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都内水環境における微量有害化学物質について 分析研究科

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Academic year: 2021

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(1)

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都内水環境における微量有害化学物質について

分析研究科 西野 貴裕

1 はじめに

現在、日常的に使われる化学物質の数は 10 万種類に及ぶといわれており、我々の生活は、

化学物質の恩恵を受けながら成り立っているといっても過言ではない。その一方で、過去 の有害な化学物質による環境汚染を教訓として、化学物質の適正な利用と管理を行い、汚 染を防止するため、数々の法規制がなされてきた。その中で工業用溶剤等として使用され ている 1,4-ジオキサンは、過去に都内の地下水における汚染の事例があった。また、有機 フッ素化合物のひとつであるパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)は撥水剤として過 去に一般家庭でも使われていたが、極地でも検出されるなど、世界的な環境汚染が報告さ れ、毒性についても徐々に明らかになりつつある。そのため、世界的に製造、使用等を規 制する「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約)」の対象物質に新 たに加わる見込みである。今回は、1,4-ジオキサンの多摩川流域における動態、そして都 内の下水処理場の流入幹線を遡り、有機フッ素化合物の排出源となる業種の追跡調査を実 施したので報告する。

2 調査対象物質について

(1) 1,4-ジオキサン

1,4-ジオキサン(図1)は、工業用溶剤として用いられるほか、過去には 1,1,1-トリク ロロエタンの安定剤としても使用されていた。有害性としては

国際がん研究機関が「ヒトに対する発ガンの可能性あり」に 分類している。そのため、わが国でも水道水質基準や、公共用 水域の要監視項目指針値として 50μg/L と設定されている。

本物質は「化学物質排出管理促進法(化管法)」では第 1 種 指定化学物質として環境への排出量や移動量が推計されている。

また、水に対して任意の割合で溶解し水中での分解性に関しては難分解性とされている。

(2)有機フッ素化合物

代表的な物質である PFOS は、撥水、撥油剤、コーティング剤、泡消火剤など様々な用 途に使用されているが、平成 21 年に POPs 条約の対象物質に追加され、使用等が禁止ない し制限される予定である。また PFOS には、同じく泡消火剤や表面処理等に使用されている 類縁物質が複数あるが、パーフルヘキサンスルホン酸(PFHxS)もそのひとつであるため、

分析対象に加えた。またパーフルオロオクタン酸(PFOA)は、テフロン製造の際の乳化剤 等として使用されているが、PFOS と同様に世界的な環境汚染が報告されているため、米国 では排出量等を削減する管理プログラムを打ち出している。

PFHxS

図1 1,4-ジオキサンの構造式

図2 有機フッ素化合物の構造式

PFOS PFOA

(2)

0.02 0.1

0.02 0.1 2.0

2.7

0.6 0.8

0.6 0.8 0.8

0.7 0.7

0.4 0.5 1.2

0.7 0.6 0.4

0.7

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

永田橋 多西橋 東秋川橋 拝島補給点 A処理場 B処理場 新旭橋 立日橋 C処理場 D処理場 E処理場 高幡橋 関戸橋 報恩橋 F処理場 G処理場 多摩川原橋 平瀬橋 兵庫橋 調布取水堰

1,4-濃度(μg/L)

本川 支川 下水放流水

多摩川

▲ B

A

東秋川橋 (秋川)

C

G 兵庫橋

(野川)

新旭橋.

