量子エンタングルメントの指標とその突然の消滅
2009年2月
福井大学 工学部 物理工学科 05380448 丹尾大輔
05380570 山下悟士
目 次
第1章 量子情報の背景 2
1.1 量子情報. . . . 2
1.2 量子ビット −qubit− . . . . 3
1.3 量子エンタングルメント −Quantam entanglement− . . . . 3
1.4 本研究の目的 . . . . 4
第2章 エンタングルメント と情報処理 5 2.1 Bell測定. . . . 5
2.2 ユニタリー変換 . . . . 5
2.3 Super Dense Coding−超高密度符号化− . . . . 6
2.4 量子テレパシー −Quantum Communication− . . . . 7
2.5 量子テレポーテーション−Quantum T eleportation− . . . . 9
第3章 エンタングルメント の指標 −Concurrence− 12 3.1 密度演算子 . . . . 12
3.2 純粋状態のConcurrence . . . . 13
3.3 混合状態のConcurrence . . . . 14
第4章 2準位原子系でのエンタングルメント の突然死 16 4.1 2準位原子の自然放射(温度T=0). . . . 16
4.2 独立に自然放射する二つの2準位原子のエンタングルメント (温度T=0) . . . . 17
4.2.1 初期状態が純粋状態の場合のConcurrence . . . . 18
4.2.2 初期状態が混合状態の場合のConcurrence . . . . 24
第5章 有限温度でのエンタングルメント 31 5.1 2準位原子の自然放射(有限温度) . . . . 31
5.2 独立に自然放射する二つの2準位原子のエンタングルメント(有限温度) . . . . 32
第6章 結論 36 6.1 本研究のまとめ . . . . 36
6.2 今後の課題 . . . . 37
参考文献 38
謝辞 39
付 録A Schmidt分解 40
卒業論文担当者
第
1章 量子情報の背景
1.1 量子情報
私たちが体感する物理的な現象は古典力学で説明される。
20世紀に入ると、微視的世界(光子、原子など)を取り扱うようになった。そのような微視的世界で は、従来の古典力学の理論では説明できない現象が現れ 、それらの現象の物理的法則を証明したのが量 子力学である。
今日では、微視的世界において古典力学な理解では想像できない多くの性質を利用して現在の技術に 取り入れようとする試みが行われており、計算機などの情報処理・情報通信の分野に微視的世界におけ る物理現象の性質を用いた分野が「量子情報」である。[1][2][3]
現在の情報は”bit”と呼ばれる’0’か’1’の状態を組み合わせて処理している。量子情報では最も簡単な 単一の量子系が2つの状態(光子の偏光、原子のエネルギー準位など)を取るとみなしそれぞれの状態を
|0i、|1iとして、またそれらの系は|0i、|1iの状態を同時に含むような「重ね合わせた状態」を取る。
そこで、従来の計算機に使用されているような”bit”を「古典bit」と呼ぶのに対して、このようにみな した量子系を「量子bit(qubit)」と呼ぶ。
また、複数のqubitの量子系において、ある1つのqubitの状態が確定すると、他方のqubitの状態も 同時に確定するという「量子エンタングルメント 」と呼ばれる状態があり、現在この量子エンタングル メントの性質を応用して様々な技術に取り入れようと試行実験が行われている。量子エンタングルメン トの状態を人為的に作り出すことは高度な技術が必要とされているが 、様々なモデルにおいて量子エン タングルメント状態を作り出せる事が報告されている。量子エンタングルメントの作成方法としては 、 SPDC(Spontaneous Parametric Down Conversion)法があり、レーザーを非線形光学結晶に照射して、
偏光がエンタングルした2光子の対を発生させるという方法が最も知られている方法の1つとなってい る。[7]
ここで 、量子エンタングル メント 状態を利用した実験に 、量子テレポーテーション 、Super Dense
Codingそして量子テレパシーがある。これらの実験の概要としては 、量子テレポーテーションとは送
信者と受信者の間にあたかもqubitがテレポートしたかのような振る舞いが起きる実験であり古典的通 信(電話など)の環境があればテレポートが可能となる。次に、Super Dense Codingとは送信者が受信 者に1つのqubitを送り、送信者と受信者のqubitがエンタングルしていなければ送れる情報は1bitだ がエンタングルしていると送れる情報は2bitとなる。最後に量子テレパシーは3人に分けられた数の和 が奇数か偶数か判別する実験であり、エンタングルした3qubitを用いることで確実に判別することがで きる。
