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【連続・コンパクト・連結】

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幾何学序論2講義ノート

【連続・コンパクト・連結】

市原一裕

平成

28

9

24

(2)
(3)

3

はじめに

このノートは平成28年度後期「幾何学序論2」の講義用のノート(講義を 実際にするためのメモ,および,学生の自習(予習と復習)用)として作成 しています.わからないところや,ミスだとおもわれるところがあれば,い つでも遠慮なく,市原まで連絡ください.質問やコメントによって,みんな のノートとして,より良いものにしていければと思っています.

なお前期「幾何学序論1」の履修は仮定していません.したがって,重複 する内容もあり,また記号などが異なることもあるかもしれません.これに ついては,講義を進めながら,適宜,修正していくつもりです.

さて,ここでは講義の概略や講義前の準備について説明しましょう.

この講義(幾何学序論)のテーマは「集合と位相(トポロジー(topology))」

です.より正確には(固い感じのいいまわしでは)「集合論と位相空間論」が テーマです.

知っての通り,いわゆる現代の数学は

代数学,幾何学,解析学,(数学基礎論),(応用数学),· · ·

というように大きく分類されています.もちろん研究の先端においては,そ れぞれの分野を横断するような革新的な研究が,日進月歩で押し進められて います.しかしそれでも,「集合論と位相空間論」は,現代数学の(ほとんど)

全ての基盤ということができるかと思います.(もちろん異論のある方もいらっ しゃるかとは思いますが).つまり,この現代数学の共通言語ともいえる「集 合論と位相空間論」の初歩を習得することが,この講義の目標となります.

ここで「初歩を習得」とかいた具体的な内容として考えているのは,いわ ゆる「読む」「聞く」「書く」「話す」というようなことが,きちんとできるよ うになるということです.その為には,基本的な用語を知ること(定義を覚 える,意味を理解する,感覚的にわかる),および,抽象的な論理を理解し て使えるようになること,が必要だと思います.特に後者は,普通は講義を 聴くだけではできるようにはならないと思います.従って,自分の頭で考え 練習することが大事です.このノートが少しでもその役に立つと嬉しいので すが.

また大変残念なことに,いわゆる「位相空間」について,より深く学ぶと ころまでは進むことができないと思います.意欲のある人は,あとに述べる 参考文献をもとに,ぜひ自分で勉強を進めていって欲しいと思います.

(4)

講義題目について

蛇足かもしれないですが,講義題目について補足です.上のような講義内 容,つまり,「現代数学の共通基盤」として集合と位相を学ぶ,を説明すると,

なぜ講義題目が「幾何学序論」なのですか? と質問をされることがあります.

これには,大きく2つの理由があると考えています.

一つは,歴史的理由です.数学の共通基盤(というか出発点)として,「数 学」という学問をはじめて言語化(理論的に)した本というのが,いわゆる ユークリッドの「原論(ストイケイア(ギリシャ語),英語では「Elements」)」

でした(紀元前3世紀).この本の多くの部分(全てではない)が「幾何学」

に関するものであり,幾何学原論などとも呼ばれることから,「幾何学序論」

という講義題目で,現代数学の基礎である「集合と位相」を学ぶことにして います.

もう一つは,現代数学において,より詳しく,位相空間を専門的に扱う分 野を位相幾何学(トポロジー)といっています.そこで,「幾何学序論」とい う講義題目で「集合と位相」を学ぶことにしています.注意ですが,英語で

Topologyといったときに,この学問分野の名称(通常,日本語では,位相幾

何学)と,集合に対して決まる構造(日本語では厳密には位相構造,この講 義では最後の方に触れるだけかもしれない)の両方を指します.良く混乱し て間違ってしまうことがあるので,どっちの意味で言って(書いて)いるの か,気をつけるようにしてください.

(5)

講義の概要

平成28年度は,これまで市原が担当してきた「幾何学序論1,2」の後半 部分だけを講義で行います.と言うと,途中からで大丈夫か,と思われるか もしれませんが,昨年度も,前期を受けていなくても,後期が受けられるよ うに配慮をしていたので,問題ないはずです.そこで,このノートは,昨年 度に前期「幾何学序論1」で講義した内容を,(そのまま)ノートとして残し ておきます.それが,第1章から第3章になります.

「幾何学序論2」の内容は第4章から第7章になります.

4章のテーマはユークリッド幾何学から位相幾何学(トポロジー)へ,で す.まずは1次元の幾何学(数直線上の幾何学)からはじめて,高校までで 学んで来た図形の学習を「ユークリッド幾何学」として見直し,きちんと定 義し,そして,そこからの発展として,新しい幾何学とか柔らかい幾何学と 呼ばれる「位相幾何学(トポロジー)」を定義します.

