授業「保育内容総論」長期協同学習による学びの構 築 : 保育内容の捉え方の視点から
著者 前田 和代
雑誌名 東京家政大学教員養成教育推進室年報
巻 5
号 1
ページ 91‑98
発行年 2018‑02‑28
出版者 東京家政大学教員養成教育推進室
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010171/
教員養成教育推進室年報 第5号(1)
授業「保育内容総論」長期協同学習による学びの構築
―保育内容の捉え方の視点から―
Lecture 'General information on nursing contents' Construction of learning by long-term cooperative learning- From the viewpoint of how
to catch nursery contents -
児童学科非常勤講師 前田 和代
本研究の目的は、保育内容総論の授業における保育内容の捉え方の視点から、長期協同学習による学び の構築を明らかにすることである。保育内容の捉え方について教授後、グループによる話し合い、発表、
評価、反省、まとめの展開で長期協同学習を行った。そして、各グループのレポート分析から、学生の保 育内容の捉え方をカテゴリに分類した。その結果、学生が捉えた保育内容の視点は、1園環境・環境構成、
2遊びの内容、3生活の内容、4行事の内容、5子どもの育ちや保育者、保護者にとっての意味の5つだっ た。さらに、長期協同学習における保育内容の捉え方についての学びをどのように構築していったのか、
各自の振り返りレポートを分析しカテゴリ化を行い考察した。その結果、4つの場面における学びの内容 が明らかになった。1)自分の意見を言う場面では、自己の振り返り、2)他者の意見を聞く場面では、
学びの修正や広がり、3)話し合い・発表準備場面では、学びの共有、4)発表・発表後の反省、評価場 面では、学びの深化である。学生は、保育内容の捉え方の視点から、学びの内容を構築していった。また、
この効果は、教員にとっても教授法の振りかえり、反省、修正の一助になることも示唆できた。
1・問題と課題
本研究の目的は、保育内容総論の授業における保育内容の捉え方の視点から、長期協同学習による学び の構築を明らかにすることである。保育内容総論は、「保育の内容・方法に関する科目」と位置付けられ ており、開講の時期や内容は多様である。川俣らの研究では、「保育内容総論」運営上の課題として、2 年養成の場合の開講時期について検討したうえで、1年生の前期に行うことを試みている。そして、この 時期の開講における課題として、準備教育・導入教育に多くの時間がとられること、保育について初めて 学ぶため専門用語について逐一解説が必要であること、結果授業の主たる内容を扱う時間が相対的に少な くなってしまうことを挙げている1)。さらに、総じて学生の授業に対する威容・参加度とともに高いとい い難く、学生の主体が問われる演習活動を展開することに困難があると指摘している2)。川俣らの研究か ら1年生前期開講の難しさを捉えることができる。一方で、これから保育を学んでいく学生にとって、保 育所保育指針や幼稚園教育要領、認定子ども園教育・保育要領に示されている保育内容を的確に理解して いくことは、今後の学びを深めたり広げたりしていくうえでたいへん重要であると言える。そこに、1年 生前期開講の意義があるともいえる。渡辺も、開講時期や授業内容について大分県の3校の養成校の保育 内容総論のシラバス等を用いて比較検討している3)。徳本は、暗記型学び傾向にある学生への総合的実践 的保育の実践を課題として、この授業についてより体験的に実践的に学ぶ必要性を挙げている4)。また、
源らは、担当教員の専門分野の実態調査を行っており、その結果様々な専門性をもった教員が保育内容総 論を担当していることが明らかになっている5)。源の研究から、担当教員の専門によって、保育内容の捉 え方は多岐にわたると言える。これらの研究から、保育内容総論の授業は、内容も多岐にわたり、開講時 期によって学生の理解の仕方も大いに異なってしまう科目であることが分かる。
先にも述べたが、学生が保育所保育指針や幼稚園教育要領、認定子ども園教育・保育要領に示されている
教員養成教育推進室年報 第5号(1)
