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雑誌名 東京家政大学教員養成教育推進室年報

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学際系の学部において養護教諭の免許を取得する学 生の進路決定のプロセス

著者 平川 俊功, 平野 真理, 梅原 沙衣加, 中込 由美

雑誌名 東京家政大学教員養成教育推進室年報

巻 4

ページ 239‑243

発行年 2017‑11‑01

出版者 東京家政大学教員養成教育推進室

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010149/

(2)

学際系の学部において養護教諭の免許を取得する 学生の進路決定のプロセス

Process of course decision of students acquiring license for nursing teachers in interdisciplinary departments

心理カウンセリング学科 平川 俊功 平野 真理 梅原 沙衣加

 中込 由美

 養護教諭免許は、国公立大学・短期大学、指定教員養成機関、専門学校で取得することができ、それぞ れの養成機関の基盤は、教育系、看護系、学際系と様々である。本学人文学部は、教員養成を目的とした 学部ではなく、いくつかの領域にまたがる学問分野を学ぶことのできる、いわゆる学際系の学部といえよ う。養護教諭免許取得が可能な心理カウンセリング学科は、心理学やカウンセリング学の学びを養護教諭 の職にいかすという視点をもって学科を新設してから9年目を迎えている。本学科の卒後の進路は、心理 系の大学院への進学、一般企業、金融関係・教育相談関係への就職、養護教諭、児童指導員等、多様であ り、養護教諭免許を取得するか否かは入学後に自己決定する。

 そうした状況を踏まえ、学際系の学部において養護教諭免許を取得する学生が、どのようなプロセスを 経て進路決定していくのかを調査・分析した。

1 はじめに

 明治時代に感染症予防対策を主たる目的として配置された学校看護婦を前身とする養護教諭は、現在、

学校教育法に規定される教職員として各校に1名ないし2名配置されており、2011 年5月時点での養護 教諭の配置率は、小学校で 98%、中学校で 96.4%、高等学校で 95.9%、特別支援学校で 98.5%である。

しかし2017年度以降の公立学校教員採用見込み数(全国:文部科学省)を見ると、小学校15246人、中学 校7494人、高等学校5278人、特別支援学校2592人、養護教諭1353人と示されており、教諭と比べてかな り養護教諭の採用は少ない現状が見て取れる。このことは公立学校の教員採用試験合格の困難さをもの 語っており、養護教諭になることを夢見ても、教員採用試験に合格できる保証は高くはない。教員採用試 験は毎年度1回の実施であることや臨時採用の求人の有無についても保証がないことから、教職課程を履 修し続けて教員採用試験に臨んでも就職できるか否かの問題は学生にとって大きな不安要因となってい る。また、教職課程を履修しつつ就職活動を行うことも可能であるが、就職活動が活発化する時期と養護 実習の時期が重なるという現状もある。

 1年次前期に教職課程の履修登録を行なわなくてはならないことから、入学した学生の8割程度がひと

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教員養成教育推進室年報 第4号

2 方法

(1)調査時期  2017年1月

(2)調査対象者

 2016年度養護教諭課程の履修者4年生48名

(3)調査方法

 「大学入学後、現在に至るまでのあなたの進路決定に関する質問」というテーマの記名式質問紙法を用 いた。養護教諭課程の最終授業内で担当教員からアンケート趣旨の説明後、アンケート用紙を全員に配付 し、後日所定の場所に提出という形をとった。提出された47名分を分析対象とした。

(4)調査項目

 「入学後、あなたが自身の進路について考え始めたのはいつごろですか。また、どのような契機で考え ようと思いましたか。」という質問に対して、「1回目」から「3回目」および「最終的に進路(進むべき 道)を決めたのはいつ頃ですか(「内定」ではなく、自分が進みたい方向やつきたい職業を決めた)」の計 4つの回答欄を設け、自由記述による回答を求めた。

(5)分析方法

 それぞれの記述された回答を意味ごとに切片化した上で、まず時期の分類を行った。その後、各時期に おけるデータをKJ法を援用してカテゴリー分けを行った。最後にすべての時期を統合したカテゴリー間 の関連を検討した。なお、分析法は臨床心理士資格を持った者の計2名で行った。