5章では,空間のコンパクト性について学びます.基本的な問題として

「開区間(0,1)と閉区間[0,1]が同相か?」という問題を考え,これを証明す る手段として「コンパクト」という概念を導入します.

6章では,空間(図形)の連結性を学びます.ここで最終的に証明した い問題は「数直線Rと平面R2は同相か?」というものです.直感的には当 たり前なことをどうやって証明するか.よくよく考えて進めていきたいと思 います.

最後に第7章では,ユークリッド空間における距離と開集合の概念を一般 化して,より抽象的な「距離空間」と「位相空間」を定義します.より詳し い性質までは触れられませんが,とにかく定義だけはきちんとするのが目標 です.付録として,点列で定義したユークリッド空間内の部分集合のコンパ クト性を,開被覆を用いた形で再定義し,位相空間がコンパクトであること の定義を与えます.

なお昨年度前期「幾何学序論1」の内容は次の通りでした.

1章はテーマは集合の基礎です.集合の相等の証明がかけるようになる こと,直積集合とはなにかがわかること,集合族の性質の証明ができるよう になることが目標です.

2章のテーマは写像の基礎と集合の濃度です.全単射について基礎的な 証明が出来るようになること,さらにそれを用いて,集合の濃度の大小につ いて理解することを目標とします.

3章のテーマは数体系の構築です.自然数の定義(ペアノの公理による)

から始め,同値関係を用いて,整数の集合と有理数の集合を構成していきま 5

(6)

す.さらに,コーシー列の集合から同値類を考え,実数の集合を構築します.

抽象的な数体系を論理的に構築していく様子を学ぶことが目標です.

(7)

参考書

この講義では,特に決まった教科書(テキスト)は使用しません.昨年度 までの講義内容をもとに,このノートを基に進めていきます.

より詳しい内容を勉強したい人は,以下の参考書が役に立つかと思います.

ただし,このノートで使っている用語や記号とは,いろいろ異なっているこ とがあるので,注意してください.

数学30講シリーズ3 集合への30 志賀浩二 著

A5196ページ/19880520 ISbn978-4-254-11478-2C3341 定価3,780円(税込)

数学30講シリーズ4 位相への30 志賀浩二 著

A5228ページ/19880910 ISbn978-4-254-11479-9C3341 定価3,780円(税込)

7

(8)
(9)

9

目 次

はじめに 3

講義題目について . . . . 4

講義の概要 . . . . 5

参考書 . . . . 7

1章 集合 13 1.1 集合とは. . . . 14

1.2 包含関係. . . . 14

1.3 集合の演算 . . . . 17

1.3.1 和集合と共通部分. . . . 17

1.3.2 補集合 . . . . 18

1.3.3 差集合 . . . . 20

1.3.4 直積集合. . . . 20

1.3.5 冪集合 . . . . 21

1.4 集合族 . . . . 23

1.4.1 集合族の和集合・共通部分. . . . 23

1.4.2 集合族の補集合 . . . . 24

【余談】集合の集合? . . . . 26

2章 写像の基礎と集合の濃度 27 2.1 写像とは. . . . 28

2.2 像と逆像. . . . 31

2.3 合成写像. . . . 32

2.4 単射 . . . . 34

2.5 全射 . . . . 34

2.6 全射・単射と合成写像 . . . . 35

2.7 全単射 . . . . 35

2.8 集合の対等と濃度 . . . . 37

2.8.1 有限集合とは . . . . 37

2.8.2 無限集合とは . . . . 38

2.9 可算集合と非可算集合 . . . . 38

2.10 濃度の比較 . . . . 39

【余談】関数とは . . . . 41

(10)

3章 数とは 43

3.1 自然数の定義 . . . . 44

3.2 同値関係と商集合 . . . . 45

3.2.1 同値関係. . . . 45

3.2.2 商集合 . . . . 45

3.2.3 写像の誘導 . . . . 46

3.3 整数とは. . . . 48

3.3.1 整数の集合の構成. . . . 48

3.3.2 整数の演算と大小関係 . . . . 49

3.4 有理数とは . . . . 51

3.4.1 有理数の集合の構成 . . . . 51

3.4.2 有理数の集合の濃度 . . . . 52

3.5 実数とは. . . . 54

3.5.1 実数の定義 . . . . 54

3.5.2 実数の完備性と連続公理 . . . . 58

3.5.3 アルキメデスの原理と有理数の稠密性 . . . . 59

3.6 実数の集合の濃度 . . . . 59

【余談】カントールの連続体仮説 . . . . 61

4章 ユークリッド幾何学と位相幾何学 63 4.1 1次元の幾何学 . . . . 64

4.1.1 数直線上の合同 . . . . 64

4.1.2 連続関数. . . . 65

4.1.3 同相写像. . . . 65

4.2 連続関数と開集合・閉集合 . . . . 67

4.2.1 ε-近傍 . . . . 67

4.2.2 開集合と閉集合 . . . . 67

4.2.3 連続写像と開集合・閉集合. . . . 69

4.3 n次元ユークリッド幾何学 . . . . 70

4.3.1 n次元空間とは . . . . 70

4.3.2 ユークリッド距離. . . . 70

4.3.3 ユークリッド空間とユークリッド幾何学 . . . . 71

4.4 Rnの連続写像 . . . . 74

4.5 部分集合と開集合・閉集合 . . . . 77

【余談】トポロジーと位置と形 . . . . 81

5章 コンパクト空間 83 5.1 数列と点列 . . . . 84

(11)

