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新学習指導要領国語科から見る言葉の教育について : 読書活動の充実と幼小接続の視点から

著者 林 嘉瑞子

雑誌名 東京家政大学教員養成教育推進室年報

巻 4

ページ 157‑166

発行年 2017‑11‑01

出版者 東京家政大学教員養成教育推進室

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010140/

(2)

新学習指導要領国語科から見る言葉の教育について

~読書活動の充実と幼小接続の視点から~

       

       児童教育学科 林 嘉瑞子

1 はじめに  

 中央教育審議会の答申を受け、平成29年度版小学校学習指導要領が告示された。平成30、31年度の移 行措置期間を経て平成32年4月1日から施行される。

 学習指導要領前文には、教育基本法を受け、以下のように示されている。

 教育は、教育基本法第1条に定めるとおり、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成 者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期すという目的のもと、同法第2条に掲げる 次の目標を達成するよう行わなければならない。

 1 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健 やかな身体を養うこと。

 2 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、

職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。

 3 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に 社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

 4 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。

 5 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国 際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

 また、「これからの学校には、こうした教育の目的及び目標の達成を目指しながら、一人一人の児童が、

自分のよさや可能性を認識するとともに、多様な人々と協働しながら、豊かな人生を切り拓き、持続可能 な社会の創り手となることができるようにすることが求められている。」とあり、こうした理念の実現に 向けて必要となる教育課程の基準を大綱的に定めた学習指導要領の果たす役割の一つは、公教育における 教育水準を確保することにある。また、各学校が創意工夫を重ねて積み重ねてきた教育実践や蓄積を生か し、家庭や地域社会と協力して教育活動の更なる充実を図ることが重要であると示されている。

 さらに、一人一人の資質・能力を伸ばすために、家庭や地域社会の人々と連携して教育活動を進め、幼 児期の教育の基礎の上に、中学校以降の教育や生涯にわたる学習とのつながりを見通しながら児童の学習 の在り方を展望することを期待するとしている。

 言葉は思考力、想像力、創造力を支えるものである。本論では、人格形成の基礎となる言葉の力の育成 について、今回の改訂で引き続き重視されている、児童の言語活動の充実に関して、国語科の授業、読書 活動、幼小連携等を視点として論述することとする。

2 児童生徒の学力の実態

 文部科学省が実施した平成29年度全国学力・学習状況調査の結果では、全国(国公私)の平均正答率は、

小学校では、国語A問題が 74.9%、国語B問題が 57.6% と活用力に課題がある。中学校では、国語A問 題が 77.8%、B問題は 72.7% である。中学校では、前年度国語B問題 67.1% であり、今年度は前年度に 比べて正答率が高い。また、「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善に関する状況」に 関する質問(学校質問紙、児童生徒質問紙・<2-1><2-2><2-3>)では、次のことが明らか になった。(「平成29年度全国学力・学習状況調査 結果概要」文部科学省HPより)

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教員養成教育推進室年報 第4号

<2-1>

・「習得・活用及び探究の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をしましたか」との質問に「よく 行った」または「どちらかといえば、行った」と回答した小中学校の割合は、平成29年度は、平成28 年度に比べて増加している。

・「習得・活用及び探究の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をしましたか」との質問に「よく 行った」または「どちらかといえば、行った」と回答した小中学校の方が、平均正答率が高い傾向が見 られる。

<2-3>

・回答状況の経年的な変化を見ると、「様々な考えを引き出したり、思考を深めたりするような発問や指 導をしましたか」との質問に「よく行った」または「どちらかといえば、行った」と回答した小中学校 の割合は、平成26年度以降、増加傾向が見られ、また、そのように回答した小中学校の方が平均正答 率が高い傾向が見られる。

・「自分の考えを深めたり、広げたりすることができていると思いますか」との質問に「そう思う」また は「どちらかといえば、そう思う」と回答した児童生徒の割合は、平成26年度以降、増加傾向が見ら れる一方、平成29年度は、平成28年度に比べてほぼ横ばいの状況である。また、そのように回答した 児童生徒の方が平均正答率が高い傾向が見られる。