保育内容を的確に理解していくことは保育者として保育を展開していくうえでたいへん重要である。佐藤 らは、「子どもや保育の理論的な理解と、それにもとづいて行う実践、そして実践の省察や他者との議論 を通した理論的理解の修正・更新を折り重ねていく必要があり、学生にとってそのひとつひとつが断片的 な理解や経験に終始してはならないと考える」6)と述べている。つまり、理論と実践を捉えた学びは必 須である。しかたがって、より効果的な学習が求められると考える。そこで、川俣らが示した学生の主体 が問われる演習活動を展開することや渡辺が指摘した実践的保育の実践とのつながりは重要であると言え る。一方的な教授ではなく、学生が主体となって理解を深めていく展開である。このような展開にアク ティブラーニングや協同学習の効用が挙げられる。アクティブラーニングを取り入れた授業実践について の研究は様々な授業で見られる7)。原田は、「保育内容(言葉)」の授業においてアクティブラーニングの 実践を報告している。原田は、アクティブラーニングでは、活動を行う中で新たな知識体系を学びを得る のではないかと述べている8)。保育内容総論の授業においてもアクティブラーニングを用いた理論と実践 の報告がある。例えば、岸本らは、保育内容の理解を踏まえ、実践につなげるため、幼児教育祭を企画し た。そして、身体の間隔のレベルで「保育内容」について理解を深めていることを明らかにしている9)。 先に述べた佐藤らも理論を踏まえた後、学生が実践する場として子どもたち向けに夏祭りを企画し、そこ での学生の学びを報告している10)。このように、理論の理解を深めるためには、実践を取り入れた授業は 理論と実践をつなげていく効果があることがわかった。また、これらは長期協同学習での実践であり、そ の効果は、授業内のグループワークにより、学び合う効果があると言える。しかし、これらの研究では、
学生の学びの内容にとどまっており、保育内容を学生がどのように理解したのかという授業全体の目標の 理解を教員が把握していくことまでは述べられていない。
また、長期協同学習による学生の保育内容の理解についての研究は見当たらない。授業の目標にある保 育内容の理解を図るツールとしては、多くが期末試験や小テストなどいわゆる点数化した尺度がある。こ れらは、個人の理解の尺度としては効果があり、理解度を測るうえで有効である。一方、期末試験後は、
学生の理解を修正したり、補足したりすることが難しい。特に、1年生前期科目で行う場合、保育内容を 適切に捉えていくことは、今後の学びや保育観に影響すると考える。したがって、理解の修正や補足が重 要である。
以上から、長期の協同学習は理論の学びに有効であると言える。そこで、本研究では、授業「保育内容 総論」の長期協同学習における保育内容の捉え方の視点から、長期協同学習における学びの構築を明らか にすることを目的とする。本研究で対象にした「保育内容総論」の授業も2年養成の1年前期開講科目で ある。幼稚園や保育園の管轄の違いや五領域の知識がない状況での開講であり、準備や導入的教育に費や すことが多かった。そのため、学生がどれくらいどのように保育内容の捉え方について期末試験まで把握 することが困難であった。そこで、長期協同学習を通して保育内容の捉え方の視点から学びの構築を明ら かにしていくことは学生の学び、さらに教員の教授のあり方についての一助になると考える。
2・研究方法
研究の対象の授業は、筆者が担当する2年養成1年生前期開講の「保育指導法総論」である。ただし、
授業内容は演習科目保育内容総論であるため、本研究では、この授業を「保育内容総論」として論を進め ていくとする。対象学生は、1年生3クラスである。授業の前半を保育内容の捉え方を事例や教科書、実 践、DVDなどを用いて教授する。具体的には、遊びの捉え方、生活場面の捉え方、行事の捉え方、一斉 活動の捉え方、5領域について、個と集団について、様々な配慮を必要とする子どもについてなど多様な 視点で、保育内容の捉え方とそこでの保育者の援助を学ぶ。これらを、踏まえて、第11回、12回の授業 でグループの話し合い、第13回、第14回にて発表する。内容は、これまでの学びを踏まえた自分たちの 理想の保育園または、幼稚園、認定子ども園を構想し、工夫をして発表する。学生には、発表の仕方や内
教員養成教育推進室年報 第5号(1)
容について表1に示したプリントを配布した。尚、グループは筆者が学生同士の関係性などを考慮して意 図的に構成した。1クラス7~8グループ(1グループ5人~ 10人)である。グループの人数に差があ るのは、この期間幼稚園の観察実習がある学生がいて、それらの学生はグループワークの回に授業を欠席 するため、観察に行く学生10人は同じグループとして配慮したからである。
表1 学生に配布したプリントの内容
