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成人看護学におけるシミュレーション教育に関する文献検討

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Academic year: 2021

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福岡県立大学看護学部

Faculty of Nursing, Fukuoka Prefectural University

連絡先:〒825-8585 福岡県田川市伊田4395番地 福岡県立大学看護学部

村田和子

E-mail: [email protected]

成人看護学におけるシミュレーション教育に関する文献検討

村田和子 福田和美

Review of literature on simulation education in adult nursing Kazuko Murata Kazumi Fukuda

要 旨

本研究の目的は、成人看護学におけるシミュレーション教育に関する文献を検討し、成人看護学における効 果的なシミュレーション教育に向けての示唆を得ることである。医学中央雑誌Web版を用いて「成人看護学」、

「シミュレーション教育」、「シミュレータ」、「モデル人形」のキーワードを組み合わせて検索し、本研究のテ ーマに即し、教育方法や成果が記述された文献27件を分析対象とした。分析の結果、成人看護学におけるシミ ュレーション教育は、観察力や技術、思考力を高めるためにシミュレータや様々な教材を活用し、リアリティ を重視した環境を作ることで、患者の理解や臨地実習のイメージ化、看護技術の習得につながっていた。成人 看護学における効果的なシミュレーション教育は、教員の指導力の向上や目的に合わせた教育方法の組み合わ せ、臨床実習を想定したより臨床に即した状況の設定、学生が反復して実践できる環境を提供することの必要 性が示唆された。

キーワード:成人看護学、シミュレーション、文献検討

緒 言

医療技術の進歩や疾病構造の複雑化、患者の多様 性に伴い、臨床看護師には高度な看護実践能力が求 められる。しかし、現在の基礎看護教育における臨 地実習では、在院日数の短縮化により学生が実習期 間を通して一人の患者を受け持つことが難しく1)、限 られた実習時間の中で、受け持ち患者に対して学内 で学んだ知識や技術を実践する機会の確保が困難に なっている。厚労省の看護教育の内容と方法に関す る検討会による報告書1)において、看護師に求められ る看護実践能力を育成するための教育方法として、

講義・演習・実習の効果的な組み合せと学内でシミ ュレーション教育を行うことが提示され、臨地実習 で経験できない侵襲を伴う行為の習得や技術などに ついて、シミュレータの活用や状況を設定した演習 を充実させることの必要性を求めている。そのよう な教育現場の状況を踏まえ、学生が安心して安全に 正確な看護実践能力を身につける教育方法として、

シミュレーション教育が推奨されている。

シミュレーション教育について、阿部は「実際の 臨床の場や患者など再現した学習環境のなかで、学 習者が課題に対する経験と振り返りやディスカッシ ョンを通して、知識・技術・態度の統合を行うこと により、反省的実践家を育てる教育」2)と定義してい る。シミュレーション教育は、シミュレータや模擬 患者、事例等を用い、模擬的な環境の中で学生が安 心して繰り返し学習を行うことができ、学習者間の デブリーフィングを通して内省的な振り返りができ、

臨床現場における実践力の向上に役立てることがで きる。

成人看護学演習は、シミュレーション教育を主流 とした演習が多く行われていると報告がある3)。成人 看護技術は、成人期という青年期から向老期までの 幅広い年代を対象とし、様々な役割を担う対象者の 健康課題への対応に即した内容が求められる。した がって、成人看護学における演習は、単なる技術教 育だけでなく、対象者のおかれている状況をイメー ジし、学生の思考や判断に基づいた看護実践能力の

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強化を目指し、効果的なシミュレーション教育を行 う必要がある。

目 的

本研究の目的は、成人看護学におけるシミュレー ション教育に関する文献検討を行い、シミュレーシ ョン教育の現状として内容、効果、課題を明らかに し、成人看護学における効果的なシミュレーション 教育に向けての示唆を得ることである。

方 法

成人看護学のシミュレーション教育に関する研究 について、医学中央雑誌

Web

版を用い、2000~2018 年に発表された論文の検索を行った。検索に使用し たキーワードは「成人看護/成人看護学」、「シミュレ ーション」、「シミュレーション教育」、「シミュレー タ」、「モデル人形」を掛け合わせた。「成人看護/成 人看護学

and

シミュレーション」で54件、「成人看護 /成人看護学andシミュレーション教育」で17件、「成 人看護/成人看護学

and

シミュレータ」で4件、「成人 看護/成人看護学

and

モデル人形」で33件が抽出され、

重複を除外した結果73件となった。表示された文献 の抄録や本文を読み、会議録26件、解説12件、海外 の報告2件を除外した。本研究のテーマに即した論 文を対象とし、シミュレーション教育の実態調査、