 また、<2-2>児童生徒質問紙では「5年生まで〔1・2年生のときに〕受けた授業で、自分の考え を発表する機会では、自分の考えがうまく伝わるよう、資料や文章、話の組立てなどを工夫して発表して いたと思いますか」という問いと平均正答率のクロス集計では、「当てはまる」または、「どちらかといえ ば、当てはまる」と回答した児童生徒の割合は、平成29年度は、平成28年度に比べて増加しており、また、

そのように回答した児童生徒の方が平均正答率が高い傾向が見られた。

 以上の結果概要から、各校が意識的に主体的、対話的で深い学びの視点による学習指導を工夫している ことを示していることが分かる。

 また、東京都教育委員会が実施した平成28年度児童・生徒の学力向上を図るための調査の結果におい ては、言語活動を「よく行った」「どちらかといえば行った」と回答した学校は増加傾向にあり、より肯 定的な回答をした学校ほど正答率が高いことが報告され、言語活動の充実については、引き続き各校にお いて創意工夫した指導が望まれる。

 東京都は、小学校第5学年で国語・社会・算数・理科の4教科について学力向上を図るための調査を実 施しており、各教科とも、読み解く力を(1)取り出す力(2)読み取る力(3)解決する力としており、

「読み取く力」の定着状況を「必要な情報を正確に取り出す力」「比較・関連付けて読み取る力」「意図や 背景、理由を理解・解釈・推論して解決する力」の3つの観点から調査している。経年調査の結果を見る と、課題を解決する単元開発や学習過程の開発及び学んだ事柄が生きて働く力となる、生活に生かす力を 獲得させる必要があることが伺える。

3 平成 29 年度版小学校学習指導要領における言葉の力

 学習指導要領第1章総則では、第1小学校教育の基本と教育課程の役割の2の(1)において、「基礎的・

基本的な知識及び技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、

表現力等を育むとともに、主体的に学習に取り組む態度を養い、個性を生かし多様な人々との協働を促す 教育の充実に努めること。その際、児童の発達の段階を考慮して、児童の言語活動など、学習の基礎をつ くる活動を充実するとともに、家庭との連携を図りながら、児童の学習習慣が確立するよう配慮するこ と。」とし、さらに、第1小学校教育の基本と教育課程の役割の3において、次に掲げることが偏りなく 実現できるようにするものとしている。

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 (1)知識及び技能が習得されるようにすること。

 (2)思考力、判断力、表現力等を育成すること。

 (3)学びに向かう力、人間性等を涵養すること。

この3点は、中央教育審議会教育課程企画特別部会において、これからの学校教育全体で育むべき資質・

能力について3つの柱で整理したものである。

 さらに、総則第3の教育課程の実施と学習評価の1主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善 の(1)において、「特に各教科等において身に付けた知識及び技能を活用したり、思考力、判断力、表現 力等や学びに向かう力、人間性等を発揮させたりして、学習の対象となる物事を捉え思考することにより、

各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方が鍛えられていくことに留意し(中略)、情報を精査 して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向 かう過程を重視した学習の充実を図ること」、また(7)において、「学校図書館を計画的に利用してその 機能の活用を図り、児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に生かすとともに、児童の 自主的・自発的な学習活動や読書活動を充実すること(後略)」が示されている。

 生涯にわたって生きる力を育む言語の力を、学校図書館を活用し、読書活動の充実を図って、カリキュ ラム・マネジメントにおいて、授業のみならず地域との連携を図りながら進めるのである。

 さらに、総則第2教育課程の編成 4学校段階等の接続においては、(1)幼児期の終わりまでに育っ てほしい姿を踏まえた指導を工夫することにより、幼稚園教育要領等に基づく幼児期の教育を通して育ま れた資質・能力を踏まえて教育活動を実施し、児童が主体的に自己を発揮しながら学びに向かうことが可 能となるようにすること、としている。また、(2)中学校教育及びその後の教育との円滑な接続が図ら れるように、幼稚園、小学校、中学校、高等学校と縦の糸を意識し工夫することも示されているのである。

