の相当の ページが使われないことを前提に編集がなされているこ とが判る。
表1〜4を観察してみると,平均的にではあるが,最 も多い教材が表2,表4の①にある歌や合唱の楽譜,つ いで同表④の楽曲や作曲家等を説明した鑑賞教材,そし て,同表②の器楽の楽譜,という順になっている。音を 出す媒体の順で表すと,「歌唱>CD・DVD等>楽器」
ということになる。この順序は費用のかからない順であ ることにも注目したい。生徒分を揃えるのに大変な予算 を必要とする各種楽器については,教師の工夫や努力の 及ばない領域であり,教科書に掲載されている楽器の一 部しか有していない学校は非常に多いであろう。した がって,教科書は教師が取り扱う可能性の高い教材に最 も選択の幅を持たせ,多くの分量を掲載しているという 可能性が高い。しかし,選択の幅を広くしたことは,発 行者が使って貰える教科書を目指し,企業努力でページ 数を増やしているということになるのだが,逆にそれだ け選択されない教材が増えることにもつながっている。
つまり,企業努力と教科書全体で使える教材の割合は,
残念ながら反比例してしまっているわけである。
3. 2 学習指導要領と教科書検定からの影響
前節までに見てきたように,教材の選択肢に幅を持た せ,使いきれない分量の歌唱関係の楽譜教材を含めて1 冊の教科書を作るという編集方法は,教科書検定の規定 からするとどうなのであろうか。平成 11 年4月 16 日文 部省告示第 96 号「高等学校教科用図書検定基準」(以下
「検定基準」)の第2章2の(3)によると,「話題や題材 の選択及び扱いは,特定の事項,事象,分野などに偏る ことなく」とあり,また,同(8)には「学習指導要領 に示す標準単位数に対応する授業時数並びに学習指導要 領に示す内容及び学習指導要領に示す内容の取扱いに照 らして,全体の分量及びその配分は適切であること」と ある。現行の基準(平成 26 年1月 17 日文部科学省告示 第2号)はやや表現がシンプルになったものの,引き続 き教科書は生徒が物理的に学習可能なだけの内容と分量 である旨をこのように指示している。「学習指導要領の 内容及び学習指導要領の内容の取扱いに示す事項が,学 習指導要領に示す標準単位数に対応する授業時数に照ら して図書の内容に適切に配分されていること」。このよ うに―第2章で指摘したように―,歌の楽譜だけでも 50 曲以上を掲載しているような,明らかに一年間では 学びきれない分量を有し,取捨選択的な使用が当初から
企図されていると思われる教科書を文部科学省は融通を 利かせて長らく通過させてきたということになる。
次に,鑑賞教材に関してだが,鑑賞の学習指導におい ては,音楽Ⅰ,Ⅱともに「歴史的背景」の事項を「指導 する」よう学習指導要領で定められている。ここで教科 書の編集上難しいと考えられるのは,音楽Ⅰで扱った内 容を音楽Ⅱの教科書で,内容の重複なしに「深化」「発展」
させることである。編集上,非常に制約があり,工夫が 求められているのである。そして,この方面で具体的な 文言を与えて影響を増し加えたのが「検定基準」である。
検定基準の第3章[芸術科「音楽」]2の(4)には,「楽 曲の構成等及び歴史的,文化的背景に関するものは,単 なる知識や理論の習得に偏ることなく,楽曲と関連付け て扱われていること」とある(下線太字は筆者による)。 この規定は新旧検定基準ともに全く同じで,歴史や文化 に関する音楽学的な情報を,掲載した個々の作品に関連 させながら読めるように編集しなければならないという 制約を与えている。それで,教科書5を除く多くの教科 書は単純な方法を採り,鑑賞教材として掲載した個々の 楽曲や演目・曲種等の説明の中に,関連する音楽学的情 報を少しずつ挿入させることで,個々の作品と「関連付 け」を図ろうとしているように観察される。この方法は 音楽学的な情報をいくつもの作品説明の中に分散させる ことになり,総合的な音楽学関係の記述と言える参照可 能教材①の割合を減らすことにつながり,参照不能教材 の④の増加につながっていると考えられる。特に音楽Ⅱ の教科書ではその傾向が顕著で,「日本音楽史」関係の 説明はすべて個々の演目や芸能の説明の中に分散され,
