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    西ドイツの上買上税

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(1)

    西ドイツの上買上税

      中  村  芙  雄

      一  は し が き

 西ドイツの売上税は同国の租税体系上きわめて重要な地位を占めている︒それは︑ワィマール時代には﹃ドィ       ︵註︱︶       ︵註2︶ツ国財政の脊椎﹄といわれたが︑第二次大戦後においても連邦最大の財源である︒他方それは︑一九二〇年代に        ︵註3︶ヨーロでパの多数の国々に姿を現わした売上税の先駆でもあった︒

 そして︑その地位の重さに比例してそれをめぐる問題もまた複雑で大きい︒一九五三年にはいわゆる﹃有機的

税制改革﹄が提案されたが︑そのさいこの租税については付加価値説方式が勧告された︒しかし現実の事態がこ

の勧告の通りに進んでいるようには思われない︒

 本橋では︑まずこの租税の発端と変遷を︑ついで現状を一瞥し︑最後にその問題点を考察したい︒

西 ド イ ツ の 売 上 税

‑13 ‑一一

(2)

       二 変    遷

 商取引に対する課税という意味での売上税の歴史は非常に古いといわれて

いるが︑いまここでとりあげる売上税は︑一九一六年︑第一次世界大戦に伴

う財政窮乏の打開策のひとつとして︑帝国戦時税︵Reichskriegssteuer︶等と

ともに採用された商品売上印紙税CWarenumsatzstempel︶にはじまったも

のである︒この租税は︑営業者については商品売上高の申告書に︑非営業者

については物品供給の代金受領書に︑それぞれ供給対価の○・一が相当額の

印紙を貼付して納付するものであった︒ここで営業者の商品売上とは︑有体

物の有償譲渡であって︑サービスの売上を含まないし︑また商品の輸入と輸出とは売上税の適用外とされた︒

ところでこの租税の収入状況は︑当初の企画に反してまったく不振であった︒すなわち︑一ヵ年の見積二億二︒

      ︵註3︶五〇〇万マルクに対して︑六ヵ月間に二︑四〇〇万マルクの収入しかあげ得なかったのである︒

 一九一八年には︑第一次大戦下最大の増税の一環として︑商品売上印紙税が廃止され︑それにかわって独立の

売上税︵LJmsatzsteuer︶が新設された︒税率は従来の〇・一%から〇・五%にひきあげられ︑さらにとくに定め

られた奢作品の小売売上に対しては一〇%の高率が適用された︒また課税物件に︑あらたにサービスと営業用物

14 ■

(3)

品の自家消費が加えられたが︑商品の輸入および輸出は依然として課税の範囲外であった︒この租税は発足にあ

たってその施行期間を一九一八年八月一日から一九二三年十二月三十一日までと限定されていた︒しかるに施行

後間もなく︵十一月十一日︶終戦をむかえても︑また施行斯聞か満了してもそれは廃止されなかった︒アダム・

スミスもいうように︑戦時中に課された租税が︑戦後に廃止されることはまことに稀であるといわなければなら

ない︒  一九一九年にはエルッベルガーによる税制改革がおこなわれた︒そのさい売上税については︑まずその税率が

一・五%にひきあげられ︑さらに製造奢作品税︑小売奢作品税︵いずれも税率一五%︶および特殊売上税︵税率

一〇%︶が設けられ一九二〇年から実施された︒特殊売上税というのは︑広告引受税︑宿泊税等である︒

 戦後のインフレーションの進展に伴って︑一九二二年には売上税の税率は二ガにひきあげられ︑同時に前納制

度が採用された︒一九二四年初めに︑その税率はさらに二・五がまでひきあげられたが︑かえって税収を減少さ

せたので︑同年末には二%に︑さらに二五年には﹂・五%︑一・二五%を経て︑一%に︑翌二六年には〇・七五

%にひきさげられた︒また二つの奢侈品税はその税率が一九二四年には一〇が︑二五年には七・五%となり二六

年には廃止されるにいたった︒それ以後五年間この状態がつづいたが一九三〇年には歳入不足を補填するために

種々の増税がおこなわれた︒売上税の税率は〇・八%に高められ︑同時に一〇〇万マルク以上の小売売上に対し

       ︵註10︶ ては一・三五%の超過売上税が課されることになった︒

 一九三二毎には︑不況のために財政状態はますます逼迫し︑それに伴って売上税にも大串の修正が加えられ

た︒すなわち︑まず︑従来売上税の適用を免除されていた外国商品の輸入に対して︑原則として売上調整税が課

‑15一一‑

(4)