 国語科における、言葉の力の育成については、第1目標において次のように示している。

 言葉による見方・考え方を働かせ、言語活動を通して、国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力 を次のとおり育成することを目指す。

 (1)日常生活に必要な国語について、その特質を理解し適切に使うことができるようにする。

 (2)日常生活における人との関わりのなかで伝え合う力を高め、思考力や想像力を養う。

 (3)言葉がもつよさを認識するとともに、言語感覚を養い、国語の大切さを自覚し、国語を尊重して その能力の向上を図る態度を養う。

 このように、一貫して思考力・判断力・表現力の基礎となる言葉の力の育成と言語による伝え合う力を 通して人間性の涵養を図る国語科としての考え方を示している。

4 幼稚園教育要領にみる言葉の力

 平成30年4月1日から施行される幼稚園教育要領には、今回新たに、幼稚園教育において育みたい資 質・能力及び「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が示された。

 そして、幼稚園段階から育む資質・能力が明記されている。

 (1)豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする「知識及 び技能の基礎」

 (2)気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現 したりする「思考力、判断力、表現力等の基礎」

 (3)心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性等」

 さらに、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を(1)健康な心と体(2)自立心(3)協同性(4)

道徳性・規範意識の芽生え(5)社会生活との関わり(6)思考力の芽生え(7)自然との関わり・生命 尊重(8)数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚(9)言葉による伝え合い(10)豊かな感性と表

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教員養成教育推進室年報 第4号

現等の内容に基づく10項目を、活動全体を通して育むことを教師が指導を行う際に考慮するとしている。

特に、(9)言葉による伝え合いの項では、「先生や友達と心を通わせる中で、絵本や物語などに親しみな がら、豊かな言葉や表現を身に付け、経験したことや考えたことなどを言葉で伝えたり、相手の話を注意 して聞いたりし、言葉による伝え合いを楽しむようになる。」と具体的に示している。

 また、小学校教育との接続に当たっての留意事項として、「幼児期にふさわしい生活を通して、創造的 な思考や主体的な生活態度などの基礎を培うようにするもの」とし、さらに小学校の教師との意見交換や 合同の研究の機会などを設け、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を共有するなどの連携を図るこ とが示されている。今回5領域の構成の変更はないが、言葉の領域では、「経験したことや考えたことな どを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言 葉で表現する力を養う。」ことを目指し、内容の(8)いろいろな体験を通じてイメージや言葉を豊かに する。(9)絵本や物語などに親しみ、興味をもって聞き、想像する楽しさを味わう、ことなどが示され、

身近な人や教師、幼児同士などとの応答を通し、言葉を交わす喜びを味わったり、生活のなかで、絵本や 物語に親しんだり、言葉遊びなどをしたりすることを通して、言葉が豊かになるように意図的に指導する ことが求められている。

 以上見てきたように、学校間の接続を意識して子どもたちに資質・能力を育むことが改訂の柱であると 言える。図1は、中央教育審議会幼児教育部会による審議のとりまとめに示された「幼児教育において育 みたい資質・能力の整理」である。幼児教育における遊びを通しての総合的な指導の中で、知識・技能の 基礎、思考力・判断力・表現力等の基礎、学びに向かう力、人間性等の基礎を育み、小学校以上につなげ ていこうとするものである。

 図1 幼児教育において育みたい資質・能力の整理

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5 学習指導要領と読書

 次に、読書に関わる各学年の目標は「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、

人間性等」の3つの資質・能力から構成されている。読書に関わる指導の充実を図るために、各学年の読 書の指導事項を見てみたい。

 まず、「知識及び技能」の「言語文化」の項では、各学年とも読書に関する指導事項が示されている。

  エ 読書に親しみ、いろいろな本があることを知ること。(第1、2学年)

