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アメリカにおける団体交渉義務

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(1)

アメリカにおける団体交渉義務

その他のタイトル The Duty to bargain in NLRA

著者 岸井 貞男

雑誌名 關西大學法學論集

46

4‑6

ページ 1091‑1112

発行年 1997‑02‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00024544

(2)

アメリカにおける団体交渉義務

(3)

誠実交渉義務

団体交渉の対象事項

(4)

稿

ウエスト社のナッツシェル・シリーズの一冊︑バージニア大学教授ダグラス・エル・レスリーの﹁労働 法﹂︵第三版︶を素材にいくつかのテーマについてアメリカ労使関係法の現況ーー'を探ることを目的とするものであ る︒まず本小稿では︑第

7章﹁団体交渉義務﹂I

一八一頁以下ーを取り上げることにする︒したがって本稿は︑紹 介・翻訳を主たる内容とするものであるが︑わが国の現況と対比させるために︑必要に応じて箪者のコメントを付す とともに︑原文にはない引用条文の翻訳を加えたり︑新たな小題を起こすなどの所作をしている

4の小題はすべて筆者によるもので︑原文にはない︒︶︒なお︑本書は︑

実務家やロースクールの学生などを対象としたもので、しかも、ケースブックではなく、判例

•NLRB

命令等の見

解の現状をその変化の足跡を詳細にフォローしつつ体系化したものである︒また︑本書は自説を随所で大胆に展開し

NLRAと誠実交渉義務

わが国の労組法は第

72

項において使用者に団体交渉義務を課しているが︑その対象および内容については触れ

るところがない︒これに対して︑

アメリカの全国労働関係法

(N

LR

A)

ている点でも︑注目されるところである︒

' , 

1i6

︑三の

アメリカ労働法の入門書ではなく︑法律

は︑その第8

条い項において︑団体交渉の 対象および同義務内容について︑次のように定めている︒即ち︑﹁本条において︑団体交渉とは︑①賃金︑労働時間

(1

0

(5)

(1

0

その他の雇用条件︑②又は労働協約もしくはその下で発生する問題の交渉︑③及び成立した合意を記載した協約書の

一方の当事者の要求のある場合に︑使用者と被用者の代表が適当な時間に会合し︑誠意

(g oo df a i th )  

をもって協議するという相互の責務の遂行をいう︒但し︑この責務は︑いずれの当事者についても︑これを強制して

提案に同意せしめ又は譲歩せしめることを認めるものではない︒﹂︒団体交渉の対象については後にみることにするが︑

本号の命ずる団体交渉義務は︑わが国における異なって使用者のみならず労働組合にも負わせるものであるが

(N

L R

のもとでは︑﹁交渉代表関係にあるすべての使用者とA8条い項固号および⑯項③号︶︑これによって︑NLRA

労働組合が誠意をもって交渉すること﹂を求めていることは明らかである︒しかし︑わが国おいても結論的には異論

のないこの誠実交渉

(g oo f a d i th   bargaini

g)

 

NLRA

のもとでも今なお﹁異論があり︑見解の

一致をみていない﹂ところである︒﹁この用語を突き詰めて考えると︑当事者に対しある種の精神状態を維持するこ

とを立法によって要求していることにほかならないから︑無意味であるか︑少なくとも執行できないものであると論

ずる者もあれば︑この義務は︑組合と使用者の交渉担当者を交渉室に送り込み︑ドアを閉め︑しかし︑部屋の中で何

が起きるかを吟味しないことを意味する︑と解釈する者もいる︒﹂とされている︒しかし︑﹁誠実交渉に関する諸見解

NLRAによって採用されたものは︑これを︑開かれた心で︑しかし合意に達することまで要求されないで︑

当事者が会合し労働条件について協議する義務であるとする解釈である︒誠実交渉概念の意味付けが一段と困難にな

るのは︑協議が真空状態のなかで︑即ち︑労使による経済的武器

(e co no mi cw ea po ns ) 

関法第四六巻第四・五・六号

の行使と無関係に行われる

ことは滅多にないからである︒経済的武器は誠実交渉の前にも︑最中にも︑またその後にも行使されることがあり︑

あるいは交渉を頓挫させるために行使されることもしばしばである︒使用者または組合によるある行為が適法な経済

(6)