5.2 点列コンパクト . . . . 86

【余談】どうしてコンパクトなんて考えるの?. . . . 88

6章 連結性と弧状連結性 89 6.1 連結性 . . . . 90

6.1.1 連結とは. . . . 90

6.1.2 連続写像と連結性. . . . 90

6.2 連結性とその応用 . . . . 91

6.2.1 連結性と部分集合. . . . 91

6.2.2 連結性の応用 . . . . 91

6.3 弧状連結性 . . . . 91

6.3.1 弧状連結とは . . . . 91

6.3.2 道の接合. . . . 93

6.4 弧状連結成分 . . . . 94

7章 距離空間と位相空間 97 7.1 距離空間. . . . 98

7.2 位相空間. . . . 99

7.3 被覆コンパクト . . . .100

11

(12)
(13)

13

1 章 集合

この章では,まず(高校で教わったような)集合についての復習からスター トします.まずは,集合の相等などについて,ちゃんと(論理的な)証明が かけるようになるようにしましょう.また最後は「集合の集合」である集合 族を扱います.

(14)

1.1. 集合とは 1. 集合

前期第

1

1.1

集合とは

定義1.1.1. 【 集合(set)】

確定した,互いに区別できる対象を1つにまとめたもの(数学辞典より)

注意 1.1.1. 定義(definition)とは,用語の意味を明確に規定する文のこと

(式を含んでもよい).よくdef. とかdfとかdf’nなどと省略される.

これから特に定義はなにかということをよくよく考えること.

集合の表し方(記法)

ものを書き並べて{ }でくくる(列挙法)

「〜をみたすものの全体」という言い方

• {記号|条件}

集合の記号:(属する(belong to)),∈/(属さない)

用語:要素,元(element)

空集合(empty set):∅,∅

注意 1.1.2. (記号の由来)詳しくは,以下を参照.

Earliest Uses of Symbols of Set Theory and Logic http://jeff560.tripod.com/set.html

よく使われる記号

N,Z,Q,R,C 厳密な定義はあとで.

1.2

包含関係

定義1.2.1. 【 部分集合(subset)】2つの集合XY について,X

(15)

1. 集合 1.2. 包含関係

定義 1.2.2. 【 真部分集合(proper subset)】集合X が集合Y の真部 分集合であるとは,X ⊂Y だがX ̸⊃Y であること.であらわす.

注意 1.2.1. 「A⊂B」⇔「A⊃B」(排反事象ではない)

X⊂X

• ∅ ⊂X (数学的(論理的)な意味)

bababababababababababababababab

注意1.2.2. ABに含まれている,つまりA⊂Bのときでも,A

Bの要素ではない.(「含まれている」という言い方にだまされな いこと!)

注意 1.2.3. ひとつの集合内の部分集合達を考えるとき,それらすべてを含

む集合を全体集合といったりする.

定義1.2.3. 【 集合の相等 】 2つの集合X Y が等しいとは,

X ⊂Y かつX ⊃Y が成り立つこと.

(つまり,全ての要素が等しい)

15

(16)

1.2. 包含関係 1. 集合

練習問題 1.2.1. 次の集合を列挙法で表しなさい.

(1) {n2|n∈Z, 2≤n≤3}

(2) {pq |p, q∈Z, 1≤p≤3, 1≤q≤4} (3) {x|x∈R, x2+x+ 10}

練習問題 1.2.2. {3x|x∈R}=Rを示しなさい.

練習問題 1.2.3. A={2x21|x∈R}B={x∈R|x >−2}について,

ABを示しなさい.

練習問題 1.2.4. A={n∈N| nは偶数}B ={n(n+ 1)|n∈N}につ いて,ABを示しなさい.

(17)

1. 集合 1.3. 集合の演算

前期第2講

1.3

集合の演算

演算(えんざん)とは,いくつかの与えられたものから,一定の法則を適 用して,他のものを作り出す操作のこと.

以下,1つの集合U を固定して(U を全体集合(Universal set)として),

その部分集合について考える.つまり,{x| · · · }と書いたら{x|x∈U,· · · } のこと.