総合的でまとまった記述のそれが全くない教科書も複数 あった。これは教科書以外の教材を選択した際には参照 しにくく,教科書の全体的な使いやすさに大きく影響し ている事項であろう。
なお,上記検定基準の「楽曲と関連付けて」という部 分は学習指導要領の本文には記載されていないことで あった。確かに,『学習指導要領解説』(文部省 1999 p.30, 以下『解説』)の方には,「個々の楽曲について,その楽 曲が成立した時代の音楽一般に共通する特徴や,その時 代の文化的・社会的背景とのかかわりから理解させるこ とが大切である」との記載がある。しかし,『解説』に は法的拘束力がないだけでなく,あくまで「各学校」が
「本書を参考として御活用」するためのものである(文 部省 1999まえがき)。つまり,実際には授業を担当する 各教師が学習指導要領を理解し,教材を扱う際の「参考」
とするためのものであって,教科書の内容を規定するた めのものではないのである。各教師は個々の作品説明の 中に「歴史的背景」等の記述が盛り込まれていなくても,
教科書内の参照資料的な部分からそれを作品と関連づけ
て教えることは可能であり,そういった指導を促すのが
『解説』の役目である。検定基準が「楽曲と関連付けて」
とまでこと細かに教科書構成に強く制約を与える必要が あるのかどうか,「検定基準」と『解説』との間の役割 分担に関して精査が求められよう。現実に教科書の参照 可能割合に影響を及ぼしているのであるから。
3. 3 教科書定価と出版コストの影響
前節で述べた歴史的背景に関する音楽学的情報の分散 とその量的問題に関しては,それをさらに充実させれば よいだけのことではある。しかし,今のところページ配 分の優先順位は前述の通り歌唱教材の方が高くなってお り,鑑賞用資料や多くの紙面を必要とする器楽の楽譜を さらに充実させることは,定価が決まっており5),それ が低く抑えられている現状では限界がある。
教科書発行者が会員となっている教科書協会は,「厳 しい経営環境」ゆえに,「教科書の定価の引き上げ」を 懇願している(教科書協会 2010 p.1)。これは生徒数の 減少による教科書需要数の急速な減少を根拠としてお り,平成2年に 562 万人いた高校生が,平成 21 年には 335 万人と約 40%減となっているのである(同 p.10)。
教科書1冊当たりのコストが年々増加してきたことに加 え,教科書定価は全体的には引き下げられているのであ る(同 p.1)。したがって,定価を上げない限りはページ 数増加による改善は困難と思われる。この点で旧教科書 における鑑賞教材への影響はどの程度のものなのであろ うか。再度鑑賞教材に注目してみたい。
鑑賞共通教材がないことにより,高等学校の教科書は 掲載作品数で選択の幅を持たせている傾向にある。それ ゆえに各作品に割く紙面が非常に限られる傾向となって いる。それがどの程度なのか,あくまで目安でしかない が,まだ鑑賞共通教材があった頃の中学校の教科書と比 較すると判りやすい。1学年ではいわゆるクラシックで あれば《春》,《魔王》,《モルダウ》を聴くことになって いたが,例えば,教育出版の『中学音楽1』(平成8年 検定済)を見ると,各曲ともにそれぞれ2〜3ページも 割かれており,楽曲解説、鑑賞のポイント,作曲者につ いて,年表,各楽章の譜例など,高校の教科書全般に比 べると非常に丁寧で詳細な説明が施されているのであ る。『中学音楽2・ 3上』(平成8年検定済)では,ベートー ヴェンの交響曲第5番関連だけで4ページもある。この ようなページ配分は他社の教科書にも同様の傾向が見ら れ,ひとつの楽曲に対してこれくらい丁寧な説明が必要 との判断がそこにあったわけである。
一方,音楽Ⅰにおけるクラシック鑑賞教材1作品に対 する旧教科書のページ配分は次の通りである。
教科書 1aは2/3〜1/6ページ。教科書 2aは1/
2ページ。教科書 3aは2/3〜1/6ページ。教科書 4aはメイン扱いの2作品のみ2ページで,その他は1/
3〜1/6ページ。教科書 5aは総合的な曲種説明と一体 化しているので単純には比較しにくいが,それを含める と1.5〜1/2ページ。教科書6aは1/2〜1/6ページ。