してきた︒初期の判決は︑

の事件では︑新たな交渉代表として認証された組合が初めての労働協約を締結しようとしていた︒組合側提案の協約 案は︑賃金︑労働時間その他の労働条件をカバーし︑協約の有効期間中拘束力のある苦情仲裁制度を設ける条項を含 むものであった︒使用者側はしばらくの間交渉に応じた後︑組合提案のうち二︑三の点に賛成したが︑組合要求の大 部分に対して極端に広範な﹃経営専権

(^

'm

an

ag

em

en

tf u n c t i o n s "

) ﹄条項の反対提案をなすことによってこれに応え

た︒同条項は︑雇用︑昇進︑正当理由のある解扉および懲戒︑およびその他のたいていの扉用条件を裁量により決定 する権限を経営が保持する︑と述べていた︒この条項は労使の苦情を処理する機関の設置をうたっていたが︑最終決 定権を仲裁ではなく︑経営のトップ・マネッジメントの審査によるものとしていた︒

NLRBは︑使用者がこの条項

も︑協約の有効期間中の就業予定表およびその他の雇用条件に関する最低の基準を協約によって決めることに使用者 が同意することを要求している︑とするものであった︒この事件では︑経営側は一切基準を提案せず︑協約の有効期 間中における完全な自由を経営側に保証する条項を提案した︒

NLRB

によれば︑同条項を使用者は要求できるけれ に固執する

( 1 )  

的武器の行使なのか︑あるいは誠実交渉の違法な拒否なのかの判断を迫られることが繰り返し生じる︒﹂以下︑

リー教授の述べるところに従って︑同義務をめぐる争点についてみると次のごとくである︒

反対提案ー̲﹁経営専権﹂条項の固執と誠実交渉義務

﹁最高裁は︑交渉義務の内容を︱つの画期的な判決によるというよりも︑

NLRB

対アメリカン・ナショナル保険会社事件︵連邦最高裁︑ 一連の判決の積み重ねを通じて明らかに

( 2 )  

一九五二︶であった︒こ

( i n s i s t e n c e )

ことそれ自体が第8条い項③号に違反すると判断した︒その理由は︑

三九三

NLRA

は少なくと

(1

0

(7)

︳ ︱ ‑ 九

ども︑これに固執すれば団交拒否となる︒最高裁は︑この判断を退けた︒最高裁は︑NLRAは団体交渉を促進させ

ることを目的としているが︑協約の内容にまで立ち入り規制するものではなく︑いわんや合意それ自体を強制するも

のではないことを強調した︒さらに︑これに続けて︑この前提に立てぱ︑NLRBは﹃直接または間接に妥協を強制

したり︑労働協約の実体的な内容に関して判断をする﹄ことはできない︑と判示した︒使用者がその立場を直接に述

べることは何も悪いことではない︒NLRBの判断の誤りは︑すべての経営専権条項を非難したことにある︒このよ

うな条項は労働協約において許容される余地

(p er mi ss ib le pl ac e)

があり︑交渉義務問題は個々の事件の事実に基づ

いて判断されるべきであって︑それ自体で違法というルールを展開させることによって決着をつけるべきではない︒

誠実交渉義務に関しては︑この義務は︑賃金︑労働時間その他の雇用条件に対する支配権を経営から奪いとるとの

議会の決定を意味する︑という見解がある︒このように解すると︑ある雇用条件に対する一方的支配権を主張する使

用者はすべてNLRA8条い項⑥号に違反することになる︒アメリカン・ナショナル事件判決は︑この見解を退け

たのである︒また︑誠実交渉義務に関する別の見解として︑使用者は協約によって労働条件を決めるとの提案をすれ

ば十分であり︑協約の有効期間中労働条件を労使共同の行為によって決めるか︑経営の裁量にまかせるか︑いずれで

もよいとする見解がある︒この見解によれば︑これら両案のいずれをとるかにつき使用者が誠実に交渉しておりさえ

すれば︑後者の案に使用者が固執していても第8条国項⑥号違反とならないのである︒それでは︑使用者が協約の有

効期間中はすべての労働条件につき経営の裁量にまかせることを主張し︑その旨の条項を要求した場合︑アメリカ

ン・ナショナル事件法理によれは︑使用者は不当労働行為を行ったことになるのであろうか︒下級裁判所は同法理を

そのように広く解釈せず︑使用者が交渉義務を尽くしたかどうかを決するには︑当該事件の交渉のすべての経緯に照 関法第四六巻第四•五・六号

(1

0

(8)