されることになり︑売上税の一般税率は二%に︑超過売上税のそれは二・五%にひきあげられた︒ただし︑農産

      ︵註11︶物については︑一般および超過の税率がそれぞれ〇・八五%および一・三五%と定められた︒

 一九三四年︑世界的不況のもとで︑租税収入が減少傾向を示しつつあるとき︑ナチス政府によって注目にあた

いする税制改革がおこなわれた︒そのさい︑売上税については︑卸売売上に対する税率だけが〇・五%にひきさ

 ︵註12︶       ︵註13︶げられ︑また独立の競争企業と垂直的結合企業との間の負担均衡のための措置が講じられた︒これは売上税の本

質上とくに注意すべき点である︒この改革以後︑第二次世界大戦の終末まで︑売上税には重要な変更はなかった︒

このような変遷を経て︑売上税収入は︑第二次世界大戦直前の一九三八年には三四億ライヒス・マルク︑租税収

入総額の一九%を占めたが︑戦時中には商取引の減少に伴い︑一九四二〜四三年度には四五倫ライヒス・マルク︑

一三%︑四三〜四四年度には四二億ライヒス・マルク︑一二%に低下した︒

 第二次大戦後の改正は︑一九四六年︑まず連合国対独管理理本会規則によっておこなわれた︒今回の改正税率

は一般商品については三%︑農産物については一・五が︑卸売売上については〇・七五が︑そして年間一〇〇万

      ︵註16︶マルクをこえる小売売上については三・七五%と定められた︒

 一九四八年の通貨改革以後︑減税の傾向がみられたが︑一九五〇年を境として財政規模は拡大にむかい︑それ

に伴って一九五一年には︑法人税とともに売上税についても改正がおこなわれ︑こんにちに至っている︒現行売

上税の骨子はつぎに示す通りである︒

一一16‑

(5)

一一‑17‑

(6)

        三 現    状

 この租税は︑法律上は流通税であって︑その課税物件は︑

 ︵イ︶ 企業者が国内において自己の営業の範囲内で対価をえておこなう引渡しおよびその他の給付︵法第一条第

   一項︶

 ︵口︶ 自家消費︵法第一条第二項︶ならびに

 ︵ハ︶ 外国よりの輸入︵法第一条第三項︶

の三つである︒︵ロ︶の自家消費というのは︑企業の生産物を企業の外部で︑企業者自身の個人的な目的のために消

       ︵註2︶費することであって︑企業の内部で企業目的のために消費するばあいは︑原則としてこれに該当しない︒㈲の輸

入に課される租税は︑法律上は売上税と異なり︑売上調整税︵LJmsatzausgleichsteuer︶とよばれる一種の関税で

あって︑売上税法第十五条の規定によって︑消費税として取扱われ︑その徴収は税務署によってではなく︑税関

         ︵註3︶によっておこなわれる︒

 この租税の納税義務者は企業者であり︑この租税負担の公然の転嫁は禁じられている︵法第十条J︒しかし多

くの論者はこの租税の最終的負担者が企業者ではなく︑企業者の提供する商品もしくはサービスの購買者である

      ︵訃4︶ことを認めている︒

一一18一一‑

(7)

 課税標準は原則として企業が収得した対価︑すなわち現実の収入であるが︑自家消費のばあいにはその地方で

おこなわれている小売価格である︒輸入取引のばあいには関税定率法︵Zolltarifgesetz︶等の規定によるが︑お

おむね商品の取得価格または輸入対象の価値を課税標準とする︵法第五条︑第六条および関税定率法第六条︶︒

 税率は一般商品およびサービスの売上に対しては四%と定められている ︵法第七条第一項︶︒ただしつぎのよ

うな例外がある︒

 税率が加重される場合︑

 ︵イ︶ 製造業者が直接におこなう小売売上に対しては三%の付加悦︵一般商品の小売売上については合計七%の

  課税になる︒則規第五十八条︶

 ︵口︶ 自家製捩糸を原料として織物を製造する繊維企業の製品売上に対しては︑その捩糸の価値の四%の付加机

   ︵規則第五十九条︶

 税率が軽減される場合︵法第七条︶︑

 困 食用脂肪︑砂糖︑碾割麦および麺類の引渡しと自家消費については三%︵法第七条第二項第一号︶

 ㈲ 林産物︑穀物︑小麦粉および粉製品ならびに生乳の引渡しと自家消費については一・五%︵同第二項第二

  号aおよびb︶

 ㈲ 一般商品の卸売売上については一が︵同三項︶

 租税が免除される場合︑

 困 ︵免税表所載の︶原料および半製品の輸入とすべての輸出﹁法第四条第一〜三号︶

‑19一一一一

(8)