実習記録から学生が展開した看護について分析した もの、演習およびシミュレータを用いたことの成果 報告など、教育方法や効果が記述されていない6件 を除外した27件の文献を分析の対象とした。データ ベースの検索は、2019年2月から5月末日まで適宜 行った。

倫理的配慮

本研究では、分析した論文の結果を、意味を損ね ないように記載し、彎曲しない解釈を行うことで倫 理的配慮とした。

結 果

1.成人看護学におけるシミュレーション教育の現 状

成人看護学におけるシミュレーション教育に関す る文献27件を表1に示す。

1)シミュレーション教育の内容

文献検討の結果、成人看護学におけるシミュレー

ション教育は、演習で導入されているものが多いが、

成人看護学実習において、学内でシミュレーション 教育を導入しているものもあった。演習においては 特に急性期看護の演習が多かった。また、シミュレ ーションのトレーニングの種類では、演習の目的に よってタスク・トレーニングとシチュエーション・

ベースド・トレーニングが用いられていた。半数近 くがシミュレーション後にデブリーフィングや振り 返りを実施しており、シチュエーション・ベースド・

トレーニングに多くみられた。

実施内容は、観察力・アセスメント力の強化が最 も多く、手術後の患者の観察・アセスメント4~14)、19)、25)

をねらいとした演習であった。次に、手術後の早期 離床4)、15~18)、25)

など、事例をもとに状況設定を行い、

必要な看護援助を実施したものが多かった。また、

インスリンの自己注射20)や術後患者の清拭や寝衣交

4)、17)、気管内吸引13)、21~23)、ストーマケア技術23)、24)

輸液管理6)、23)、28)、創傷処置6)、28)、血糖測定6)、23)、ドレー

ン・チューブの管理6)、9)、13)、28)

など、実習で実践する機 会の可能性がある看護技術力の習得に焦点を当てた ものもあった。それらの演習は、1つの技術項目で はなく複数の技術を組み合わせて演習が行われてい た4)、6)、13)、17)、19)、23)、28)

演習においては、看護過程の内容とシミュレーシ ョンのシナリオをリンクさせて演習を組み立ててお り、看護過程の事例患者の援助計画を技術演習で実 践する方法4)、5)、8)、14)、16)、17)、21)、23)、25)

や看護過程の展開の前 に事例患者の状況設定を行ったシミュレータを用い て、事例患者の理解を目指したものであった26)。 2)シミュレーション教育に用いられている教材 シミュレーション教育に用いられている教材は、

シミュレータにおいては、中・高機能シミュレータ が多く、ストーマモデル24)や吸引モデル21~23)、全身型 マネキンタイプ5)、12)、26)などの低機能シミュレータも 用いられていた。中・高機能シミュレータは主に観 察・アセスメントをねらいとした演習で用いられて いた6)、10)、11)、14)、25)

。また、模擬患者とシミュレータを併 用した演習もみられ、技術の習得にシミュレータを 用い、習得した技術の活用場面では模擬患者を用い

ていた4)、9)。さらに、低機能シミュレータとともに

ICU

や手術直後の病室のイメージ化を目的に人工呼吸器 や心電図モニター、輸液・シリンジポンプ、各種カ テーテル類など、実際に臨床で使用している医療機 器も教材として用いられていた6)、11)、27)

(3)

表1 成人看護学におけるシミュレーション教育に関する文献一覧 タイトル・著者・発行年演習の概要教育の内容主な教材評価方法主な効果・課題 成人看護学援助論におけるシミュレーシ ョンを取り入れた演習に対する学生によ る評価 森岡152018

事例の提示.事前学習.グループワーク:アセスメ ント,術後の初回歩行の看護計画の立案.ブリーフ ィング→シミュレーション→デブリーフィング→シ ミュレーション→まとめ 術後1日目の初回 歩行の援助ロールプレイ,模 擬患者(学生)「学習者用シナリ オ評価表」【事前学習ブリーフィング】【シミュレーション】【デブリーフィング】【全体的】において,80 以上の高評価が得られた.一方,【デブリーフィング】の学習目標の学習者間での共有や指導者から の議論しやすい質問や支援提供,時間の適切性では低評価を示した.課題:デブリーフィングに対 する教員のファシリテーター力の向上と具体的な指示や支援と時間管理が必要 クリティカルケア看護実習に向けたシミ ュレーション演習による学生の思いの変 化と演習の活用に対する学生の認識 稲垣ら27 2018

