第 2 章 写像の基礎と集合の濃度 25
2.10 濃度の比較
2.10 濃度の比較
ここでは集合の“大きさ”を比べて,集合たちを分類してみよう.
(かなり大雑把にだけど)
定義2.10.1. 【濃度の大小】
2つの集合XとY に対して,単射f :X →Y が存在するとき,
Y の濃度はXの濃度以上であるといい,♯X≤♯Y とかく.
定理2.10.1. 2つの集合XとY に対して,♯X ≤♯Y かつ♯Y ≤♯Xの とき,
XとY は対等である,つまり,濃度は等しい
(つまり,全単射f :X →Y が存在する)
この定理は次の定理からわかる.
定理2.10.2. ベルンシュタインの定理(1897)
2つの集合XとY に対して,2つの単射f :X →Y とg:Y →Xが 存在するとき,
実は,全単射h:X→Y が存在する.
注意 2.10.1. このf とgそのものは全単射になるかわからない.証明は,f
とgから新しいhをつくり,それが全単射になることをいう.
次の定理もカントールが証明した.
この定理により,いくらでも濃度の大きな無限集合が存在することがわかる.
定理2.10.3. 任意の集合Xに対して,♯X≤♯2Xである.
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2.10. 濃度の比較 第 2. 写像の基礎と集合の濃度
練習問題 2.10.1. 整数の集合Zが無限集合であることを示しなさい.
練習問題 2.10.2. 整数の集合Zが可算集合であることを示しなさい.
練習問題 2.10.3. X :={n|n= 3k−√
2, k∈Z}としたとき,♯X ≤♯Zを 示しなさい.
第 2. 写像の基礎と集合の濃度 2.10. 濃度の比較
【余談】関数とは
関数(かんすう,function)という用語を導入したのは,ゴットフリート・
ヴィルヘルム・ライプニッツ(Gottfried Wilhelm Leibniz, 1646-1716)だと 言われています.
具体的には,1676年の論文「Methodus tangentium inversa(逆接線法)」
において「関数」という用語を導入したとされています.実際には,諸説あっ て,僕も原論文を読んでいないので,なんとも言えません.また彼のいう「関 数(functio,ラテン語)」は,今で言う「関数」の意味とは違ったものと言 われています.
次に,レオンハルト・オイラー(Leonhard Euler, 1707 - 1783)による定義 に進みます.『無限小解析入門』(Introductio in Analysin Infinitorum : 1748 年)によると,
「変数と定数とから組み立てられた解析的な式」
となっていて,つまり,「式が関数」という,今で言う中学生風の定義になっ ています.(ちなみに,f(x)という記法を導入したのはオイラーだとされて います.)逆に言うと,式さえあれば良いので,今で言う「多価関数」(一つ の入力が与えられたときに一つあるいは複数の出力を得る)も含めて考えて います.これは今では写像といえないものなので,いわゆる「関数」とは言 わないことになっています.しかし「「多価関数」は関数でない」となったの は20世紀前半になってから,だそうです.
次に,オーギュスタン=ルイ・コーシー(Augustin Louis Cauchy,
1789-1857)による定義になります.1823年の「解析学講義」によれば,
二つの変数xと yがあり,入力xに対して出力y の値を決定す る規則が与えられているとき,変数yを「xを独立変数とする関 数」あるいは簡単に「xの関数」という.
となっていて,これは今の中学/高校における定義とほとんど同じです.し かし,この時代にはまだ,「集合」「写像」という概念が浸透していなかった ため,なんらかの「統一的な」または「記述可能な」規則こそが関数だとさ れていたわけです.
最後に,ペーター・グスタフ・ルジューヌ・ディリクレ(Peter Gustav Lejeune Dirichlet,1805-1859)によって,
個々の独立変数と従属変数の対応そのもの(式による一定の法則 は必要ない)[1837]
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2.10. 濃度の比較 第 2. 写像の基礎と集合の濃度 とし,これがいわゆる「関数」もしくは「写像」の概念に到達したものだ と考えられています.
もちろんこの講義で扱っているような関数(写像)の定義のためには,集 合論の確立が必要不可欠で,それはカントール以降になってからと言われて います.
なお用語「関数」についてですが,古くは「函数」と書いていました.こ れは英語 「function」 の中国語訳(音訳)とされています(「代微積拾級」
(1859年)).これが日本に伝わったのですが,1950年頃,いわゆる当用 漢字に「函」が含まれないことになり,「関数」という表記になったというこ とです.
ちなみに未だに由緒正しいところでは「函数」の表記が使われています.例 えば,日本における数学者の集まりである「日本数学会」では,その分科会 の名称として「函数論」「函数方程式論」「実函数論」「函数解析学」などが使 われています.
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第 3 章 数とは
この章では,幾何学とは少しずれてしまうが,集合としての「数」(自然 数,整数,有理数,実数)をきちんと定義してみよう.大事なのは,同値関 係とそれによる商集合の考え方である.これらは後々,重要になってくるの で,しっかり学ぶことにしよう.