回 とくに定める重要原料および半製品の卸売売上︵同第四号︶

H 公法上の団体によるガス︑電気および温熱の供給︑ならびにすべての水道︵同第五号︶

圖 連邦のおこなう郵便および電信業務︵放送を含む︶の売上︵同第七号︶

困 売上が八万ドイツ・マルク未満の企業者について︑その売上のうち八︑〇〇〇ドィツ・マルク︵法第七条a︶

囚 その他︵この中には︑売上税以外の流通税を課される売上や︑土地の小作︑賃貸等がある︒第四条の各号︶

租税還付のおこなわれる場合︵法第十六条︶︑

困 輸出業者に対する還付﹁同条第一項︶︒輸出業者が商品の購買にさいして支払った売上税を還付するために︑

 業者が輸出によってえた対価︵規則第七十三条第一項︶のうちその九二%について︑つぎのような率で担税

 還付がおこなわれる︵規則第七十四条第一項︶︒

  穀物︑穀粉︑粗皮︑糠︑生乳等︵法第七条第二項第二号b︶の場合︑一・五%︵対価総額の一・三八が

 92 .。 1.5    1.38 100     10︷︸1︼Rご

  食用脂肪︑砂糖等︵法第七条第二項第一号︶の場合︑三が︵対価総額のニ・七六妬心作×糾=頻ご

  その他の商品︵一般税率︶の場合︑四が︵対価総額の三・六八無心い×紅白喧︶

 なおこの還付は売上調整税にも適用される︵規則第七十四条第三項︶︒

㈲ 輸出に対する還付︵法第十六条第二項︶︒輸出業者たると製造業者たるとを問わず︑先行する取引段階です

 でに商品の生産費に算入されていた売上税および売上調整税の一部分を還付しようとするもので心匹︒還け

‑20‑

(9)

  の率は商品の種類によって〇・五︑一・〇︑二・〇および三・〇%の四段階にわけられる︵規則第七十九条︶

  が︑その算定の基準は︑困のばあいと同じく業者がえた対価である︵規則第七十八条︶︒

 売上調整税の課税対象となる輸入商品の価格は︑関税法上の諸規定︵関税定率法︑従価税規則等︶によって確

定される︒売上調整税はこの意味での標準価格に対して四ガと定められているが︑つぎのような例外がある︒

 軽減税率が適用される場合︑

 困 食用脂肪︑砂糖︑碾割麦︑麺類に対しては三が

 ㈲ 生乳︑穀物︑穀粉︑粗麦︑糠に対しては﹂・五が

 加重税率が適用される場合︑

 天産物︑栄養食品︑嗜好品ならびに中間製品および完成製品に対しては六%︒

 輸入商品が国内でさらに取引される場合には︑その売上に対して売上税が課される︒

一一21‑

(10)

       四 売上税一般

 以上にみたドイツ売上税について︑その特徴をあきらかにするために︑ここで売上税一般について若干の考察

をこころみておこう︒

 売上税とはすべての商品もしくは広範囲にわたる商品の取引を課税物件とし︑その売上高または売上高に附随

する要素︑たとえば売上から生じた収入を標準として︑商品の供給者が納付すべき租税である︒しかし︑それは︑

同じく売上高を課税標準とするものであっても︑営業税や事業税等とは異なり︑最終的には供給者たる企業者に

よって負担さるべきものではない︒すなわち︑売上税はほんらい一般的消費税であって︑担税者は課税商品の消

費者である︒したがって︑売上税の負担がその本来の担税者に帰着するためには︑その租税が完全に転嫁されな

     ︵註2︶ければならない︒

 こんにち実際におこなわれている売上税には三つの形態がある︒その第一はいわゆる累積的全段階税

Ckumulative AUphasensteuer︶ で︑これは生産および分配の過程で取引がおこなわれるたびごとに︑総売上を

‑22‑

(11)

