持久的パフォーマンスに対する炭水化物マウスリンスの影響 [ PDF
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(2) 方法 1.対象. 運動継続時間. 斜度1.5%. 被験者は実験の内容と実験における危険性の説明を 受けた後、九州大学健康科学センター倫理委員会にお いて認められた同意書にサインした健康な大学生院男 子 6 人(年齢 25.6±1.5 歳、身長 171.1±6.0cm、体重. 血糖値 血中乳酸値 呼気3分. マウスリンス 25ml 5秒間. RPE/FS. 呼気3分. 65.7±6.5kg)。 2.実験方法. マウスリンス 疲 25ml 5秒間 労 困 憊. ウォーミング アップ. 安静. 1)溶液の濃度 炭水化物溶液の濃度は、6%、18%の 2 試行とする。 炭水化物溶液にはマルトデキストリン(サイエンス糖. 0分. 3分. 8分 9分. 12分. 13分. 化株式会社.NSD700)を用いた。対照として、人工. 血糖値 血中乳酸値. 図 1.実験プロトコル. 甘味料(味の素株式会社。アスパムテール)入りの水 (プラセボ)を用いた。また、甘さを統一するため、 6%の炭水化物溶液にも、プラセボに加えたものと同じ 人工甘味料を加えた。. 実験は斜度 1.5%のトレッドミルを用いて、OBLA に 相当する速度で疲労困憊に至るまでランニングを行っ た。実験開始 2 時間前、水を 500ml 摂取した。実験室. 本実験を始める前に、被験者にはプラセボと炭水化. の室温は 21.7±0.8℃、湿度 40.1±5.2%であった。図 1. 物溶液(6%、18%)を区別できるかどうかを検証した。. に実験プロトコルを示した。30 分間の座位安静後、呼. 被験者は 13 時間の絶食後、朝、実験室に来室し、各溶. 気を 3 分間測定した後、乳酸閾値(Lactate Threshold:. 液 25ml をそれぞれ 5 秒間マウスリンスを行い、その後. 以下 LT とする)の強度でウォーミングアップを 3 分間. 溶液を区別した。その結果、6 人の被験者全てが溶液を. 行った。LT は OBLA を測定した際の血中乳酸値が. 正確に区別することができないことを確認した。. 2mmol/L に至った時点とした。ウォーミングアップ後 OBLA の強度までスピードを上げ、疲労困憊までラン. 2)実験手順. ニングを行った。OBLA の強度でのランニング中は 10. 本実験はシングルブラインド、クロスオーバーデザ. 分おきに 5 秒間マウスリンスを行った。各溶液の量は、. インでの 3 試行とした。各実験間は少なくとも 7 日間. 先行研究を参考に、25ml/回とした。溶液の温度は 20. 空けた。本実験を行う前に斜度 1.5%に設定されたトレ. ±0.6℃であった。主観的運動強度(RPE)と感情状態. ッドミルを用いて、血中乳酸蓄積開始点(Onset of. を測定する尺度(Feeling scale: FS)をマウスリンスの. Blood Lactate Accumulation: 以下 OBLA とする)を. 4 分前に測定した後、マスクを装着し呼気を 3 分間測定. 測定した。OBLA の測定は、運動負荷の初期負荷を. した。心拍数は実験を通して連続的に測定した。疲労困. 120m/min とし、トレッドミルを使用した多段階運動. 憊のタイミングは被験者の自己申告とした。ランニング. 負荷試験により評価した。3 分ごとに速度を 10m ずつ. 中、被験者には走行時間が分からないようにした。血中. 漸増させ、血中乳酸値が 4mmol/L に至った強度を. 乳酸値および血中グルコース濃度を耳朶血を用い、運動. OBLA とした。一段階の運動時間は 4 分間とし、休憩. 前後に測定した。. は 1 分間とした。 実験前日、被験者にはカフェイン、アルコール、激. 3)統計処理. しい運動を控えてもらった。実験前夜、21 時ちょうど. 3 群間の運動継続時間の比較には、1 元配置分散分析. に規定食を食べるよう指示し、13 時間の絶食後、実験. を実施した。血中グルコース濃度の比較には、時間(運. 室に来室させた。. 動前/後)と濃度(0%/6%/18%)、呼吸交換比及び酸素 摂取量の比較には、時間(安静時/運動 10 分時点/疲労 困憊前)と濃度(0%/6%/18%)を要因とする 2 元配置 分散分析を実施した。濃度間に有意差が認められた場合 には、Bonferroni 法を用いて多重比較検定を実施した。 全ての有意水準は 5%未満とした。なお、分析には統計 パッケージ PASW Statistics 18 を使用した。.
