九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
中国語“由字句”と日本語の“によって”受け身文 について
謝, 新平
http://hdl.handle.net/2324/1495011
出版情報:福岡教育大学国語科研究論集. 40, pp.41-54, 1999-01. 福岡教育大学国語国文学会 バージョン:
権利関係:
中国語の 由字句 と日本語の
によって 受け身文について
謝 新 平
一、はじめに
現代中国語で、動詞の前に「由」と言う前置詞(介詞)によって動作主を表わ す名詞句を「由字句」と言う。 (例えば:房子問題由場方解決。 「住宅問題は工 場の方によって解決される」)。 由字句 の使い方は中国人にとってはそんなに 難しくないが、しかし外国人が中国語を勉強する時、よく次のように「被」を
「由」にする間違いを犯したりして、 「被jと「由
J
の使い分けが分からないこ とがよくあると言われている(例文は呂1985より)。* ( 1 ) 画上的字是被作者題写的。 (*は非文を示す)
( 1
) 画上的字是由作者題写的。(絵の上の字は作者によって書かれたのだ。)
*
(2) 這些新産品是被第一机床「制造的。(2 ) 這些新産品是由第一机床「制造的。
(これらの新産品は第一工作機械製作所によって造られた。)
それに対して、外国人が日本語を勉強する時も、受け身文の中の動作主を表わ す「に」「から」「で」「によって」の使い分けもよく分からなくて戸迷ったこと
もよくある。 (例文は砂川1
9 8 4
より)( 3 )
この土地は放射能(に/*から/で/によって)汚染されているO(4) 彼の考えは多くの人々(に/から/*で/によって)支持されてい る。
4川1
5
(15)
日本語の「に」「から」「で」「によって」の使い分けと中国語「被」「由」の使 い分けをここで問題として考えることはしないが、本稿で問題として提出して、
考察していきたいのは、次のような「によって」受け身文と「由字句」である。
( 5 )
法隆寺は聖徳太子によって建てられた。( 5
) 法隆寺(是)由聖徳太子建造(的)。( 6 )
このころ、源氏物語が紫式部によって書かれた。( 6
) 近来、源氏物語由紫式部写成了。日本語の受け身文の研究は動作主のマーク「に」「から」「で」「によって」に ついては多くの人によって様々な面から論じられた。それに対して中国語の受け 身文の研究も動作主のマーク「被」「叫」「譲」「給」に関してはよく論じられて いるO
また、日中受け身文の比較研究も日本語の自動詞受け身、第三者の間接受け身 文と中国語の意味的受動文はよく問題として論じられた。しかし「由字句と被字 句」に関する論文は非常に少ない。また管見の限りでは、以上のような中国語の
「由字句」と日本語の「によって」受け身文を中心にして論じた論文はない。日 本語のこのような「によって」受け身文は中国語に訳すとなぜ「由字句」になる か。日本語の「によって」受け身文の特徴は何であろうか。また中国語の「由字 句」の特徴は何であろうか。 「によって」受け身文と「由字句」との類似点と相 違点について考察することにする。
二、中国語の「由字句」について
動詞の前に「由」と言う前置詞(介詞)によって動作主を表わす名詞句を「由 字句と言う。前置詞「由」について、中国語教材(さねとうけいしゅう
1955
)で は次のよう解釈されている。由[人] D = [人]によってDされる
I
by(16) υに
q o
例文としては:
( 7 )
由那個偽軍引着、到同楼底下。( 7
) そのカイライ軍に案内されて、見張所の下に行った。( 8 )
出嫁以後、才白地的丈夫像贈送博士学位似的送給地一個名字一一前 梅。( 8
) 嫁に行つてのち、やっとかの女の夫から、博士の学位でも送られる ようにかの女に一ー前梅という一一ひとつの名前を送られた。それに、 [説明]はこうなっている:「由那個偽軍引着」もしこれが英語なら ば
D
の前に受動態であることを表わすbe