標準として課される租税である︒したがってこの場合には︑同一の商品について売上税の負担が累積することに

なる︒これに対して第二は︑単一段階税︵einphasige Umsatzsteuer︶であって︑商品が生産および分配の過程

を通過する間におこなわれるいくつかの取引のうち︑いずれか一つだけに課税するものである︒たとえば﹃生産

税﹄とか﹃庫出現﹄などとよばれる製造業者に対する売上税や︑最終卸売にだけ課される卸売売上税︑あるいは

小売売上税等は︑それらが単独にしかも一度かぎり適用される場合にはこの範疇に属することになる︒第三は︑

いわゆる﹃附加価値税﹄︵value added tax。 la taxe sur la valeur ajoutee"︶である︒これは生産および分配の

過程でおこなわれる一切の取引を課税物件とするという点では全段階税であるが︑各企業の生産および分配活動

によって新たに附加された価値︵純売上︶だけが課税標準とされるという点で︑第一のものとは異なる︒そして

 ﹃種々の段階で︹商品に新たに︺附加される価値の総和は︑︹その商品の︺小売販売価格に等しいから︑商品に

対するこの租税の負担は全体としては︑︹単一段階税としての︺小売売上税に等しい﹄ことになる︒

 この分類によると︑ドイツの売上税は累積的全段階税である︒この租税は二般につぎのような長所をもつとさ

れている︒田一定の税率で最大の収入をもたらす︒いいかえれば︑最低の税率で一定の収入をあげることができ

る︒岡租税の衝撃︵impact︶を少数の企業に集中せず︑種類を異にする多数の企業に分散する︒問すべての取引

に対して均一の税率が適用される場合には︑その行政が大いに簡単である︒要するに︑国庫的見地からは大いに

すぐれたものということができる︒

 しかし︑その反面つぎのような欠点も指摘されている︒田商品による負担の不均衡︒②それに伴なって生じ

る輸出入商品に対する租税上の取扱いの困難︒圓企業間の競争に対する干渉︵垂直的企業結合の促進︶︒これら

‑23 −一一

(12)

の欠点はすべて︑商品に対する売上税負担の累積から生じるものである︒すなわち︑売上税が商品の価格に算

入されて︑購買者に転嫁されるものとすると︑﹃ただ一つの生産段階における租税負担が価格に入りこむだけで

はなく︑先行する生産および分配のすべての段階において転嫁された租税額もまた価格に入りこむことになる︒

この租税の﹁雪崩作用︵Lawmenwirkung︶﹂の必然的結果として︑つねに租税そのものが再び計算の基礎とな

り︑またそのほかにしばしば同一もしくは別個の租税の基礎となる﹄のである︒以上の諸点のほかさらに︑㈲分

配政策的効果が乏しいとか︑圈景気政策上有効でないとかいう欠点も指摘されているが︑これらの二点は累積的

全段階税に特有のものではなく︑売上税一般についていいうることである︒

       五 間  題  点

いま述べた諸点を手がかりとして︑ドイツ売上税のもつ問題のいくつかを考察してみよう︒

一一24‑

(13)