以上のように,どの教科書も中学校の旧鑑賞共通教材 に割かれていた分量には及ばず,より充実した資料を教 科書外から準備しようと思う教師がいても何ら不思議で はない状況といえるであろう。しかし,旧教科書以降に 教科書定価は若干引き上げられ,表1〜4に記した通り,
値上げ分については現行教科書のページ数増加に反映さ せたようである。しかし,参照可能教材⑧の楽典等やこ れまで説明が少なすぎた参照不能教材③の楽器奏法説明 にページを振り向けた教科書が 4 種で,鑑賞教材を増や したのは教科書 5bと 6bの2種のみであった。但し,曲 数を絞ってでも説明を充実させる新たな方策は見られた。
教科書 1bは3/4〜1/ 12 ページ。教科書 2bは2
/3〜1/6ページ。教科書 3aは2/3〜1/6ペー ジ。ここまでは旧教科書群と似た割合と編集・構成だが,
その他は新たな方策が見られるものである。教科書 4b は1種目のみ4ページで,他の作品は作曲家や時代背景 説明を抜くと1〜1/3ページ。教科書 5bは1作品の み4ページで,4作品に各2ページ,他の作品は1/3 ページ。教科書 6bは3作品が2ページで,他の作品は 1/3〜1/4ページ。
旧教科書群同様に各曲の掲載分量が少ないものと,該 当教科書がメインの扱いにした限られた曲に,2〜4ペー ジを配分するといった2種類の構成になっていた。前者 による授業は教科書外資料の活用が予想される。一方,
後者は豊富な説明や資料があり,前述の教科書の検定基 準にある「適切に配分」という点からすると,旧教科書 群よりも適切な構成だと思われる。ただし,掲載曲を学 習対象にしなかった場合には,増加した鑑賞用ページが 無駄になるという弊害が生じるので,前者後者の構成方 針のいずれにせよ,教科書の値上げ分をこの分野のペー ジの増加に振り向けることにはリスクがあると言える。
まとめ
教科書を取り巻く諸事情を考察した結果,教科書は変 えることが難しい複数の要素が相互に連関して規定さ れ,その結果,学校または担当教師によっては使える部 分が限られる場合のあることがわかった。学習指導要領 では教師に生徒や学校に応じて,弾力的で多様な授業計 画や教材選択を行うよう求めているからである。そして また教科書は,そういったことに対応し得る編集方法の ひとつとして,教材の選択肢を増やすという努力をして いたように観察される。しかし,ページ配分上は圧倒的
に歌唱分野を優先していることから,コスト上の限界も 手伝ってその他の分野,領域の教材配分を多くできず,
少ないといった影響を与えているように思われる。この 影響は教科書検定制度が拍車を掛ける結果となってい た。検定基準の文言が,音楽学的な情報を参照不能教材 である各作品の説明内に挿入,分散させるような結果と なって顕れていたと思われるからである。
このようなわけで,教科書の使用状況に関する問題は 教師個人の側の課題と考えるよりは,制度的な側面の方 により多くの考慮すべき課題があるように思われる。し かし,教科書が使えないといった現象がある場合でも,
それは教師や出版社,文部科学省その他の関係者それぞ れが善意で,前向きに取り組んだ結果生じている現象で あるという点を見逃すべきではないであろう。ただ,相 互の関係性においては,多少なりとも悪循環に陥ってい るという点は指摘できよう。
以上のように本論ではそれぞれの立場で検討すべき課 題について多少明らかにすることができた。教師の立場 であれば,教科書が不十分に思えた場合でも,逆に教科 書を補足する資料などを準備することで使用できるペー ジを増やすことが可能かもしれない。出版社においては,
例えば鑑賞資料であれば,教科書以外の教材を選択して も使いやすい構成・編集上の工夫を一層進めたり,各教 材の分量(特に歌の曲数)を調整することなど検討が可 能である。教科書検定基準の場合は,その文言や表現の 検討段階において,教科書の編集者がどのように理解し,
どのような教科書が完成するのかについての教育工学的 な先見の明がより一層求められよう。その際には,誰に とっても使いやすい教科書となり得るのかどうかを具体 的に想定するなどの検討が欠かせない。