模擬ICUでのICU環境の理解.多種チューブを挿入 したシミュレータによる患者像の理解.医療機器の 理解やチューブ類挿入中の注意点の確認.シミュレ ータでのバイタルサイン測定 ICU環境の理 シミュレータでの バイタルサイン測 中機能シミュレー タ,人工呼吸器, ッドサイドモニタ 半構成的面接調査 実習に対する学生 の思いの変化, 演習内容の活用 演習によって,クリティカルな環境や重症患者,実習環境のイメージが形成された.実習では,演習 で学んだ知識を,重症患者の状態や注意点をふまえた観察などの行動レベルで活用していた.課題 シミュレーション演習において,振り返りや概念化の支援を計画的に演習に取り入れることが必要 慢性期成人患者の指導教育におけるシミ ュレーション学習の効果 中川ら292018

慢性期疾患を持つ患者への指導教育.事例設定.事 前課題:グループで指導計画の立案→指導場面の実 施→気づきの記述→グループで気づきの共有→全体 でデブリーフィング 慢性期成人患者の 指導教育ロールプレイ,模 擬患者(教員)演習後レポートか らの学び模擬患者として教員がロールプレイに参加し慢性期患者の気持ちを代弁することや発問を行うこと で,学生は対象者の苦悩を考え,受容的態度で患者の思いを理解すること,患者中心に考えること の必要性を実感していた.また,失敗が許される安心した環境での学びや思考を刺激する発問がデ ィスカッションを促進させ,学生自身の学びの原動力につながっていた.課題:慢性期の患者教育 を体験する機会の提供や,教員のデブリーフィング力の向上が必要 看護基礎教育において学生が積極的にデ ブリーフィングに参加するための工夫 野島ら30)2018

シナリオの提示.1グループがシミュレーションを 実施→他のグループは観察→グループ単位でフリッ プに意見を書いて提示→デブリーフィング チュエーショ ベースド ーニング

ロールプレイ・模 擬患者(教員)観察グループから の意見数フリップによる意見の提示は,学生は,多くの意見を述べ,様々な意見を聞き,積極的にデブリー フィングに参加できた.グループ単位でフリップを用いて意見を述べる方法を用いることで,限ら れた時間やマンパワーで,大人数の学生に対して効果的なシミュレーション教育を行える可能性が ある.課題:学生が失敗しても,学びが得られると感じる安全な環境の提供 病院実習未経験の看護大学生のインスリ ン自己注射のシミュレーション演習の評 価―レポートからの分析― 古川ら20 2017

インスリン自己注射のシミュレーション演習.事前 学習.手順,留意点の説明→教員のデモンストレー ション→グループ演習 インスリン自己注 射の指導.インス リン自己注射の技 練習用インスリン 注射,インスリン 練習パッド,ロー ルプレイ,模擬患 者(学生)

演習終了後レポー トからの学び学生は,患者または看護師の立場に立って糖尿病で長期療養する患者の苦痛や指導方法について学 んでいた.シミュレーション演習は,病院実習未経験の学生の患者理解を促し,看護師や患者の立 場に立って考え,工夫する力の習得に効果的である.課題:役割演技シミュレーションを用いた自 己注射練習やWeb動画を用いた事前学習など,教育方法の組み合せによる患者の療養生活のイメー ジ化が必要 看護基礎教育における周手術期の看護過 程にシミュレーション演習を取り入れた 効果の検討 尾形ら4 2017

看護過程と連動した事例設定.援助計画立案→技術 演習1:事例を設定した技術演習で模擬患者やシミ ュレータを使用.技術演習2:事例を設定しない技 術演習でシミュレータを使用.

術前オリエンテー ション指導.術後 観察.早期離床の 援助.吸引,清拭 更衣の技術 ロールプレイ,模 擬患者,シミュレ ータ 自作質問紙調査: ①看護過程の自己 評価,②教授方法 の評価

看護過程の自己評価と教授方法の評価とに正の有意な相関が認められた.模擬患者であっても,手 術前の状態から介入し,術後の状態と比較してアセスメントすることで,学生自身が立案した看護 計画の評価が可能となり,周手術期看護に特徴的な観察項目の理解や早期離床の根拠を理解するこ とができた. 装着型ストーマモデルを用いた体験的演 習による学生の学び―成人看護学演習レ ポートの分析― 有澤ら242017