動詞があるはずですし、日本語にして も、 「案内される」と言う言葉がある。ところが、中国語では、それがないのが 普通です。中国語が不完全なのではなくて、そういう言い方なのです。そこで日 本語にするときには、 「由」を「によって」「される」とひとつの言葉を二重に 訳さなければならないことになる。また同教材の日本語の「される」の解釈は次のようになっている。
被[人]所 D= [人]に D される
被=為=由b e
pp by例文としては:
(9) 王明立刻被人民勝利後的喜悦之情所激動、也非常興奮了。
( 9
) 王明はすぐ人民の勝利の後の喜びの情に激動せられて、やはり非常 に興奮した。( 1 0 )
官不為帝国主義所容許、而為帝国主義所反対。( 1 0
)それは帝国主義に許容せられずに、帝国主義に反対せられる。( 1 1 )
絶不由小数人所操縦。( 1 1
)決して小数の人に操縦せられない。nL
声 ︑ υ (17)
以上のように中国語教材の解釈から理解すれば「由」は「被」と同じく受け身 表現形式の一種と考えられるだろう。また同様に主張したものとして『漢語語法 常識』(張志公
1 9 5 3
)がある。 「口語ではしばしば、 叫、 譲 、あるいは由 をもって 被 に変える」と述べている。
では、日本語の受動文に対応する中国語はどうであろうか。次の日本語の例
(例文は村木新次郎1
9 9 1
より)を見てみよう。( 1 2 )
法隆寺は聖徳太子によって建てられた。( 1 2
)法隆寺(是)由聖徳太子建造(的)。( 1 3 )
新しい法案は議会で決定された。( 1 3
')新的法案由議会決定了。( 1 4 )
花束はファンから人気歌手に届けられた。( 1 4
)鮮花由歌迷交給了人気歌手。( 1 5 )
花子は祖母の手で育てられた。( 1 5
)花子由祖母親手帯大。以上の日本語の受動文は中国語に訳すと「被」と「被字句」の代わりに「由」
と「由字句」になることから見ても、 「由」も受動標識のーっと認められるだろ う。例文
( 1 2
)のような、動詞が創る行為を表わすものであり、客体が「作品」である(寺村1
9 8 2
)タイプについては、中国語では「被」を用いることはできな い。楊凱栄( 1 9 8 9
)は「由字句」(由構文)を用いることは普通である、と指摘 したことがある。また中島悦子の「日本語と中国語の受け身文 『暗夜行路』」( 1 9 9 4
)では日本語の受け身文は「由」と「被」との交替が可能であり、 「由」 に訳される例文が四例があり「由」も受け身表示形式の一種と考えられる。また「被」受け身文と違って補語(動作主)は省略できないと述べている。 (例:彼 はお菊神社というのに連れて行かれた。他由車夫位到阿南神社去了。)
では「由」は受け身文の標識と認めていいであろうか。次の例文を見ょう。
( 1 6 )
銭由我付。( 1 6
')お金は私の方で払う(18) 5 唱a A
* ( 1 6)銭被我付。
( 1 7 )
由我付銭。( 1 7
)私の方でお金を払う* ( 1 7勺被我付銭。
(注I)
( 1 8 )
「天要下雨、娘要嫁人」由他去杷」。( 1 8
)「雨が降り、母親は再婚する」(と言うように彼は去ると言うなら)そうさせればいい。
( 1 8
)「天要下雨、娘要嫁人」譲他去杷。例文
( 1 6
、)( 1 7
)は(超1956)からであり、( 1 6
)は越によると、目的語前置(賓語前置)と言う。日本語に訳すと題述文になっている。(1
7
)は「由」でマー クする動作主が文頭に来て、無題文になる。これはよく見られる「由字句」のケー スである。( 1 8 )
(中国語世界より)は「彼の自由、彼の勝手」の意味合いから、( 1 8
勺のように使役マーク「譲」と交換できる許容使役文であると考えられる。それに命令、願望の語気を含む語気助調「杷」も同時に表れることによって話し 手の表現意図/情意も表わされている。
以上の例文について考察した結果を見ると「由」によって表わされた動作主は
(注 2)
( 1 7
)のように文頭に置かれてもいいし、( 1 6