まず、グループでまとめた発表内容レポートから、各グループのテーマを抽出する。このテーマについ て、各グループの学生が考える理想の園発表レポートに書かれている内容の文言を抽出し、カテゴリ化 する。
次に、各自の振り返りレポートを分析、カテゴリ化し、これらを考察していく。レポートに記述されて いる発表後のまとめレポートは、振り返りレポート項目を3つ設け、各項目に記述してもらった。項目は、
1・自分のグループ発表の反省・感想2・他のグループの発表の感想3・グループワークの学びと感想
(保育の捉え方や長期でのグルーワークをすることなどについて)の3つである。
尚、本研究では、長期協同学習にあてた授業回数は4回であるが、この回数は15回授業でおおよそ3 分の1にあたること、学生が自主的に授業以外の時間を使って、話し合いや発表準備を進めたことから(約 1か月間)、本研究では、この協同学習を長期協同学習と見なすこととする。
また、倫理的配慮については、学生に授業内でレポート使用の了承を得ている。
3・分析と結果
(1)学生の保育内容の理解の視点
まず、15グループの発表テーマについては表1の通りである。
2・研究方法
研究の対象の授業は、筆者が担当する2年養成1年生前期開講の「保育指導法総論」である。ただし、
授業内容は演習科目保育内容総論であるため、本研究では、この授業を「保育内容総論」として論を進 めていくとする。対象学生は、1年生3クラスである。授業の前半を保育内容の捉え方を事例や教科書、
実践、DVDなどを用いて教授する。具体的には、遊びの捉え方、生活場面の捉え方、行事の捉え方、一 斉活動の捉え方、5領域について、個と集団について、様々な配慮を必要とする子どもについてなど多様 な視点で、保育内容の捉え方とそこでの保育者の援助を学ぶ。これらを、踏まえて、第 11 回、12 回の 授業でグループの話し合い、第13回、第14回にて発表する。内容は、これまでの学びを踏まえた自分 たちの理想の保育園または、幼稚園、認定子ども園を構想し、工夫をして発表する。学生には、発表の 仕方や内容について表1に示したプリントを配布した。尚、グループは筆者が学生同士の関係性などを 考慮して意図的に構成した。1クラス7~8グループ(1グループ5人~10人)である。グループの人数 に差があるのは、この期間幼稚園の観察実習がある学生がいて、それらの学生はグループワークの回に 授業を欠席するため、観察に行く学生10人は同じグループとして配慮したからである。
表1 学生に配布したプリントの内容 保育指導法総論 2017・6 第 11~14 回
課題:これまでの授業の内容(保育内容の捉え方)の理解を整理するとともに深める。
方法:グループワークで行う。
ねらい:保育内容、子ども理解の学びを深める。グループワークを通して、限られた時間内に相談、準備をすること によって、保育者としての資質を高める。
*グループ作りについて 幼稚園観察実習と授業が重なる場合は、観察のメンバーでグループを作る。
理想の園・・キーワード「子どもも保育者も保護者もハッピーな園」
手順①グループで「遊び」「生活」「一斉活動」「行事」の捉え方を B4用紙に工夫してまとめる。→第 12 回目提出 ➁①を踏まえて、自分たちの理想の幼稚園・保育園・認定子ども園のいずれかについて話し合う。テーマを決める。
➂話し合ったことをどのように発表するのか相談する。→発表内容レポートをグループで作成し、発表後のコメント カードと一緒に提出すること。
④発表の準備(8 分ジャストで終わるように、タイマーを使って練習する)
➄発表(発表時間 1 グループ 8 分)13 回目 5 グループ 14 回目 3 グループ
<発表の仕方>学生が進行する。
1) 発表グループが前にでて、テーマ、メンバー紹介、内容、まとめ、質問タイムの順で進める。
2) 終わったら、次の発表グループへ引き継ぐ。
3) 見ている人は、コメントカードに感じたことを記入する。
4) 授業の最後にコメントカードを各グループに渡す。
5) 発表グループは、みんなからいただいたコメントカードをグループのみんなで読む。
6) 読んだあとに、発表の反省、感想、みなさんからいただいたコメントに対しての意見を各自が記入して提出する。
⑥まとめ
まず、グループでまとめた発表内容レポートから、まず各グループのテーマを抽出する。このテーマ について、各グループの学生が描く理想の園発表レポートに書かれている内容の文言を抽出し、カテゴ リ化する。
教員養成教育推進室年報 第5号(1)
表1 学生の理想の園のテーマ
次に、各グループのまとめレポートに記述された文言を抽出した。抽出された文言は105であった。こ の文言を類似性によって分類した。その結果、5つのカテゴリに分類された。尚、26 の文言がカテゴリ に重複しているため、抽出された総数は105であったが、該当文言は131となり、ずれが生じる結果となっ た。表2に事例も含め、カテゴリを示す。
