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Ⅰ.緒 言
平成27年9月8日に東京有明医療大学(以下;本学)
とモンゴル国立医療科学大学(Mongolian National University of Medical Sciences;以下MNUMS)は大学 間国際交流協定を締結した.柔道整復学とモンゴル伝統 医学の学術研究を発展させることが本協定の目的の一つ である.その後,MNUMSの国際伝統医療学校に伝統医療 セラピスト学科(のちに柔道整復学科に改名)が誕生し,
平成28年9月13日から柔道整復学理論(以下;講義)お よび柔道整復学実習(以下;実技)の授業が開始された.
MNUMS伝統医療セラピスト学科の教育カリキュラム は本学柔道整復学科の教育カリキュラムを参考に作成さ れた.そのうち,柔道整復専門領域科目の教育を本学教 員が担当することになっている.元来,MNUMSでは講 義と実技を異なる教員が担当する――例えば足関節部の 骨折・脱臼の講義を行う教員と実技を行う教員は異なる
――ことが一般的である.一方で,本学では,講義を担 当した教員がその範囲の実技も担当する教授法が多く行わ れている.MNUMS伝統医療セラピスト学科に対する派 遣授業では,本学の教授法に則ってこれまで行ってきた.
しかし,伝統医療セラピスト学科の学生にとって,通 例実践されている教授法とは異なる方法で授業を行うこ とが有効な教授法であるか否かについては不明である.
そこで,モンゴル本来の方法と日本の方法といずれが好 ましいか調査することにした.得られた回答を吟味し,
MNUMS学生たちの授業に対する理解度が高まる適切な 教授法を検討することが本研究の目的である.
Ⅱ.対象と方法 1.対象
平成30年9月の派遣授業を受けたMNUMS伝統医療セ ラピスト学科の学生(3年生16名および2年生21名)を 対象とした.
2.方法
上記の派遣授業がすべて終了した後に無記名式アンケー ト用紙を配布して,調査を実施した.調査内容は7項目 とした.1〜3はnumerical rating scale(以下;NRS)
尺度を用い,4〜7は自由記述式とした.分析方法は単 純集計を用いた.
質問7項目を以下に示す.
1)「講義の理解度」について質問します.講義の内容 は理解できましたか.「0は全く理解できなかった」,
「10はすべて理解した」ものとして,理解度0~10 のうち,いずれかを ✓ で示してください.
2)「実技の理解度」について質問します.実技のやり 方は理解できましたか.「0は全く理解できなかっ た」,「10はすべて理解した」ものとして,理解度0
~10のうち,いずれかを ✓ で示してください.
3)「教授法」について質問します.講義と実技を同一 の教員が担当する方法をどう思いますか.「0は最 も良くない教授法である」,「10はこれより良い教授 法はない」ものとして,0~10のうち,いずれかを
✓ で示してください.
4)講義の進め方に改善点があれば記入してください.
5)実技の進め方に改善点があれば記入してください.
6)講義と実技を同一の教員が担当する時の良い点や悪 い点を具体的に挙げて下さい.
7)その他,何かあれば記入してください.
3.倫理的配慮
本研究は本学倫理審査委員会に承認された後に実施し た(有明医療大研第228号).
Ⅲ.結 果
NRS尺度を用いた調査結果を表1に,自由記述式を用 いた調査結果を表2に示す.「講義の理解度」,「実技の理 解度」および「教授法」の中で最もNRSの値が大きかっ たのは「教授法」であった.
Ⅵ.考 察
質問項目3「教授法」についてのNRSが平均9.4であっ たことから,MNUMS伝統医療セラピスト学科の学生は 講義を担当した教員がその範囲の実技の担当もすること が好ましい教授法であると考えていることが明らかとなっ た(表1).より好ましい理由として,授業の内容を「理
中 澤 正 孝 久 米 信 好 橋 本 昇
モンゴル国際伝統医療学校における効果的な教授法の検討
東京有明医療大学雑誌 Vol. 11:19-21,2019
報 告
東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科 E-mail address:[email protected]
20 東京有明医療大学雑誌 Vol. 11 2019
表1 質問項目1〜3に対する回答をNRS;numerical rating scaleで示した.