)のように主語の後ろに置かれても いい。主語の後ろに来る場合は文が題述文の一種(目的語前置=賓語前置)にな る。文頭に来る場合は文全体が無題文になる。それに許容使役にも使われる。そ れに対して「被」によって表わされた動作主は現代漢語の中では文頭に来ること はまずない。また、 「被字句」は実現した行為について述べられるが、 「由字句」は実現していない行為についても叙述される。こう考えると「由字句」と「被字 句」との違いは形態的だけではなく、意味的にも違う。
張志公の、 「由字句」が「被字句」に相当するという主張に対して初めて異議 を申し立てたのは王還(1
9 8 4
)である。越思柱( 1 9 5 6
)と呂文華( 1 9 8 5
)も同じ く異議を申し立てた。また同じく反対意見を主張したのは讃井唯充( 1 9 9 0
)であ り、受動標識の「被」「叫」「譲」「給」には交換性があるが、 「由」は受動標識 とは認めがたいので、考察の対象から除外されると述べた。‑ 50 ‑ (19)
本稿は、 「由字句」は、 「被字句」とは違って形態的にも、意味的にも独特な 文法現象であるが、 「由」も受け身標識の一種という立場に立ち、 「由字句」と
「によって」受け身文を考えていきたい。
三、日本語の「によって」受動文について
まず次の日本語の受動文のタイプを見ょう(例文は益岡1
9 8 2
より)( 1 9 )
その寺は、9
世紀前半に建てられた。那個寺院是
9
世紀前半期建的。( 1 9
)その寺は、空海によって建てられた。那寺院是由空海建造的。
* ( 1 9りその寺は、空海に建てられた。
( 2 0 )
ベルが鳴ると、すぐ回答用紙が配られた。鈴一日向答巻馬上就発下来了。
( 2 0
)答案用紙が試験官によって配られた。答巻由監考員発下来了。
* ( 2 0り答案用紙が試験官に配られた。
上の「によって」受動文の特徴に関しては今まで沢山の人々によって論じられ たが定論がない。ここでは益岡隆志
( 1 9 8 2
、19 9 1
)の立場に立って、考えていき たい。益岡によると、受動文は次のように三種類に分けられる。
1
、受影受動文2
、属性叙述受動文3
、降格受動文その特徴を図表化すると大抵次のようになる。
(20)
受影受動文(昇格)
属性叙述受動文(昇格)
降格受動文
「に」 |動作主前景化|心理的物理的影響 円こ」 |動作主前景化|特徴づけ
「によって」 |動作主背景化|焦点の取り立て
‑ 49 ‑
(19) (20)のような受動文は「降格受動文」と名付けられる。降格受動文を動 機づけているのは能動文の主語(動作主)を「背景化」することである。 「背景 化」することによって出来事の生起自体に注意が向けられる。しかし (19)、
(20 )のように「降格動作主」をわざわざ表面に表わし、 「前景化」する場合は
「に」ではなく「によって」で動作主をマークする。かえって動作主名詞句に焦
(注3)
点が置かれる。また動詞には「達成性」という意味的特徴がある。それに対して、
次のような受動文を「昇格受動文」と名付ける。
( 2 1 )
僕は部長に転勤を命じられた。(22) 鈴木さんは部長に突然辞められた。
( 2 3 )
この種の推理小説は、日本の作家には一度も書かれたことがない。( 2 4 )
啄木の素朴な短歌は、多くの人々に愛されている。( 2 1 ) ( 2 2
)は「受影受動文」、(23 )( 2 4
)は「属性叙述受動文」である。両方と も与格格助詞「に」で動作主をマークされることによって動作主が表面化した「昇格受動文」である。 「昇格受動文」を動機づけているのは能動文の非主語名 詞句を「前景化
J
することである。 「前景化」することによって、 「受影受動文」は、或る名詞句が出来事の結果として心理的或いは物理的な影響を被り、 「属性 叙述受動文」は、或る名詞句がある属性と特徴を有する。
また「表現の主観性」の観点から「によって」受動文と「に」受影受動文の違 いについては次のように主張した。
( 2 5 ) John
がB i l l
に助けられた。( 2 6 ) John
がB i l l
によって助けられた。( 2 7 )
始業のベルが鳴った。(28) 始業のベルが鳴らされた。