表2 学生の保育内容の捉え方の視点
1・園の環境・環境構成について、例えば、「大自然のグリーン幼稚園」、「緑に囲まれた自然豊かな認 定子ども園」など発表のテーマや内容にある「川」「畑」「林」「光」などの記述から読み取れるように「自 然環境」が50のうち22あった。保育内容を捉える際、自然豊かな環境を多く取り上げられている。また、
保育室や、園庭の図を描いたグループも多く、保育室や園庭の環境構成について28抽出された。「自然豊 かで園庭が広い」「園庭と保育室が行き来しやすい」「動物を飼っている」、「畑がある」、「植物と触れられ る」というような環境構成に着目している。これらの記述は、物的環境や自然環境、また園舎や園庭の構 造など園環境についての記述と解釈したので、「園環境や環境構成」とした。2遊びの内容については、
表2の具体事例にあるように、「木登り」「虫探し」や、「自由に絵が描ける」、「動物と触れ合う」など具 体的な記述があった。具体的な遊びの内容や好きな遊びを十分にできるというような遊びの記述がみられ たため、「遊びの内容」と解釈した。具体的な遊びの内容については、環境構成を考えてからの遊びの内 容である場合と、遊びの内容を考えてからの環境構成であった場合の両面から捉えられた視点と考えられ る。3生活の内容については、具体事例にあるように、「食べたい量を自分で決められる」「ビュッフェ式 で自分で選べる」や「育てた野菜を自分たちで調理して食べる」など昼食を中心とした食事を挙げた記述 が多かったことから、生活の内容の記述では、食事を中心とした捉え方をしていることがわかった。遊び 場面以外の保育内容に当てはまるため、「生活の内容」と解釈した。4行事の内容については、いわゆる 学生自身が経験してきた運動会、遠足などの記述と、具体事例にあるようなオリジナルの行事の記述が あった。記述の際、すべて「行事」と示されていたことから「行事の内容」と解釈した。オリジナルの行
次に、各自の振り返りレポートを分析、カテゴリ化し、これらを考察していく。レポートに記述され ている発表後のまとめレポートは、振り返りレポート項目を 3 つ設け、各項目に記述してもらった。項 目は、1・自分のグループ発表の反省・感想2・他のグループの発表の感想 3・グループワークの学びと 感想(保育の捉え方や長期でのグルーワークをすることなどについて)の3つである。
尚、本研究では、長期協同学習にあてた授業回数は、4回であるが、この回数は15回授業でおおよそ 3分の1にあたること、学生が自主的に授業以外の時間を使って、話し合いや発表準備を進めたことから
(約1か月間)、本研究では、この協同学習を長期協同学習と見なすこととする。
また、倫理的配慮については、学生に授業内でレポート使用の了承を得ている。
3・分析と結果
(1) 学生の保育内容の理解の視点
まず、15グループの発表テーマについては表1の通りである。
表1 学生の理想の園のテーマ
①笑顔あふれる幼稚園 ⑥みんながハッピーになれる保育園 ⑪自然がいっぱいで動物と触れ合える子どもがの びのびと過ごせる保育園
➁まちの保育園 ⑦自然と生きる幼稚園 ⑫緑に囲まれた自然豊かな認定子ども園
➂自然の幼稚園 ⑧幼稚園にくるのが楽しみになる園 ⑬私たちの誰でもハッピーになれる幼稚園
④ボケボケ幼稚園 ⑨子どもの主体性を大切にする幼稚園 ⑭園に来るのがとにかく楽しいと思える幼稚園
➄みどり保育園 ⑩明るく元気に楽しく過ごせる幼稚園 ⑮私たちの思う幼稚園
次に、各グループのまとめレポートに記述された文言を抽出した。抽出された文言は105 であった。
この文言を類似性によって分類した。その結果、5つのカテゴリに分類された。尚、26の文言がカテゴ リに重複しているため、抽出された総数は105であったが、該当文言は131となり、ずれが生じる結果 となった。表2に事例も含め、カテゴリを示す。
表2 学生の保育内容の捉え方の視点
カテゴリ 該当文言 具体的な文言の例
1 園環境・環境構成 50 ・真ん中のぽっかりあいた吹き抜けの園舎 ・園全体に光を取りい れる・1階の人工芝・室内アスレチック・川・林
2 遊びの内容 25 ・そり遊び・木登り・虫探し・泥遊び・木にぶらさがる・伝承遊び・
竹馬
3 生活の内容 13 ・保育室でみんなで食事・オーガニック食材の給食・ブッフェ式の 給食・
4 行事の内容 8 ・アイス大会・季節ごとの行事・発表会・作った作品を写真におさ め、保護者と一緒に見る展覧会