事例設定.事前学習.パウチ交換の教員のデモンス トレーション→①パウチ交換のロールプレイ→②パ ウチの直接貼付体験 ウチ交換の技 術.パウチ交換の 指導,ストマ体 験による患者理解 装着型ストマモ デル,ロールプレ イ,模擬患者(学 生)

演習後レポートか らの学びストーマを有する患者としての体験から生活のイメージを膨らませ,<手技・物品・整備の工夫の 有用性>を実感することにより,療養環境を整えるために看護者として<社会的資源を活用した生 活調整の支援>をすることへと思考を広げていた.課題:看護支援の洞察まで至らない学生もいた ため,効果的な振り返り(リフレクション)を行うことが必要. 成人看護学演習において臨床と共同授業 を行うことでの学習効果―術後の早期離 床に向けた援助― 由井ら16 2017

実習指導者との共同による演習.看護過程と連動. 事前に援助計画の立案→シナリオに基づいたシミュ レーションをグループで実施→デブリーフィング→ 臨床指導者のシミュレーションを見学 術後の早期離床に 向けた援助ロールプレイ,模 擬患者(学生)自作の質問紙調査共同授業における臨床指導者によるシミュレーションは,患者の状況に合わせた声かけなど援助の 実際を見ることで,臨床での看護実践をイメージすることができ,学生の学びや気づきを深める効 果がある.また,実習へのイメージ化にもつながっていた. 成人看護学領域における術後看護のシミ ュレーション演習の課題の検討 及川ら5)2017

看護過程と連動した事例の提示.オリエンテーショ 術後観察の要点の確認DVDなど→観察項目 観察方法の検討→術後帰室時の観察(モデル人形) →全身状態のアセスメント→デブリーフィング 術後の観察・アセ スメントモデル人形(全身 型マネキンタイプ の低機能シミュレ ータ).視聴用 DVD

①「授業過程評価 スケール‐看護技 術演習用‐」②半 年後に自作の質問 紙調査 シミュレーション演習により,学生は知識や術後の観察手順の根拠の再確認や患者への配慮につい て学んでいた。また,実習で周手術期患者看護経験の有無がシミュレーション演習内容の実習での 活用に影響を受けていた.課題:人数や時間の調整だけでなく,学生が必要な知識を確認した上で シミュレーションに集中して臨めるようにすること.実施結果を学生自らが振り返り達成度を自己 評価できる明確な目標の提示.教員のファシリテーション力やデブリーフィング力の強化.学生が 過度な精神的負担を負わずに演習できる環境を作ること 成人看護学領域における教育活動―成人 看護学演習の授業展開― 高橋ら23 2017

看護過程と連動した事例.技術項目の事前課題→グ ループでモデルに対する急性期看護技術と慢性期看 護技術の実施 気管内吸引.スト マケア.輸液管理. 自己血糖測定 引シミュレー タ.モデル人形学生のリアクショ ンペーパー事前に課題を行い,学生が主体的に技術を習得することで,学習意欲の向上につながった.課題: 特定の患者へのイメージの偏りや事前学習や課題への取り組み状況によりグループ間で学びの差が じたこと,個別の指導に時間を費やすことから時間調整が必.間内に全員が終わらなか った.問題解決能力や主体的に学ぶ姿勢を養うためには,動機づけと環境作りが重要 成人看護領域における看護学生のシミュ レーション教育効果の検証 大植ら14 2017

事例の看護過程を展開.看護計画の立案→2人ペア で術後の観察のシミュレーション→観察内容の報告 →グループでデブリーフィング 術後の観察・アセ スメントフルスキルシミュ レータSD法,②援助規 範意識尺度,③看 護問題対応行動自 己評価尺度

術後のシミュレーション演習により手術のイメージが肯定的に変化した.援助規範意識の「自己犠 牲規範意識」や,看護問題対応行動の「問題解決・回避のための患者生活・治療行動代行,症状緩 和,生活機能維持・促進とその個別化」,「問題解決に向けた相互行為の円滑化」,「問題解決への自 己評価」が向上した.課題:継続的に看護学生の演習でシミュレーションを使用してもらうこと. 効果的なシミュレーション教育システムの検討 臨床看護師,模擬患者との協同によるシミ ュレーション教育を取り入れた学内演習 の効果―術後1日目の看護― 森安ら17)2016

臨床看護師・模擬患者との共同による演習.看護過 程と連動した事例.ブリーフィング→臨床看護師・ 教員・模擬患者のデモンストレーション→シナリオ に基づきグループで実施→デブリーフィング 術後1日目の患者 の清拭・更衣の技 術.早期離床の援 ロールプレイ,模 擬患者(ボランテ ィア)