1.3.1

和集合と共通部分

定義1.3.1. 【 和集合(Union),(cup,カップ)】

2つの集合ABについて,

A∪B :={x|x∈Aまたはx∈B}ABの和集合という.

注意 1.3.1. X :=Y という記号で「XY で定義する」という意味.

定理1.3.1. 任意の2つの集合ABについて次が成り立つ.

(1)A∪A=A (2)A∪ ∅=A

(3)A∪B=B∪A (4)A⊂A∪BかつB⊂A∪B

定義1.3.2. 【 共通部分(intersection) ∩(キャップ,cap)】

2つの集合ABについて,

A∩B :={x|x∈Aかつx∈B}ABの共通部分という.

注意 1.3.2. 共通部分のことを,積集合(product set)ということもある.

定理1.3.2. 任意の2つの集合ABについて次が成り立つ.

(1)A∩A=A (2)A∩ ∅=

(3)A∩B=B∩A (4)A⊃A∩BかつB⊃A∩B

定理1.3.3. 集合A,B,Cについて以下が成り立つ.

(1) 「A⊂CかつB⊂C」ならばA∪B⊂C (2) 「C⊂AかつC⊂B」ならばC⊂A∩B

17

(18)

1.3. 集合の演算 1. 集合

定理1.3.4. 集合A,B,Cについて以下が成り立つ.

(1) (A∪B)∪C=A∪(B∪C) (2) (A∩B)∩C=A∩(B∩C) (3) A∪(B∩C) = (A∪B)∩(A∪C) (4) A∩(B∪C) = (A∩B)∪(A∩C)

1.3.2

補集合

定義1.3.3. 【 補集合(complement)】

全体集合Uの部分集合Aに対して,

Ac:={x∈U |x /∈A}Aの補集合という.

(ccomplement の頭文字)

注意 1.3.3. 高校ではA¯を使っていたと思うが,ここではAcにする.¯は,他 でも使うので(例えば,共役複素数).

定理1.3.5. 全体集合Uの部分集合Aについて,

(1)A∪Ac =U (2)A∩Ac = (3)(Ac)c=A (4)集合BA∪B=U A∩B =をみたすならばB=Ac 定理1.3.6. 全体集合Uの部分集合ABについて,

(1)A⊂B⇔Ac⊃Bc

(2)【ド・モルガンの定理】 (A∪B)c =Ac∩Bc (A∩B)c=Ac∪Bc

注意 1.3.4. 論理におけるド・モルガンの定理と対応している(感覚的には

意味は一緒).

(19)

1. 集合 1.3. 集合の演算 練習問題 1.3.1. A∪B=B∪Aを証明しなさい.

練習問題 1.3.2. 集合U の部分集合A,B,Cについて,A(B∪C) = (A∩B)∪(A∩C)を示しなさい.

練習問題1.3.3. 全体集合Uの部分集合ABについて,(A∩B)c=Ac∪Bc を証明しなさい.

19

(20)

1.3. 集合の演算 1. 集合

前期第3講

1.3.3

差集合

定義1.3.4. 【 差集合(difference set)】

2つの集合ABについて,A−B:={x|x∈A, x /∈B}

ABの差集合という.A−B=A∩Bc =A−(A∩B)ともかける.

注意 1.3.5. A\Bと書くこともある.

注意 1.3.6. BAの部分集合でなくても,A−Bは定義される.

定理1.3.7. 2つの集合ABについて,

(A∪B)−(A∩B) = (A−B)(B−A)

注意 1.3.7. (A∪B)−(A∩B)のことを,ABの対称差(たいしょうさ,

symmetric difference)ともいう.A△Bであらわしたりする.

1.3.4

直積集合

定義1.3.5. 【 直積集合(direct product)】(Cartesian productとも)

2つの集合A Bに対して,Aの要素xBの要素yの組(x, y)全体 の集合を,ABの直積集合といい,A×Bとかく.

注意 1.3.8. 最初に「発見」したのは,ルネ・デカルトとされる(1637年).

いわゆる座標(デカルト座標).

注意 1.3.9.

(x1, y1)(x2, y2)に対して,

(x1, y1) = (x2, y2)⇔x1=x2 かつy1=y2

=B ならばA×B̸=B×A

(21)

1. 集合 1.3. 集合の演算

定理1.3.8.

(1) 集合Aに対して,A× ∅=∅ ×A=

(2) 集合A,B,Cに対して,

(a) (A∪B)×C= (A×C)∪(B×C) (b) (A∩B)×C= (A×C)∩(B×C) (3) A⊂X,B⊂Y のとき,

(X×Y)(A×B) = ((X−A)×Y)(X×(Y −B))

1.3.5

冪集合

定義1.3.6. 【 冪集合(べきしゅうごう,power set)】集合Aの部分集

合の集合をAの冪集合(べきしゅうごう)といい,2Aであらわす.

