j j l j
紙1 論 文 審 査 の 要 旨
報告番号|甲第メ!?号|氏名|
主 査 小 児 成 育 歯 科 学
論文審査担当者
l
副 査 口1
封草剖学副 査 口 腔 病 理 学
(論文審査の要旨)
園 井 麻 依 子
井 上 美 津 子 教 授 中 村 雅 典 教 授 美 島 健 二 教 授
学位申請論文「Roleo
f PrtM i n o s m o a d a p t a t i o n o f Streptococcus mutans
」について,上 記の主査l名,i ¥ l l J
査2名が個別に審査を行った.[目的]ヒト鱗蝕原性細菌
Streptococcusmu t a n s
は、テ ンタ/レプラーク形成細菌の一つであり、デン タ/レプラーク内で他の細菌と共存している。ヒトの食餌中の糖類はこのデンタルプラーク内の浸透圧を 激変させることが知られるが、ぷmutans
がどのように浸透圧変化に適応するかは全く分かっていない。今回、我々は、外部環境と直面するのが細菌表層部であることから、細菌表層タンパク質、中でもその 大部分を占めるリボタンパク質に着目し浸透圧適応関連分子の探索を行った。ぷ
mut a n s
では、約2 7
種の推定リポタンパク質の存在が示唆されており、それらの推定リボタンパク質の欠損株を系統的に作 成し、浸透圧適応能の評価を行ったところ、P r t M
欠損株において有意な浸透圧適応能が減弱すること が明らかとなった。そこで、本研究では、このP r t M
の機能分析を行い、S .mutans
の浸透圧適応における 役割を明らかにすることを目的とした。[方法]
P r t Mの機能解析を行うために、 S .mutans 1 0 9 c株
(WT
)のP r t M欠損株 ( L1prtM )
を作製し た。P r t Mの外部環境ストレス適応能を調べるために、浸透圧適応能に加えて、耐酸性、耐酸化ストレ
ス能をS .mutans
の増殖曲線を作成し評価した。S mu t a n s
の浸透圧適応における浸透圧適応溶質(グリシンベタイン、コリン、プロリン)の利用は
0 .3 M N a C l添加高浸透圧培地にそれぞれの溶質を
加えた培地による増殖曲線の比較により検討した。prtM
遺伝子の発現量の変化は、0 .3M N a C l添加生
理食塩水の3 0、 7 5分刺激時の菌体から回収した m ‑ R N A量をそれぞれ r e a lt i m e R T P C R法で測定し、
解析した。
[結果]幾つかの環境ストレス刺激時の増殖曲線から、
P r t Mは浸透圧に特異的に関与していた。高浸
透圧培地におけるS .mutans
の増殖はW T
と比較してL1prtM
で著しく低下していた。また、prtM
の発 現量は、7 5分の浸透圧刺激により、無刺激時と比較して約 9
倍増加した。これらの結果は、P r t Mが
浸透圧適応に特異的に寄与することを示唆している。浸透圧適応溶質の利用を調べた結果、S.mutans
は、従来提唱されている溶質は利用できず、K
イオンのみが利用でき、その利用にはP r t Mの存在が不
可欠であることが明らかとなった。L
結論]以上の結果、P r t Mは浸透圧適応に関わるリボタンパク質で、その役割は S .mutans
による Kイオンの利用に関与することが明らかとなった。本論文の審査にあたり副査から多くの質問があり,その一部と回答を以下に示す.
美島委員の質問とそれに対する回答:
1 .
一般的なリポタンパク質の機能は黄色ブドワ球菌では
BlaPにおいてペニシリン耐性と関連があり、またぷ pneumoniae
に おけるLivK
では細胞内生存性と関連があり、S.mutansでは、PpiAでは食食抵抗性、 OpcC
では酸抵抗性に関与するとの報告がされている。2 .
細菌の遺伝子導入の方法はprtM
上流と下流にそれぞれ相向性のある塩基配列とテトラサイクリン耐性遺伝子を挟ん でPCR増幅した。そして、ウマ血清を用いて形質転換しやすくなった S .mutans l09c
と その増幅断片を混合し、ダブルクロスオーバ一法による遺伝子霞換を期待した。3 . NaCl濃度を0.3Mにした理由は
] g t
欠損株を用いて浸透圧環境下における増殖曲線を調べた結果、NaCl0.3Mでの増殖曲
線が野性株とPrtM
との増殖の差が最も開く濃度だったため。また、本研究室での以前の 研究論文においても浸透圧実験はNaCl0.3Mで行われている。( T a n i g u c h i , e t a l . , 2 0 1 3 Dental Medicine
.R,旨•search.)中村委員の質問とそれに対する回答:
1 . Osmoprotectant t r a n s p o r t e rは何か
代表的なものに
A B C ‑ t r a n s p o r t e r s ( A T P ‑ b i n d i n gc a s s e t t r a n s p o r t e r s
)がある。これはSBD
;基 質結合タンパク(su b s t r a t e ‑ b i n d i n g domein
)とTM
;膜貫通ドメイン(transmembranedomein
)、及びAT P ‑ b i n d i n gd o m a i n ; ATP結合タンパクから構成され、 ATP
エネルギーを用い て細胞内外の物質輸送する機構であるが、B a c i l l u sS u b t i l i s
ではOpuA OpuB OpuC、
L i s t e r i a
Monocy必•genes では、 GbuOpuC、L a c t o c o c c u sl a c t i s
では、OpuA
がそれぞれO s m o p r o t e c t a n t
の輸送を担っている。(C h i l i a n g Chen e t a l , 2 0 0 7 J o u r n a l of B a c t e r i o l o g y . ) 2 .
真核細胞でのos m o p r o t e c t a n tt r a n s p o r t e rにはどのようなものがあるのか
植物細胞では、
HKTt r a n s p o r t e r
、KUPt r a n s p o r t e rがあり(魚住信行名古屋大学生物機能
開発利用研究センタ})、海洋生物細胞には、T a u r i n e t r a n s p o r t e rがある(細井公富ら京都
大学)という研究文献がある。両委員共通の質問とそれに対する回答:
1 . PrtMが高浸透圧に誘導されるメカニズムは
S . mutans
におけるOsmoprotectantt r a n s p o r t e r
とPrtM
との関係は解明されていない。しかし、
PrtMはタンパク分泌や f o l d i n gに関わっている( K n t i n e n e t a l 1991 Mol M i c r o b i a l )
ことから、PrtMが欠損すてることにより、タンパク質の立体構造形成不全が考えられ、結果とし
てt r a n s p o r tに関わっているタンパク質が PrtMによって影響を受ける可能性がある。
これらの試問に対する回答は,適切かっ明解で5あった また,井上委員は主査の立場から,
両副査の質問に対する回答の妥当性を確認した.
以上の審査結果から,本論文を博士(歯学)の学位授与に値するものと判定した.