裁によって検討された︒協約交渉の間︑保険会社の地方代理人組合

(u ni on of   in su ra nc

e  c

om pa ny i s  d t r i c t   agen ts ) 

は︑新しい契約をとることや報告手続きを守ることを拒否したり︑あるいは︑仕事に遅れてやってきたり︑業務上の

会議への出席を拒否したりして︑保険会社に経済的圧力をかけていた︒組合はまた様々な会社の事務所にピケをはっ

た。

NLRB

は、組合は合意に達したいという誠実な願いを有していたが、その戦術は第8条⑯項③

n

万—労働組合ー

の誠実交渉拒否を構成すると判断した︒

団体交渉の実体的側面にまで介入してしまったのである︒最高裁は︑議会が次のような二つの立法政策を採用してい

ると判断した︒その一は︑政府が協約で定められる労働条件の統制をはかることを差し控えるという政策であり︑そ

の二は︑政府が経済的武器に規制を加えることを差し控えるという政策である︒NLRBが︑経済的武器の選択を規

らして判断する必要があるとの立場をとっている︒組合の提案につき一切耳を貸そうとせず︑他方︑すべての労働条

件を経営の裁量にまかせることに使用者が固執していると︑NLRBおよびその司法審査をする裁判所は第8条い項

( 3 )  

⑥号違反を認定することになろう

(N

LR

B対リード&プリンス製造会社事件︹第一控訴裁︑

カン・ナショナル事件では︑使用者はいくらかは交渉しており︑使用者の提案した条項は組合の苦情仲裁条項に対す

る反対提案であったので︑これらの点で両事件を区別することは可能である︒﹂

経済的武器の行使と誠実交渉義務ー情報提供の拒否と誠実交渉義務—ー—

﹁誠実交渉と経済的武器の行使の関係は︑NLRB対保険代理人国際組合事件︵連邦最高裁︑

最高裁は︑これに同意しなかった︒最高裁の見解によれば︑NLRBは︑経済的武器の使用を規制しようと試みて︑

三九五

(1

0

( 4 )  

0年︶で最高

(9)

(1

0

制できることになれば︑NLRBはまた労働協約の内容にまで深く立ち入ることが可能となろう︒

保険代理人組合事件におけるNLRBの理論は︑団交中に一定の経済的武器を行使することは︑たとえそれが有利

な協約内容を獲得するために行使されるものであっても︑交渉過程への干渉であり︑誠実交渉拒否の認定を妨げられ

ない︑というものである︒最高裁はこの理論を退けたが︑それによって問題が完全に解決された訳ではない︒例えば︑

( 5 )  