    I 商品による負担の不均衡

 まず欠点の田︑商品による負担の不均衡について述べよう︒これについては二つの場合が考えられる︒はじめ

に同一種類の商品についてみると︑それが生産および分配の過程で通過する取引の数と順序とが異なるにつれ

て︑その価格に含まれる売上税の割合に差異が生じる︒売上税の標準税率が三%のとき︑棒鋼の価格に占める売

上税の割合は︑その生産物が生産および分配の過程でいかなる径路を通ったかによって︑五・八%ないし一一・

三布となり︑その間に著しい差異のみられたことが報告されている︒したがって同種の商品を同一の価格で購買

する数人の消費者の負担する売上税額は︑必ずしも等しくないことになる︒

 つぎに︑異種の商品についてみても事情は同じである︒すなわち︑商品の価格に含まれる売上税の額は︑それ

ぞれの商品が通過する生産および分配の過程における取引の数と順序との相違に伴って︑一般税率のおおむね一

倍半ないし四倍であるとされている︒

 一般に商品の生産費の大部分が労働賃銀によって構成され︑その商品が通過する取引段階の数が少ない場合に

は価格の含む売上税額は小さい︒その実例は主要食糧である︒これは他の商品と比較して加工されることが少な

く︑生産者によって直接に販売されることも稀ではなく︑したがって通過する取引段階の数が少ないので︑たと

え軽減税率が適用されなくても︑その価格に含まれる売上税額は比較的小さいはずである︒一九五二年にはミル

ク︑パン︑砂糖およびパターの小売価格に占める売上税の割合は︑それぞれ五・四︑五・七︑七・四︑および七

・五がであったことが報告されている︒他方︑多数の取引段階を通過し︑したがってその価格に多額の売上税が

含まれるものの実例は︑精密機械工業製品と光学工業製品である︒

・ 25

(14)

    Ⅱ 輸  出  入

 ところで︑これらの工業製品は︑その生産額のかなり大きな部分が輸出され︑それに対して租税の還けがおこ

なわれる︒だが﹃個々の場合についての︹売上税の︺実質的負担は知られていないか︑あるいは確認が困難で︑

しかも絶えず変動している﹄から︑輸出商品に賦課された税額を正確に把握して還付することは不可能である︒

現行の二つの租税還付は︑実際上︑輸出商品の売上税負担のきわめて一部分を補償しうるにすぎない︒このこと

は︑世界市場におけるドィツ企業の競争力を︑﹃類似の租税を課されないアメリカやイギリスの企業︑また非常

に有利な還付現制度をもっているフランスの企業と比較して﹄︑とくに弱めることになる︒

 他方︑輸入についてみると︑輸出の場合と同じ理由で︑輸入商品に対して国産品に対すると同程度の課税をお

こなうことは困難であり︑現行の売上調整税のもとでは︑前者の租税負担は後者のそれのおよそ半分で︑したが

       ︵註9︶ って外国商品の輸入が国内の生産を圧迫する傾向の見られることが指摘されている︒完成商品が輸入される場合

      ︵註10︶ にこの傾向がとくに著るしいことはいうまでもない︒

    Ⅲ 競争に対する干渉

      ︵註11︶ つぎに︑欠点の圓をみよう︒この点について︑ジャウプ勧告はつぎのように述べている︒﹃取引高机は売上税

のうちで最も洗練されないものの一つである︒それは自己の原料で仕事を始め︑最終製品を生産し︑これを販売

する一貫企業にとっては有利である︒原料生産者︑製造業者︑卸売業者をきむ独立の競争企業は︑取引高税の下

においては不利となる︒というのは二方一貫企業は︑税金をただ一度支払えばよいのに況して︑彼等は取引をす

       ︵註12︶ るたびごとに税金を支払わねばならぬからである﹄と︒さらに例をあげてつぎのように説明している︒﹃ある原

‑一一26 −‑−

(15)

料生産者がその原料を十万円で小製造業者に販売したとする︒その製造業者はこの原料を加工して最終製品と

し︑これを小卸売業者に五十万円で販売した︒卸売業者はその商品を小売業者に六十万円で売り︑小売業者はこ

れを公衆に百万円で売った︒・I参・I●ssIss・・es取引高税は十万円︑五十万円︑六十万円︑および百万円の合計二百二

十万円につぎつぎと賦課されていく︒今これらの企業が一つの大企業と競争していたとする︒その大企業は垂直

的に結合されたものであり︑自ら原料生産︑加工︑卸売および小売を一手に行っているとする︒大企業はわず

かに百万円に対する取引高説を納めるにすぎない︒取引高税の下においては︑このことは決定的な競争の優位

である﹄︒

 この場合︑売上税負担はその本来の意図通り完全に消費者に転嫁され︑かつ市場価格については一物一価の法

則がおこなわれるものと仮定しよう︒そうすると︑独立の競争企業は全体として︑彼等が納付した売上税額︑す

なわち前の例では二百二十万円に対する課税額︵これをAとする︶を過不足なく︑価格を通じて消費者から取り

立てることができる︒他方︑垂直的結合企業はただ一回分の︑前の例でいえば百万円に対する課税額︵これをB

とする︶を消費者から取り立てうるだけではなく︑この額と独立の競争企業が納付する税額との差額︵Aマイナ

スB︶を自己の追加的収益として消費者から吸いあげることができる︒この収益は︑あきらかに何らかの経済的

理由に基づくものではなく︑売上税の存在によってはじめて生じるものである︒そこで︑このような売上説は︑

ただ単に独立の小企業に重い負担を課するだけでなく︑生産および分配の分野において︑それに対応する調整︑

すなわちほんらい非経済的な垂直的企業結合を生じさせる可能性をももっている︒

 しかも税率が高ければ高いほど︑この可能性は大きいわけである︒この点について︑ジャウプ勧告は︑﹃この

‑27‑

(16)