  オ 幅広く読書に親しみ、読書が、必要な知識や情報を得ることに役立つことに気付くこと。

(第3、4学年)

  オ 日常的に読書に親しみ、読書が、自分の考えを広げることに役立つことに気付くこと。

(第5、6学年)

 そして、「思考力・判断力・表現力等」の読むことの「言語活動」にも、新たに読書の指導事項が設け られている。

  ウ 学校図書館などを利用し、図鑑や科学的なことについて書いた本などを読み、分かったことなど

を説明する活動 (第1、2学年)

  ウ 学校図書館などを利用し、事典や図鑑などから情報を得て、分かったことなどを説明する活動

(第3、4学年)

  ウ 学校図書館などを利用し、複数の本や新聞などを活用して、調べたり考えたりしたことを報告す

る活動 (第5、6学年)

 さらに、今回の改訂では、「知識及び技能」の(2)話や文章に含まれている情報の扱い方に関する次 の事項を身に付けることができるよう指導する、ことが示されている。

  ア 共通、相違、事柄の順序など情報と情報との関係について理解すること。 (第1、2学年)

  ア 考えとそれを支える理由や事例、全体と中心など情報と情報との関係について理解すること。

  イ 比較や分類の仕方、必要な語句などの書き留め方、引用の仕方や出典の示し方、辞書や事典の使

い方を理解し使うこと。 (第3、4学年)

  ア 原因と結果など情報と情報との関係について理解すること。

  イ 情報と情報との関係付けの仕方、図などによる語句と語句との関係の表し方を理解し使うこと。

(第5、6学年)

 これらのことから、日常的に読書の幅を広げ、発達段階に応じて読書に親しむとともに、必要な情報を 正確に取り出す力」「比較・関連付けて読み取る力」「意図や背景、理由を理解・解釈・推論して解決する 力」などの情報を活用するための読書、情報活用能力が重視されていると言える。

6 言葉の力を育む読書活動の実際

(1)子どもの読書活動の実態

 文部科学省は、「子どもの読書活動推進の取組」において、「読書活動は、子どもが言葉を学び、感性を 磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くこと のできないものである。」ことを示しているが、子どもの読書の実態は実に多様である。各自治体の教育 委員会は、生涯学習の視点からも読書活動の充実に取り組んでいる。例えば、渋谷区においては、平成 28年度渋谷区教育委員会施策の方向性基本方針2において、「学力の向上」と「個性の伸長」を目指す教 育の推進(6)読書活動の充実において「子どもたちに読解力と論理的思考力の基礎を養うために、朝読 書の充実、学校図書館専門員や地域図書館との連携、『しぶやおすすめの本50』の活用を通して読書教育 の充実を図るとともに、学校図書館を活用した授業づくりを推進すること」としている。しかし、50 冊 の完読賞を授与される児童と夏休みにも1、2冊しか読まない児童など読書に対する興味も個人差が大き

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教員養成教育推進室年報 第4号

い。児童の活字離れ、読書離れが言われて久しいが、家庭に読書をする要素があるか否かが、児童の読書 生活に大きく影響を与えると思われる。また、学校図書館の授業での活用状況を見ると、学校図書館をは じめとする学校の読書環境も、児童が図書を活用し、読書に親しむうえで大きな要因となると考える。

 平成27年度に東京都教育委員会が行った読書状況調査では、1か月に読み終えた本の冊数は、学年が 上がる程低下している(図2)。次に本を読まなかった理由としては、①本を読む時間がなかったから② 読みたい本がないから③本を読むことに興味がない、が上位の理由である(図3)。さらに、1か月間に 読み終わった本が1冊以上ある児童・生徒は、「家の中に本がある、身近な人に本を読んでもらったこと がある」と回答している。