しかし 、qubitの状態は壊れやすいものであり、エンタングルメントの指標とされている”Concurrence”
は一定の値ではない。そこで様々な状態でのConcurrenceを求め、その変化がどのように表されるか、
2準位原子をモデルとして議論する。
1.2 量子ビット −qubit−
qubitとは、量子状態における最も簡単な系であり、様々なモデルをqubitとみなすことができる。こ
こでは光子の偏光をモデルとして説明する。光子の水平偏光を|0i、垂直偏光を|1iとすると、斜めの 方向の偏光が|0i、|1iを「重ね合わせた状態」を表すことになる。その重ね合わせた状態が次のよう になる、
|Φi=α|0i+β|1i (1.1)
ここでαとβは複素数であるが 、実数として捉えて議論される事が多い。式(1.1)のような重ね合わせ た状態を測定すると、確率|α|2で結果|0iを確率|β|2で結果|1iを得るということを示している。つ まり、全確率は1であるから、
|α|2+|β|2= 1 (1.2)
となる。また、式(1.2)は規格化条件として呼ばれるものであり、qubitの状態が長さ1に正規化する条 件でもある。
1.3 量子エンタングルメント −Quantam entanglement−
qubitの2つの状態を|0i、|1iとして表して、2つのqubitの系が取る状態は、1つ目のqubitの状 態が|1iならば 、2つ目のqubitの状態が|0iとなるとき、その時の状態を|10iと表すとすると2つの qubitの系は|00i、|01i、|10i、|11iの4つの状態を持つことになり、ここで重ね合わせた状態は、
|Φi=α00|00i+α01|01i+α10|10i+α11|11i (1.3) となり、この状態での規格化条件は、
|α00|2+|α01|2+|α10|2+|α11|2= 1 (1.4) となる。
2つのqubitを用いた場合、1つ目のqubitの測定結果と2つ目のqubitの測定結果が絡み合っている という状態があり、そのような状態をエンタングルした状態又は、EPR pairという。ここでEPRとは A.Einstein、B.Podolsky、N.Rosenの3人の名前の頭文字を取ったものである。
ここで、次のような2qubitの状態で量子エンタングルメントについて話を進めるとする。
|Φi= 1
√2(|00i+|11i) (1.5)
式(1.5)の状態は、確率12ずつで1つ目のqubitの測定結果が0(1)ならば2つ目のqubitの測定結果 は0(1)になることを表している。このように確率 12ずつで測定結果がエンタングルした状態を「最大 エンタングルメント状態」という。それに対して、
|Φi=√
α|00i+√
β|11i (1.6)
のように、確率αで測定結果が0→0、確率βで測定結果が1→1でエンタングルした状態を「部分的 エンタングルメント状態」という。
エンタングルメントの定義として、2qubitの量子系が
|Φi=|00i|10i (1.7)
として表せる量子系はエンタングルしていないことになる。
ex) |Φi = 1
√2(|01i+|11i)
=
(|0i√+|1i 2
)
|1i
= |00i|10i (
|00i=|0i√+|1i
2 , |10i=|1i )
(1.8)
1.4 本研究の目的
• 量子エンタングルメントの有用性を示すために、量子テレパシー、Super Dense Codingそして量 子テレポーテーションのそれぞれの実験に対して量子エンタングルメントの有無でそれぞれの計 算結果を比較し 、量子エンタングルメントの有用性を検討する。
• 量子エンタングルメントの指標とされているConcurrenceを導入し 、3つの実験の計算結果に適 用し 、Concurrenceについて議論する。
• 外界と相互作用する2準位原子をモデルとした2qubitの量子系におけるConcurrenceを導き、
Concurrenceの時間変化について議論する。
• 有限温度での2準位原子における2qubitの量子系を考え、温度をパラメーターを時間と温度とし たConcurrenceを導く。
第
2章 エンタングルメント と情報処理
量子エンタングルメントの有用性を示すために 、量子テレパシー、Super Dense Codingそして量子 テレポーテーションについて説明する。そこでこれらの実験において必要となる測定、変換を先に説明 をしておく。
2.1 Bell測定
Bell測定とは正規直交基底を構成するBell基底を用いた測定であり、Bell基底は
|Φ1i= √1
2(|00i+|11i)
|Φ2i= √1
2(|00i − |11i)
|Φ3i= √1
2(|01i+|10i)
|Φ4i= √1