不公平すなわち経済的危険は︑税率が一がであるかぎり︑それが若干のばあいにおいては重要であるけれども︑

甚だしくはない︒しかしもし税率が二ガにひきあげられたとするならば︑一貫企業をさらに強大ならしめるであ

ろう﹄と述べている︒この企業結合促進作用の程度を知ることははなはだ困難であり︑かつそれに関する科学的

研究は︑ドイツでは全くおこなわれていないといわれているが︑ドイツ売上税の税率が四%であることを考えれ

ば︑その作用が無視しえないものであることはたしかである︒

 ところで︑これまでは売上税の完全な転嫁を前提として議論をすすめてきたのであるが︑﹃おそらくより重要

なことは︑納税者たる営業者が︑税金を転嫁することができないときに生じる不公平であろう︒﹄たとえば︑あ

る企業が総売上の一〇ガの利潤をえているものとせよ︒この場合総売上に対する四ガの課税は︑もしそれを誰か

他の者に転嫁することができないとすれば︑彼の純所得に対して四〇%の負担となる︒他方︑総売上の二〇%程

度の利潤をうる企業にとっては︑この四ガの課税は︑その所得に対して二〇ガの負担となるにすぎない︒そし

て︑一般に結合企業は独立の競争企業に比べて︑ヨジ大きい利潤を収めるものであるから︑同一の率で売上税が

賦課され︑それが転嫁しない場合には︑前者の負担は後者のそれよりも軽いのが普通である︒ただ︑この場合に

は︑売上税は一般的消費税たるその本質を逸脱して︑直接税たる事業税もしくは営業税に転化してしまっている

ことを忘れてはならない︒

 西ドイツの売上机が実際上完全に転化されていないことは︑何よりもつぎに述べる付加机によって示される︒

すなわち︑ほんらい担税者たるべき消費者の負担をではなく︑納税義務者たる企業の負担をひきあげるための付

加税が課されることは︑売上机の異質化︑直接税化を物語るものである︒そして売上税は︑こんにちすでに売上

一一‑28 一一一一

(17)

高という客観的標識による一種の企業税となり︑法人税︑所得税あるいは事業税の範疇に属するものとすらいわ

  ︵註20︶れている︒したがって︑この租税が企業間の競争あるいは結合に対していかなる作用をもっているかは︑右に述

べたところから容易に推察しうるであろう︒

    Ⅳ補足的措置

 このような競争に対する売上税の干渉的作用︑および企業に対する結合促進作用を除去もしくは緩和するため

に︑いくつかの方策がとられている︒その主なものは︑田製造業者付加机︑岡結合的繊維企業に対する付加税︑

および圓﹃組織関係﹄による負担の軽減である︒これらのうち岡と圓は一九三四年ナチス政府によっておこなわ

れた税制改革に由来するものである︒

 まず製造業者付加悦は︑一九三九年以来おこなわれていた超過小売売上税にかわって︑一九五一年に創設され

た︒これは︑製造業者が経営する小売部門の売上が年額三六万ドイツ・マルクを超える場合︑その超過売上に対

して三%の率で課される付加税であって︑製造ー小売という企業結合によって生じる租税上の不均衡を是正し

ようとするものである︒

 つぎに繊維産業における付加悦についてみる︒自家製捩糸を原料として織物を製造する企業は一種の結合企業

であって︑税法上特別の規定がなければ︑単独経営による紡績企業や織物企業よりも︑売上税負担の点で有利で

あることはいうまでもない︒さらに生産過程におけるこのような結合企業に小売部門が結合すると︑企業間の租

税上の優劣は一層はなはだしくなる︒そこで︑この不均衡を是正するために︑一九三四年ナチス政府は︑結合企

業における紡績︑織物および小売の各部門をそれぞれ独立の企業とみなして売上税を賦課することを定めた︒現

‑29 一一

(18)