(3) 結果 図 2 に濃度別にみた運動継続時間を示した。濃度間. 0.98. に差は認められなかった(プラセボ:26.52±6.53 分、. 0.97. 炭水化物 6%:28.37±8.02 分、炭水化物 18%:27.07 (220-年齢)から運動強度を評価した。その結果、運. *. 0.96. *. ±5.44 分)。OBLA 測定の時の酸素摂取量と最高心拍数. *. 0.95. プラセボ CHO6%. 0.94. CHO18%. 図 3 に運動前、後の血中グルコース濃度を示した。. 0.93 0.83. 系列1. 運動前の血中グルコース濃度に濃度間の差は認められ. 0.81 0.92. 系列2. 動強度は推定 90% o2max であった。. なかった。時間及び濃度間に主効果が認められ(p<.05)、 多重比較検定の結果、プラセボと炭水化物 6%の間に有. 安静 安静. 10分時点 10分地点 10分地点. 疲労困憊前 疲労困憊前. 系列3. 図 4.安静時と運動中の呼吸交換比. 意な差が認められた(p<.05)。 図 4 に安静時と運動中の呼吸交換比の変化を示した。 安静時の呼吸交換比に濃度間の差は認められなかった。 時間及び濃度間に主効果が認められた(p<.05)。多重 比較検定の結果、炭水化物 6%と炭水化物 18%の間に 有意な差が認められた(p<.05)。 図 5 に安静時と運動中の酸素摂取量の変化を示した。 安静時の酸素摂取量に濃度間の差は認められなかった。 時間の主効果は認められた(p<.05)が、濃度間に主効 果は認められなかった。 (分). (ml/min). *. 2800 2750. *. 2700 2650. プラセボ. 2600. CHO6%. 2550. CHO18%. 2500 1000 2450 0 2400. 44. 系列1 系列2. 安静 安静. 10分地点 疲労困憊前 10分時点 10分地点 疲労困憊前. 系列3. 図 5.安静時と運動中の酸素摂取量. 39 34. 考察. 29. 本研究は濃度の異なる炭水化物溶液(0%、6%、18%). 24. によるマウスリンスが持久的パフォーマンスに与える. 19. 影響を検証することを目的として行ったが、明確な差は. 14 10. プラセボ. CHO6%. CHO18%. プラセボ. CHO6%. CHO18%. 認められなかった。持久的パフォーマンスが改善されな. 5. かった原因として、運動強度が高すぎた可能性がある。. 0. 炭水化物マウスリンスの効果を示す研究において、30. 図 2.濃度別に見た運動継続時間. 分以下の運動で持久的パフォーマンスを改善したとい う報告はない。本研究の運動継続時間は 30 分以下であ. (mg/dl). るため、濃度間に差が認められなかったと考えられる。. *. 95. しかし、運動継続時間は有意な差は認められなかった. 90. が、プラセボに比べ、炭水化物マウスリンスにおいて、. *. 85. プラセボ. 80 75. わずかに長くなっていた。被験者の実験後のコメントで、. CHO6%. プラセボでは全ての被験者がマウスリンスをしても何. CHO18%. も感じないと答えていたのに対して、炭水化物 6%溶液. 70. では 6 人中 3 人、炭水化物 18%溶液では 2 人が「楽に. 65. なった」と回答した。このことは、30 分以下の運動に. 60 運動前. 運動後. *p<0.05. 図 3.運動前後の血中グルコース濃度. おいても、運動強度によっては炭水化物マウスリンスに より、持久的パフォーマンスが改善する可能性が示唆さ れた。炭水化物マウスリンスによる、持久的パフォーマ.