2(|01i − |10i)
⇐⇒
|00i= √1
2(|Φ1i+|Φ2i)
|11i= √1
2(|Φ1i − |Φ2i)
|01i= √1
2(|Φ3i+|Φ4i)
|10i= √1
2(|Φ3i − |Φ4i)
(2.1)
で表され 、正規直交基底を構成しているので、
hΦi|Φji=δij= {
0 (i6=j)
1 (i=j) (2.2)
を満たすことになる。ここでhΦi|Φjiは|Φiiと|Φjiの内積を表し 、δijはKroneckerのδを表す。
また、式(2.2)を満たす|Φiiの集合を{|Φii}で表し 、このような集合を正規直交系という。
2.2 ユニタリー変換
ユニタリー変換とはユニタリー行列による変換のことを意味し 、ユニタリー行列とは、
U†U = 1 (
U†≡TU∗=U−1)
(2.3) つまり、エルミート共役行列U†(共役転置行列)がn次正方行列Uの逆行列となるものをユニタリー行 列という。ここで、今回使うユニタリー変換を示す。[1][2][3][5]
H = 1
√2 (
1 1 1 −1
)
(Hadamard変換) (2.4)
Rx=|0ih0|+eiπx|1ih1| (2.5)
U1= 1
U2=|0ih0| − |1ih1| (z軸方向のスピン演算子) U3=|0ih1|+|1ih0| (x軸方向のスピン演算子) U4=U2U3
(2.6)
これらの変換はユニタリー行列の関係を満足する。
2.3 Super Dense Coding−超高密度符号化−
1つのqubitをAliceからBobに送ることで、何bitの古典情報を送ることが可能かを検討する。
まず、量子エンタングルメント状態の2qubitを使用しない場合、事前にAliceとBobの間で|0i→ 0、|1i→1と決めておき、送られたqubitをBobは基底{|0i、|1i}で測定することで、1bitの古典情 報が送られたことになる。この場合では1bitが送ることが可能な最大の古典情報量となっている。
次に、量子エンタングルメント状態の2qubitを使用した場合、Aliceがqubitを送る前にqubit Aに 対して送りたい情報に対応したユニタリー変換を行ってから、qubit AをBobに送る。Bobはqubit AB に対してBell測定を行う。量子エンタングルメントの状態が最大エンタングルメント状態ならば 、必ず AliceからBobに送りたい2bitの情報が伝えられたことになる。
エンタングルメント
EPR source
Alice Bob
qubit A qubit B
古典情報 (2bit)
図2.1: Super Dence Coding
ここで、AliceとBobが部分的エンタングルメント状態の2qubitを共有したときのSuper Dense Coding の成功確率Pを導く。エンタングルしたqubit ABの状態|Ψiを、
|Ψi=√
α|00i+√
β|11i (2.7)
としたとき、Aliceは送りたい2bitの情報(r∈ {1,2,3,4})に応じて、ユニタリー変換(2.6)を行ったこ とで生成されたqubit ABの状態|Ψ0iiは次の通りになる。
|Ψ01i= (U1⊗1)|Ψi=√
α|00i+√ β|11i
|Ψ02i= (U2⊗1)|Ψi=√
α|00i −√ β|11i
|Ψ03i= (U3⊗1)|Ψi=√
α|01i+√ β|10i
|Ψ04i= (U4⊗1)|Ψi=√
α|01i −√ β|10i
(2.8)
となり、Super Dense Codingが成功し得る条件はBobがBell測定|Φiiを行った際に、hΨ0i|Φiiとな るときなので成功確率Pは、
P = 1
4(P1+P2+P3+P4)
= 1 4
( 4
∑
i=1
|hΨ0i|Φii|2 )
= 1 2
( 1 + 2√
αβ )
(2.9) となり、α=β= 12のとき、Pは1になり必ず2bitの情報を送ることができる事を意味している。
2.4 量子テレパシー −Quantum Communication−
量子テレパシーを説明するために、Guess My Numberというgameを題材として詳細を説明する。
以下にGuess my numberの手順を示す。
Alice
Charles Bob
qubit A
qubit C qubit B
Eve
古典情報
(1bit) 古典情報
(1bit)
xc
b x
xa
even odd
or
図2.2: Quantum Communication
• Alice、Bob、Charlesの3人1組 に、出題者のEveが1〜4の整数 を選び 、半整数で分割し3人に適 当にその数を別ける。
(
xa, xb, xc∈0,12,1· · ·72,4 xa+xb+xc ∈Z
)
• Alice、Bob、Charles の 3 人の 間で予め決めておいた約束に従 って 、Bob、Charles は Eve か ら の 数に 応じ て Alice に 1bit の 古 典 情 報 を 送 る こ と が で き る。(