5 子どもの育ちや保育 者、保護者にとって の意味
35 ・四季を感じられる命の大切さや道徳心を学ぶ・遊びから様々なこ とを学ぶ・保育者は環境を整えるなどの工夫をする・保護者は子ど もの自主性が育つことによって自分で考えて行動することができ るので、社会性が身に付き親として安心できる。
次に、各自の振り返りレポートを分析、カテゴリ化し、これらを考察していく。レポートに記述され ている発表後のまとめレポートは、振り返りレポート項目を 3 つ設け、各項目に記述してもらった。項 目は、1・自分のグループ発表の反省・感想2・他のグループの発表の感想 3・グループワークの学びと 感想(保育の捉え方や長期でのグルーワークをすることなどについて)の3つである。
尚、本研究では、長期協同学習にあてた授業回数は、4回であるが、この回数は15回授業でおおよそ 3分の1にあたること、学生が自主的に授業以外の時間を使って、話し合いや発表準備を進めたことから
(約1か月間)、本研究では、この協同学習を長期協同学習と見なすこととする。
また、倫理的配慮については、学生に授業内でレポート使用の了承を得ている。
3・分析と結果
(1) 学生の保育内容の理解の視点
まず、15グループの発表テーマについては表1の通りである。
表1 学生の理想の園のテーマ
①笑顔あふれる幼稚園 ⑥みんながハッピーになれる保育園 ⑪自然がいっぱいで動物と触れ合える子どもがの びのびと過ごせる保育園
➁まちの保育園 ⑦自然と生きる幼稚園 ⑫緑に囲まれた自然豊かな認定子ども園
➂自然の幼稚園 ⑧幼稚園にくるのが楽しみになる園 ⑬私たちの誰でもハッピーになれる幼稚園
④ボケボケ幼稚園 ⑨子どもの主体性を大切にする幼稚園 ⑭園に来るのがとにかく楽しいと思える幼稚園
➄みどり保育園 ⑩明るく元気に楽しく過ごせる幼稚園 ⑮私たちの思う幼稚園
次に、各グループのまとめレポートに記述された文言を抽出した。抽出された文言は105 であった。
この文言を類似性によって分類した。その結果、5つのカテゴリに分類された。尚、26の文言がカテゴ リに重複しているため、抽出された総数は105であったが、該当文言は131となり、ずれが生じる結果 となった。表2に事例も含め、カテゴリを示す。
表2 学生の保育内容の捉え方の視点
カテゴリ 該当文言 具体的な文言の例
1 園環境・環境構成 50 ・真ん中のぽっかりあいた吹き抜けの園舎 ・園全体に光を取りい れる・1階の人工芝・室内アスレチック・川・林
2 遊びの内容 25 ・そり遊び・木登り・虫探し・泥遊び・木にぶらさがる・伝承遊び・
竹馬
3 生活の内容 13 ・保育室でみんなで食事・オーガニック食材の給食・ブッフェ式の 給食・
4 行事の内容 8 ・アイス大会・季節ごとの行事・発表会・作った作品を写真におさ め、保護者と一緒に見る展覧会
5 子どもの育ちや保育 者、保護者にとって の意味
35 ・四季を感じられる命の大切さや道徳心を学ぶ・遊びから様々なこ とを学ぶ・保育者は環境を整えるなどの工夫をする・保護者は子ど もの自主性が育つことによって自分で考えて行動することができ るので、社会性が身に付き親として安心できる。
教員養成教育推進室年報 第5号(1)
事に関しては、園環境や遊び、生活と一貫性があり、これらとの関連から考えられたと言える。5子ども の育ちや保育者、保護者にとっての意味については、具体的な内容に対して、学生たちなりに意味付けを している記述だったため、「子どもの育ちや保育者、保護者にとっての意味」と解釈した。なぜ、この内 容なのか話しあうことで子どもの育ちや保育者、保護者にとっての保育内容の意味を考えられたと言え る。したがって、5に分類される記述も多かったのだろう。これらの記述は、すべて、子どもの状況から 保育者、保護者の状況を連動して考えていること、一つの出来事や保育内容を子ども、保育者、保護者の 3つの側から捉えることもできていると言える。
(2)長期協同学習における学び
個人の振り返りレポートの記述(3項目すべて含む)の総数は、366あった。この記述を類型化した結果、
記述されている内容の場面が4つの場面に分類された。1)グループ内で自分の意見を述べる場面、2)
グループ内で他者の意見を聞く場面、3)グループで発表に向けて考えをまとめ、発表の準備をする場面、
4)発表後のコメントカードや質問からグループごとに反省評価を行う場面である。そして、その場面に ついて記述されている内容を分析した結果、各場面による学びの内容が導き出された。4つの場面におけ るそれぞれの学びの内容について順に説明していく。
1)グループ内で自分の意見を述べる場面による学び