最後に,音楽Ⅲの教科書について触れてこなかったが,
この科目は音楽Ⅰ,Ⅱにも増して教科書使用率に関する 課題が大きいことが最初から自明であった。周知のよう に音楽Ⅲの学習指導要領は教材選択の自由度が非常に大 きく,例えば,現行の平成 21 年告示の学習指導要領ま では,通年で鑑賞だけの授業を深化させてもよいことに なっていたからである。鑑賞分野の教材掲載割合は往々 にして少ないので,特に教科書の多くのページを無駄に してしまう可能性が高いのである。このような事情も手 伝って,ある学校では学校設定科目に変更して教科書を 使用しないで済むようにするなど,教科書問題の解決と は異なる次元で対応を図っている場合がある。学校の教 育課程,そして,生徒の学びといった目に見える形での 影響があるわけで,より使いやすい教科書となるよう,
制度全体を見直す必要があると共に,日々授業を行って いる芸術科教員においては,教科書をなるべく有効に使 用していくための工夫を継続していくことが大切である。
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表1音楽Ⅰの教科書における参照能教材の割合 *表中の各上段は前教科書、下段は現行教科書
各教科書各内容の合計ページ数 内容の分類
教科書 1a / b
教科書 2a / b
教科書 3a / b
教科書 4a / b
教科書 5a / b
教科書 6a / b
①日本・西洋音楽史の総合的または体系的な説明・資料 6.33 11.33 9.5 12.5 6 12
7 9.33 12.5 26 16 11
②日本・郷土の音楽の総合的または体系的な説明・資料 2 2.66 4
2.33 2 2 2 7 4
③作曲家や曲種に関する総合的・体系的な説明・資料 22
4 7.33 1
④諸民族の音楽の総合的または体系的な説明・資料 6 2 4 8 5.33 6
0.33 0.33 4 6 4 3.33
⑤歌曲や合唱に適した歌唱・発声方法の説明・資料 2 2 0.83 2
3 0.5 3.25 1 1.16 1.75
⑥日本語の歌・伝統的歌謡に適した歌い方・発声方法に関する 説明・資料
4 2
0 0.25 0.5 0.5 1.5
⑦創作の方法や作品の形式・分析・ソルフェージュに関する総合的な 説明・資料
4 5 4 4 8.16 6
6 13.5 6.66 3.66 4.33 7
⑧楽典・西洋の楽器や編成・指揮法・言語活動・機器の活用・
著作権に関する総合的な説明・資料
5 4 4 10 5
6 6.75 5.33 10.41 11.25 7.5 合計ページ数/全ページ数 25.33
141頁 27 132頁
21.5 118頁
28.5 117頁
56.32 142 頁
33 155頁 28.67
155頁 40 140頁
34.25 146頁
49.58 151頁
45.25 156頁
35.58 151頁 参照可能教材の割合( % )
*小数点第2位を四捨五入
18.0 20.5 18.2 24.4 39.7 21.3 18.5 28.6 23.5 32.8 29.0 23.6
表2音楽Ⅱの教科書における参照可能教材の割合 *表中の各列上段は前教科書、下段は現行教科書 各教科書各内容の合計ページ数
内容の分類
教科書 7a / b
教科書 8a / b
教科書 9a / b
教科書 10a / b
教科書 11a / b
教科書 12a / b
①日本・西洋音楽史の総合的または体系的な説明・資料 4 6 3 3 4 4
7.67 3 13.17 13 4 6
②日本・郷土の音楽の総合的または体系的な説明・資料 2 3
2 2 2
③作曲家や曲種に関する総合的・体系的な説明・資料
2.25
④諸民族の音楽の総合的または体系的な説明・資料 1 1 4 6
2 3 2 6 4
⑤歌曲や合唱に適した歌唱・発声方法の説明・資料 1 1
1 2 1 1
⑥日本語の歌・伝統的歌謡に適した歌い方・発声方法に関する 説明・資料
2 2 1
1.5 1 0.25