注意 1.3.10. 冪集合の記号はいろいろある.P(A)とかP(A)とか.

定理1.3.9. (冪集合の要素の個数)

要素がm個の集合Aに対して,その冪集合は2m個の要素(集合)か らなる集合である.

21

(22)

1.3. 集合の演算 1. 集合

練習問題 1.3.4. 2つの集合ABについて,

(A∪B)−(A∩B) = (A−B)∪(B−A)を証明しなさい.

(Hint: 定義1.3.4と定理1.3.6と定理1.3.4を使う.

練習問題1.3.5. 集合A,B,Cに対して,(A∩B)×C= (A×C)∩(B×C) を証明しなさい.

練習問題1.3.6. 集合A={1,3,5}に対して,2Aを列挙法であらわしなさい.

練習問題 1.3.7. 空集合に対して,222 を列挙法であらわしなさい.

(23)

1. 集合 1.4. 集合族

前期第4講

1.4

集合族

定義 1.4.1. 【集合族(family of sets)】ある集合Λの各要素λ∈Λ 対応して,集合Aλが与えられているとき,この集合の集まり{Aλ}λΛ

を,Λを添字集合(index set)とする集合族という.

Λ: ギリシャ文字のひとつ.ラムダ とよむ

注意 1.4.1. 集合族と添字集合は,なんの関係もない.添字集合は単にラベ

ルをつけるだけのもの.

記号

確認:以下では,全体集合Uを一つ定めてあって,{Aλ}λΛは,集合Λ を添字集合とする部分集合族をあらわす.

1.4.1

集合族の和集合・共通部分

定義1.4.2. 【集合族の和集合】

集合族{Aλ}λΛの和集合とは

λΛ

Aλ:={x∈U | ∃λ∈Λ s.t. x∈Aλ}

1.4.1. Λ ={1,2}のとき,

λΛ

Aλ=A1∪A2

一般には,Λは自然数とは限らないので,このように列挙するような書き 方はできない.

定義1.4.3. 【集合族の共通部分】

集合族{Aλ}λΛの共通部分とは

λΛ

Aλ:={x∈U | ∀λ∈Λ, x∈Aλ}

23

(24)

1.4. 集合族 1. 集合

定理1.4.1. (集合族の和集合・共通部分の性質)

全体集合Uの部分集合族{Aλ}λΛU の部分集合Bに対して,以下 が成り立つ.

(1) (∪

λΛ

Aλ

)

∪B = ∪

λΛ

(Aλ∪B)

(2) (∩

λΛ

Aλ

)

∩B = ∩

λΛ

(Aλ∩B)

(3) (∩

λΛ

Aλ

)

∪B = ∩

λΛ

(Aλ∪B)

(4) (∪

λΛ

Aλ

)

∩B = ∪

λΛ

(Aλ∩B)

1.4.2

集合族の補集合

定理 1.4.2. 全体集合U の部分集合族{Aλ}λΛに対して,次が成り 立つ.

(1) (∪

λΛ

Aλ

)c

= ∩

λΛ

(Aλ)c

(2) (∩

λΛ

Aλ

)c

= ∪

λΛ

(Aλ)c

(25)

1. 集合 1.4. 集合族

練習問題 1.4.1. n∈Nに対して,An:=

[

1 n,1

n ]

Rとするとき,

n∈N

An [1,1] =A1を証明しなさい.

練習問題 1.4.2. n∈Nに対して,An:=

(

1 n,1

]

Rとするとき,

n∈N

An [0,1]を証明しなさい.

練習問題 1.4.3. 全体集合Uの部分集合族{Aλ}λΛUの部分集合Bに対 して,以下を証明しなさい.

(∩

λΛ

Aλ

)

∩B= ∩

λΛ

(Aλ∩B)

注意 1.4.2. a < bである実数abに対して,[a, b]は数直線上の閉区間を あらわす.つまり,

[a, b] ={x∈R|a≤x≤b} くわしくは後で

注意 1.4.3. 記号の意味.≦は世界的には余り使われていない記号

なので,この講義ではを主に使う.「小なりイコール」と日本語では読むこ とが多い.x以下」「たかだかx(at mostx)」などともいう.

注意 1.4.4. a < bである実数abに対して,(a, b)は数直線上の開区間を あらわす.つまり,

(a, b) ={x∈R|a < x < b} 同様に,半開区間(a, b][a, b)も定義する.

25

(26)

1.4. 集合族 1. 集合

【余談】集合の集合?

集合族は「集合の集合」のようなもの.では,本当に「集合」?

ただし,「集合の集合」を無制限に使うのは危険!

(ラッセルのパラドックス,1902)

V :={X |X は集合 は集合だろうか?