以上のような(2
1 )( 2 2 ) ( 2 5
)受影受動文は、表現者自身の経験を述べたり、或 いは表現者が主体の側に立って表現者自身の経験であるかのように事象を描いた りして、主体に視点を置いた主観的な表現である。それに対しては降格受動文は、‑ 48 ‑
(21)( 1 9 ) ( 2 0 ) ( 1 9
)( 2 0
)( 1 9
勺(20
)( 2 6 ) ( 2 8
)のように事象の生起を中立的な立場 から客観的に表現し、多くの場合(28
)のような客観的に観察される事象をその ままの形で表現する無題文の形を取り、(27)のような生起を表現する自動文と 同じ性格ものである。「によって」受動文の特徴については、益岡
( 1 9 8 2 , 1 9 9 1
)の立場に立って考 ると次の3
点に纏められる。1
、一般的に「達成性J
のある動調を取る。2、焦点は「に」受動文と逆に「によって」でマークする動作主に置かれてい る。
3
、中立的な立場から事象の生起を客観的に表わす。次はこの種の「によって」受動文は中国語に訳そうとするとき何故「由字句」
にしか訳せないのであろうか。この「によって」受動文の特徴と「由字句」の特 徴とを対照しながら、考えていきたい。
四、「によって」受動文と「由字句」について
まずは「由字句」の動詞も「によって」受動文と同じく「達成性」があるかど うか次の例文を見ょう。
(22)
( 2 9 )
美国錆量極大的《時代》雑誌也刊出了一編由著名専欄作家克労薩黙 者撰写的文章。 (中不16 4
ページ)( 2 9
)アメリカで非常によく読まれている雑誌『タイム』でも著名なコラ ムニス卜のクラウトハマが一文を掲載した。 (中ノ1 8 1
ページ)( 3 0 ) 1 9 9 4
年5
月15
日傍晩的黄金時間里、寄倫比亜「播公司播了一個由著 名美籍華商女主持人宗続華主持的電視節目。 (中不16 6
ページ)( 3 0
)1 9 9 4
年5
月15
日夕方のゴールデンアワーに、CB S
は有名な中国系 アメリカ人の女性キャスターチャンの司会するテレビ番組を放送した。 (中ノ
1 8 3
ページ)( 3 1 )
経済運作方式更是如此、官是由人所創造的一種科学方法。 (中不47 ‑
2 7 9
ページ)( 3 1
)ことに経済運営の方式などは人間によって作り出された。 (中ノ3 0 3
ページ)( 3 2 )
這也是在民衆的敦促下由政府採取的断然措置。 (中不212ページ)( 3 2
)これも民衆の陳情によって促され、政府が採った断固たる措置で ある。 (中22 8
ページ)( 3 3 )
早在19 9 0
年、由中国動植物検疫所起草、由農業部批准的一扮《関於 巌防牛海綿状脳病伝入我国的通知、明文禁止以英国進口牛類製品。(中不2
1 3
ページ)( 3 3
)早くも1 9 9 0
年には、中国動植物検疫所が起草して、農業部が承認 した「伝達性海綿状脳症のわが国への流入を防ぐための通達」によっ て、イギリスからの牛肉製品の輸入の禁止を明文化した。 (中234 ページ)以上の例文から見ると「由字句
J
に使われる動詞も「達成性」のある動詞であ る。この点について佐伯哲夫(1 9 8 8
)は次のように述べている。「によって」は限定動作主ないし限定手段として、個性的創造的な意味 をもった文脈に用いられ、そのために、動詞もその文脈に合った創造的な 意味のものが用いられる傾向にあるということであろう。 (中略)
破壊動詞は非限定的な動作主や手段と結び、つきやすく、創造動詞は限定 的な動作主や手段と結びつきやすい。なぜなら、破壊はだれでも、どんな 手段でも出来るが、特定の創造はだれでも、どんな手段でも出来るという ものではないからである。
( 1 0 3
ページ)以上の佐伯哲夫の説明はこう理解できる。つまり「によって」文の中では動調 に達成性があるだけでなく、それに動作主の限定性とも結び、ついている。
そこで、中国語の「由字句」の動作主に限定性があるかどうかについて劉麗華
( 1 9 9 3
)を参照して考察したい。劉麗華(
1 9 9 3
)によると助詞「でJ
