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分担研究報告書

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Academic year: 2021

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分担研究報告書 

 

油症患者における歯肉色素沈着と残存歯に関する検討   

研究分担者    川崎  五郎  長崎大学大学院医歯薬学総合研究科          吉冨  泉    諫早総合病院歯科口腔外科   

 

研究要旨  油症患者において口腔粘膜色素沈着は現在でも多くみられる症状の ひとつである。今回、平成 31 年度の長崎県油症検診において、特に上下顎前歯 部について口腔粘膜色素沈着および残存歯数について重点的に精査し解析を行 った。残存歯数に関しては上顎が平均 4 歯、下顎が平均5歯で、比較的残存歯が 多かった。歯肉色素沈着に関しては、上顎では色素沈着がみられた者が 61 名で みられなかった者が 88 名であった。下顎では色素沈着のみられた者が 84 名で、

みられなかった者が 65 名であった。今回の結果では、上顎前歯部においては残 存歯数と歯肉色素沈着の程度との間に相関性が認められた。今後さらに症例数を 増やし他の因子との相関についても検討する必要があると思われた。 

  A.研究目的     

油症患者における口腔領域の症状は多 彩で、発症当初より、口腔粘膜の色素沈着、

永久歯の放出遅延、歯の先天性欠損、高度 の歯肉炎や歯周炎の発症などが報告されて いる。特に口腔粘膜色素沈着は主症状とし て挙げられている。油症発症当時より現在ま で油症検診における油症発症地区の歯科 検診として、毎年、歯周疾患やカリエス検査 とともに口腔粘膜の色素沈着について検査 しているが、現在も多くの患者において歯肉 や頬粘膜を中心に色素沈着が認められる。

特に歯肉に色素沈着が認められる傾向に あるため、今回は、上下前歯部の歯肉を重 点的に複数の歯科医師で検査し、色素沈着 の残存歯との関係について検討した。 

B.研究方法     

  平成 31 年度長崎県地域における油症検 診において、通常の歯科検診を行うことの できた患者について、3 名の歯科医師で上 下顎前歯部歯肉の色素沈着について各歯 ごとに検査し、同時に残存歯の確認も行っ た。それらのデータをもとに色素沈着の程 度と残存歯との関係について検討した。 

 

(倫理面への配慮) 

  本研究の解析結果においては、個人が特 定できるようなデータは存在しない。 

 

C.研究結果   

  平成 31 年度長崎県油症検診で歯科検診 を行った患者で歯科検診を受診し、データ の採取が可能であった者を対象者とした。

内訳は長崎地区、五島福江、奈留、玉之浦 地区の計 149 名であった。性別では男性 80 名、女性 69 名で、年齢別では 29 歳か ら 89 歳で平均 66 歳であった。残存歯数に 関しては上顎が平均 4 歯、下顎が平均5歯 であった。歯肉色素沈着に関しては、上顎 では色素沈着がみられた者が 61 名、みら れなかった者が 88 名であった。下顎では 色素沈着のみられた者が 84 名で、みられ なかった者が 65 名であった。残存歯数と 色素沈着との相関に関しては、下顎では有 意差は認められなかったが、上顎では色素 沈着の少ないものが歯数も少なく、有意差 が認められた。年齢と色素沈着に関しては、

下顎においては年齢の高いほど有意に色 素沈着が少なかったが、上顎では有意差は 認められなかった。 

(2)

認定の有無と色素沈着の有無について は、認定者に多く色素沈着がみられる傾向 にあったものの明らかな相関性は認めら れなかった。 

D.考察 

油症発症当時、さまざまな口腔症状が報 告されているが、現在でも、多くの油症患 者に口腔粘膜色素沈着が認められる。われ われが調査した 2016 年度の歯科検診にお いても統計学的に有意に油症患者で口腔 粘膜色素沈着が多く発現していた。 

頬粘膜や舌、軟口蓋などの口腔軟組織と 歯が関係する歯肉とは色素沈着の発現状 態が異なる。以前、口腔粘膜色素沈着の有 無と義歯装着の有無とで検討したが、両者 に統計的有意差は認められなかった。しか しながら総義歯の患者において、頬粘膜や 口唇に色素沈着がみられる場合はあった が、顎堤粘膜には色素沈着があまりみられ ず、歯の喪失期間が長くなると色素が消失 するのか、あるいは義歯床による刺激が色 素の消失と関係するのか検討が必要と思 われた。 

そこで今回は残存歯と色素沈着との関 係をみるために歯肉の色素沈着について 検討した。検診現場での歯科検診は歯科専 用チェアーではなく、通常の椅子で行われ、

そのため口腔内を照らすための光が十分 ではなく、診察を行う際に目視が困難な場 合がある。また、非常に限られた時間内に 他の歯科的疾患も診査するため見落とし 等が生じる可能性がある。そのため、今回 は、光が届きやすく視診が容易な上下前歯 部(左右 3 番から 3 番)に限定し、さらに 正確度をあげるため、複数の歯科医師で検 診をおこなった。 

今回の結果では、例年に比べて歯肉の色 素沈着の発現数が高い数値であった。統計 学的解析では、特に上顎では色素沈着発現 と残存歯数との間に相関性が認められた。

下顎では統計学的有意差はなかったが、上 下顎ともに、欠損歯部位に色素沈着が認め

られなかったのは特徴的であった。ただし、

今回の対象者は、比較的残存歯の多い人が 多かったため、今後は臼歯部を含めた検討 が必要かと思われる。 

今回は、認定者と未認定者で有意差がみ られなかった。過去の口腔粘膜での色素沈 着についての検討では、認定者が未認定者 に比べて多い傾向にあり、血中 PCB 濃度と の相関が認められている。今回の結果で有 意差が出なかったことについては、未認定 者が少なかったこと、色素沈着は全て陽性 としたため、金属などによる影響が排除で きなかったこと、などが原因としてあげら れる。今後は、生活習慣や慢性疾患等の有 無などの影響についても検討する予定で ある。 

E.結論 

油症患者における上下顎前歯部歯肉の 色素沈着と同部位の残存歯について検討 を行った。歯肉粘膜色素沈着と残存歯との 間には一定の相関性が認められた。 

F.研究発表  学会発表 

なし   

G.知的財産権の出願・登録状況 

(予定を含む。)  なし 

 

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