演習記録からの学 臨床看護師と模擬患者の共同演習は,【臨場感がある】【ロールモデルとなる】【看護実践をイメージ できた】【わかりやすい説明】【自己の課題の発見】【模擬患者の忠実度】【演習に取り組む姿勢の変 化】などの効果があった.課題:ファシリテーターとしての教員のスキルアップ.時間配分や演習 室の設営などの演習方法.学生が看護技術のスキルアップを図れるような自己学習の環境調整 気管内吸引の学内技術演習から得た学生 の学び―患者の苦痛に配慮した技術習得 に向けて― 滝沢ら212016

看護過程の展開.事前学習と事前講義.2人1組で 吸引モデルを使用した技術演習を実施吸引(口腔内,鼻腔 内,気管内)技術吸引モデル吸引技術演習後の レポートからの学 学生は吸引される患者の身体的・心理的状況について,吸引技術の時間経過とともに患者の立場に なり,患者の苦痛を中心としたさまざまな思いを推測することができていた.患者の思い寄り添う だけでなく,看護師として何ができるか,何をするべきかという視点も芽生え始めていた.課題: 具体的にイメージできる事例の提示.技術演習の時間確保の工夫が必要 看護系大学における気管内吸引演習の授 業内容の検討・改善への取り組み 冨澤ら222015

根拠の明確な手技や手順書・根拠を示す資料を配布 →デモンストレーション→各ブースにビデオを設置 して実施→ビデオ視聴による自己評価 気管内吸引吸引モデル人形「授業過程評価ス ケール‐看護技術 演習用‐」

演習にビデオ視聴を取り入れることで,授業過程評価の「学生の演習への態度・対応」以外の項目 が優位に上昇した.また,ビデオ視聴により客観的に自己の技術を評価することによって,適切な 自己評価をしていた。 課題:知識の定着についての確認

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表1 成人看護学におけるシミュレーション教育に関する文献一覧(つづき) タイトル・著者・発行年演習の概要教育の内容主な教材評価方法主な効果・課題 看護基礎教育における臨床判断力育成を めざした周手術期看護のシナリオ型シミ ュレーション演習の効果の検討 山内ら252015

事例の看護過程の展開.事前学習としてのグループ ワーク.ブリーフィング→周術期に必要な看護のロ ールプレイ→クラス全員でデブリーフィング 術前オリエンテー ション指導.術後 観察.日・早 体動の援助 中機能シミュレー タ,模擬患者(教 員)

自作の質問紙によ る自己評価:演習 後と実習後

学生の自己評価では,『術前看護に関する臨床判断力の習得』『自己学習行動へのつながり』『術後疼 痛に関する看護の実践力の習得』が,演習後と実習後の得点に有意な上昇があった.課題:演習自 体の効果を高めるためには,様々な臨床状況での臨床判断を体験する機会の提供や,教員の臨床判 断過程を支援するファシリテーター力やデブリーフィング力の向上が必要 看護実践能力育成に向けた新たな実習方 法の検討―シミュレーション学習を取り 入れた成人看護実習を通して獲得できた 能力に着眼して― 藤田ら7 2014

事例の提示.事例の1場面DVDで視聴DVD 看護師が実施した看護技術のエビデンスを検索→教 員によるエビデンスの解説→看護介入計画の立案→ グループでケア技術の実施→教員による技術指導→ 実施した看護介入の評価 観察・アセスメン ト.注射や輸血の 技術 事例場面のDVD 模擬患者(教員) 膜型のタスクシミ ュレータ 自作質問紙(アン ケート)エビデンスの看護ケアへの活用や既習の知識のなかで活用できるものを明確にし,看護ケアに活用 していく方法,看護実践能力の習得を支援できた.課題:多様な事例の開発.教育効果を評価する 方法の検討 実習前準備教育としてのシミュレーショ ン学習における学生の学び 高比良ら6 2013

事前に事例の援助計画立案.手術直後の6項目(ド レーン管理,中心静脈カテーテル管理,輸液ポンプ 管理,術後観察,創傷処置,血糖測定)の演習.演習 項目毎のユニットをグループで移動し演習→実施後 の振り返り 術後観察.ドレー カテーテル 液ポンプの管理. 創傷処置,血糖測 シミュレータ(フ ィジコ・ナーシン グアン等)ドレー ン類.輸液ポンプ