 次に、児童が活用する学校図書館の状況を見ると、読書活動を推進するための意図的・計画的な取組の なかで、学校図書館の活用は大きな意義をもつ。前出の東京都教育委員会の読書調査では、読書活動、読 書指導に取り組む上での課題として、「学校図書館の整備」を小学校の70.8%、中学校の73.3%が該当す るとしている。また、「読み聞かせ、ブックトーク等のノウハウ」については、小学校 68.9%、中学校 54.4%が該当するとしており、「公立図書館の活用」については、小学校70.8%、中学校65.8%が該当し ている。

 また、人的配置については、渋谷区 においては、平成 27 年度から、全小 学校に図書館専門員が週2~3日程度 配置されている。学校図書館法に示さ れた司書教諭については、司書教諭の 講習を修了した主幹教諭、指導教諭又 は教諭が配置されている。平成 28 年 度に文部科学省の行った「学校図書館 の現状に関する調査」1学校図書館に おける人的整備の状況では、国公私立 の 12 学級以上の小学校における司書 教 諭 の 発 令 状 況 は、 小 学 校 で は、

99.3.%、中学校では、98.3% である。

しかし、学級の数が 11 学級以下の学 校における配置状況と合わせた全体の 状況は、小学校68.0%、中学校65.0%

である。これは、学校図書館法の附則 により、学級の数が 11 以下の学校に おいては、司書教諭を置かないことが できる、ことによると推測される。

 図3 本を読まなかった理由  図2 1か月に読み終えた本の冊数

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(2)学校図書館活用に関する教員の意識改革の必要性

 授業に活かす学校図書館利用に関しての教員の意識を考えるうえで、「学校経営計画に、学校図書館活 用の推進が位置付けられているか」「学校図書館経営計画があるか」「読書活動や学校図書館活用を推進す る校内分掌組織があるか」は、極めて重要な要素である。カリキュラム・マネジメントにより、校長のリー ダーシップのもと、校内研究とも関連付けて組織的に図書館の活用に取り組むことが、教員の意識を変え るといえる。しかし、前出の東京都教育員会の調査では、指導計画は小学校では87.0%の学校にあり、分 掌組織は 98.7% の学校にあるが、学校評価において読書活動推進や学校図書館の推進のための項目を挙 げている学校は 73.1% にとどまっている。また、教員の読書に関する指導力向上や学校図書館活用の推 進のための校内研修を実施している学校は、小学校で39.3%、小・中・高等学校の全校種では3割に満た ない。さらに、「夏季休業期間に課題図書を設定している」割合は、小中高等学校の合計で約5割である。

比較的読書の時間の取りやすい夏季休業中の働きかけを児童・生徒及び家庭にどのように行うかは、読書 活動推進のうえで、大きな鍵と言える。

7 読書活動の推進と言語活動の充実

(1)国語科における学校図書館活用

 ここでは、国語科第3学年単元名「心に残ったことをもとに、本の魅力を紹介しよう」(教材名『一つ の花』)の並行読書による活用実践を取り上げる。

 本単元に関連する『小学校学習指導要領』の指導事項は、(1)エ 目的や必要に応じて、文章の要点 や細かい点に注意しながら読み、文章などを引用したり要約したりすること。オ 文章を読んで考えたこ とを発表し合い、一人一人の感じ方について違いのあることに気付くこと。(2)言語活動例 エ 紹介 したい本を取り上げて説明することである。本単元では、身に付けさせたい力を「読んだ本の魅力を読み 取り、自分の考えや感想を深めようとする力」「目的に合った本を選び、自分が感じたことを伝え合う力」

とした。そして図書を活用してこれらの力を高め、言語能力を育成することを目標としている。教室に

「今西祐之コーナー」を設置し、今西祐之の他の作品を用意して、いつでも本を手に取れる環境を設定した。

そして、単元の最初から授業と並行して読書活動を行った。このように導入の段階で興味・関心・意欲を 醸成し、習得の段階では、場面の様子や情景と結び付けて、登場人物の気持ちを想像し、心に残った本の 魅力を考える。活用の段階では、本の魅力を「ショーウィンドウ」という表現形式で紹介し、それぞれの 児童が選んだ作品の魅力を伝え合うことができた。ショーウィン