⑦創作の方法や作品の形式・分析・ソルフェージュに関する総合的な 説明・資料
4 4 2 2 7 6
5 6 6 8
⑧楽典・西洋の楽器や編成・指揮法・言語活動・機器の活用・
著作権に関する総合的な説明・資料
3 3 4 4 6.67 3
4.25 4.25 7 9.58 6
合計ページ数/ 全ページ数 12
105頁 14 107頁
11 86頁
11 90頁
25.67 124頁
23 107頁 21.92
112頁 22 107頁
39.17 129頁
40.58 126頁
16.25 115頁
27.5 113頁
参照可能教材の割合( % )
*小数点第2位を四捨五入
11.4 13.1 12.8 12.2 20.7 21.5 19.6 20.6 30.4 32.2 14.1 24.3 表1 音楽Ⅰの教科書における参照能教材の割合 *表中の各上段は前教科書、下段は現行教科書
表2 音楽Ⅱの教科書における参照可能教材の割合 *表中の各上段は前教科書、下段は現行教科書
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表3音楽Ⅰの教科書における非選択可能教材の割合 *表中の各上段は旧教科書、下段は現行教科書
各教科書各内容の合計ページ数 内容の分類
教科書 1a / b
教科書 2a / b
教科書 3a / b
教科書 4a / b
教科書 5a / b
教科書 6a / b
①歌や合唱の楽譜とその資料 73 74.33 51 59 65.33 70.16 74.33 55.66 61.91 55.5 62.33 50.25
②器楽曲の楽譜とその資料 14 11 15 4 14 19.83
18.5 18.41 19.41 14 8 20.08
③特定の楽器の奏法説明・資料 2 1 14 9 0.33 14.16 8.5 10.33 7.58 12 6.66 19.91
④特定の芸能・音楽分野や作曲者・演目・曲目の説明・資料 22.66 17.66 16.5 16.5 2 16.83 22 14.58 12.83 14 32.75 23.66
⑤特定の民族歌謡に適した歌唱・発声方法の説明・資料
⑥特定の創作方法のみに絞った単独の説明・資料 2
1 0.5
⑦特定の奏者や歌手・楽器・建物の口絵 3 1
1.91 1
⑧その他,必ずしも参照する必要のない単独の事項 1 1 2
3 1 4
合計ページ数 / 全ページ数 115.67
141頁 105 132頁
96.5 118頁
88.5 117頁
85.67 142頁
112 155頁 126..33
155頁 100 140頁
111.75 146頁
101.42 151頁
110.75 156頁
115.42 151頁
非選択可能教材の割合( % )
*小数点第2位を四捨五入
82.0 79.5 81.8 75.6 60.3 78.7 81,5 71.4 76.5 67.2 71.0 76.4 表4音楽Ⅱの教科書における非選択教材の割合 *表中の各上段は旧教科書、下段は現行教科書
各教科書各内容の合計ページ数 内容の分類
教科書 7a / b
教科書 8a / b
教科書 9a / b
教科書 10a / b
教科書 11a / b
教科書 12a / b
①歌や合唱の楽譜とその資料 56 48 46 44 56 54
55.5 49.25 55 44.5 48 39.08
②器楽曲の楽譜とその資料 11 13.33 11 14 16 14
9 17.25 18 16.34 12 19.5
③特定の楽器の奏法説明・資料 1 1.66 5 7 2.33 2
1.25 1.5 6 7.83 4 6
④特定の芸能・音楽分野や作曲者・演目・曲目の説明・資料 22 27 13 14 24 11 22.33 17 10.83 16 26.75 17.67
⑤特定の民族歌謡に適した歌唱・発声方法の説明・資料
⑥特定の創作方法のみに絞った単独の説明・資料
0.75 4
⑦特定の奏者や歌手・楽器・建物の口絵 3 3 1
2
⑧その他,必ずしも参照する必要のない単独の事項 2
2 2 3.25
合計ページ数/全ページ数 93
105頁 93 107頁
75 86頁
79 90頁
