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中小規模の公営住宅団地における住民自主管理の状態に関する比較考察 -北九州市八幡東区枝光地区の市営住宅団地を対象として- [ PDF

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Academic year: 2021

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中小規模の公営住宅団地における住民自主管理の状態に関する比較考察

- 北九州市八幡東区枝光地区の市営住宅団地を対象として -

根谷 拓志 1. 研究の背景と目的 公営住宅の管理運営において、住民の自主的な管理 活動をいかに促すかは重要な課題である。公営住宅管 理の担い手には、公営住宅事業者である自治体と、自 治体から管理委託された指定管理者及び管理代行者、 入居する住民が位置づけられる。このうち住民による 管理は、共益費の徴収と運用を基盤として、集住秩序 の維持や居住環境の保全に重要な役割を果たすものの、 自治体の条例や制度では制定当初から住民自主管理の 枠組みが明示されず、一部の役割規定にとどまってい る。加えて、近年、住宅セーフティネットの中核とし ての位置付けが強まっている情勢において、居住者の 高齢化等による団地コミュニティの弱体化が懸念され ており註 1) 、住民自主管理の継続的な運営手法の構築が 求められる。 一方、住宅政策にもとづき供給される公営住宅は、 一般に共用空間の割合が高く、民間賃貸住宅に比べて 高い住環境水準を有する反面、住民が集団的に管理す べき領域は大きい。また、国や自治体の住宅政策が反 映され、建設時期によって立地や住宅計画が異なり、 管理活動の基礎単位ごとに独自の管理体制や管理ルー ルが形成される。このため、住民自主管理を促す上で まず、各団地の住民自主管理の状態を的確に捉える必 要がある。 以 上 よ り、 本 研 究 で は 公 営 住 宅 の 世 帯 比 率 が 約 8%( 平成 22 年度国調 ) と政令市の中でも高い北九州市 において、建設時期の異なる中小規模の公営住宅団地 が立地する八幡東区枝光地区註 2)を対象として、住民自 主管理の状態を把握し比較考察することで、住民自主 管理の支援策に関する知見を得ることを目的とする。 2. 研究の方法 2-1. 住民自主管理の状態 本研究における住民自主管理とは、「住民が集住環 境を良好な状態に保つため自らが管理主体となって行 う集団的な管理活動」を指す註 3) 。また、集団的な管理 活動の取り組み状況を住民自主管理の状態と定義する。 状態把握にあたり、入居手続き時に公営住宅行政によ り配布される共同生活のルールを周知する文書 ( 以下、 入居のしおり ) の記載事項との対応関係から、管理活 動を住民に義務付けられている活動 ( 以下、基礎的活 動 ) と住民が自発的に行う独自の活動 ( 以下、積極的 活動 ) の 2 つに分け、取り組み状況を捉える ( 図 1)。 2-2. 調査方法 本研究は、研究対象団地の管理活動の基礎単位を整 理した上で、運営管理面、生活管理面、維持管理面の 取り組み状況をそれぞれ比較し、住民自主管理の状態 を維持、向上させる方策を考察する。 これらの調査として、まず、文献調査で八幡東区の 公営住宅団地建設の変遷や団地の基本情報を整理した ( 平成 27 年 6 月~ 8 月 )。次に、各団地の共用空間の規 模や構成を捉えるため、実測調査を実施した (9 月~ 10 月 )。続いて、各団地の管理活動の取り組み状況の 把握のため、団地の代表者 ( 町内会長、隣組長、管理 人註4))を対象にヒアリング調査を行った(10月~ 11月)。 2-3. 調査対象団地の概要 本研究は、枝光地区に位置する中小規模 (300 戸未満 註 5) ) の市営住宅 7 団地を調査対象とする。建設時期は 昭和 32 年〜平成 5 年まで幅広く、4 団地で建替実績が ある。また、住棟構成は単棟型が 3 団地 (HS註 6) /S/SW)、 複数棟で構成される団地型が 4 団地ある。共用施設を 見ると、集会所と広場を両方持つ団地が 5 団地ある。 建設時期順に各団地を概括すると、SR は改良住宅で あり、南側道路沿いの 1、2 階が店舗併用住宅である。 政策空家の増加に伴い入居世帯率註 7) が最も低く、高 齢者を含む世帯の割合 ( 以下、高齢世帯率 ) は 81.5% と 最も高い。次に、K は中層 2 棟 ( 以下、K( 中 )) とエレ 図 1. 住民自主管理の状態 運 営 参 加 範る。 費 用 支出る。  住民自主管理の基盤 基礎的な活動 積極的な活動 基礎的な活動 積極的な活動 運 営 管理活動の運営主体 参 加 管理活動の参加の 範囲 費 用 管理活動の費用の 支出源 積極的な活動 ○ ○ ○ ○ × × ○ ○ ○ ○ × 菜園の手入れ 維 持 管 理 敷地内の清掃 植栽の手入れ 附帯設備の保全 共用施設の清掃 生活マナーの指導 生 活 管 理 団地外との連絡 住民同士の交流 管理ルールの周知 管理活動の内容 住民同士の集会 運 営 管 理 共益費の運用 入居のしおり の記載 × 附帯設備の改善 管理活動の取り組み状況 管理活動の取り組み状況

