L︒ダドレイ・スタンプ
﹁応用地理学﹂
L.Dud−ey Stamp⁝
App−ied GeOgraph﹃pp.望∞︑Figs.巴
Penguin厨00好sV−箕○
山 名 仲 作
著名のL・ダドレイ・スタンプ教授についてはいまさら紹介
するまでもないが︑ここでは長年ロンドンスクール・オブ・エ
コノ︑\︑クスにあって経済地理学を講じ︑仙九五二年から五六年
にかけて国際地理学連合︵Ⅰ・G・U︶の会長に選ばれた人で
あることだけを記しておく︒
﹁私の知る限りこれが応用地理学として出版された最初の本
である︒﹂と教授は番いている︒そしてその内容は︑教授がロン
ドンスクール・オブ・エコノ︑︑\クスを退職される直前の三年間
の講義に沿ったものであるとも記している︒すなわち本書は︑
この方面の開拓者である著者の︑三〇年間の研究成果をふまえ
ての応用地理学なる分野の全体についての極めて抱括的な展望
の書である︒
L・タドレイ・スタンプ﹁応用地理学﹂ の地理学的研究︑ 欝玉章 土地︑罪六章 人口と土地利用パ ターンの解釈︑欝七黄 土地計画︑欝八黄 土地の分類︑第九 章イギリスにおける都市計画ならびに農村計画︑儲二〇葦 写 真地理学︑第二茸 気候についての若干の問題︑第二萱 農村土地利用計画についての若干の考察︑第二二葦 都市地理 学についての若干の考察︑笛四茸 工業地理学の若干の考察 第鵬五章 貿易紅ついての若干の地理学的考察︑第ハ章 結 論︑となっている︒以下順を追って内容を紹介することにしよ う︒
第卑において︑まず地理学は人類と環境との密接な関係を
綜合的に解釈する学問であること︑それ紅ほ対象の地域を限定
して研究しなければならないこと︑そして地理学の道具として
の地図学の重要性から説き始めている︒地図化し分析すること
こそが︑諸種の学問間の共同研究のなかでの地理学者のユニー
クな寄与である︒オリジナルなデータの地図化紅よる分析ほ︑
統計的分析と相互補完的であって︑事象の分布の要因を明ら
かにする︒例えば︑ある農地の所有地が分散している場合︑地
形の起伏図︑排水図︑土壌図︑徴気候図と比べてみれば︑それ
が自然諸条件によるものか︑あるいほ歴史的諸事情の結果で毯
るかが明らかになる︒
二〇世紀前半が科学としての近代地理学の登場した時期であ
︵円三こ ニー 的︑夢二車 人頼の環境︑
第三十五巻 第三替 るとすれば︑今後は︑この間に発達した地理学的調査と分析のカ 法を︑今日の世界の重要問題の解決に適用すべきである︒それ は空間に対する人口増加の圧力︑後進地域の開発︑都市計画や 農村計画の目的である生活条件の改薯などの諸問題であり︑ これらの諸問題こそ応用地理学のフィールドである︒ 第二章では︑地理学の研究対象である環境を構成している諸 要素をあげている︒教授によれば︑第読経虔︑緯度で表わさ れる位置であり︑第二に地形の起伏である︒第三は地殻の構 造︑第四ほ天気と気候をあげている︒そして地理学にとっての 中心問題である人類と環境との関係については︑それは絶えず 変化しているのであり︑現在は進化の自然的過程のある段階で あるとする︒そしてここに地理学と自然計画との生きたつなが りがあると主張する︒またおよそ計画とは︑良いと思われる傾 向をのばすこであり︑悪いと思われる傾向をおさえることであ る︒地理学者の役割は︑環境の影響を調査し分析しそれを応用 することである︒技術の進歩で自然条件の制限が克服されつつ あるといわれるが︑大まかにいえは︑その逆も貪である︒ 第三童の内容は基礎的な事実︑人口と土地との問題である︒ 今日地球上にはもはや発見さるべき新しい土地ほない︒山方︑
世界の人口は過去五十年間匿二倍匿なり︑なお年率∵三%の
純増を示している〇・このことは今日の世界のさしせまった大間
︵四三二︶ 二一一世界全体としてである︒いま地表全体の平均人口密度をとる
と︑一平方キロに二∩人であるが︑−人当りの土地面積を計算