すべての対象者のNRS 3年生のNRS 2年生のNRS
講義の理解度 8.4±1.6 8.4±1.5 8.4±1.7
実技の理解度 9.1±1.1 8.9±1.4 9.2±0.8
教授法 9.4±1.6 9.0±2.2 9.7±0.7
表2 質問項目4〜7に対する回答
質問内容と回答 総数 3年生 2年生
項目4 講義の進め方に改善点があれば記入してください
特にない 10 4 6
学生の理解度を確認しながら授業を進めてほしい 4 3 1
進行を早くしてほしい 3 2 1
内容を簡略化してほしい 2 1 1
細かく説明してほしい 2 0 2
図や写真を多用してほしい 2 1 1
眠くなる時がある 2 2 0
臨床症例を多く紹介してほしい 1 1 0
項目5 実技の進め方に改善点があれば記入してください
このままが良い 8 3 5
特にない 7 4 3
実技の時間を増やしてほしい 3 2 1
前回の実技の復習から始めてほしい 1 1 0
実技練習をしている時に1人1人にアドバイスを欲しい 1 1 0
ひとり一人が実技の練習をする時間が足りない 1 1 0
整復や固定の実演を数回繰り返してほしい 1 0 1
項目6 講義と実技を同一の教員が担当する時の良い点や悪い点を具体的に挙げて下さい
理解しやすい,覚えやすい 17 7 10
講義と実技に一貫性がある 9 5 4
学生の理解度を教員が認識して実技を進めることができる 3 1 2
担当教員以外の知識や技術を学ぶことができない 3 2 1
講義と実技の担当が異なる時は教えてくれる内容が違う時がある 2 0 2
講義で理解できないことも実技の時間に同じ先生に聞くことができる 1 0 1
その先生のやり方を深く学ぶことができる 1 1 0
項目7 その他,何かあれば記入してください
日本方式はとても良い 7 2 5
授業が分かりやすい 7 2 5
日本語の授業を増やしてほしい 3 2 1
実技の材料が十分にあることはとても良い 3 0 3
学生に理解させようとしている姿勢を教員から感じる 2 0 2
講義の後すぐに実技をやるのが良い 2 0 2
授業で覚えなければならない量が多い 2 0 2
実技室が使えないときがある 2 1 1
全体的に進行をもっとゆっくりしてほしい 1 1 0
(単位:人)
21 解しやすい」や「覚えやすい」ことが質問項目6におい て挙げられている(表2).「講義と実技の担当が異なる 時は教えてくれる内容が違う時がある」との回答がみら れることから,学生にとって「講義と実技に一貫性があ る」授業は余分な混乱を招くことなく理解しやすいので あろう.授業進行の改善点を問うた項目4と5に関して,
「特にない」や「このままが良い」の回答が最も多かった ことから,派遣授業における教授法は原則的にこれまで と同様に行うことが良いと考えられる.さらには,「学生 の理解度を教員が認識して実技を進めることができる」
との回答から,教員は講義の理解度が学生によって異な ることを察しつつ実技の授業を進め,時には理論的背景 を復習する時間を積極的に設けることが授業の理解度や 満足度を高めると考えられる.
一方で,「担当教員以外の知識や技術を学ぶことがで きない」という,同一の教員が講義と実技を担当する教 授法に対する否定的な意見も存在する(表2,質問項目 6).現実的に,時間的制約のある派遣授業において複数 の教員で同じ範囲の授業を行うことは困難である.しか
し,より多くのことを学びたいという学生の知的欲求に 対して,許す限り応えるのが教員としての務めでもある.
折に触れて,書籍に掲載されている方法や学会で発表され ていた方法などについて紹介するのも一案かもしれない.
この調査結果はMNUMS伝統医療セラピスト学科の教 員と共有し,彼らの助言を受けながら教育効果をより高 めるための方策を検討するのに有益な資料となる.学生 の授業に対する理解度が高まれば,学生が柔道整復術を 実践する力も高まるであろう.さらには,派遣授業を通 して得られた教育経験は本学教員の質の向上につながり,
本学学生の理解度にも良い効果を与える可能性がある.
謝 辞
本調査は平成29年度および30年度の教育改革推進費を用いて実 施されました.Gurbadam Munkhzul先生(モンゴル国立伝統医療 学校教員)には授業およびアンケート調査における翻訳にご協力 頂きました.また,アンケート調査に協力してくれたMNUMS学 生と学生に対する授業を担当した本学教員に感謝いたします.
モンゴル国際伝統医療学校における効果的な教授法の検討