もし,これが本当に集合ならば,

Z:={X∈V |X ̸∈X} V の部分集合.つまり,集合.

さて,このZについて,Z∈Z だろうか? それとも,Z̸∈Z だろうか?

(参考文献)

結城 浩(著)

「数学ガール ゲーデルの不完全性定理」(数学ガールシリーズ 3)

(コミック版もある)

個人的なおすすめは 野矢 茂樹(著)

無限論の教室(講談社現代新書)

もうひとつ,参考文献.

一昨年の3年生がゼミ発表の為に調べて書いた解説を,次のページに置い てあります.

http://www.math.chs.nihon-u.ac.jp/~ichihara/Labo/Notes/2012/3rd/0516Kiyota.pdf 正直,ちょっと難しいだろうけど,良い読み物になっていると思う.

ちなみにこの学生は,このゲーデルの不完全性定理に関して卒論を書きま した.

(27)

27

2 章 写像の基礎と集合の濃度

この章では,まず写像について復習をして,基本をしっかり身につけるよ うにする.特に,全射/単射を確実に理解しよう.最後には,全単射の考え 方を利用して,集合の濃度について学ぶ.

(28)

2.1. 写像とは 2. 写像の基礎と集合の濃度

前期第5講

2.1

写像とは

定義2.1.1. 【写像(map)】

集合Xから集合Y への写像とは,Xのある要素とY のある要素との間 の対応関係のこと.

注意 2.1.1. 狭い意味では「ある要素からある要素を対応させるルール(法

則)」のこと.一般には明確なルールはなくても良い(対応関係さえはっきり していれば)(ディリクレの定義)

bababababababababababababababab

【写像の表し方】f :X→Y で写像fをあらわす.

写像fが要素xf(x)に写すことをx7→f(x)とあらわす.

定義2.1.2. 【始域(source),終域(target)】

写像f :X→Y に対し,集合Xfの始域,集合Y fの終域という.

定義2.1.3. 【定義域(domain),値域(range)】

写像f :X →Y に対して,f による対応関係があるようなx∈X の集 合をfの定義域といい,x∈Xに対してf(x)の集合をfの値域という.

注意 2.1.2. この定義からわかるように,一般には,f の定義域はf の始域

の部分集合であり,f の値域はfの終域の部分集合となる.

ただし通常は,始域と定義域は一致すると仮定しておく.このような写像 を特に全域写像,そうでない写像を部分写像ということもある.

2.1.1. h:NR,h(n) = 1

n−3 とすると,これは写像ではない(全域写 像ではない.部分写像ではあるけれど).例えば,始域をN− {3}とするか,

h(n) =



 1

n−3 if= 3 2π ifn= 3 などとすれば写像になる.

(29)

2. 写像の基礎と集合の濃度 2.1. 写像とは

定義2.1.4. 【関数(function)】

終域が数の集合(たとえば,RとかCとか)である写像のこと.

注意 2.1.3. 昔は「函数」とかいた.この「函(かん)」は「はこ」の意味.

注意2.1.4. おおざっぱに言ってしまえば,関数を(微積を使って)研究する

のが解析学.

終域が複素数の集合Cである関数を特に,複素関数といい,複素関数を研 究するのが複素解析学(函数論もしくは関数論ともいう).

定義2.1.5. 【写像の相等】

2つの写像f :X →Y g:X →Yに対して,

X =XかつY =Y,さらに,∀x∈Xに対してf(x) =g(x) が成り立つとき,fgは等しいという.

2.1.2. f(x) =x21で定まる写像f :RRと,g(x) =x21で定ま る写像g:NRは等しくない! なぜなら,fgは定義域が異なるから.

関数をあらわす式だけをみないこと. 式は関数ではない

定義2.1.6. 【恒等写像(identity map)と包含写像(inclusion map)】

集合Xの恒等写像 idX :X →Xとは,∀x∈X,idX(x) =xで決まる 写像のこと.つまり,なにも動かさない写像のこと.

一方で,XY(つまり,X Y の真部分集合)のとき,包含写像

(inclusion map)iX :X →Y とは,∀x∈X,iX(x) =xで決まる写像

のこと.

注意 2.1.5. これら2つの写像は等しくない.なぜなら,終域が違うから.

(始域も定義域も値域も等しいけど).

定義2.1.7. 【制限写像(restriction map)】

写像f :X →Y Xの部分集合Aに対して,A∋a7→f(a)で決まる 写像A→Y を,fAへの制限写像といい,f|Aであらわす.

つまり,f|A:A→Y,f|A(a) =f(a)となる.

注意 2.1.6. f f|Aは始域が違うので,やっぱり異なる写像.

29

(30)

2.1. 写像とは 2. 写像の基礎と集合の濃度 練習問題 2.1.1. f(x) = 2x21で定義される写像f :RRの始域,終域,

定義域,値域を書きなさい.