すると三・五エーカーになる︒しかしこのなかには極地︑砂 漠︑赤道雨林︑ヒマラヤ山地を含んでいる︒だから人規にとっ て重要な潜在的可耕地すなわちエクメーネだけをとり出してみ
るキそれは地表の三〇%であり︑−人当り四エーカーにな
る︒このうち食料生産のために実際に利用されているのは三
lカーと少しである︒これを第二段階の国ごとにみるといちぢ
るしい差異があ驚アメリカ合衆国の㌦人当りの面積ほアラス カな除いても脚二エーカーあり︑可耕地は六エーカし現実の農 地は三エーカーある︒合衆国と同様に土地特恵まれた国ほカナ ダ︑ブラジルなどであり︑またいわゆる後進国でもウガンダほ ス当り可耕地ほ九エーカー︑実際に利用されているのほ言
−カーである︒これに反して人口桐密な諸国をみると︑インド
は一人当り二二五エーカーであるか︑乾燥地と山地を除けは︑
可耕地ほ言−カーを出ないだろうしそのうちの〇・七五エー
カーを実際に利用している︒ヨーロッパの諸国も同様である︒ フランスは比較的よいが︑イギリスほイングランドとウェー
ルズだけをとるとス当り〇・八土−カーしかなく︑〇・五五
エーカ1が現実の虚地である︒イギリスの農業のやり方を前提
にしてイギサスの生活水準を維持しょうとすれば︑i人当り山
エーカトの腱 である︒▼︑日本で さらに駄︺
第三段階の表内部の地方的差異︑第四段階の局地的問題匿 っいてほこの章でほはとんどふれていない︒教授ほここでの琴
びとして人口叫人当りの改良された農地が言−カー以下の国
々を︑国内の食料生産では人口を維持できないとの理由で︑人 口過剰といっている︒もちろんこの線はごく大まかな基準だと 断っている︒
第望卑ほかくして人じの研究が主題紅なる︒今までほ人口の 統計的分析は進んでいるが︑分布の研究は進んでいなかった︒
今日なお世界共通の︑百万分のTの地形図と二将になった人口
分布図ほないのである︒
さてイギリスでほ産業革命以来都市の拡大が古くからの農村 の農業景観をこわしつつある︒しかも今日の農村は果して生活
単位であるかが問題である︒教授ほそこで農村人口を︑︵a︶
蒜農村人口一生活を+粛正依存している農家と農業労働者
︵b︶表農村人口へのサービス供給者︵C︶外来者−偶然農
村に住んでいる人たち︑に分類することを提案してきた︒これ ほたしかに日本の場合にも通用できると思われる︒わたくしも かねがね農村人口と農業人口との区別が重要であると考えてい る︒
人口問題でもう劇つ重要なのほ年令構成からみた各国の分類 であるヱ群は︑ヨーロッパのはとんどの国を含む古くから人
L・ダドレイ・スタンプ﹁応用地理学﹂
群はインドや中国のよう匿出生率が高く︑√医療サービスの未発 達で︑平均寿命の短い国︒Ⅱ群は新しく開けた国で︑資源把対 する人口圧はまだあまり問題にならない︒それに死亡率が低 く︑平均寿命の高い国︑アメリカ合衆国やカナダ︑オーストラ リアなどの諸国︑Ⅳ群ほ新しい国だがノブテンアメリカのヵト リック諸国のように出生率が非常紅高く︑医療サービスの未発 達のため紅高年令屑の比率が小さい国々︒こうした分類はいう
までもなく今後の人口予測に必要なのである︒それ紅もう;の問題は家を必要とする家族数の増加は人口増加と同じでない ことである︒
第五章は前章陀対して土地が主題であり︑教授が開拓してき た土地利用調査の方法の概説である︒教授が克三〇年紅イギ リス十地利用調査を組織したとき︑何よりも心がけたのはイギ リニづの土地利用の現状をエーカー単位の精度で明らかにするこ とであった︒というのは︑およそ計画を立てるため紅は現状の 正確な記録︑現状の分析と将来への傾向と予測することが必要 であるといういわば自明のこ七が︑当時はまだ■蒜的には受け 入れられていなかったからである︒かくして教授ほ大学生を中 心に多くの学生の自発的演習として︑㌻几三〇年代にイギリス 全土の土地利用調査をなしとげたのである︒ 教授の採用した土地利用分類基準はよく知られているが︑大