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31-2 ベーターのある高層 1 棟 ( 以下、K( 高 )) が道路を挟ん で隣接しているが、所属町内会は異なる。続いて、S、 SW、HI は中層耐火構造で、SW は「北九州市シルバーハ ウジング構想」のモデルプロジェクトとして建設され た。また、HS と HD は傾斜地に囲み型の住棟配置がな され、戸当たりの共用空間面積註 8)はともに大きい。HD では、敷地下部に位置する住棟のエレベーターを団地 住民が共同利用している。 3. 運営管理面の取り組み状況 3-1. 管理活動の基礎単位 まず、各団地の管理活動の基礎単位を整理する。調 査対象団地は敷地内を単一の集団で運営する「単棟型」 と複数の集団による「団地型」の 2 つに分けられる。ま た、周囲との関係の尺度として、集会所などの共用施 設の有無および利用範囲を用いて 2 軸で 6 グループに 分類し、7 団地 8 事例を整理した ( 表 1)。 3-2. 共益費の運用 以下では、各事例の住民自主管理の状態を比較する。 まず、共益費の徴収と運用方法を見ると、共益費は全 ての団地で徴収され、金額は住棟の規模や構成、附 帯設備に応じて住棟単位で設定されている。最低は SR( 一部 ) の 100 円、最高は K( 中 ) の 1,250 円まで幅が ある。特に、SR は政策空家に伴う世帯数の減少により、 最低限の共用照明の電気料のみ徴収する住棟があり、 団地内での差が大きい。一方、K( 高 ) は単棟型である が、金額に幅があることが注目される。同団地では共 益費の使途項目が共用部分の光熱費、修繕積立金、共 用施設、清掃委託料の 4 つに整理されている。このう ち光熱費は実費精算として徴収され、額が毎月変動す る。加えて、毎月、収支報告が行われ、住民の共益費 負担への理解を促している。その他の事例では収支報 告を住棟の住民総会で行うことが多いが、SR と K( 中 ) では実施されておらず、共益費の運用状況だけでなく 共同生活上の問題などの情報を共有する場が設けられ ていない。 3-3. 周辺地域との連絡会 運営管理の 1 つである周辺地域との連絡会は町内会 の役員会議として 7 事例で行われている。特に SR は住 棟内の集会は開かれていないが、当団地の隣組長が参 加する町内会の役員会議の場で、団地の課題共有と対 策協議を行うことで補われている。また、K( 高 ) は 1 棟で 1 町内会であり、町内会長が参加する自治区会の 役員会議で周辺地域との連絡がとられている。一方、 HD では開催されていない。2 年前に町内会から脱会し、 周辺地域と情報交換がされず、一定数の住民が不安視 していることがヒアリングで確認された。 4. 生活管理の取り組み状況 4-1. 生活マナーの指導 次に、生活管理面の基礎的活動の取り組み状況を見 ると、生活マナーの指導は SR・K( 中 ) の 2 事例を除き、 団地役員が担当している。SR では団地内でトラブルが 生じた際、団地住民が隣地に住む町内会長へ報告し対 応しており、行政との取次ぎや連絡窓口も町内会長が 担当している。 図 2. 調査対象団地の概要註 7)