それぞれ3人は独立の状態で 古典的情報のみをやりとりできる
)
• Aliceは約束に従ってBob、Charles からの1bitの古典情報を元にEve が選んだ数が奇数か偶数かを判断 する。
• Aliceの解答とEveの選んだ数の 偶奇が一致ならば成功、不一致な らば失敗とする。
まず、量子エンタングルメント状態を使わない場合、Guess my numberの成功確率を求める。Eveが選 んだ数の偶奇を考えればよいので、3人に配られるそれぞれの数は
(0,12,1,32,2,52,3,72,4)
→(
0,12,1,32)
と配られる数を減らして考えることができる。Aliceの視点から考えるとxaは明示なのでxb、xcの組 み合わせが数の偶奇の問題となる。ここで3人の間で、配られた数が(
0,12)
ならば’0’、( 1,32)
ならば’1’
と約束し 、1bitの古典情報としてAliceに伝えることにする。xaの数が整数、半整数の場合とで別けて 考えると、
(xaが整数)→(xb+xcが整数)
(0b,0c)のとき (0,0),(1
2,12)
→0 or1 (0b,1c)のとき (0,1),(1
2,32)
→1 or2 (1b,0c)のとき (1,0),(3
2,12)
→1 or2 (1b,1c)のとき (1,1),(3
2,32)
→2 or3
(xaが半整数)→(xb+xcが半整数)
(0b,0c)のとき ( 0,12)
,(1
2,0)
→ 12 (0b,1c)のとき (
0,32) ,(1
2,1)
→ 32 (1b,0c)のとき (3
2,0) ,(
1,12)
→ 32 (1b,1c)のとき (
1,32) ,(3
2,1)
→ 52 となり、成功する確率Pは、
P = (xaが整数の確率)×(xaが整数での成功の確率) +(xaが半整数の確率)×(xaが半整数での成功の確率)
= 1 2 ×1
2 +1 2×1
= 3
4 (2.10)
となる。この成功確率P= 34は、現在において最も成功確率の高いものとされているが 、十分な証明が されていない。
次に、Alice、Bob、Charlesの3人がエンタングルした3qubitをそれぞれ持って、それ以外はすべて 同じ条件でGuess my numberのgameを行った場合についての成功確率を求めるが、BobとCharlesが
Aliceに送る1bitの古典情報については 、先とは別の約束を予め決めておく。ここで、3人が使用する
エンタングルメント状態の3qubitを、
|Φi= 1
√2(|000i+|111i) (2.11)
とする。次に、Alice、Bob、Charlesの3人はそれぞれのqubitに対して、Eveからの配られた数に応
じて式(2.5)のユニタリー変換を行うと、
(Aliceがqubit Aを変換した場合)
|Φ0iA = 1
√2RxA
a(|000i+|111i)
= 1
√2
{(RAxa|0ia
)|00ibc+(
RAxa|1ia
)|11ibc
}
= 1
√2
(|000i+eiπxa|111i)
(2.12) となり、Bob、Charlesもqubit B、qubit Cに対して同様のユニタリー変換を行うと式(2.11)は、
|Φ0iABC = 1
√2
(|000i+eiπ(xa+xb+xc)|111i)
(2.13) となる。そして先と同様にして、Alice、Bob、Charlesの3人はそれぞれのqubitに対して、式(2.4)の Hadamard変換を行うと式(2.13)は、
|Φ00iABC = 1
√2Habc
(|000i+eiπX|111i)
(X =xa+xb+xc)
= 1
√2 { 1
2√
2(|0i+|1i) (|0i+|1i) (|0i+|1i) + eiπX
2√
2 (|0i − |1i) (|0i − |1i) (|0i − |1i) }
= 1 +eiπX
4 (|000i+|011i+|101i+|110i) +1−eiπX
4 (|001i+|010i+|100i+|111i) (2.14) となり、3人はそれぞれ自分のqubitに対して、基底{|0i,|1i}で測定をする。ここで、Bob、Charles がAliceに送る1bitの古典情報について、測定結果が|0iならば’0’を、|1iならば’1’を送ると約束し ておく。そしてAliceは自分の測定結果とBob、Charlesからの古典情報により伝えられた測定結果か ら式(2.14)が 、
(’1’が偶数個or’0’が奇数個) =⇒ |Φ00iABC =1+e4iπX (|000i+|011i+|101i+|110i)
=⇒1−e4iπX = 0
=⇒eiπX = 1
=⇒X=偶数