演習時の振り返り 記録からの学び紙面事例とシミュレータを組み合わせたことで,学生は視覚的イメージ化により術後の患者の状態 の理解[認知領域]が促進されていた.また,リスクと現象を関連づけたアセスメント,患者の安楽 への配慮等[情意的領域]既習の知識と技術[神運動的領域]を統合させて学んでいた.シミュレ ーション学習への示唆:基礎看護学の学習内容と成人看護学のシミュレーションを,学習の積み上 げとして連動させる.事前学習課題の具体的な提示.事前学習内容の検討.学生が看護技術を繰り 返し練習できる環境づくり 急性期における成人看護学演習の効果― シミュレーション教育を試みて― 小澤ら8 2012

看護過程と連動.術前の呼吸訓練と術後1日目の観 察の2つのシナリオを設定.事前に看護計画の立案. ロールプレイ→振り返りレポートによるデブリーフ ィング→気づきをフィードバック 術後観察・呼吸の アセスメント.術 前呼吸訓練の指導 ロールプレイ.模 擬患者(学生).ト リフロー.ドレー ン類 演習の振り返りレ ポートからの学び学生の感想から「臨地実習では患者に不安を与えないようにしたい」「成人の総まとめができた」「臨 地実習が直前にせまっているため事前学習の大切さがわかった」と臨地実習を意識する意見もあっ たことから,臨地実習に対する意識や緊張感が高まり,学生の意欲に繋がった.課題:臨床の実践 指導者が学内演習から関わることのできる教育システム作りの検討 急性期における成人看護学演習の展開と 課題―教育方法の検討― 小澤ら92011

看護過程と連動.事前に看護計画の立案→事例1の デモンストレーション→事例1のロールプレイ→モ デル人形による観察・管理の説明→事例2のデモン ストレーション→事例2のロールプレイ 術後観察.ドレー ン・カテーテルの 観察と管理.術前 呼吸訓練の指導 ロールプレイ.模 擬患者(学生).モ デル人形.ドレー ン類.トリフロー

演習の振り返りレ ポートからの学び事前課題と教員のデモンストレーションにより,事例のイメージ化が図れ,モチベーションが向上 した.2つの事例を通して指導技術の基本,術後観察と管理についての気づきがあった.課題:教 育を受けた模擬患者の導入.現実感のある状況設定の検討.単に手順の教授ではなく,学生の知識を 引き出し,考えるヒントを与え,意欲を引き出していく教員の姿勢が重要 看護学生が,術後の早期離床促進中に急変 した模擬患者に対する体験からの気づき ―成人看護学(周手術期)における学内演 習にシミュレーション教育を導入して― 谷ら182010

術後の早期離床に関する事前講義.シミュレーショ ン前の事前学習.術後の早期離床促進中に肺塞栓症 を発症した事例を設定→グループにわかれてシミュ レーション 術後の早期離床促 進中に急変した患 者への対応 ロールプレイ.模 擬患者(学生)自記式振り返り用 紙からの振り返り 内容

学生は【自己の学習課題】【問題を解決する】体験を比較する】【わかることの心地よさ】【パニッ クになる自分】【グループ学習の効果】の気づきを得ていた.そして,その気づきから主体的な学習 への動機づけを行っていた.課題:臨床実践能力の向上のための学内演習方法の検討 術後患者の状態を再現したモデル人形を 用いた演習の学び「術後1日目患者の実 際」のレポートから― 市川ら26 2009

術後患者の状態を再現→教員が場面や挿入されてい るドレーン,医療機器などの説明→モデル人形を見 て,触れる→患者の身体的・精神的状態,生活に及 ぼす影響についてグループワーク 看護過程の事例理 解.術後患者の理 モデル人形.ドレ ーン・カテーテル 類.酸素マスク 演習後の学び・感 想レポート学生は患者の立場に立つことで術後患者をイメージしていた.【術後観察の重要性】【患者への説明 の重要性】という看護の必要性を見出していた. 看護基礎教育における周術期の臨床判断 力の向上を目指した教育実践 深田ら10 2010