在は紡績部門と織物部門とを有する結合企業の売上に対しては四万の付加机が課され︑その企業がさらに小売部

門をも有する場合には︑前述の製造業者付加税が併課される︒

 右に述べた二つの付加税は︑実際上十分な効果を期待しうるものではないとしても︑それが前述の競争干渉作

用ないしは企業結合促進作用を抑制する方向にはたらくことはあきらかである︒だが︑つぎにあげるいわゆる

      ︵託23︶﹃組織関係︵organschaft︶一はこれらの付加税とは異なり︑企業結合促進作用をもつものである︒

 いま二つの企業が︑金融上︑経営上ならびに組織上密接な関係をもち︑かつそのうち法人たる一つの企業が自

然人もしくは法人たる他の企業に対して︑﹃独自の意志をもたない﹄ほど強く従属しているならば︑そこには﹃組

織関係﹄が存在するものと認められ︑その二つの企業間の取引は売上税を免除される︒この﹃関係﹄は事実上一

九二〇年以来存在していたが︑一九三四年ナチス政府の税制改革のさいに法制化され︑第二次大戦後におよん

だ︒一九四六年に︑非カルテル化計画の一環として︑連合国対独管理理事会規則によって廃止されたが︑一九五     ︵註24︶七年に復活した︒

 この措置の意図は︑それによってはなはだしい企業結合の傾向を避け︑さらに企業結合による租税の回避を減

少させるという点にあるもののようである︒だが実際の作用はこの意図とは逆であって︑それゆえに第二次大戦

後廃止されたのであるが︑こんにち再び復活したことは︑まことに﹃奇妙﹄といわなければならない︒

       ︵註26︶ このように相反する作用をもつ付加税と﹃組織関係﹄とが同時に存在することはとくに注意すべき点である︒

    V 逆 進 性 な ど

 欠点の㈲︑すなわち分配政策的効果が乏しいということは︑ヨリ具体的にいえば︑その租税負担が逆進的だと

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(19)

いうことである・負担の逆進性は︑この租税についてだけでなく一般に間接課税についていわれることである

が︑ここでは累積的全段階税の逆進性だけに言及する︒取引高説の逆進性について︑シャウブ勧告はつぎのよう

に述べている︒﹃取引高税は︑あらゆる種類の売上税のように︑消費者の個人所得を計算に入れると︑貧者に非

常に重く当り︑累進的というよりもむしろ逆進的である﹄と︒

 ドイツの売上税についても︑同様の批判がみられることは当然である︒しかしそれは余り有力でないようであ

る︒というのは︑デューの引用するところによると︑ドイツにおける売上税負担は逆進的ではなく︑軽度ではある

       ︵註28︶がむしろ累進的だとされているからである︒この累進があらわれる理由の一つは︑一般に低所得層ほど食糧に対

する支出が大きく︑かつ︑食糧に対しては軽減税率が適用されているからであるとされている︒だがすでにみた

通り︑たとえ軽減税率が適用されなくても︑食糧の売上税負担は軽いはずである︒一般にこの租税の税率の差別

       ︵註29︶については︑その累積的作用を考慮にいれていないということが指摘されている︒

 これと関連して農業経営者の売上税納付額をみると︑一九五二年には売上税の納税者総数はおよそ三〇〇万

       ︵註30︶で︑その三〇ガが農業経営者であるが︑彼等が納付した額は︑売上税総収納額のわずか二%にすぎなかった︒す

なわち︑食糧を通じておこなわれる売上税負担の逆進性の回避は︑僅少の収入をあげるために多数の納税者を対

象とするという行政上の不利を生じ︑売上税の長所を著しく傷つけるものといわなければならない︒

 最後に景気と関連して考えてみよう︒不況期には国家の経費が膨脹し︑したがって税収の増加が強く要求され

る︒ところが一般に売上税の加重は物価を騰貴させ︑その軽減は物価を下落させるものである︒それゆえ不況期

に税収の減退を補うために売上税を加重することは︑大きな効果を期待しうるもので監昌・

・ 31

(20)

 負担の転嫁という面から見ると︑景気の後退によって物価が下落しつつあるときに売上税を加重することは︑

その負担のヨリ大きい部分が︑納税者たる企業に帰着して︑すでに述べた作用をひきおこす原因になる︒

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参照

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