(’1’が奇数個or’0’が偶数個) =⇒ |Φ00iABC =1−e4iπX (|100i+|010i+|001i+|111i)
=⇒ 1+e4iπX = 0
=⇒eiπX =−1
=⇒X=奇数
のような状態になり、式(2.14)を元に3人の測定結果からEveが選んだ数の偶奇が予測することがで きる。
2.5 量子テレポーテーション−Quantum T eleportation−
量子テレポーテーションとは、ある離れた地点にAlice(送信者)とBob(受信者)が待機しており、両 者はエンタングル メント状態の2qubitをそれぞれ1つずつ持っている。そこで 、AliceがBobに任意
の状態の1qubitを送りたいときに 、両者はエンタングルメント状態の2qubitと古典的情報通信(電話
など)を用いることで、その任意の状態の1qubitがAliceからBobの地点へテレポートしたかのような 振る舞いを見せるものである。ここでは、量子エンタングルメントの有無によっての量子テレポーテー ションの成功確率を忠実度F(F idelity)という指標を用いて比較する。
まず、量子エンタングルメントを使用しない場合での量子テレポーテーションの忠実度Fについて説 明を行うが 、同じ 条件での議論を2006年度の出口智美氏による卒業研究により、発表されているので 本論文では今回の条件における忠実度Fの説明は出口智美氏の研究結果を受けて計算過程を割愛し 、結 果のみを紹介させていただくことにする。[6]
AliceはBobに送りたい状態| −→n iに対して、正規直交基底{| −→mi,| −−→mi}で測定を行う。ここで| −→n i
は、式(1.1)を極座標表示したものであり、
| −→n i=eiψ (
cosθ
2|0i+eiφsinθ 2|1i
)
(2.15) と表され、Bloch球と呼ばれる3次元単位球面上の点に対応している。次に、測定結果が| −→miとなる確 率をP+、| − −→miとなる確率をP−とする。そこで、古典的情報で伝える約束についてAliceとBobの 間で| −→miならば’+’、| − −→miとなる確率を’-’と事前に決めておく。
Aliceからの古典情報に応じてBobは| − −→mi又は、| −→miにあるqubitを用意する。そこで、Aliceか らの古典的情報が’+’ならば忠実度F+、’-’ならば忠実度F−とすると平均の忠実度Fは、
F = P+F++P−F−
= 1 2
{
1 + (−→n · −→m)2 }
(2.16) となり、ここで| −→niはBloch球面上ならばどの点でも取ることが可能なので、ここでは| −→niがBloch 球面上に一様に分布していると仮定したときの忠実度< F >は、
< F > =
∫2π 0
∫π
0 F(θ, φ) sinθdθdφ
∫2π 0
∫π
0 sinθdθdφ
= 2
3 (2.17)
よって、AliceからBobに状態| −→niのqubitを送るときの忠実度は 23となる。
qubit A qubit B
Alice Bob
エンタングルメント
qubit C
古典的情報 (2bit)
qubit C
EPR source
図2.3: Quantum T eleportation
次に、量子エンタングルメント状態を用いた場合での量子テレポーテーションの忠実度Fを導く。ま ずAlice、Bobの持つエンタングルした2qubitの状態を
|Φiab=√
α|00iab+√
β|11iab (2.18)
として、AliceがBobに送りたい状態であるqubit Cの状態を
|φic=c0|0ic+c1|1i1 (2.19) とする。ここでこれら3qubitの状態は、
|Ψicab = |φic|Φiab= (c0|0ic+c1|1ic) (√
α|00iab+√
β|11iab
)
= c0√
α|00ica|0ib+c0√
β|01ica|1ib
+c1√
α|10ica|0ib+c1√
β|11ica|1ib (2.20)
と表される。そこでAliceはqubit ACに対して、式(2.1)Bell基底を用いて書き直すと式(2.20)は、
|Ψicab = c0√
√ α
2 (|Φ1ica+|Φ2ica)|0ib+c0√
√ β
2 (|Φ3ica+|Φ4ica)|1ib
+c1
√α
√2 (|Φ3ica− |Φ4ica)|0ib+c0
√β
√2 (|Φ1ica− |Φ2ica)|1ib
= |Φ1ica
(c0√
√ α
2 |0ib+c1
√β
√2 |1ib
)
+|Φ2ica
(c0√
√ α
2 |0ib−c1
√β
√2 |1ib
)
+|Φ3ica
(c0
√β
√2 |1ib+c1
√α
√2 |0ib
)
+|Φ4ica
(c0
√β
√2 |1ib−c1
√α
√2 |0ib
)
(2.21) ここで、式(2.21)のqubit Bを規格化すると、規格化条件とその状態を取る確率は同値になるので、