98.33 124頁
84 107頁 90.08
112頁 85 107頁
89.83 129頁
85.42 126頁
98.75 115頁
85.5 113頁 非選択可能教材の割合( % )
*小数点第2位を四捨五入
88.6 86.9 87.2 87.8 79.3 78.5 80.4 79.4 69.6 67.8 85.9 75.7 表3 音楽Ⅰの教科書における非選択可能教材の割合 *表中の各上段は前教科書、下段は現行教科書
表4 音楽Ⅱの教科書における非選択教材の割合 *表中の各上段は前教科書、下段は現行教科書
注
1)公立の小・中学校はいくつかの市町村を合わせた「採択地区」
毎に選考審議が行われるので,個々の教師が直接教科書を選 ぶ機会はない。一方,高等学校の場合,公立は使用希望案を各 学校が所管の教育委員会に出して決定され,また,国立・私立 については校長に採択の決定権がある(教科書協会 2011 p.6)。
しかし,学校の設置者がいずれであっても,高等学校は各教科 担当教員が各社の教科書の中から使用したいものを直接選び,
それを校長が決済しているのが通例である。
2)本研究はかつて筆者が高等学校に勤務していた際に行った個人 研究をベースにしたもので,勤務校の校内研修用の冊子に掲載 したことがあるが,それは手製による未公刊・未発表のもので ある。また本稿は最新データに基づいて新たに論述しており同 じ内容ではない。
3)参照不能教材に分類した教材であっても,その教材をメインに 授業を行う教師は当然いる。ここで明らかにしたいのは,あく まで「誰にとってもそのページは使用が可能か」であり,他の教 材選択をした場合に使用できるページか否かというものである。
全国的な実際の使用率を明らかにしようというものではない。
4)教科書の発行は文部科学大臣から毎年許可を受ける必要のあ ることから,同一内容のものでも発行年が数種類にも及び,教 科書を特定する際に混乱する。したがって,ここでは検定年に よって教科書を特定した。
5)教科書の発行に関する臨時措置法により,教科書の定価は文 部科学大臣の許可を経て次のように決められている。最新の教 科書(平成 30 年度)の定価と,( )内には前学習指導要領下 の教科書(平成 19 年度)を記す。小学校各学年= 215(194)円,
中学音楽1= 245(223)円,中学音楽2・3= 487(445)円,
器楽合奏= 272(248)円,高校音楽Ⅰ= 470(440)円,音楽
Ⅱ及びⅢ=各 315(300)円。
引用・参考文献
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教科書協会(2010)『平成 22 年度 教科書発行の現状と課題』教 科書協会。
教科書協会(2011)『教科書の質的向上を目指して』教科書協会。
杉江淑子(2009)「子どもや若者の『聴く力』と読譜の役割」『音 楽教育実践ジャーナル』7 巻 1 号 pp.6-15。
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文部科学省(2018)『高等学校学習指導要領解説 芸術(音楽,美術,
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micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/07/13/1407073_08.
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結城誠伍(1998)「授業での合唱のキーワードは『式典』『輪唱』『ア・
カペラ』『響き』」『授業での合唱 学年別指導と選曲のポイント』
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吉富功修・三村真弓(2009)「小学校学習指導要領・音楽科に示 された音符・休符・記号等の知識の習得状況―小学校音楽 科における学力の一環として―」(大会実行委員会企画 基調 提案)『音楽教育学』39 巻 2 号 pp.29-31。