この場面では、これまでの授業のプリントや教科書、保育所保育指針、幼稚園教育要領、認定子ども園 教育・保育要領などを読みながら、各自が意見を述べていた。「自分の意見が言えた」「他者の意見を聞い てからでは、新たな意見がだせるので考えるのが楽しかった」「意見を言うことで復習できた」など、肯 定的な記述からは、これまでの保育内容の捉え方をその学生なりに理解していると捉えることができる。
また、学生によっては、自分が通っていた園のこと、自分の個人的な思いなどを述べている学生もいた。
授業での学びを捉えながら、「自分の園もこうだった」と語る場合と、それらを踏まえず意見している場 合があると言える。また、「なかなかどう話したらよいかわからず、進まなかった」「意見を言うのが苦手」
「意見がでない」などの否定的な記述からは、これまでの学びの理解ができておらず、何を伝えてよいか わからない場合、考えはあるが自信がなく言えない場合、そもそも会話が苦手という場合などが考えられ る。したがって、このような記述からは、学生がどのように保育内容を捉えているのか把握することは困 難であると言える。また、「保育の捉え方はそれぞれ」「自分では気づかない視点」「みんなの意見がバラ バラ」というような記述もあった。このような記述からは、自分の経験からの意見や個人の考えによる捉 え方の相違と、授業の理解の相違の2つが要因と考えられる。以上から、自分の意見を伝える場面での保 育内容の捉え方による学びは、自己の振り返りと言える。
2)グループ内で他者の意見を聞く場面による学び
他者の意見を聞く場面では、「各々が思って感じていることが違う」「意見がまとまらない」「意見が違 うので大変だった」「価値観が違うから難しい」「意見を聞き、自分の考えと合わせることがたいへんだっ た」「同じ授業を受けていても、受け取り方が人それぞれ」「保育の捉え方は、それぞれの意見がある」と いうような、他者の意見との相違についての困難を示す記述が多く見られた。これらの記述からは、1)
場面に引き続き、「同じ授業を受けていても、受け取り方が人それぞれ」という記述に見られるように、
保育内容の捉え方への相違を指摘していると言える。つまり、捉え方の尺度があるということである。こ れは授業の理解だけではなく、学生の経験や理想も含まれるためと考えられる。そして、学生はこの場面 では自分のこれまでの学びに対して混乱したり、葛藤していたりしていることがわかる。一方、「自分の 意見と他の意見が違ったとき、なんでなのか、どこがちがうのか話し合えた」「いろいろな意見を出し合 うことで、今まで自分が気付かなかったことを気付かせてもらったり、新しい発見をすることができたの で、他人の意見を聞くことは大切」「自分も復習することができた」「意見が違うことがおもしろい」「人
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の意見を聞きいれる大切さ」など、肯定的な記述も見られた。これらの記述からは、自分の保育内容の捉 え方を見直すきっかけにつながっていると言える。ここで、学生はこれまでの自分の保育内容の捉え方を 修正したり、補足したりしていると言える。様々な意見が出る中で、学生は葛藤するものの、他者の意見 に傾聴し、それらを自分なりに包括し、知識の発見につなげていることがわかった。以上から、この場面 では、学びの修正や広がりを得ていると考えられる。
3)話し合い・発表準備場面による学び
この場面では、「保育の捉え方は様々」「園についての考えの幅が広がった」「意見交換することで、自 分の視野が広くなった」「発想の広がり」などの記述があった。このような記述から、他者の意見に傾聴 できたことにより、自分の保育内容の捉え方が広がったことを示している。さらに、「そんな考えがある のかとたくさんの学びを得られた」「保育について、これはどういった場合?園児の気持ちは?などをみ んなで考えているとき、他人の考えも聞けるので自分の勉強にもなる」「一人では意見だけで終わってし まうけれど、グループでは理由や疑問がたくさん生まれてくる」「みんなで協力することで新しい発見が あった」「自分だけでは思いつかない保育内容の捉え方が思いつくのがたのしかった」「短期間でグループ ワークをするよりも、考えも深まり、新しいアイディアも発見することができた」というような記述も多 くあった。これらの記述では、「学び」という言葉がある。おそらく、保育内容の捉え方について、「なぜ そうなのか」という理由の意見交換が多々見られたのであろう。そして、意見の相違から疑問点について 話し合い、一人ひとりの考えがより具体化され、他者の意見を理解し、保育内容の捉え方の共有ができた のだろう。以上から、この場面では、学びの共有を得ていると考えられる。