一九五六年︶がその︱つである︒同事件では︑時間給を一0

ント上げることを求めた組合の要求に対して︑使用者は︑それでは事業を続けられなくなるとの理由で︑賃上げは不

可能と回答した︒組合は︑支払不能との主張を裏付ける資料の提出を要求したが︑使用者はこれを拒否した︒

最高裁は︑第8条い項⑥号違反とのNLRBの認定を支持し︑情報の提供を命令した︒最高裁の指摘するところに

よれば︑組合の情報公開要求は広範にすぎるとか︑使用者の主張を裏付ける書類の作成は会社に不当な負担を強いる

といった主張はなされていなかった︒求められている情報は極めて適切で︑使用者が交渉の場で支払不能と主張した

以上︑使用者による立証拒否を誠実でない交渉の証拠とすることは︑すべての事情を考慮して事実を認定する

NLR

Bの権限の範囲内である︒

この事件は︑最高裁が経済的武器の行使を非難しているものと見るより︑合意に達するための手続きである団交を

台無しにしてしまった使用者側の手続的方策を非難しているものと見るべきであろう︒トルーイット会社は︑労働条

件につき合意に達したいと望んではいたが︑その支払不能との主張を被用者らが信じたら︑交渉は計り知れない大き

な影響を受けたかもしれない︒賃上げは被用者から仕事を奪い︑使用者の事業継続を不可能にするだけであるとの使

用者の主張を被用者らが真実だと認めたなら︑賃上げに固執する被用者が果たしているであろうか︒組合はこの主張 NLRB対トルーイット製造会社事件︵連邦最高裁︑

(10)

情報を組合員から集めることはできないであろう︒﹂ を裏付ける情報を手に入れなければ︑使用者の主張が真実かどうかを判断することができない︒注意深い経営弁護士なら︑トルーイット事件の二の舞になるのを避けるためには︑交渉の場でどのように言うのが最善かを依頼人に助言するであろう︒

さらに︑最高裁はが

NLRB

ACME

工業会社事件︵連邦最高裁︑

では︑最高裁は︑組合が労働協約を締結するのに必要な賃金その他の労働条件の情報を提供するよう使用者に求めた NLRB

の命令を支持した︒この情報提供要求に関しては︑

ないにもかかわらず︑使用者の情報公開義務

(d ut yto  di sc lo se)

が認められた︒このような判断は驚くにあたらない︒

なぜなら︑トルーイット事件におけるより一層明らかなように︑この事件では現在の賃金率を確認することができな ければ︑組合は交渉要求を明確にすることができないからである︒交渉単位が大きい場合には︑組合は︑このような

情報公開義務の範囲

NLRB

事件︵連邦最高裁︑

トルーイット事件の場合と異なり︑使用者の意見表明が

﹁しかし︑団交に関する情報を組合に提供する義務は決して無制限のものではない︒デトロイト・エジソン会社対

( 7 )  

一九七九年︶で︑最高裁は︑会社が被用者の雇用と昇進のために使っている試験問題集 と解答用紙を組合に提供する必要はない︑と判示した︒試験の秘密を守りたいとの会社の配慮を

NLRB

とは異なり

最高裁は優先したのである︒最高裁はまた︑個人の試験結果は︑関係被用者の同意がない場合は︑会社は公表しなけ ればならないものではない︑と判示した︒被用者のプライバシーは至上の価値を有するものとされた︒

(1

0

( 6 )  

一九六七年︶で類似の理論を用いた︒同事件

(11)

わる情報等である︒

団交中の労働条件の一方的変更

﹁カッツ事件では︑団交が進行中に︑使用者が一方的に労働条件を変更した

三九八

( ‑

00

) 

情報を求める組合の要求で論議の的となっているものは他にもある︒使用者は︑例えば︑次のような情報を提供す るのをためらうであろう︒即ち︑組合が仲裁裁定で勝利するのに役立つような情報︑使用者が雇用において人種・性 差別の禁止に違反しているとして争われている訴訟を有利に導くような情報︑あるいは使用者の労務管理能力にかか トルーイット事件では︑たとえ使用者が合意に達したいとの主観的願望があったとしても︑交渉義務違反があると

認定された︒使用者が協約の締結を求めていても団交拒否にあたるとされたもう︱つのケースは︑使用者がその被用 者を代表する組合と一度の団交も経ることなく︑雇用条件を変更してしまった場合である

( 8 )  

かったし︑交渉も行き詰まっている訳ではなかった︶︒使用者が一方的に変更したのは病気休暇制度であった︒その

全体的影響が交渉単位内の被用者にとって有利なものか不利なものかは定かではなかった︒最高裁は︑これを次のよ うな理由で非難した︒即ち︑その一方的変更をある被用者は改善とみるが︑他の被用者は手当の減額とみており︑そ の結果︑組合内部に対立が生じ︑本件変更に関する組合の交渉能力が弱体化されることになる︑と︒使用者はまた︑