3 倫理的配慮

 アンケートの質問項目は、同学科内で教職課程に関与していない臨床心理学を専門とする研究者のアド バイスを受けて設計した。アンケート用紙配付時に、調査への協力は任意であること、調査結果は成績に 全く関係しないこと、データは個人を特定できない方法で処理すること、結果は本学科の教員養成推進の ために参考にするために活用すること、学科における進路指導に役立てることを教職担当教員から口頭で 説明した。アンケート回答用紙の提出を以て、同意を得たものとした。

4 結果 

 進路を決定した時期は、1年生、2年生、3年生、4年生の各時期に分けられた。各時期に分けること ができたカテゴリ数は、1年生20個、2年生21個、3年生45個、4年生38個と時期が不明の回答5個の 計129個であった。そのうち、2年生の回答で契機の内容が不明な1個と時期が不明の5個、計6個は分 析から除外した。

 その結果生成されたカテゴリーを、大学生活の4年間にどのように変化したかを各Fig.1にまとめた。

(4)

教員養成教育推進室年報 第4号

Fig.1 教職課程(養護教諭)を履修した学生が進路を決定(養護教諭1種免許取得の決心を含む)した    プロセス

Fig.1では、縦軸が養護教諭への意欲の高低を表しており、横軸が時間軸で中央のグレーのゾーンが時期 的な要因をまとめて示した。

(1)入学時

 入学時点では、資格を取るために入学してきた者など意欲が高い学生や、入学後に資格取得できること を知って「養護教諭になりたい」「養護教諭の資格を取りたい」などと思う学生が多く、全般的に意欲が 高いが、実際に授業が始まると、想像していた「保健室の先生(養護教諭)」と養護教諭の実像とのギャッ プや自身の職業適性に悩み、学生によっては養護教諭免許取得に対する意欲が低下する。そして、1年次 末には意欲の低下した学生たちが離脱(養護教諭課程の中止)し、その他の学生も友人が離脱したことに より自分も課程の継続に悩み始める。

(2)2年次

 2年次では、自分の進路に対する思いは、養護教諭以外の選択肢を考えられないという結論に達して、

という質問に対して、「1回目」から「3回目」および「最終的に進路(進むべき道)を決めたのはいつ頃ですか(「内定」で はなく、自分が進みたい方向やつきたい職業を決めた)」の計4つの回答欄を設けた。

(5)分析方法

それぞれの回答を時期と契機をセットとし、まず時期を学年ごとに分類し、その後学年の回答の中でKJ法を援用したでカテゴ リー分けを行った。なお、分析法は臨床心理士資格を持った者の計2名で行った。

3 倫理的配慮

アンケートの質問項目は、同学科内で教職課程に関与していない臨床心理学 を専門とする研究者のアドバイスを受けて設計し た。アンケート用紙配付時に、調査への協力は任意であること、調査結果は成績に全く関係しないこと、データは個人を特定で きない方法で処理すること、結果は本学科の教員養成に参考にするために活用することを教員養成担当教員から口頭で説明した。

アンケート回答用紙の提出を以て、同意を得たものとした。

4 結果

進路を決定した時期は、1年生、2年生、3年生、4年生の各時期に分けられた。各時期に分けることができたカテゴリ数は、1年 生20個、2年生21個、3年生45個、4年生38個と時期が不明の回答5個の計129個であった。そのうち、2年生の回答で契機の内容が 不明な1個と時期が不明の5個、計6個は分析から除外した。

その結果生成されたカテゴリーを、大学生活の4年間にどのように変化鹿を各Fig.1にまとめた。

Fig.1 教職課程(養護教諭)を履修した学生が進路を決定(養護教諭1種免許取得の決心を含む)したプロセス

3

年生

なりたい なりたい 頑張ろうと決意

東京アカデミー(学内の教員対策講座)

資格がほしい

他の選択肢のなさ 他のことをしている時間が削られる

家族との話し合い

再受験の決意

授業 授業 授業 授業 授業 授業 授業

就職活動についての情報 就職活動

友人の離脱 友人の離脱

自分に向いていない

思っていた職務内容と違った 狭き門であることを知る

両立の諦め

本当になりたいか考える

自分に向いていない 向いていない

自分は何かし たいのか?