ドウの表面には、心に残った場面とその理由、想像した挿絵、裏 面には、話のあらすじや登場人物などをまとめており、要約する 力も身に付いた。完成した作品を学校図書館に置くことで他の学 年の児童も興味をもち紹介した児童も次の読書への意欲が高まっ たと言える。また、必要な情報を目的に応じて活用する力の育成 につながっている。

 思考力の育成と関連して、「必要な情報を正確に取り出す力」「比

較・関連付けて読み取る力」「意図や背景、理由を理解・解釈・推論して解決する力」などの情報を活用 する力の育成については、渋谷区立幡代小学校が、東京都教育委員会言語能力向上推進校(H25 年度)、

東京都教育委員会言語能力向上拠点校(H26/27年度)、国立教育政策研究所学習指導実践研究協力校(H27 年度)に行った研究において系統化を試み実践している。

(2)日常的な読書活動のすすめ

 多くの学校で、朝読書の時間にボランティアによる読み聞かせや、担任、保護者による読み聞かせが行 われている。また、児童がペア学年で「おすすめの本」を紹介する「読書郵便」の活動に、児童は意欲的

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教員養成教育推進室年報 第4号

に取り組んでいる。これは、紹介する相手意識が明確であるうえに、郵便の返事が、その本の感想である ことや、新たな図書の紹介であるため児童が興味をもちやすいことによると考えられる。また、読書週間 や読書旬間に、先生から児童に「おすすめの本」を紹介し、その本の感想を交流するなどの取組もある。

これは、教員も共に本を読むという教員の意識の変革にもつながると言える。

(3)地域・保護者と連携した読書指導

 各学校では、国や都、区市の指定を受けることを契機に、様々なボランティア団体が学校に登録し、中 休み、昼休みの貸出、土曜日の読書活動にかかわるワークショップの実施など、意欲的な取組が行われて いる。読書活動の推進は、生涯学習社会においても重要な取り組みである。

 また、昭和50年から約20年間にわたり、新潟県長岡市の自宅の文庫を開放して近隣の子ども、大人に 児童書を読む機会を提供した原豊一郎氏の実践は、平成5年に野間読書推進賞を受賞している。原氏は、

表現の基本となる言葉の力を育成し、想像力を育む読書活動を地域で実践し、まず、大人が児童書の楽し さを知ることが大切であることから、地域の大人向けに「どんぐり通信」を月1回181号まで発行してい る。長岡市の生涯学習講座の講師の後は、大人対象の読書会にも取り組んだ。原氏が教員時代に国語の読 み聞かせを続けた教え子の中に、『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』などを著した児童文学者の斎藤 惇夫氏がある。斎藤氏は、国語の時間の先生の読み聞かせが心に残っていることを雑誌に掲載している。

原氏は、80歳を過ぎて仙台に転居後も、市の読書活動に参加し、さらに70号のどんぐり通信を発行して いる。どんぐり通信は、新刊書の紹介も含め、読書を通して子どもと親が語り合う親子読書を推進するも のであり、20数年に及ぶ息の長い地域での読書活動の実践であると言える。

8 幼小連携の取組

 各自治体においては、就学前の幼児と小学校1年生との交流を積極的に行っている。当初、小1プロブ レムに対応する意味合いが大きかったと思われるが、幼稚園、保育所、幼保連携型認定こども園など様々 な機関で生活している幼児が、小学校という場で教育を受けるに当たり、円滑に小学校生活を始められる ようにという意図が大きい。渋谷区では、「保・幼・小の連携による円滑な接続」(就学前オープンスクー ル)という名称で、各校とも年間10回程度の交流を実施している。運動会、展覧会などの行事への参加、

1年生と共に学校給食を試食する、1年生の国語や図工の授業などを同じ教室で受けるなどの活動であ る。交流の前には、各園、学校の担当者が打ち合わせを行い、特別な支援を必要とする幼児、児童につい ても共通認識をもって活動に当たり、交流後は振り返りを共に行い、研修の機会を設けている。