一方的に賃金を引き上げた︒労使当事者はその頃︑賃上げをめぐって交渉中であったが︑この一方的に導入された賃

金システムは︑以前に組合に提示され︑組合が拒否したものよりも気前のよいものであった︒最高裁の見解によれば︑

Jの変更には組合は同意していな

(N

LR

B対カッツ事件

(12)

のアドバイスの裏付けとなるものがある︒ これら事実は使用者の悪意を証明する充分な証拠となり︑第

8条国項⑤号違反の認定を正当化する︒﹁団交が行き詰

まった後でさえ︑使用者は交渉の場で組合に提示した以上の賃上げを提案することが許されるライセンスをもってい ない︒なぜなら︑このような行為は組合と協約を締結したいとの誠意ある願望と当然に矛盾することになるからであ る︒﹂しかし︑使用者は︑組合に通告し協議した後であれば︑その同意を得ずとも︑組合が低すぎるとして退けたも

NLRB

は経済的武器の適切さに関して判断することができないことを確認したが︑カッツ事件では使

用者は経済的闘争

( e c o

n o m i

c w a

r f a r

e )  

の域を超える行為を行っていると判示した︒最高裁は︑これに続いて次のよ

うな判断を示した︒即ち︑﹃

NL

RB

( B o a

r d )

は︑実質的に団交拒否にあたる行為︑実質的な協議を直接に妨害するよ うな行為︑または合意に達するのを望んでいない意思を示す行為に対しては是正を命ずる権限が与えられている︒﹄

一方的引き下げのいずれもが︑第8条い項固号に違反する︒これに対して

使用者側から次のような批判がなされた︒即ち︑このような見解をとると︑例えば︑毎年七月一日に賃上げをしてき た使用者らが︑たまたま今年はその時期に︑団交が開催中であるといった場合︑これらの使用者はとりわけ困難な状 況に追いやられることになる︒なぜなら︑定期的賃上げを停止すれば労働条件の一方的変更と見られ︑他方︑賃上げ につき額の点で裁量の余地が残されている限り︑賃上げを実施すればやはり

NLRA

違反の責任を問われるおそれが

あるからである︒使用者のとるべき最善の途は︑賃上げが機械的になされる場合にはこれを行い︑時期および額の点 で裁量の余地があの場合には︑交渉中はこれを行わない︑ということと思われる︒カッツ事件判決の判示の中にはこ

このように労働条件の一方的引き上げ︑ のと同一の賃上げ案を被用者に提示することは許される︒

(

0

1)

 

(13)

のための特別先任権制度

(s up er se ni or it y)

および苦情手続を停止することは許されていない

(N

LR

B対コーン製

( 9 )

1 0 )

 

一九六七年︺︑造船労働組合対NLRB事件︹第三控訴裁︑一九六三年︺︑ヒルトン・デイビ

0

年 ︺ ︶ ︒

NLRBの命令集および控訴裁の判例集の多くのページを占めている︱つの交渉戦術は︑ジェネラル・エレクト

リック会社の

対ジェネラル・エレクトリック会社事件︑︹第二控訴裁︑

渉戦術である︒会社は︑下級監督者に対し︑労働者の要求︑被用者が期待する手当の種類や程度に関する情報を提供

するように求めることから始める︒こうして得られた情報は︑そのコストやその他経営上もつ意義について検討され︑

このようにして労働協約条項全体にわたる会社提案が作成される︒この提案はついで大々的に広報される︒その目的

は︑提案が賢明で公正であることを一般公衆︑特に

G.E

社の被用者に納得させることにある︒団交の場では︑会社

は直ちに全提案を示し︑﹃断固たる︑公正な提案(^^

f ir m f a ,   i r   o ff e r "

)

﹃ブールワーリズム

ス化学会社事件︹NLRB

(

10

二 ︶

労使間の協約が期間満了により失効すると︑協約上の雇用条件を維持する契約上の義務はなくなる︒しかし︑カッ

ツ事件判決は︑雇用条件を変更する以前に団交を行い︑これを行き詰まり状態になるまで続けることを求めている︒

NLRBは︑期間満了した協約のすべての条項が団交継続中は維持されねばならない︑とは判断していない︒

ユニオン・ショップおよびチェック・オフ条項を使用者が一方的に変更することは認められてきた︒他方︑組合役員

粉所事件︹第四控訴裁︑

(N

LR

B 

( ( b ou lw ar ei sm

"