事前課題.事前の学習課題の解説→呼吸・腸蠕動音 をシミュレータで聴取→臨床判断の仮説の討議→術 直後の観察のデモンストレーション→シミュレータ を用いたフィジカル・アセスメント→グループ討議 術後患者の観察. フィジカル・アセ スメント.呼吸音 と腸蠕動音の聴取 シミュレータ(フ ィジコ)カテーテ ル類.鎮痛剤持続 注入ポンプ 自作の質問紙①フ ィジカル・アセス メント技術の学修 達成度に対する自 己評価,②教員等 による他者評価 学修目標の達成度「非常に・大体当てはまる」の割合が自己・他者評価ともに75%以上の項目は, 学内演習では8項目,臨地実習で術後患者にフィジカル・アセスメントを実施した際では9項目, 実習終了時では24項目であった.課題:実習終了時の目標達成度が低く,欠損割合の高い項目は, 学内演習で実施できるような教育内容の検討が必要.実習時の自己評価で欠損割合が最も高い麻酔 の覚醒の観察については,受け持ち患者以外でも手術直後の患者の状態を見学するなど教育方法の 検討が必要 頚椎股関節手術患者に関する実習 前学習会とモデル人形を活用した実習期 間中学内演習による学生の学びと課題 山本ら122009

①臨地実習前術後患者をイメージさせるための「頸 椎・腰椎・股関節手術患者に関する学習会」②受け 持ち患者の術後1病日前日に「モデル人形を活用し た学内演習」:観察項目の確認,患者役の体験 術後患者のイメー ジ化,術後の観察モデル人形,CPS 実習ユニット.ド レーン類.心電図 モニターなど 自作の質問紙調査モデル人形を活用した実習期間中の学内演習は,術後の観察項目を事前に確認でき,術後患者のイ メージを持つことにつながった. 成人看護学援助論1(1)の学内演習に おける学生の学びと課題 山本ら192009

演習前に,手術患者像と受けたい周手術期の看護に ついてグループワーク.術前・術後の看護技術演習 の実施→学生間で意見交換 術前オリエンテー ション.術前訓練. 術後の看護.

モデル人形.トラ イボール.心電図 モニター 演習後の「演習の 振り返り」内容術後のモデル人形の活用がイメージ化につながり,観察や看護の重要性を見出していた.実習にむ けての学習不足と学習方法の再考を抱いていた.課題:教員は効果的な学習方法を教え,落ち着い た気持ちで臨地実習に臨めるように助言が必要. 成人看護学における看護実践能力の育成 に関する研究―成人看護学実習前の効果 的な学内演習プログラムの作成― 原田ら132009

事例の提示.1日目に4項目(フィジカル・アセス メントなど)2日に4項目(術後ベッド作成,ビデ オ学習など)4つのブースを教員のデモンストレー ションや説明を受けながら,グループで各演習内容 を学習.演習終了後は自由練習できる環境 重症患者・周術期 の観察・アセスメ ント.吸引,ドレー ン管理,更衣など の技術 モデル人形.吸引 器機.ドレーン類. 視聴用ビデオ.模 擬患者(教員)

自作の質問紙調査 ①演習プログラム の評価,②演習項 目の到達度評価

演習の学習目標の到達度評価が高かったものはいずれも基本的なものであり,これまでの学習の強 化につながった.演習の学習目標の到達度評価が低かったものには,実習中に経験することが難し かったり,高度な学習内容を含んでいたり,習得にはトレーニングを積む必要がある項目が含まれ ていた.課題学習効果を高めるための適切な事前学習内容の検討と自己学習のための教材の工夫. 演習内容が実習にどのように活用できたかの評価.トレーニングのための機会を増やす必要性 看護学生の実習開始前と終了後の観察の 相違に関する検討―術後急性状況のモデ ル人形を用いたバイタルサインと酸素吸 入療法の観察に注目して― 南川ら112004

術後の病室を再現し,手術後1日目の状況を設定し た急性期モデル人形を設置.グループ毎にモデル人 形の観察→観察用紙の記入 術後の観察急性期モデル人形 KOKEN).ベッ サイドモニタ ー.救急カート 観察用紙に記載さ れた観察内容結果:学生は,モニター上に表示された心拍数や深部体温,酸素濃度や酸素流量計の見方を正確に 把握していなかった.課題:急性期モデル人形を活用することで観察の機会を多くして練習を重ね る.演習時および実習において観察が的確になされているかを教員が確認する必要がある. 成人看護学実習における学内でのシミュ レーションを取り入れた技術演習の効果 太田ら282000

看護技術練習を行うためのシミュレーション空間の 設置(術後状態のモデル人形,医療機器の設置,輸 液準備コーナー,無菌操作等)

吸引,創傷処置, 管管理,輸液管理 などの技術 モデル人形.人工 呼吸器.輸液ポン プ.心電図 実習後の技術項目 チェックリスト学内でのシミュレーション空間の設置により,臨地実習における術後の観察,「無菌操作」「創部の 処置」「輸液の管理」「尿道カテーテルの管理」といった術後の処置の実施の割合が高くなった.