︵些三三︶ 二三 り︑高年令屑が多い︒患た土地匿
第三十五巻 第三骨 分枝だけをあげておくと︑劇︑森林と林地︑二︑牧草地︑三︑ 耕地・四︑荒野︑五︑園地︑果樹園︑菱樹場︑六︑非生産地で あり︑これらをさらに分類しおのおのそれを記号と色分けする ことにょって土地利用図を作成するわけである︒ さてこの調査によって︑何が分るか︒第這人はイギリスの
複雑な土地利用のバターンに\驚かされる︒第二に自然諸条件の
差異が非常にちがった土地利用を生ずること︒そしてまた;
の土地利用凶をみて︑はたしてこれほ土壌によるのか︑所有制 産直よるのかそれとも読幽からだけでは分らない他の要凶によ るのかの問題がでてくることである︒ この土地利用調査の忘義はやがて各国に知られ︑それぞれ調 査が進められだした︒なかでも日本はもっとも熱心である︒ま た克五二年と五六年の国際地理学会でも大きく取り上げられ
た︒
問題の次の展開は︑人口と土地利用パターンとの関係の解釈 であり第六電がそれを扱っている︒人口分布図と土地利用図を
基礎として解釈を進めるわけである︒要因を大まかに分幾する と自然的宴因︑歴史的宴因︑社会経済的要凶紅なる︒社会学者 や経済学者のなかにはすべての輩因は社会経済的なものに関係 すると主張するものがいるが︑地理学者は自然条件から出発す る︒土地の越伏︑地賀碑遊︑気候︑微菊供などほ︑土地利甲
牒
を与えている ︵四三四︶一一四
ことは困難である︒もちろん重要な問題ほ多くあり︑例えばイ ギリス低地を特色づける小さくて不規則な形の耕地は歴史的事 情によるものである︒社会経済的要因に移れば︑交通網の発達
ほ農産物の商品化を促進する︒生活の習慣もまた土地利用に影
響を与える︒ ところで近年しばしば後進国とか低摘発国とかの言集が使用
される︒経済学者ほこの区別里人当りの国民所得でする︒し
かし︑インドのように土地を極度に利用している国が後進国と
され︑広大な土地が未利用のオーストラリアが先進国とされて
いるのは不合理である︒地理学者は後進国をちがった立場で考 える︒すなわちその国の住民の利益のために自然食源を充分に
利用しあるいは開発しているかどうかできめる︒だから地理学 的にほアフリカのみでなく南米︑カナダやアメリカ合衆国のあ
る部分も後進国である︒ このように教授が地理学の立場をたえず強調していることが
注目される︒ 第七茸ではいよいよ実際の土地計画の関越に入ってくる︒教授
ほまず土地計画の本質は競合する諸要求の下で土地を正しくそ してバランスのとれたように配分することであると定義する︒ イギリスのように土地不足の国では︑立案者の役割は︑国民
的利益のため乾すべての土地の扱適利用を定め︑できるだけ多
的に利用することで應る︒
らは競合する要求である◇
イギリスでは第二の優先順位は工共である︒工菓ほとく匿正
しい立地が必要である︒段村地域の土地利用委員会は︑工業の
種類を採取産業を含む藍工業︑軽工業︑関連工凝︑サービス工
業の四種粗に分けている︒問題ほ︑自由に立地できるとみなさ
れている諸工業も事実はきびしく立地を限定されていることで
ある︒例えば大鼓の水あるいは特殊な水質を要求するために立
地が制限されるような工共が多い︒第二の人間の要求ほ住居で
ある︒ニュータウンな計画するときどの程度の人口規模であれ
ば社会的な蟄求が満たされるか︑恐らく五万人−血○万人であ
ろう︒町の大きさほ通勤三マイルを越えないようにしないとニ
ュータワソの利益が失われるであろう︒またイギリスのような
高経度のところでは︑高い建物ほ相互にはなして建てないと冬
の日光が入らない︒そのはか重要問題として︑農業用の最良地
は家屋建設用には炭適でないことがある︒第三のリクリエーシ
ョン用の土地については︑町の子供には近所に運動場を与える
こと︑リクリエーション用の広い土地をきめる条件ほ自然美と
その土地がやせていることである︒第四ほ通信交通用の土地で
ある︒イギリスの通路組織はローマ人によって作られたのであ