 第1学年の実践「年長さんにお話しを聞いてもらおう」という渋谷区立幡代小学校での活動を紹介する。

  ① 単元の目標

   ・情景や場面の様子の変化を理解して、楽しく人形劇等を演じることができる。

   ・登場人物の行動を中心に想像を広げながら読むことができる。

  ② 単元の評価規準

   (国語への関心・意欲・態度)

   ・年長さんに読み聞かせをすることを意識して意欲的に人形劇に取り組み音読している。

   (読む能力)

   ・場面の様子について、登場人物の行動を中心に想像を広げながら読んでいる。(1)ウ    (言語についての知識・理解・技能)

   ・物語の内容の大体を理解し、保育園児に人形劇等を発表している。(1)ア(ア)

  ③ 単元の指導計画(9時間扱い)   *は思考を広げ深め、判断する活動の工夫   0次(導入)学校図書館専門員による読み聞かせを聞く。

  習得(1~3)お話を読んで、場面の様子や登場人物の気持ちを想像しよう。  

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   ・絵本を読んで、登場人物の気持ちを考える。 

     *想像する~書かれている事柄や登場人物の心情、場面の様子を想像する。

     *結び付ける~登場人物の心情を捉えて考えたことと表現の方法を結び付ける。

  活用①(4~8)登場人物の動きや話し方を考えよう 

   ・お話を選び、場面に適した、登場人物の動かし方や話し方、声の大きさなどを考え、練習する。   

     *想像する~場面に適した登場人物の動きや声の大きさなどを想像する。

  活用②(9)年長さんにお話しを伝えよう 

   ・見てもらいたい点や工夫した点を園児に伝え、各グループで発表し、感想を交流し合う。

     *想像する~登場人物の気持ちを想像しながら、自分の役割とせりふに気を付けて劇を演じる。

     *比べる~よいところや工夫しているところを自分と比べる。

 1年生は、既習の「おむすびころりん」「おおきなかぶ」で学んだことを活用して、園児にとって分か りやすい繰り返しの表現の多い本を選び、読み方を工夫して表現することができた。また、園児から直接 感想を聞くことにより、次への表現の意欲を高め、表現したことの喜びを実感することができた。

 また、幼児にとっては、幼稚園教育要領に示された、言葉による伝え合いを、1年生と行うことにより、

絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付け、経験したことや考えたことなどを言葉で 伝えたり、相手の話を注意して聞いたりし、言葉による伝え合いを楽しむようになる実践となった。  

 これらの具体的な取り組みや幼稚園での総合的な指導により、図1に示した「幼児期の終わりまでに 育ってほしい姿」を共有することが実現していくと考える。

9 読書活動の充実による主体的・対話的な学びと情報活用能力の育成  最後に、主体的、対話的な学びをさらに充実す

るために、国語科において学校図書館の活用を図 るとともに、情報活用の過程と関連付けた学習過 程の工夫について、第6学年「平和について考え よう~対話を通して考えを深め、意見文を書こ う」をもとに提言し、まとめとしたい。

 この学習は、習得・活用・探究というプロセス の中で、課題意識を継続させた主体的な学び、他 者との協働や対話的な学びを意図した学習であ り、平成 29 年度版学習指導要領が目指す、知識 及び技能を活用して思考力、判断力、表現力を育 み、新たな学びに向かう人間性を育むことを意図 している。図4のように、児童が情報活用の過程 を意識し、課題意識をもって学習に取り組むため に、対話1・課題設定、対話2・構成、対話3・

感想の交流を設定し、学習過程を示した。

 ①児童が課題をたてる。

 ②課題の解決に向けて情報を収集する。

 ③話し合って情報を整理する。

 ④考えをまとめて表現する。

 ⑤新たな知の発見、探究

 また、情報活用の過程は、文章を書く過程と対応しているため低学年からの指導の系統性を踏まえ、作 図4 主体的、対話的な学びを取り入れた    情報活用の学習過程(林、2017)