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31-3 4-2. 管理ルールの周知  積極的活動を見ると、3 事例で管理規約を作成して 住民に周知され、必要に応じて住民総会で見直されて いる。一方、HS では規約は作成されていないが、管 理人が各住民に対する管理ルールの周知に努めている。 詳しく見ると、HS では町内会長の推薦のもと、市に委 嘱された管理人が供用開始当初に、全戸をまわって親 睦会の開催を呼びかけた。最初の親睦会では共益費の 運用方法や敷地内の清掃方法を話題に上げ、繰り返し 親睦会を開くことで、地道に検討を重ね、管理ルール の形成が図られた。その後は新規入居希望者に対して、 住宅の下見時に管理人が町内会加入の呼びかけや団地 の管理ルール、管理活動等を説明する機会を設け、住 民の入れ替わりに対応している。 5. 維持管理の取り組み状況 5-1. 住棟周りの清掃 続いて、維持管理面の基礎的活動の取り組み状況を 比較する。住棟周りの清掃は全事例で取り組まれ、多 くは住棟単位の一斉清掃が行われている。隣棟間の調 整が必要な団地型の事例では団地内道路や法面等を境 界として分担している。また、欠席罰金制度を布いて いる事例も多い。一方、SRとK(中)では有志数名が随時、 美化活動を行っている。 5-2. 共用施設の保全 ここで、共用施設の保全にかかる費用の支出源に着 目すると、利用範囲と重なりが見られる。集会所を地 域に広く開放している 3 事例 (HS/HI/SR) は町内会費で 賄われており、利用を団地住民に限定している 2 事例 (K( 高 )/HD) は業者委託と住棟の輪番制と清掃方法に違 いがあるものの、共益費から支出されている。地域開 放している 3 事例のうち、HS の集会所は団地の建替え 時に町内会長が市に要望を出し、町内の集会所として 建設された経緯があり、その際、集会所の保全費用は 町内会の特別会計で運営することが方針としてまとめ られ、現在も継続されている。また、SR は集会所と共 用照明の保守費は町内会費から補助を受けている。SR が所属する町内会は以前は町内会会議を他の集会施設 で行っていたが、利用料が高かったため、町内会長が 表 1. 調査対象団地の住民自主管理の状態 ※1 HS団地は住まいのしおりに記載された行政とのやりとりに加えて、上記の活動を管理人が運営している。 ※2 建替え前の戸数は団地全体の値を示している。 ※3 共用空間の面積は国土地理院地図(平成23年)の情報に実測調査の情報を加え算出した。 ※4 共益費と町内会費を3 ヶ月ごとに徴収しているため、1 ヶ月分に換算した。