り︑アングロサクソンほ本質的に蕊民であった︒イギリスでの
自動車道路建設は一九五九年にやっと始まバたのである︒第五
の土地の用途は軍事用である︒虫後は食料と原料生産のための
L・ダドレイ・スタンプ﹁応用地理学﹂ れつっある︒虚栄にとつで重要なのほ︑経済的意味も含めての 良い土地を保存すること︒農場の適正規模を維持すること︑丘 陵地農某を集約化することと植林である︒
以上の諸要求を実現することは容易でない︒教授はここで三
つの黄金律をあげる︒一︑最適利用のルール︒二︑′多目的利用
の原則︒三︑無駄な土地を作らないである︒そして土地を配分
するには経済的考慮が唯山の基準ではない︒過去の遺産も尊重
しなけれはならない︒今日の都市計画と農村計画はこうした難
問題に完全な解答を与えていない︒
第八章でほ国策としての良い農業地を保存するための基礎と
して︑土地分幾をどう区分するかをとりあげている︒アメタカ
では︑A 耕作可能な肥よくな土地︑B 耕地には向かないが
放牧あるいは木材生産用の土地︑C 農牧林菜の経済的利用と
向かない土地の三鮮紅分類しているが︑イギリスのような古い
国ではもっと複雑である︒教授が劇九一一天年紅始めた土地分類
のくわしいことは︑教授の著書﹁イギリスの土地﹂紅番いてあ
る︒地形と土壌を基準にしたイギリスの土地分類をあげると︑
大分類工 良質の土地 1︑集約的耕作可能の劇等地 2︑一
般的良好農地 3︑牧草によい血等地 4︑良好だが粘﹂﹂もし
くほ重いロームの土地︑大分類Ⅱ 中質の土地 5︑中質の軽
い土地 6︑中質の鵬般的農地 大分敗Ⅱ やせた土地 7︑
︵四三五︶ 山 二五
第三十五巻 第三号
やせた重い十地 8︑やせた山地と荒野 9︑やせた軽い土地
10︑もっともやせた土地である︒これらの分布面積の比率をあ
げるとⅠ群三八爪七%︑Ⅱ群二六二二%︑Ⅱ群三二・八%であ
る◇
さて問題はこれらを相互に比較できるかどうかである︒教授
はここで潜在生産単位という概念を導入し︑大まかにいってタ
イプ1と3が2単位︑タイプ2と4が1単位︑タイプ5と6が0
・5単位︑タイプ7︑8︑9が0・1単位とする︒こうしてお
けばイギリス全土の潜在生産盈が計算できるし︑農地が他の用
途に使用される場合の国民経済的損失が測れるわけである︒
山方︑人間の食料年間必要畠をカロリーで計算し︑これを教
授は標準栄養単位と名づける︒こうしておけば土地と人間との
関係を連絡づけることができるわけである︒教授はこの関係か
ら日本が可能なかぎり米作とサツマ芋に集中していることの理
由を説明している︒
第九葦に入ると︑イギリスにおける人口の都市集中ほ産業革
命紅はっで促進され︑公式にほ八〇%以上が都市地域に住んで
いるとなっているが実際には九〇%が都市人口であると述べて
いる︒それに二つの大戦問の期間に大口ンドンと大バー︑\\ンガ
ムにますます人口が集中し︑古い工業地城が失業地域になっ
た︒こうした不健全なアンバランスは自由放任の成長の結果で
る︒このためイギリスでは要員会を作り合理的な国土計画紅 ︵四三六︶一i六
都市計画ならびに農村計画法と農業法が成立した︒
今やイギリスは土地資源の利用計画でほ世界でもっとも進ん
でおり︑各郡単位で実態調査と将来計画お作成している︒各郡
計画は全国的見地から調整され︑当面の五ケ年討画とそれにつ
づく二カ年計画がたてられる︒そしてこの計画は郡全体の計画
と重要な町についての計画とからできている︒
ここで農業部門についていえほ︑行政地域では表現できな
い農業地域の蝿界をきめなけれはならない︒そこで都市滝
界を設定し︑その内側では都市計画者ほ自由にできるが咤界外
側に及ぶときは農業省に相談しなければならないことにした︒
もう鵬つの都市周辺の農業にとっての問題は農場の配置であ
る︒農業も工業も同じく︑山ケ所にまとまったある大きさが必
要である︒都市計画者は往々にして都市の拡大のみに関心を奪