は動作主体に対する限定作用を表わすこと46 ‑ (23)
ができるとし、その例文の中国語対訳文を次のように示している。
( 3 4 )
先生の方で試験問題を作り出した。( 3 4
)由老師出考試題。( 3 5 )
時間は山本君の方で決める。( 3 5
')時間由山本君決定。( 3 6 )
太郎らで考え出した案。( 3 6 ' )由太郎他伺想出来的主意。
( 3 7 )
車は学校の方で用意してくれる。( 3 7
)車由学校給我例準備。( 2 3
、24
ページ)以上の助詞「で」は主体を限定しており、対応する中国語対訳文が「由字句」
になっている点から見れば、 「由字句」の主体に対する限定性も窺うことができ る。また佐伯哲夫の言う、動詞の達成性が動作主の限定性と結びついているとい う点とも一致する。従って、 「由字句」は次の
2
点で「によって」と共通である。1
、両者とも主体に対する限定性がある。2
、両者とも達成性のある動詞が主体の限定性と結びついている。以上検討したように中国語の「由字句」は日本語の「によって」受動文と同じ く動詞に「達成性」があり、また、動作主体に対する限定性と結び、ついている。
次は「によって」受動文と同じく「由字句」の焦点も動作主に置かれており、
中立的な立場から事象を客観的に表わしていることについて検証する。まず次の 例文を見ょう(呂文華1
9 8 5
より)。( 3 8 )
不適合当教員的、由市区教育局調出了教育部門。教員に相応しくない人は市区教育局によって教育部門から離任され
︒
た( 3 8
)不適合当教員的、被(市区教育局)調出了教育部門。教員に相応しくない人は(市区教育局によって)教育部門から離任
(24) Aせ phd
された。
( 3 9 )
房子問題由本単位解決了。住宅問題は自分の勤め先によって解決された。
(39
)房子問題被本単位解決了。住宅問題は自分の勤め先によって解決された。
この「由字句」と「被字句」の違いについては呂文華はこう述べている。 「由」 は或る出来事の発生する原因は或る人にあり、文の重点は動作主にあり、プラス、
マイナスの意がなく「中性色彩」である。 「被」は受け手の主語が或る動作の働 きと影響を受けたありさまについて述べていて、文の重点は受け手にあり、動作 主は現れなくてもいい。
もし以上の呂文華「文の重点
J
を「焦点」と、 「中性色彩」を「中立的客観的」と理解できれば、日文華の「由」と「被」が両方とも使える場合は、その違いに ついての解説は益岡
( 1 9 9 1
)の「によって」受動文と「に」受動文についての解 説と対応しているであろう。つまり「由字句」と「によって」受動文は同じく「動作主の焦点化」が起こり、中立的に客観的に事実を述べる。それに対して
「被」と「に」受動文は主体に視点をおいてその事実を主観的に述べている。こ のように理解していいかどうかいままで、の例文を幾つかもう一度出してみよう。
( 1
) 画上的字是由作者題写的。(2 ) 這些新産品是由第一机床「制造的。
( 5
) 法隆寺(是)由聖徳太子建造(的)。( 1 6 )
銭由我付。( 1 9
)那寺院是由空海建造的。(20
)答巻由監考員発下来了。( 2 9 )
美国錯量極大的《時代》雑誌也刊出了一編曲著名専欄作家克労薩黙 者撰写的文章。 (中不16 4
ページ)( 3 0 ) 1 9 9 4
年5
月15
日傍晩的黄金時間里、寄倫比亜「播公司播了一個由著 名美籍華商女主持人宗続華主持的電視節目。 (中不16 6
ページ)44 ‑ (25)
( 3 1 )
経済運作方式更是如此、官是由人所創造的一種科学方法。 (中不2 7 9
ページ)( 3 2 )
這也是在民衆的敦促下由政府採取的断然措置。 (中不21 2
ページ)( 3 3 )
早在19 9 0
年、由中国動植物検疫所起草、由農業部批准的一扮《関於 巌防牛海綿状脳病伝入我国的通知、明文禁止以英国進口牛類製品。(中不2
1 3
ページ)( 3 4
)由老師出考試題。( 3 5
')時間由山本君決定。( 3 6
')由太郎他伺想出来的主意。( 3 7