(4) ンスの改善は、口腔内の炭水化物受容体を介して、線. では、血中グルコース濃度は LT と比べて、OBLA 強度. 条体といった脳の報酬系に関わる領域を活性化させる. の方が高値を示したことが報告されている。先行研究で. ことが要因だと報告されている。また、脳の報酬系に. は、プラセボマウスリンス群と炭水化物マウスリンス群. 関わる領域の活性化は運動中の主観的な強度に影響を. の血中グルコース濃度に差は認めらなかったと報告さ. 及ぼすと考えられている。先行研究において、炭水化. れている。しかし、本研究ではプラセボと炭水化物 6%. 物マウスリンス群は持久的パフォーマンスを改善して. で有意な差が認められた。これは、炭水化物 6%の溶液. いるにもかかわらず、プラセボ群と比べ、運動中の RPE. マウスリンスは呼吸交換比が低いという結果から、エネ. に差は認められなかった。また、RPE が 15 と感じる. ルギー基質の利用に違いがあることが示され、内因性の. 強度で 30 分間走らせた研究では、炭水化物マウスリン. 糖質の節約に影響する可能性が示唆された。. ス群がプラセボ群と比べて、持久的パフォーマンスを. また、運動継続時間に影響を及ぼす要因の 1 つとし. 改善したと報告されている。主観的な運動強度は同じ. て、溶液の温度が考えられる。本研究で用いた溶液の温. であるにも関わらず、炭水化物マウスリンスは、より. 度は先行研究に基づき、約 20℃としたが、疲労困憊ま. 高い運動強度で運動をすることができるということが. での運動中に温い水(19℃)よりも冷たい水(4℃)を. 考えられる。本研究では濃度間に RPE に差は認められ. 摂取させた群の方が、持久的パフォーマンスを改善した. なかった。これは運動強度が強すぎたため、運動中の. ことが報告されている。また、冷却物質(メントール). RPE に影響を及ぼさなかったと考えられる。しかし、. を含む溶液のマウスリンスが持久的パフォーマンスを. 被験者が炭水化物マウスリンスによって「楽になった」. 改善したことも報告されている。これらの研究から、口. と回答したことから、脳の報酬系に関わる領域を活性. 腔内の溶液に対する温度感覚が持久的パフォーマンス. 化させていた可能性がある。また、高い強度でのラン. に影響することが考えられる。本研究で用いた溶液の温. ニング中、マウスリンス自体がきついという感想もあ. 度は、先行研究における温い溶液と同様であった。マウ. ったことから、走行を一時停止してマウスリンスを行. スリンスの効果は炭水化物水溶液を口腔内に 5 秒間程. う等の実験方法上の問題も考えられた。. 度、留めることにより得られることから、水温の影響も. 呼吸交換比には時間及び濃度間に主効果が認められ、. 考慮する必要が示唆された。. 疲労困憊前において、炭水化物 6%と炭水化物 18%の 間に有意な差が認められた。プラセボと炭水化物 6%に. まとめ. 有意な差は認められなかったが、プラセボが高値を示. 本研究では濃度の異なる炭水化物溶液(0%、6%、. した。プラセボの運動後の血中グルコース濃度は、炭. 18%)におけるマウスリンスが持久的パフォーマンス. 水化物 6%と有意な差は認められた。このことから、炭. に与える影響は認められなかった。しかし、炭水化物を. 水化物 6%と比べて、プラセボは炭水化物の利用が高か. 含む溶液のマウスリンスでは、運動が楽になると答えた. ったことが推察される。酸素摂取量は疲労困憊前、濃. 被験者がいた。また、炭水化物 6%の溶液マウスリンス. 度間に差は認められなかったものの、炭水化物 6%の溶. は血中グルコース濃度を上昇させ、呼吸交換比と酸素摂. 液マウスリンス実施時、やや低い傾向を示した。酸素. 取量を低下させると考えられる。これらの要因が、運動. 摂取量が低いということは、運動の強度が低かったこ. 継続時間に影響を及ぼす可能性が見出された。. とから運動中の脂質利用の割合高かった可能性がある。 よって炭水化物 6%の溶液マウスリンスは、低い呼吸交. 主要引用文献. 換比を示したと考えられる。また、炭水化物 6%と炭水. Carter JM, Jeukendrup AE, Jones DA.(2004) The. 化物 18%で有意な差が認められたことによって、炭水. effect of carbohydrate mouth rinse on 1-h cycle. 化物マウスリンスに至適濃度が存在する可能性がある。. time. 血中グルコース濃度には時間及び濃度間に主効果が. trial. performance.Med. Sci. Sports. Exerc,36(12):2107-11.. 認められた。濃度間で有意な差が認められたのは、プ. E.S.Chamber,M.W.Bridge,D.A.Jones.(2009)Carbohyd. ラセボと炭水化物 6%の間であった。運動時、60%. rate sensing in the human mouth:effects in. o2max 強度を超えると、アドレナリンの分泌が急激 に増加すると報告されている。したがって、血中グル コース濃度の上昇は高強度運動によるアドレナリンの 分泌によるものと考えられる。また、LT と OBLA の 強度に設定したエルゴメーターで 30 分間運動した研究. exercise performance and brain. activity.. Journal of Physiology.587:8.1779-1794..
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