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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

音声に対する聴性脳幹反応を用いた残響下における 高齢者の音声聴取に関する研究

藤平, 晴奈

https://doi.org/10.15017/1654896

出版情報:Kyushu University, 2015, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

(様式6-2)

氏 名 藤平 晴奈

論 文 名 音声に対する聴性脳幹反応を用いた残響下における高齢者の音声聴 取に関する研究

論文調査委員 主 査 九州大学 教授 白石 君男 副 査 九州大学 教授 中島 祥好

副 査 九州大学 准教授 REMIJN GERARD

副 査 九州大学医学研究院 教授 中川 尚志

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

高齢者では、一般的に残響下で音声聴取が困難になることは知られており、これまでの報告では 聴覚心理学的な面から多く検討されてきた。しかし、その音声聴取が困難になる要因については、

明らかになっていなかった。本研究は、残響下における高齢者の音声聴取の困難さを、Committee on Hearing and Bioacoustics and Biomechanics: CHABA (1988) が提唱する①末梢説、②中枢説、

③認知説の面からアプローチしたもので、特に音声に対する聴性脳幹反応 (auditory brainstem response: ABR) に着目して、聴覚伝導路における音声の時間情報処理の様相から要因を解明した ものである。

論文は、7章で構成されている。

第1章では、聴覚伝導路と難聴の分類、加齢性難聴のメカニズム、臨床における聴覚機能測定法 と加齢による変化、高齢者の音声聴取能力の低下、音声に対するABR (speech ABR) を総論的に述 べ、本研究の位置づけを明確にしている。

第2章では、若年者と聴こえの良い高齢者の残響下における単語了解度を比較検討し、残響のな い条件下では若年者と高齢者ともに有意差は認められないが、残響がある条件下では高齢者の方が 若年者に比べて有意に単語了解度が低下することと、その単語了解度の低下は個人差が大きいこと を明らかにしている。

第3章では、残響のある条件で高齢者の単語了解度が低下したことに対してその要因を探るべく、

種々の聴覚機能測定(純音聴力測定、ティンパノメトリー、耳音響放射測定 、クリック音に対する ABR測定、語音聴力測定)をおこない、単語了解度との関連性を検討したが、これらの測定では単 語了解度との間に明確な関連性を示すことが出来なかったとしている。

第4章では、若年者を対象にAiken and Picton (2008) が提案した平均処理をおこなってspeech ABRを記録し、彼らが示した理論通りの波形が実際の測定においても得られていることを確認する と同時に、“音声刺激波形とspeech ABR波形の最大相関係数”の手法について新しく提案している。

第5章では、高齢者の残響下での単語了解度と残響を付加していない音声に対するspeech ABR との関連性について検討し、speech ABRの500 Hzに対する振幅が小さい高齢者ほど残響下での単 語了解度が低いことを明らかにし、これは遷移する周波数を符号化する能力の低下が関与している 可能性を示唆している。

第6章では、残響がspeech ABRに及ぼす影響と単語了解度との関連性について検討し、残響に

よってspeech ABR波形の形状が大きく変化する高齢者ほど残響により単語了解度が低下する知見

が得られている。同時に知的能力の一部を測定するレーヴン色彩マトリックス検査をおこない、残

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響下での単語了解度と関連がないことを示したが、CHABA (1988)の③認知説についてはさらに検 討する必要があるとしている。

第7章では、以上の結果の総括をおこない、残響下で高齢者の音声聴取が困難になる要因として、

“加齢による抑制性の神経伝達物質の減少による神経の抑制作用の低下”が関与していることを推 測し、CHABA (1988)の②中枢説を主に支持する結果となったとしている。

以上のように、聴覚機能測定の結果に問題がない高齢者でも残響下での音声聴取成績が低下する こと、その低下の程度には個人差があること、speech ABRが確かに残響下での音声聴取成績に関 連づけられるという3つの事柄を発見しており、これらの成果は学術的に極めて高く評価される。

よって、本論文は博士(芸術工学)の学位論文として合格と認められる。

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