4)発表・発表後の反省、評価場面での学び
この場面では、「自分の考えが変わったり、考えが柔軟になることを学ぶことができた」「保育はただ何 がやりたいだけではなく、なぜそれをする必要があるのかまで詳しく考える必要があると感じた」「指摘 してもらうことで、別の視点から物事を捉えられるようになった」「なぜそうしたいのかということも考 えたり、子どもたちの安全の配慮や環境など色々考えなければいけない」「単に理想や意見を押し付ける のではなく、何のメリットがあるのか、何のデメリットがあるのか考えることが大切だと思った」「質問で、
自分のグループの何が「変」「不思議」といってもらって、自分たちで考え、良いほうにまとめていくこ とができた」「なぜ、この園はこのようなことをしているのかなど考えてきたい」「質問や意見をもらうこ とで、自分たちにまだたりない考えがわかった」「意見をもらうことで、学んだことが深められた」「行事 やイベントの際の細かい配慮の必要性」「子どもたちへの色々な配慮の必要性」「意見をもらって、改善で きるところは改善し、良いところは継続していく」というような記述があった。これらからは、自分たち の発表内容、つまり、保育内容の捉え方の振り返りを行った際に別の視点を補足したり、理解のさらなる 修正をしたりすることにつながっていると解釈できる。また、「幼稚園、保育園について振り返りながら 自分の意見を言えた」「自分の考え方も少しずつ変化してきたので、もっと勉強して見方、考え方を発展 させていきたい」「自分の思いを具体化できた」「すべてに意味があることに改めて気付いた」というよう な記述もあった。保育内容の捉え方を自分なりに整理したり、さらなる捉え直しが行われた。以上から、
この場面では学びの深化を得ていると考えられる。
4 全体考察
(1)長期協同学習の意義
長期協同学習の意義として次の2点が考えられる。まず、学びの構築ができていくことである。15 回 の授業のうち、長期協同学習を取りいれることは、なかなか難しい。一方、教員の教授のみの理解にも特 に1年生前期科目の場合、効果があいまいである。このような問題から、本研究では1か月という長期協 同学習を試みた。実際の授業での話し合い、準備は2コマである。この時間内で終わるように工夫して進
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めるよう指示したが、実際は話し合いの折り合いが難しく、ほとんどのグループが空き時間などを利用し て準備を進めていた。このため、話し合い、発表準備場面が特に時間を要した。その結果、保育内容の捉 え直しで終わるのではなく、学びの広がりや共有、深化と学びの構築が行われた。もう一つは、保育者と しての資質を高めることである。学生のレポートには、この経験が保育現場にもつながるという記述がみ られた。筆者のねらいのひとつが、保育者としてのチーム力や限られた時間内での共同作業であったの で、この視点からの学びを得ていることもわかった。1か月の長期にわたる協同学習に取り組んだことか らは、協同学習における様々な過程を経験し、最終的には保育を学ぶ楽しさを実感していることも感じら れた。また、あまりかかわりのなかった学生同士が葛藤、共有を経て、達成感を得るという経験も保育者 としての資質向上につながると言える。
(2)長期協同学習の効果
学生の捉えた保育内容から、遊びの理解を得ていたこと、環境や環境構成の役割についての学びを得て いること、子どもや保育者、保護者にとっての保育内容の意味を捉えていることなどがわかった。授業で は、遊びの捉え方のコマがあり、幼稚園教育要領、保育所保育指針を踏まえ、遊びを中心とした保育を教 授していたので、学生が遊びを中心とした保育を取り上げたことから、授業での学びが反映されていると 言える。一方、環境や環境構成についての教授も行ったが、こちらは自然環境、物的環境、人的環境など 幅広く教授した。しかし、学生の結果を見ると、自然環境への関心が突出していることがわかった。また、
生活面の捉え方についても、挨拶、身支度、排泄、午睡など様々な具体的な場面を取りあげ教授したが、
