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宮原 春美
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久保田健二2
安日 泰子要旨長崎県における男女高校生の性意識および現在の性教育の実態を調査し,
性教育における医療従事者の役割を検討した.その結果,男子の性教育は女子に比較 し不充分であると思われた.生徒の性知識は不正確であり,学校での生徒の性教育の 希望が半数程度であった事を考え合わせると現在の性教育の内容は再考の段階にきて いると思われた.性交に対する考え方は大きく変化し,また従来のステレオタイプ的 性別役割観はなかった.しかし,教育界の反応はこのような時代の変化に対応できて いるとは言い難い.従って医療従事者の役割は,このような生徒の性意識,性教育に 対する認識等について実態を明らかにし,医療と教育の連携を計ることではないかと
考えられる.長大医短紀要5:161−165,1991
Key words:性情報源,性交観,性別役割観,思春期外来,電話相談
はじめに
昭和59年より健全母子育成事業が厚生省
により始められたが,長崎県では性教育にっ いてはまだ充分な取り組みがなされていない
のが現状である.我々は過去2回にわたり,中学・高校にお ける性教育の実態,性教育に対する教師の認
識,女子学生の性意識などの調査を行った.今回,高校生における男女の性意識および 現在の性教育の問題を調査し,性教育におけ
る医療従事者の役割を検討した。
対象及び方法
調査はアンケートにより,対象は離島を含 む長崎県内の高校3校の男子生徒696名,女
子生徒515名である.調査は1991年2月よ り7月にかけて実施した.主な調査項目は月経周期及び排卵現象,精子の生存期間等の避 妊への態度に直接関連がある性知識,性別役 割観,性交観,性情報,過去に受けた性教育
の実際等である.結果及び考察
1.男子のマスターべ一ションに対する意識
マスターベーションは全体の75,7%が経
長崎大学医療技術短期大学部看護学科 長崎大学医療技術短期大学部非常勤講師
験しており,61.4%がその行為を肯定してい
た.
またその経験の有無でマスターベーション
に対する意識を分けた場合,マスターベーションを肯定するものは経験者では70.0%,未 経験者では35,3%であり,経験者ではマス
ターベーションを肯定する傾向が強く出てい た.なお,その行為を逆に明確に否定してい るものは経験者,未経験者共にそれぞれ0.4
%,1.0%と極く少数のみであった(図1)。
これらの結果は全国的な調査にほぼ一致して
いた1)2).
2.性情報源
性情報源にっいては男子・女子共に友入か
(%)
70 60 50 40 30 20 10
0
らが最も多くそれぞれ65.7%,56.3%であり,
次いで雑誌からでそれぞれ57.4%,50.3%と 多かった.
また,両親よりの情報は非常に少なく男子
2,2%,女子4.5%であった.授業を性情報源としているものは男子26.6%,女子40.6%
と男子は女子に比較して少なかった(図2).
また過去に受けた性教育の内容や性教育の 受講単位においても,男子の性教育が女子に
比較して少なかった.3.性知識の正解率
性知識としては月経周期,排卵日,妊娠可
能期間,精子の生存日数について質問した.性教育の効果の判定は難しいとされている
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園.経験有り群
(527名/696名)
(102名/696名)
肯定 分からない , 否定
図1 男子のマスターベーションに対する意識(%)
70 60 50 40 30 20 10
0
57,4罷悶50.3
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雑誌
辮叢i霧
§誰40.