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教員養成教育推進室年報 第4号

文指導と並行し情報活用能力を育成していく。情報の活用過程と文章を書く過程は対応しているが、必要 に応じて柔軟に学習過程を往復する「柔軟な学習過程」が学びを深める。

 さらに、課題を決定する段階、情報を収集する段階、反論に対する根拠を収集する各過程で、図書から 必要な情報を入手したり、インターネットによる情報を検索したりする学習環境の設定が重要である。

 このような主体的な学びのためには、学校図書館に児童の興味関心が多岐に渡るテーマや根拠の裏付け となる複数の資料を備えることが必要不可欠である。低学年では、「自動車図鑑」や「植物図鑑」を作る 言語活動に、中学年では、オリンピック・パラリンピック教育と関連した説明文を書く言語活動等に取り 組んでいる。また、高学年のディベート等の言語活動でも、児童が必要な情報を収集し、再構成している。

 前述の平成28年度児童・生徒の学力向上を図るための調査では、「自分たちで課題を立ててその解決に 向けて情報を集め、話合いながら整理して発表するなどの学習活動に取り組んでいたと思うか」という新 規の調査項目において、「あてはまる」と、「どちらかというとあてはまる」を含めると、小学校では、

77.8%、中学校で69.1%の回答となっており、アクティブ・ラーニングの基礎となる課題設定、情報収集、

話合い、発表という学習活動は、児童生徒はほぼ体験していると言える。さらに、活動の質を高め、一人 一人の課題に応じた柔軟な学習過程で指導し、習得した基礎的・基本的な知識・技能を他教科、特別活動、

生活の中で生きて働く力となる指導を改善していく必要があると考える。

 今後は、授業改善の視点として読書活動の充実、学校図書館の活用、幼小連携、古典の学習における小 中の連携(「竹取物語を読んで鑑賞文を書き、中学生に伝えよう」)などを主幹教諭、主任教諭を中心とし たOJT研修の中で具体的な改善プランとして提案・実践し、カリキュラム・マネジメントにおいて評価・

改善することにより、国語科の授業の充実を図り言葉の教育の推進について検証することが求められる。

<参考文献>

1)文部科学省 幼稚園教育要領(2017)

2)文部科学省 小学校学習指導要領(2017)

3)文部科学省全国学力学習状況調査(2017) 

4)文部科学省 子どもの読書活動推進の取組(2004)

5)東京都教育委員会  児童・生徒の学力向上を図るための調査(2016)

6)東京都教育委員会  読書状況調査(2015)

7)文部科学省 中央教育審議会幼児教育部会における審議のとりまとめ(2016)

8)文部科学省 『初等教育資料』No.952 東洋館出版社(2017)

9)東京都渋谷区立幡代小学校研究紀要(2015)

10)東京都渋谷区教育委員会「学校図書館活用の推進に向けて」(2016) 

11)林 嘉瑞子 「情報活用能力の育成をめざす作文教育」 

  小森茂・大熊徹監修、西村孔希編 『情報教育と国語科授業の構想と展開』明治図書(1999)

12)林 嘉瑞子 「学校図書館を核とした学校経営」

  志水 宏吉監修・編 『未来に向けた確かな学び~新たな時代の要請と学校経営』東京教育研究所(2017)

13)林 嘉瑞子ほか 「作文過程における確かな想を育てる」

  藤原 宏監修/実践作文の会 編著 『思考力を高める作文指導』教育出版(1990) 

14)内田伸子 『ことばと学び』金子書房(1996) 

15)大越和孝 『保育内容「言葉」 改訂言葉とふれあい、言葉で育つ』東洋館出版社(2009)

16)無藤 隆 『幼児教育のデザイン』東京大学出版会(2013)

17)日本国語教育学会監修 企画編集・執筆 大越和孝ほか 『読書』東洋館出版社(2017)

18)斎藤惇夫 「旅の仲間たち(6)原先生」 『母の友』福音館書店(2008)

参照

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