練習問題 2.1.2. f(x) =xで定義されるf :{0,1} →Rと,g(x) =x2で定 義されるg:{0,1} →Rが等しいことを証明しなさい.

練習問題 2.1.3. 包含写像iQ:QRと,制限写像id|Q:QRは,写像 として等しいことを証明しなさい.

(31)

2. 写像の基礎と集合の濃度 2.2. 像と逆像

前期第6講

2.2

像と逆像

定義2.2.1. 【像(image)】

写像f :X →Y Xの要素xに対して,f(x)∈Y で決まるY の要素 fによるxの像という.

写像f :X →Y Xの部分集合Aに対して,{f(a)∈Y |a∈A}で決 まるY の部分集合をf によるAの像といい,f(A)とかく.

特に,fによる定義域Xの像を,(単に)fの像といい,f(X)とかく.こ れはつまりf の値域のこと.

注意 2.2.1. f(A)Y の要素ではなくて部分集合であることに注意!

定理2.2.1. A,Bを集合とし,f :A→Bを写像とする.Aの部分集

A1A2に対して,次が成り立つ.

(1) A1⊂A2⇒f(A1)⊂f(A2) (2) f(A1∪A2) =f(A1)∪f(A2) (3) f(A1∩A2)⊂f(A1)∩f(A2) (4) f(A1−A2)⊃f(A1)−f(A2)

注意 2.2.2. (1)の逆は成り立たないこともある.

定義2.2.2. 【逆像(inverse image)】

写像f :X→Y Y の要素yに対して,{x∈X|y=f(x)∈Y}で決 まるXの部分集合をfによるyの逆像という.f1(y)であらわす.

写像f :X →Y Y の部分集合Bに対して,{x∈X |f(x)∈B}で決 まるXの部分集合をfによるBの逆像という.f1(B)であらわす.

注意2.2.3. f1とかいても,逆写像ではない.f1(x)でひとつの記号.そ して,f1(x)Xのひとつの要素ではなくて部分集合であることに注意!

またBの逆像を考える時,Bfの像f(X)に入っていなくても良い.例 えば,y /∈f(X)のとき,f1(y) =となる.

31

(32)

2.3. 合成写像 2. 写像の基礎と集合の濃度

定理2.2.2. A,Bを集合とし,f :A→Bを写像とする.Bの部分集

B1,B2に対して,次が成り立つ.

(1) B1⊂B2⇒f1(B1)⊂f1(B2) (2) f1(B1∪B2) =f1(B1)∪f1(B2) (3) f1(B1∩B2) =f1(B1)∩f1(B2) (4) f1(B1−B2) =f1(B1)−f1(B2)

注意 2.2.4. (1)の逆は成り立たないこともある.例えばf1(B1) =のと きなど.

定理 2.2.3. X,Y を集合とし,f :X →Y を写像とする.X の部分

集合A,Y の部分集合Bに対して,次が成り立つ.

(1) f1(f(A))⊃A (2) f(f1(B))⊂B

2.3

合成写像

定義2.3.1. 【合成写像(composition map)】f :X→Y g:Y →Z という2つの写像に対し,fgの合成写像g◦f :X →Zを,g◦f(x) :=

g(f(x))と定義する.

定理2.3.1. f :X →Y,g:Y →Z,h:Z→W とするとき,

(h◦g)◦f =h◦(g◦f)

注意 2.3.1. この定理から,(h◦g)◦fおよびh◦(g◦f)のことを,h◦g◦f と書いても大丈夫ということ.

(33)

2. 写像の基礎と集合の濃度 2.3. 合成写像 練習問題 2.3.1. f :RR,f(x) =x2+ 2とするとき,

(1) 次の集合の像を求めなさい.

(a) A1= [0,1]

(b) A2= (2,3]

(c) A3= (4,5)

(2) 次の集合の逆像を求めなさい.

(a) B1= [0,1]

(b) B2= (2,3]

(c) B3= (4,5)

練習問題 2.3.2. 写像f : X →Y とし,A1A2Xの部分集合とする.

このとき,次を証明しなさい.

A1⊂A2⇒f(A1)⊂f(A2)

練習問題 2.3.3. 写像f : X →Y とし,A1A2Xの部分集合とする.

このとき,次を証明しなさい.

f(A1−A2)⊃f(A1)−f(A2)

練習問題2.3.4. f :RR,f(x) = 2x+ 3と,g:RR,g(x) =x2+x+ 1 について,次に答えなさい.

g◦f,f◦g,f◦f,g◦gを式であらわしなさい.

f◦f◦ · · · ◦f(n個の合成)を式であらわしなさい(できれば,数学的 帰納法で証明しなさい).