食事場面が中心に取り上げられていた。さらに、保育者の意図や子どもの思いについて教授していたた め、それらも反映されていたグループが多かった。したがって、この結果からは全体的には、授業内容を 踏まえたうえで保育内容を捉えていると考えられる。先にも述べたが、学生がどの程度理解しているの か、また、理解の方向性はどのようなものなのか、確認することは主に小テストや期末試験である。開講 途中の小テストでも全体の傾向から捉え直しは可能であるが、学生自身が捉え方に気付くことはわかりに くい。また、期末試験のときに、理解の方向性が違う場合の修正は難しい。これらを踏まえて、教員側か らは、学生が発表することによって、教員と受講している学生全体として理解の振り返りや修正、教授方 法の反省を得るという効果があったと言える。
また、授業を振り返る、工夫した発表、その後の反省という構造の長期協同学習を取り入れることは、
学びの共通理解を深める効果があると考える。1年生前期開講における保育内容の捉え方は、初めて学ぶ 保育内容やその捉え方を理解しようとしている一方、学生自身の保育園や幼稚園での生活経験が大きく影 響していることがわかった。学生は、授業の学び、他者との振り返りや共有と自身の経験を整理しながら、
学びを構築していく。自分の経験の整理の視点が大きく影響することころが、1年生前期開講における特 徴の一つであり、学生が今後の理論の学びや実習で保育観を構築していく際の足掛かりになると言える。
(3)まとめと今後の課題
本研究では、1年生前期という保育への学びが浅い段階での実践であったため、学生の話し合う視点も 学んだ内容と、自分の経験が中心であった。実習や、様々な学びを得た場合では、長期協同学習の効果の 変容がみられることが考えられる。今後は、開講時期にも着目して長期協同学習の効果を検討していくこ とを課題としたい。また、今回の学習は、時間外の活動もあり、学生の負担に配慮した授業構成の検討も 重ねていきたい。
注
1)川俣沙織 川俣美砂子他(2015)「保育内容総論」運営上の課題に関する研究 中村学園大学・中村 学園大学短期大学部 研究紀要 第47号 217 ‐ 222
2)前掲1)
教員養成教育推進室年報 第5号(1)
3)渡辺一弘(2016)「保育内容総論」の指導法についての検討―大分県の保育者養成校の事例を中心に
―幼児教育研究(2)P1 ‐ 13
4)徳本達夫(2015)保育内容総論授業の現状と課題 人間福祉研究(13)P83 ‐ 92
5)源証香 小谷宣路(2014)「保育内容」研究のあり方に関する一考察-保育者養成校における担当教 員の専門分野の実態調査から- 埼玉大学教育学部教育実践総合センター紀要(13)P9 ‐ 15 6)佐藤曉子 八代陽子他(2016)「保育内容総論」における大学2年生のグループ学習の成果と課題~
グループで力を合わせて、子どもたちを「夏祭り」に招待しよう!~ 東京家政大学研究紀要 第 56集(1) P9 ‐ 19
7)例えば、園田雪恵(2016)特例講習科目「保育内容総論」におけるアクティブラーニング型授業の報 告:遊びの中の保育内容5領域の検討 夙川学院短期大学教育実践研究紀要(9)や坂倉真衣(2016)
アクティブラーニングを取り入れた保育内容環境の講義:「紙コップを用いた遊び」を考える 九州 竜谷短期大学紀要(62)P63 ‐ 80や直井玲子(2015)アクティブラーニングの手法としての演劇教 育の応用可能性:保育学生の「保育内容」をどのように教えるか 松山東雲女子大学人文学部紀要 23 P55 ‐ 66 などが挙げられる。
8)原田大樹(2017)「保育内容(言葉)」のアクティブラーニング実践 福岡女学院大学紀要人間関係学 部編(18)P39 ‐ 45
9)岸本美紀 妹尾美智子他(2010)保育内容を実践に生かす取組としての幼児教育祭 その 2 ‐ 保育 内容の理解を深め、実践につなげるために- 岡崎女子短期大学研究紀要43 P23 ‐ 30
10)前掲6)
参考文献
・下道省三 鈴口緋紗子(2009)保育内容の基礎研究(1) 甲子園短期大学紀要NO. 27 P51 ‐ 62
・小山優子(2016)幼稚園・保育所・認定こども園における保育内容の捉え方 ‐ 養護・教育・保育の史 的変遷から- 島根県立大学短期大学部松江キャンパス研究紀要 Vol.55 P41 ‐ 50
・櫻木真智子(2016)保育専門科目に実践を取り入れることによる学びに関する報告-「保育内容・健康」
に模擬保育形式の運動遊びを導入することの効果を例として- 聖徳大学研究紀要 聖徳大学 第 27 号 聖徳大学短期大学部 第49号 P127 ‐ 134
・福元真由美 中野圭祐(2018)大学4年間の総合的実習プログラムの開発:「保育内容総論」の授業開 発に関する中間報告(プロジェクト研究) 東京学芸大学付属学校研究紀要39; P61 ‐ 70
・清水恵子(2015)保育者養成における遊びの実際から理解へ導く「保育内容総論」の授業展開と一考察 北翔大学短期大学部研究紀要 第53号P71 ‐ 78