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3)シミュレーションの評価方法

シミュレーション教育の評価方法は、学生から提 出されたレポートが最も多く、演習を通しての学 び6)、8)、9)、17)、20)、21)、24)、26)、28)

や振り返り18)、19)、23)

、演習課題内 容11)であった。質問紙による評価においては、演習 内容13)、達成度10)や教授方法4)、イメージ化12)、16)、19)

、学 生の自己評価13)、22)、25)

などについての自作の質問紙と、

授業評価5)、15)、22)や看護実践能力14)についての既存の

尺度による評価を行い、数値化していた。また、シ ミュレーション教育導入前後の実習における技術項 目の実施頻度28)や、演習後の学生との面接による実 習に対する思いや演習内容の実習における活用につ いての認識27)の把握も行われていた。

2.成人看護学におけるシミュレーション教育の効 果と課題

1)シミュレーション教育の効果

シミュレーション教育の効果としては、患者や看 護実践等のイメージ化の促進が最も多く、手術後の 患者の状態6)、12)、19)、26)

や事例患者の状況9)、患者の置か れている環境27)や生活20)、24)、臨場感や看護実践16)、17)

臨地実習16)、27)に対するイメージ化につながっていた。

次に、術後の観察や処置28)、フィジカルアセスメント 力10)、臨床判断力25)といった看護実践能力の向上がみ られた。また、シミュレーション学習による気づき が今後の学びの原動力29)、自己学習の促進25)につなが っていた。

ロールプレイを行った演習では、患者の苦痛の理 解、看護師の基本姿勢の認識につながっていた29)。 また、シミュレーション教育を行うことで、援助規 範の意識や看護問題に対する行動の変化がみられて いた14)

2)シミュレーション教育の課題

シミュレーション教育の課題は、実施後の振り返

24)、27)、教員のデブリーフィング力やファシリテー

ター力の向上といった教員の指導力5)、15)、17)、25)、29)

に関 することが多かった。次に、学生が精神的な負担を 負わず安心して安全に実施できる環境5)、30)、主体的 に繰り返し練習できる環境づくりの必要性があがっ

6)、11)、17)。その他として演習の時間管理5)、15)、17)、21)、23)

や 教育効果の評価5)、7)、10)、提示事例や教材の工夫7)、13)、21)、 事前学習内容の検討6)、13)であった。

考 察

1.成人看護学におけるシミュレーション教育の現 状

文献検討の結果、成人看護学におけるシミュレー ション教育は、学生の観察力やフィジカルアセスメ ント力の強化を目指したものが多く、特に周術期の 演習にみられた。シミュレーション教育は、学習者 の知識と技術の統合により実践力を強化する教育と してその効果が実証されており31)、多くの教育機関 で導入されている。侵襲性の高い技術は、対象者の 安全確保のためにも臨床実習の前にモデル人形等を 用いてシミュレーションを行う演習が効果的であ る1)といわれていることから、事例患者の状況に設定 できる高機能シミュレータを活用する学校も増え、

よりリアルな学習環境を整備することができ、観察 やフィジカルアセスメントの演習が増えたと考える。

血糖測定やインスリンの自己注射などの慢性期看護 に必要な演習においてもシミュレーション教育が行 われており20)、模擬患者やロールプレイを組み合わ せた演習29)の報告がみられた。これらの演習は患者 への指導が中心であり、対話を通して対象者に応じ た指導方法の習得、長期療養を行っている患者の苦 痛の理解、看護師の基本姿勢の認識につながってい た。成人看護学におけるシミュレーション教育は技 術や知識だけでなく、患者への配慮等、看護師とし て必要な態度も統合して学べる6)ことから、患者との 相互作用が必要な場面の演習にも効果的であるとい える。

シミュレーション教育の教材としては、単一の教 材だけでなく、複数の教材を組み合わせていた。特 にシミュレータと模擬患者や医療機器を用い、ロー ルプレイなどを取り入れた教育が行われていた。成 人看護学演習においてはタスク型の演習から患者に 応じた対応を求める演習が増加しており3)、本研究に おけるシミュレーション教育の内容からも技術に特 化した内容だけではなく、事例をもとに状況設定を 行うシチュエーション・ベースド・トレーニングが 行われており、様々な状況下での看護が求められる 成人看護学の特徴であるといえる。

シミュレーションの評価に関しては、既存の教育 評価の尺度や自作の質問紙による評価も行われてい たが、学生のレポートによる主観的な評価が多かっ た。シミュレーション教育の効果を明らかにするた めには、主観データの根拠となる客観的な評価の必

参照

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