33

(34)

2.4. 単射 2. 写像の基礎と集合の濃度

前期第7講

2.4

単射

定義2.4.1. 【単射(injection, monomorphism, one-to-one map)】

写像f :X→Y が単射であるとは,∀x1, x2∈Xに対し,「x1̸=x2なら f(x1)̸=f(x2)」が成り立つということ.

言い換え(1)

f が単射 ⇔ ∀x1, x2∈Xに対し,「f(x1) =f(x2)ならばx1=x2」が成 り立つということ.

注意 2.4.1. この言い換えは,定義2.4.1の対偶.証明のときに良く使う.

言い換え(2)

f が単射 ⇔ ∀y∈Y, ♯(f1(y))1

注意 2.4.2. ♯(S)は集合Sの要素の数をあらわす

どのようにして与えられた写像が単射かどうか判断するか?

定義域が有限集合のときはすべての要素の行き先を調べる.

定義域が無限集合のときは,定義の対偶(上の言い換え(1))を調べる とうまくことが多い.

注意 2.4.3. 単射性を調べるときは,定義域を把握しておく必要がある.つ

まり,定義域によって,単射になったりならなかったりする.

2.5

全射

定義2.5.1. 【全射(surjection, epimorphism, onto map)】

写像f : X Y が全射であるとは,「∀y Y に対し,∃x X s.t.

y=f(x)」が成り立つということ.

言い換え

(35)

2. 写像の基礎と集合の濃度 2.6. 全射・単射と合成写像

2.6

全射・単射と合成写像

定理 2.6.1. X,Y,Zを集合とし,f :X →Y g:Y →Z2 の写像とする.

(1) f gが単射 g◦f は単射 (2) f gが全射 g◦f は全射 (3) g◦f :X →Zが単射 fは単射 (4) g◦f :X →Zが全射 gは全射

2.7

全単射

定義2.7.1. 【全単射(bijection)】

写像f :X →Y が全単射であるとは,f が単射かつ全射ということ.

言い換え

f が全単射 ⇔ ∀y∈Y, ♯(f1(y)) = 1

定義2.7.2. 【逆写像(inverse map)】

写像f :X →Y が全単射であるとき,∀y∈Y に対して,♯(f1(y)) = 1 より,y=f(x)となるx∈Xが唯一つ存在する.

従って,y7→xという対応によりY からXへの写像が定まる.

この写像をf の逆写像といい,f1:Y →Xであらわす.

定理2.7.1. 写像f :X →Y が全単射であるならば,

(1) f◦f1=idY

(2) f1◦f =idX

定理2.7.2. 2つの写像f :X →Y g:Y →Xがあって,

f◦g=idY g◦f =idX

が成り立つならば,f gも全単射であり,g =f1かつf =g1 成り立つ.

35

(36)

2.7. 全単射 2. 写像の基礎と集合の濃度 練習問題 2.7.1. f :RR,f(x) = 2x1が単射であることを示しなさい.

練習問題 2.7.2. f :RR,f(x) =|x|が全射でないことを示しなさい.

練習問題 2.7.3. 次の集合X Y の間の全単射を見つけなさい.

(1) X = (0,1),Y =R (2) X =N,Y =Z (3) X = (0,1),Y = [0,1]

練習問題 2.7.4. 写像f :X →Y が単射のとき,X の部分集合A1A2 対して,次を証明しなさい.

f(A1∩A2) =f(A1)∩f(A2)

(37)

2. 写像の基礎と集合の濃度 2.8. 集合の対等と濃度

前期第8講

ここでは集合の“大きさ”(要素の個数)について考えてみよう.鍵となる のは全単射.これはおよそ130年前に,ドイツの数学者G.カントールによっ て考えはじめられた.

2.8

集合の対等と濃度

2.8.1

有限集合とは

直感的な定義:有限集合とは,含まれる元の個数が有限個の集合のこと.

bababababababababababababababab

つまり・・全ての元に(有限個の)番号が付けられる集合

その「番号」に対して,元たちと全単射がつくれる!

定義2.8.1. 【有限集合(finite set)】

集合Xが有限集合であるとは,あるn∈Nに対して,

全単射f :{1,2,3,· · ·, n} →X が存在すること.

この自然数n集合Xに含まれる元の個数 といい,♯X であらわす.

注意 2.8.1. 本当は先にNの定義をしないといけない.

が,ここでは,まず直感的にわかってもらうために,それは後回し.

定理2.8.1. 2つの有限集合XY に対して,

(1) 単射f :X →Y が存在する⇔♯X ≤♯Y (2) 全射f :X →Y が存在する⇔♯X ≥♯Y (3) 全単射f :X →Y が存在する ♯X=♯Y 注意 2.8.2. (1)の対偶

「♯X > ♯Y 単射f :X →Y が存在しない」

は鳩の巣原理とよばれ有名(1834年,ディリクレ).

37

参照

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