近接職種を知る

他の道への視点 他の道への視点

他の進路

近接領域との出会い 意外な適正職との出会い 進路未決定への不安

周囲と比べての焦り 授業

狭き門への諦め

授業の厳しさ

実習オリエンテーション 入学

教育実習

教員採用試験 不採用後の就活

教員採用試験 看護臨床実習

1

年生

2

年生

4

年生

近接職種を知る

先輩の話

採用試験に関する情報

(5)

教員養成教育推進室年報 第4号

などの学修を通して自覚が促される。また、専門各科目の授業では課題やグループワークなどを通して学 校教育場面を想定したプレゼンテーションなど能動的に取り組まなくてはならない形態の場面が増加する など、自ら学び進めなくてはならない状況や授業外学修が増加して学生にとっては学修の負担が増してい く。さらに、3年次の後期には「看護臨床実習」に向けて実習受け入れ先の病院への学生の割り振り作業 を行わなくてはならないため、教職履修の意思確認を行う。そのため、2年生の頃から悩んでいた学生は、

近接領域など他の道へ目を向け出し、これまで以上に真剣に悩み考え、他の進路へと舵をきっていく。一 方、養護教諭を目指してきた学生たちの中には、採用試験に合格する難しさから養護教諭になることを諦 めて教職履修を中止する決心をする者も出てくる。また教職課程を履修したまま、就職活動も行っていこ うと考えていた学生も、両立の難しさから、自分が本当になりたいもの学び進めたいもの(進路)を考え 始める。一方で、学生たちは就職活動と養護実習にかかわる種々のことで多忙になるものの、教職に関す る科目とりわけ看護臨床実習や養護実習中は就職活動やアルバイトのために欠席することが禁じられてい るため、養護教諭免許を取得するために就職活動は一切行わないと決心を固める。このことによって、養 護教諭免許を取得しながら企業等に就職しようとしている者は、就職活動にかなりの制限がかかることに なる。また、本人の意思とは別に保護者に後押しされて、あるいは保護者の意向を汲んで養護教諭免許取 得の決心をする学生もいる。そうした学生は、養護教諭の免許取得の学びと就職活動とを両立させなけれ ばならない上に、本当に学びたいことではないことにエネルギーを費やす苦しさもかかえることになる。

「養護教諭になること」にゆるぎない決心をしている学生であっても、養護教諭になる(=採用試験受験 一本に絞る)ことを目指す、ということは1年に一度しか実施されない高倍率の教員採用試験に臨むこと であり、採用試験に合格できない場合は、卒業後の進路については不透明な道を選択することになる。

(4)4年次

 3年次末には病院での実習(看護臨床実習)があり、そして4年生に進級後すぐに養護実習が始まる。

そのことにより、教員採用試験を目指していた者は、教員採用試験に向けて意欲を増加させる。一方、看 護の臨床場面や養護実習で養護教諭の職務の実際を経験することにより、改めて「自分は何をしたいの か?」という自分自身への進路の迷いが出る学生もいる。学校教育現場で学校教育を担う一員になると考 えると、子どもが好きになれないとか、自分には職業適性がないとはっきり自覚する者も出てくる。その 後、教員採用試験を受け、不採用となったものは、再受験を決意するか、就職へ舵を切ることとなる。

5 考察

(1)科目の学年配置が及ぼす影響

 本学科における専門教育科目のうち、養護教諭免許取得のために履修が必修となる養護に関する科目と して、1年次に「解剖生理学」「養護概論」「看護概論」「微生物学(免疫学を含む)」「栄養学(食品学を 含む)」が配置されている。この中でも「養護概論」は特に、養護教諭の役割や職務内容を具体的に理解 する科目である。小学校、中学校、高等学校で出会った養護教諭を児童生徒の視点から観察していたイ メージを持って養護教諭免許取得を目指す学生や、とりあえず取得しておこうといった程度の意識で教職 課程を履修していた学生などが、特に「養護概論」を学修することで養護教諭になりたいという気持ちが 高まる場合もあれば、自身の職業適性などを考えさせられることで、教職課程の継続について悩む場合も ある。学生たちには保健室で相談に乗ってくれた養護教諭の姿が印象づけられており、本学科のキャッチ フレーズになっている「カウンセリングができる養護教諭」という部分だけが職のイメージとして強くあ ることが推察できる。生物を苦手としている学生もいるが、 「解剖生理学」や「微生物学(免疫学を含む)」