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31-4 団地側と交渉し、団地集会所を共同利用することが決 まった。さらに、付近の供用照明も街灯代わりに利用 することから、併せて費用補助が行われるようになっ た。近年は団地住民で集会所を利用する機会が少なく なり、保全活動の頻度が減少しているため、町内会で の利用時に参加者で清掃を行っている。 一方、HD の集会所は町内会の脱会以降、利用者が団 地住民に限定されているが、現在、地域の包括的な組 織である枝光まちづくり協議会との共同利用と管理が 検討されている。 5-3. ゴミステーションの整備 K( 高 ) と HD ではゴミステーションの整備が行われて いる。HD は斜面に沿って住棟配置されており、下か ら吹き上げる風が強く、その影響でゴミステーション 内の投棄物の散乱が団地の問題として挙げられていた。 これを受けて、団地の会計担当者を中心に対策が検討 され、町内会脱会時の分担金を活用して平成 27 年にゴ ミステーションの改修が実施されている。 5-4. 植栽の手入れ 趣味性の高い活動である花壇の手入れは、全事例で 専門担当者が、それぞれ決められた範囲内で随時活動 を行っている。 維持管理面の積極的活動である共同花壇・菜園づく りは唯一、HS でのみ取り組まれている ( 図 3)。これ は、供用開始当初に入居した住民が、住み替え前に育 てていた花や草木を住戸周りに植えたことに始まった。 その後、呼びかけを通じて植樹や花壇の手入れを趣味 とする住民を集めてグループをつくり、活動領域を広 げていったことで、他の住民からの信頼を得て、未利 用だった住棟裏の小規模な広場を共同花壇・菜園とし て利用することが認められた。さらに領域の拡大は続 き、団地敷地内に留まらず、集会所裏や駐車場裏にま で及んでいる。この駐車場裏の菜園を担当しているメ ンバーは日常的に駐車場の清掃も行っており、団地の 一斉清掃時の負担が軽減されているとの声が他の住民 から挙がっている。このように、HS の共同花壇・菜園 づくりは団地敷地の有効利用や敷地内外の維持管理面 の取り組みを助長するだけでなく、団地の集団形成に も寄与しているといえる。 6. まとめ 本研究では、枝光地区の 7 団地 8 事例を対象として、 住民自主管理の状態について比較考察を行った。 全ての団地で管理活動は住棟を基礎単位に行われて いるが、取り組み状況には差があり、住民自主管理の 状態は異なる。 なかでも、基礎的活動が損なわれている例として、 収支報告が行なわれていない団地が複数確認された。 これらは生活マナーの指導や住民集会の開催も行われ ておらず、団地内で共益費の運用状況や共同生活上の 問題点を共有する機会が設けられていない。そのうち、 団地を包含する町内会の計らいで、最低限の活動が補 われている事例も見られる。これは、団地の町内会役 員も参加する町内会会議で、団地の課題と対策につい て話し合われたことがきっかけとなっている。 一方、積極的な活動に取り組んでいる団地では基礎 的活動は総じて行われており、団地の課題や代表者の 意向に応じて、入居前の管理ルールの説明や共同花壇・ 菜園づくりなど独自の働きかけが見られる。特に、共 同花壇・菜園づくりは活動の範囲が団地敷地内全体、 さらに敷地外にまで拡がっており、手入れしている箇 所の保全にとどまらず隣接する駐車場などの清掃まで 行われている。 註釈 註 1)2014 年度日本建築学会大会(近畿)建築社会システム部門研究協議 会資料 『住宅セーフティネットの再構築を考える~居住貧困を解消するシ ステムはどうあるべきか~』 P5. 図 2 で住宅セーフティネットの施策体系 の課題として「福祉住宅化によるコミュニティの問題」が挙げられている。 註 2) 平成 2 年以降に建設された市営住宅の多くは八幡東区の位置する八 幡地区 ( 旧八幡市の市域 ) に建設されている。平成 2 年以前に建設された 市営住宅は人口に応じて北九州市全域に市営住宅が建設されている。 註 3) 参考文献 2) 公営住宅における住民自主管理方式に関する研究その 1 で定義される。 註 4) 自治体によって管理人、管理者、連絡員、管理補助員等表記が異な るが、本研究では地区住民から事業主体の長の委嘱により任命されるもの を統一して管理人と呼ぶ。 註 5) 公営住宅の規模の明確な基準を定められておらず、「北九州市建築局 事業概要 1995」の中で、モデルプロジェクト①市営住宅再配置計画に関 する文中に「300 戸を超える大規模な団地」と記されている。 註 6)HS 団地は隣棟間隔が狭く、規模が小さいため、2 棟を併せて運営し ていることから単棟型に含めた。 註 7) 入居世帯率の算出にも用いられる、入居世帯数は町内会加入世帯の 世帯数を示す。 註 8) 共用空間の面積は国土地理院地図 ( 平成 23 年 ) の情報に実測調査の 情報を加え算出した。 謝辞 本研究にあたり、団地入居者の皆様、町内会長の皆様ならびにまちづくり 協議会役員の皆様には多大なご協力を頂きました。ここに記して深謝いた します。 参考文献 1) 公営住宅における居住者の自主管理ルールの形成に関する研究 その 1 ~その 6:志賀勉・他 日本建築学会大会学術講演梗概集 平成 13 年度 /15 年度 /16 年度 /19 年度 2) 公営住宅における住民自主管理方式に関する研究 その 1 〜 4 佐土原洋平・志賀勉・他 日本建築学会大会学術講演梗概集 平成 24 年度 /25 年度 /27 年度 供用開始当初から、住戸周り に植えられた植栽 住棟裏の小広場を利用した 共同花壇と菜園 駐車場裏(敷地外)まで拡がる 菜園 HS の共同花壇・菜園づくり 図 3. HS の共同花壇と菜園

参照

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