)車由学校給我伺準備。以上の全ての例文は「由jは省略してもいい。ただ動作主を明確に感じられな い。 「由」があるからこそ動作主を取り立てる意味が出てくる。これも焦点は動 作主に置かれていることを意味しているであろう。
以上の考察から見れば、中国語の「由字句」も日本語の「によって」受動文と 同じく焦点は動作主に置かれ、中立的に客観的な立場から事象を表わす特徴がある。
五、おわりに
本稿では日本語の「によって」受動文を中国語に訳す時「由字句」になる原因 を考察した。ここでもう一度整理すれば:
1
、両者とも「達成性」のある動詞を取る。2
、両者とも「達成性」のある動調が動作主の限定性と結び、ついている。3
、両者とも焦点は動作主に置かれる。4
、両者は同じく中立的な立場的客観な立場から事実を表わす。以上の四点は両方の共通の特徴であると考えられる。
本稿は事柄の成立に直接関与する動作主を表わす「によって」受動文だけにつ いて考察した。今後は間接的に事柄の成立に関与する原因、根拠、始点を表わす 受動文と中国語の「由字句」と「によって」受動文とも関連考察したい。
日中受け身文の対照研究は沢山行なわれている。よく見られるのは形態的な比
(26) sq qd
較と対訳する時受け身にならない場合の説明である。日本語の受け身文は中国語 よりに多いことは既に周知のことである。しかし中国語は語葉が非常に発達して いる言語であるから、典型的な受動文の周辺にある受動文の研究が十分されてい るとは、必ずしも言えないであろう。今後この周辺的な受動文にも目を向けてい くことは意義を有することであろう。
注
1:「もうどうしようもないことから好きなようにやりなさしリという意味の諺。
2:越恩柱 (1956)によれば(16)の「銭」は主語と認定される。
3:益岡によると「達成目的語」を取る動詞「建設するJ「書く」であるが。寺村(1982)による と第一種類は「その動作の結果、これまで存在しなかったものが出現するj動作、作業を表わ す動調、例えば「掘る」「架ける」「炊く」であり、第二種類は「到達点」を要求する移動の動 詞、例えば「入れる」「出す」「降ろす
J
「乗せる」であり、第三種類は「変化の結果の状態」を要求する変化の動詞、例えば「変わる」「増やす」である。
参考文献
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同 (1991)「受動表現と主観性」『日本語のヴォイスと他動性』仁田義雄編くろしお出版 寺村秀夫 (1982)『日本語のシンタクスと意味』くろしお出版
佐伯哲夫(1988)「受動態動作主マーカ考(上下)『日本語学』6‑1、6‑2明治書院
村木新次郎 (1991)「ヴォイスのカテゴリ一文構造のレベル」『日本語のヴォイスと他動性』仁田義 雄編くろしお出版
金 水 敏 (1992)「場面と視点一受身文を中心に」『日本語学』11明治書院 砂川友里子 (1984)「くに受身文〉とくによって受動文〉」日本語学3‑7明治書院 さねとうけいしゅう (1955) 『現代中国語入門』三一書房
趨 恩 柱 (1956)「談 受 挨 遭 和 由勺中国語文1956年11期 呂 文 華 (1985)「 由 字句 兼及 被 字句」言語教学与研究1985年二期
劉 麗華(1993)「 で 対於動作、状態的主体的限定作用」『日本語学習与研究』1993年1期 楊 凱栄(1989)「文法の対照的研究一中国語一」『日本語と日本語教育』 5明治書院
︒ 山
Aせ (27)
中島悦子(1994)「日本語と中国語の受身文一『暗夜行路』」国士館短期大学紀要19 (1994・3) 31‑1
讃井唯充・徐 揚(1990)「中国語受動文における 被.叫.譲.給 の交換性」『人文学報』(第 213号)東京都立大学人文学部
例文の出典
『 中 不 』 : 宋 強 ・ 張 蔵 蔵 ・ 喬 遺 著 (1996)『中国可以説不』中華公商聯合出版社
『中ノ』:莫邦富・鈴木かおり訳(1996)『ノーと言える中国』日本経済社出版
『中国語世界』(1998.6)日中通信社出版
※論文を書く時、指導教官杉村孝夫先生から暖かいご指導を賜り、ここで厚く感謝の意を表す。
(28) q 唱 − a