われている︒土地利用の計画が成功するためには何よりもすべ
ての関係者の共同と善意が必要である︒
笛二〇葦の航空写真利用は近年著しく発達しっつある部門で
ある︒一九三〇年代にイギリスで土地利用調査を行ったときは
航賓写真は殆んど使えなかったが︑今日では世界中で利用され
ている︒陸上から行けないところも航空写真はとれるし︑写良
は土地利用だけでなく︑地質や土壌の判定紅も使用されるし︑
苗代の耕地も識別できることで考盲学にも役立つのである︒
応用地理学の分野は何も土地と人間だけではない︒気候も重
様なのである︒気轟の局地的差異は住宅地を考えるとき膨響を 与えるし︑日当りのよいところと悪いところでは健康にちがい
がでてくる︒またアメリカやカナダでほ冷暖房が発達して年中 同じ服装にさえなっている︒これ紅関して充分理解されていな いのはビルの冷房は暖房より安いことである︒だから長期的に
みると熱帯では冷房の下で能率よく仕事が遂行されるようにな
るだろう︒もう一つの問題ほ気候と疾病との関係であり今後研 究が進められる必要がある︒
笛二二茸はふたたび農村土地利用計画の問題である︒すでに
述べたようにイギリスの人口の九割は都市人口であり︑その人 たらは農村問題を個人的経験を通して考えることはできない︒
それにイギリスの農村部は決して単調ではない︒こうした条件
のもとで︑イギリスほ︑一体どの程度の規模とどんな種類の農
業を持つべきであろうか︒現在多くみられるのほ平均叫00エ
ーカーの︑かつては数人の農業労働者をやとっていたが︑現在 では機械化で仙人やとえばよい家族農場である︒鵬九四七年の
農業法のもとでの政府の政策は︑書きにしろ怒きにしろさまざ まの型の混合農業を維持することである︒
第仙三貴の都市地理学はここ劇○−二〇年間を進歩した◇そ
の主要な分野は居住地としての都市それ自体と︑都市の周辺地 城への影響である︒都市は成長する紅つれて中心地区と住宅地
L・ダドレイ・スタンプ﹁応用地理学﹂ 都市計画者にも
の影響では後背地の概念が重要である○今日ではイギリス全体
内陸の中心地にも適用できる︒輸送機関︑とくに最近ではロー がロンドン︑リバプールの後背地である︒この後替地の概念は
ヵルバスが都市の後背地の咤界と形成する︒このことは都市計 画に重要である︒農産物市場の問題も同様であり︑自動車の発
達で小市場は消滅した︒またこうした事情は地方行政区分をど
の樺皮の大きさにするかに関係し︑行政単位は減少の傾向紅あ
る︒
ここで応用地理学のはとんどの分野紅重要なのほ歴史的に考 察することであり︑それは歴史的興味の問題ではなく過去から
現在への傾向を見るためである︒計画とは長いと思われる傾向 をのばすことであり︑悪いと思われる傾向を変えることである︒
二大戦間の人口の大都市集中は政府によって公式に悪い傾向と され︑工菜の再配置と古い工業地への拡張が図られたのである︒
第ふ四童の工業地理学の分野では︑市場調査への地理学的調
査と分析の方法の適用はイギリスよりもアメリカで発達したこ とがまず述べられている︒
さて工業の地理学的分析は単位の大きさも考えての立地の研 究とその地図化が第一段階である︒次に現在の分布を︑原料︑動 力︑輸送能力︑労働力︑市場などの要因で解釈することであ
る︒この場合地理学者は具体的な諸要因で考えるし︑経済学者
︵四三七︶ 二七
第三十五巻 第三骨
ほ輸送費のような二次的要因に還元しやすい︒
周知のようにイギリスの工業分布は産業革命によって決定さ
れ︑当時ほ炭田地帯に立地する傾向があった︒そして工業の発
展紅つれて地域的専門化ができた︒この事惜は今日なおそのエ
業の持続に作用している︒これを地理的慣性とか地理的モメソ
トといってよかろう︒すなわら一皮確立した工業地域はもはや
直接の条件がなくなっても持続し成長する︒また歴史的偶然も
エ業地域の持続に影響を与える︒例えばコベントリーの航空機
工業は︑プランターズの絹織物エがギルド制限のないこの町に