(谷地川)

多西橋

(平井川) 永田橋

拝島原水補給点 立日橋

関戸橋

多摩川原橋

調布取水堰

■ E D

平瀬橋 (平瀬川) 高幡橋

(浅川)

報恩橋 (大栗川)

10km F

3 調査内容

(1)多摩川水系における 1,4-ジオキサンの動態調査

平成 17 年 11 月 2 日と 15 日に多摩川本川の6地点(永田橋から調布取水堰まで)と、その 区間で多摩川に流入する浅川、谷地川などの支川や下水処理場の放流口で 24 時間に亘り

(地点により 1 日 2~4 回)水試料を採取し、分析を行った(図3)。

多摩川本川における 1,4-ジオキサン濃度は立日橋以降から上昇していた。濃度の最大値 は、B 処理場放流水の 2.7μg/L であったが、水道水質基準や公共用水域の要監視項目指針 値 50μg/L と比べ大幅に低かった。また、1,4-ジオキサン濃度と流量を乗じた量(負荷量)

のうち、多摩川本川の採水地点で実測した負荷量と、最上流の永田橋を起点として本川採 水地点までの支川と下水処理場放流水の合計負荷量に大きな差がないことから、1,4-ジオ キサンは多摩川に流入後、大半が分解することなく流下していることが分かった。さらに

化管法に基づく届出等から推定した負荷量と本調査で実測した負荷量を比較すると、実測 の負荷量が 30 倍以上多い結果となった。そのため、事業所からの 1,4-ジオキサンの排出 が正確に把握されていないことや生活排水など未把握の排出源があることが示唆され、排 出源の正確な把握等が今後の課題と考えられる。

図3 多摩川水系 1,4-ジオキサン動態調査採水地点

東京湾

●:多摩川本川採水地点

▲:流入支川採水地点

■:下水処理場放流口

図4 各地点の 1,4-ジオキサン濃度(単位:μg/L)

多摩川河口沖 底質採取地点

×

(3)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

1950 1960 1970 1980 1990 2000

濃度(μg/kg-dry

PFOS

PFOA

(2)有機フッ素化合物汚染の経年変化及び排出源追跡調査

都内河川(江戸川、荒川、神田川、隅田川、多摩川等の 23 地点)の汚染実態調査を行 った結果、多摩川中流域における PFOS 濃度が最も高かった。このため、東京湾の多摩川河 口沖における底質について堆積年代別に PFOS、PFOA を分析し、汚染の経年変化を調べた。

結果を図5に示す。PFOS、PFOA ともに 1970 年ごろから急激に増加し始め、PFOS は 1990 年

~1995 年で最大 2.0μg/kg 、PFOA が 1995 年~2000 年に 1.2μg/kg と最大値を示している。

これは、PFOS をはじめとする有機 フッ素化合物が 50 年前から使用 されるようになり、1970 年代から 使用量が増加したという社会背景 と合致していた。また、平成 17 年 11 月と平成 19 年 8 月に放流水 中の PFOS 濃度の高い下水処理場 に流入する流入幹線、さらに同下 水処理場の流入水、放流水につい て、PFOS、PFOA、PFHxS の分析を 行い、汚染源の追跡調査をした結

果、3系統ある流入幹線のうち、ひとつの幹線から高濃度(最大 720ng/L)で検出し、特 定の汚染源が存在することが示唆された。ただし、現在、電子部品・デバイス製造業の業 界などでは、自主的に PFOS の排出を抑制しているなど PFOS、PFOA 削減に向けた動きが活 発化しているため、今後、有機フッ素化合物の排出源からの排出や水環境への流入は減少 していくことが期待される。

4 おわりに

都内水環境における難分解性の有害化学物質について、その動態、排出源について調 査を進めてきた。今後とも都内の一般環境で検出するおそれのある有害化学物質につい て適正な利用と管理を行ううえで必要な資料を得るために環境汚染実態の調査を進めて いきたいと考えている。

用 語 説 明 1 化学物質排出管理促進法(化管法)

事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境保全上の支障の未然防止を 図ることを目的に 1999 年制定。対象となる化学物質は、人の健康や生態系に有害なおそれ があるなどの性状を有するもので、このうち 1,4-ジオキサンなど第 1 種指定化学物質に 指定されている 354 物質について事業者は、環境中に排出した量と、廃棄物や下水として 事業所の外へ移動させた量とを把握し、行政機関に年に1回届け出る必要がある。

図5 多摩川河口沖底質の PFOS、PFOA 濃度の経年変化

参照

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