126.6
6
團臨
2.24.51i
男子(696名)
女子(515名)
テレビ
授業
友人両親
図2 情報源
が2),今回は特に避妊に対する知識として重 要な排卵日と妊娠可能期間の両方に正解して いるものを正解とし,性教育の効果をある程
度見極めようとした.男女全体の正解率は 11.7%と低く,男女別の正解率は女子16。5%に対し男子は8.2%であり,さらに低い結果
であった(図3−1).さらに正解者の性情報源にっいて見てみる と,雑誌13.9%,テレビ11.6%,授業15。3
%,友人12,5%と性情報源による正解率に
差は認められなかった(図3−2).性知識の正解率の低さ,また性情報源によ
る正解率に差はないことからも,現在の授業
は知識獲得の面で効果は充分とはいえない.4.学校での性教育に対する意識
次に,学校での性教育にっいて,「希望す る」が男子51.6%,女子42.7%で約半数程 度の希望しかなく,現在の学校における性教 育の内容は再考の必要があるのではないだろ
うか.
5.性交観
性交観にっいては女子では75.6%が結婚 を前提としない婚前交渉を認めていたが,男 子ではさらに多く80.9%が認めていた.し
(%)
90 80 70 60 50 40 30 20 10
0
全体の正解率
11.7%
藝…彰8.2凝
轄87.5憲
正解 不正解
性知識の正解率
臨男子(696名)
匿i團女子(515名)
図3−1
(%)
20
10
0
正解者(M2名
13.9 15.3
11.6 12.5
笏
雑誌
テレビ図3−2
授業
正解者の情報源友人
かも婚前交渉の中でも「性交は自由である」
と考える「自由群」が男子は59.1%であり,
女子の38。9%を大きく上回っていた.また
「愛情前提群」は男子が21.8%,女子が36,7
%であり,女子の方が精神的側面を重視して いることが伺える.(図4−1).性交に対す る考え方は,女子生徒より男子生徒が積極的
であり,これも全国的な調査と差は無かった2).
さらに「性交は自由である」と考える「目 由群」がマスメディアをどう見ているかにつ いてみると,「マスメディアが役立つ」と答
えたものが全体では25。6%であったのに対 し,「目由群」は35.O%と多く,「自由群」
がマスメディアの影響をより強く受けている
ことが伺えた(図4−2).6.性別役割観
「男性は仕事,女性は家事をすべきか」と 言う問いに対し,いいえと否定している割合 は男子54,9%,女子81.9%と女子の方が多
くみられた.
「結婚後,女性が仕事を続けることに賛成 か」という問いに対しては賛成は男子55.6
%,女子66,8%と女子の方が多く,ステレ
(%)
60 50 40 30 20
10
0
翻 男子(696名)
匿嚢國 女子(515名)
36.7
目由群
愛情前提群 結婚前提群
図4−1 性交観ぎ硲翻
婚前性交否定群
(%)
0
10 20 30 4025.6 マスメディァ 滋
が役立つ1繍騰騰灘灘、
闇違いが多い
・纈
面3全体(1211名)
璽翻目由群(611名)
20
懸懸灘
図4−2 性交観とマスメディアに対する認識
オタイプ的な性別役割観は男子に強くあると 思われる.これらの性別役割観は自己の性行
動にも影響を与えると言われている3)4).10代の性行動に関しては全国的にも各方
面よりの危機感があるが,日本の教育現場は 未だに時代に対し閉鎖的であり,認識不足と
いえよう.
従って,性教育において医療従事者は,こ
のような生徒の性意識性教育に対する認識 等にっいて実態を明らかにできる立場にあり,その情報を教育現場に提供するなどの協力を
求められている.また従来の病院の診療から,より地域に広 がりを持った電話相談・思春期外来などの充
実が専門家として期待されていると考える.本論文の要旨は第32回日本母性衛生学会
総会において報告した.
文 献
1.薙野ミエ子,上田公代,尾道三一,宮崎
俊策:高校生の性行動の調査報告,熊大
医療短大紀要,1991,43−54.2.
3.
4.
日本性教育協会編:中学・高校・大学生
の性行動白書,別冊教育技術,小学館,東京,1988.
高村寿子,小林ゆう子,佐久間淳,村上 ひさ子,藤森由美子=大学生における性
役割の意識調査,思春期学,1987,4:542−549.