やってきたことの直接的結果である︒
工業家がエ場立地を計画するときは︑競争者︑関連産業︑労
働力などのさまざまの要因を禍査する︒そのさいの苗場調査紅
おける潜在購買力の調査ほ応用地理学の貢献できる分野であ
る︒このことは商業にもあてはまる︒なお位置による災害の可
能性の差異については今後︑自然地理学者の果すべき役割が大
lきい︒
最後の章の貿易についても︑エ其の場合と同じく組織的地図
化とその結果のパターンの解釈が必要である︒また市場調査の
問題についでいえば︑世界各地吸気供への無知でイギリスは毎
年数百万ポンドの損失を受けている︒イギリスでは有用でも︑
の気候粒食わないものを輸出しても鰊駄である︒ ︵四三八︶ 仙 劇八
大陸の多くが知られていなかったし︑飢えと病いが人口増加を
おさえていたからである︒今日では事情がちがう︒医学と衛生
の進歩で世界の人口増加率は過去のいかなる時よりも大きくな
った︒土地資源への人口圧はますますきびしくなっている︒土
地についていえは︑資源の保全とか計画について議論するが︑
必要なのは実態を正確につかむことである︒地表の人口分布と
土地の資源の現在の利用は仙連の諸要因の相互作用の結果であ
る︒地理的要因︑¢歴史的要因︑社会経済的要因が現状をきめて
いるし将来へも影響を与えている︒われわれは将来への計画の
ために諸傾向を明らかにすべきである︒
地理学老は統計学者と協力して地図的分析を人類の啓蒙と進
歩に役立たせなくてはならない︒地図化を通して表わされる不
規則性を説明し︑その要因を見出さねばならない︒
第二次大戦後の今日の重要事問題ほ︑地球はわれわれのため
に何を持っているのか︑われわれはいかにしてその資源を保全
しながら開発していくかである︒ここに応用地理学の分野が︑
将来の開発のための山つの生きた道具として成長してきた理由
がある︒
以上本書の内容を紹介したわけであるが︑スタンプ教授の持
論である土地資源への人口圧の問題ほ︑実ほ人月と土地を媒介
する環としての社会的︑経済的条件を明らかにしないのでは問
把挺することでぁる︒
応用地理学なる分野は国際的にも最近になって成立しっつあ
るのであり︑谷間武雄氏の展望︵人文地理山四巻二号︶によれ
ば︑この方面に関心を有する学者たちの国際的組織ができたの
は鵬九六〇年のIGUストックホルム大会以来である︒また木
内信蔵氏は︑山九五九年にポーランドで開かれたイギリス・ポ
ーランド地理学者による応用地理学セミナーの報告番の書評
︵地理学評論二五巻七号︶にふれて︑地理学の研究が社会の必
要に貢献すべきは理解できるが︑応用地理学が体系として成立
するかどうかは積極的な確信が持てない︒むしろアカデ︑︑\ツタ
な批判的地理科学の成長が応用を促進するのではあるまいかと
感想を述べている︒
たしかに地理学それ自体の進歩が第岬であることほいうまで
もない︒しかし地理学の研究方向を現実の問題に結びつけるこ
ともまた大事であろう︒谷間武雄氏は前述の展望で血九六血年
フランスのストラスブールで開かれたフランスの会合で︑応用
地理学の分野が ∴自然地理の応用 二︑農村問題 三︑都
市問題四︑地域計画︵工業立地・交通・観光を含む︶の四つに
しばられたことを記している︒スタンプ教授の業績ほ農村問題
を中心とした地域計画につながるものであるし︑日本での多田
文男民を中心とする水害地形分類がストックホルム大会で大き
L・ダドレイ・スタンプ﹁応用地理学﹂ ︒そして必要なことは
的な経済学の概念の下に資源の浪襲を含む社会的費用の聞題が 無視されてきたとの主張が表われてきている︒スタンプ教授の
名づける悪い傾向はこのカップの見解と関連してくるように思 われる︒カップのいう﹁生産め社会的費用の或る種の量的計
測﹂のためにも︑地理的諸条件の質的分析とそれら相互を盈的
に比較しうる方法を研究することが必要である︒
ともあれ本署の木内氏のいうようにこの方面の手頃なリーダ ーである︒
︵四三九︶ I九