「栄養学(食品学を含む)」を学ばなくてはならず、 「養護概論」の授業で職務の幅広さ、多さ、責任の重さ、

求められる専門性などを知ることで、改めて進路について考える機会になっているといえよう。

 学科では4年次に行う養護実習のための3年次の履修登録前の教職ガイダンス時に、3年次の教職及び

(6)

養護に関する科目の概要や実習を受け入れる教育委員会及び学校の方針、養護教諭の採用試験情報、就職 活動の動向などを情報提供している。また、このガイダンス後、母校等へ実習受け入れの依頼をするため のアポイントメントをとる前段階で、個々に養護教諭免許取得に対する本意を聞き取る面談を実施してい る。この機会に学生は教職課程継続の迷いや不安、決意などを教員養成担当の教員に相談し、気持ちを整 理して3年次の履修登録を行うことになる。4年次の科目である看護臨床実習及び養護実習の準備が3年 次の履修登録前(前年度)に始まることは、進路決定に大きく影響を及ぼしていると考えられる。

 3年次には、通年科目として「救急処置実習」が配置されている。この科目は子どもの命にかかわる養 護教諭の職務の大きなウェイトを占める学校での救急処置に直結するものである。そのため、専門知識及 び技術を確実に学修できるようにするために前期にも後期にも筆記・実技試験、参加態度などを総合した 評価を行う。その評価を前期授業終了時に個々の学生に提示しており、同授業の後期授業開始時には、便 覧に記載されている「教職課程の概要と履修上の留意事項」にもとづいて、救急処置実習以外の必修科目 の単位取得状況や必要な手続きについて各自確認することを促している。こうしたことが3年次の学生が 進路について真剣に考える契機となっていると考えられる。

(2)養護実習と就職活動の両立の困難さの影響

 養護実習は、4年次の4月~6月2週目までの連続する3週間で行われる。一方、企業の採用選考は広 報活動が卒業・修了年度に入る直前の3月以降、選考活動が卒業・修了年度の6月以降であり、就職活動 と養護実習の時期はほぼ重なる。看護臨床実習及び養護実習中においては就職活動やアルバイトのために 欠席することを禁じていることから、「両立は自分には無理」と判断して教職履修継続を中止して就職活 動に転じていく学生、「養護教諭免許取得と一般就職活動両方を全力で頑張る」と決意する学生、「教員採 用試験までは全力で努力し、結果によって一般就職を考える」「養護教諭だけを目指して努力し続ける」

と決意する学生とに分かれる。また、便覧に養護実習及び看護臨床実習に参加する用件として、「前年度 までに履修科目の単位を80%以上修得していること,教職に関する科目の不合格が2科目以内であるこ と,養護に関する科目は全単位修得していること,健康及び実習に適応できると判断される者であること。

「養護自習Ⅰ」「養護実習の研究」「養護実習Ⅱ」は、全日程出席することを単位修得の条件とする。」と示 しているので、3年次後期までの成績は、教職課程を継続するか否かの客観的な判断材料となっている。

養護教諭免許取得及び就職活動の具体的なタイムスケジュールが明確になること、適性の自認、3年次ま での科目の履修状況が進路を決定するための大きな要因となっていると考えられる。

  6 結語

 多様な進路の選択肢がある学際系大学の学部において養護教諭免許を取得を目指す学生は、養護に関す

る専門科目を学修する中で、職の理解を深めるとともに職業適性を自覚すること、養護教諭として教員採

用試験に合格することの難しさを知ること、自分の履修単位の現状を知ること、企業の就職活動との重な

参照

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