)

ー一発回答交渉ー﹄として知られている戦術である

( 1 2 )  

一九五九年︺︶︒これは要するに︑以下の諸要素からなる交 関法第四六巻第四・五・六号

という立場をとる︒即ち︑会社は︑組合がこ

00

(14)

ブールワーリズムを適法とする見解は︑これを団交における一っの発明以上のものではない︑と主張した︒即ち︑

低い︑受け入れがたい提案からはじめ︑次第に妥協を重ね︑交渉の最後の段階になってようやく現実的な提案がなさ

れる︑というこれまでの儀式的な交渉を拒否するということである︒会社の広報活動は︑許された経済的武器であり︑

N L R

A8

条伺項の言論の自由条項によって保護されると主張する︒また︑

NLRA

8

NL

RB

(B

oa

rd

)は交渉において譲歩を求めることはできないと規定しており︑プールワーリズムの﹃断固たる︑公正な提

案﹄という態度はこれにより保護される︑と考えている︒ジェネラル・エレクトリック会社はもはやプールワーリズ

ムをとってはいないが︑これを検討することは︑誠実交渉の概念の底を流れる理論を検討することになるから有益で

ある︒この戦術のどの部分も一っ︱つをとれば︑これを違法である︑あるいは違法とされるべきである︑ということ

は困難である︒おそらく︑もっとも議論のあるのは﹃断固たる︑公正な提案﹄という姿勢である︒先の第二控訴裁の

事件で反対意見を述べた裁判官は︑ブールワーリズムを非難することは︑次のような組合側の戦術を否定することに

なり︑よくないと指摘している︒問題となる組合の戦術とは︑組合がある地域に新規参入する使用者に対して組合が させることになる︒

四〇 の提案を裏付けるデータに間違いがあることを示さない限り︑提案を変更しない︑というのである︒

プールワーリズムは︑いくつかの理由で批判された︒会社の一般公衆に対する姿勢は︑交渉の対象となっているす

べての事項について︑﹃自らをこれ以上妥協できないぎりぎりの立場にあるものとして描き上げ﹄︑心を閉ざして交渉

にのぞむことを非難された︒また︑被用者と直接交渉を行い組合を避けているようにも見られた︒そして︑提案を裏

付けるデータを会社の方が組合より手に入れやすい立場にあることが︑組合を交渉の場で二流の市民の地位に甘んじ

(

10

三 ︶

(15)

定めた標準協約

(s

ta

nd

ar

ud ni on o l   c l e c t i v e   ba

rg

ai

ni

ng

  ag

re

em

en

t)

 

(

10

四 ︶

に署名せよと要求することである︒例えば︑建

設業の組合は︑あの地域に新規参入してきた使用者に対してその地域の他の建設業者が締結しているものよりも有利

な協約を結ぶことを許さないという立場を普通とっている︒それは︑新規参入者を競争上有利な不公正な立場にたた

せないためである︒多くの者はこの戦術を適法と考え︑それは組合の経済的利益を確保するための必要な手段として

支持されているが︑中には︑これは交渉の場での閉じられた心を示し︑従って第8条固項③号に違反すると主張する

団体交渉の対象事項

﹁労働組合がなければ︑労使間の不文の雇用契約に関する黙示の条項によって︑使用者は雇用条件に対する絶対的

な裁量権

( ab s o lu t ed i s c r e t i o n )

を有することになる︒会社は好むままに人を採用し︑理由の当不当︑有無に関係な

しに人を解雇することが許される︒これが期間の定めのない雇用契約の法理

(e mp lo ym en

t

a t   , 

w i l l  

d oc t r in e )  

被用者を解雇から保護する州裁判所の判例の数は増えているが︑これらの事件はしばしば特殊な事情︑例えば解雇が

公序

( pu b l ic p ol i c y)

に反する場合に関するものであった︒期間の定めのない雇用契約のもとでは︑使用者の裁量権

は︑これを制限する法の定めがある場合は別として︑工場で働いている被用者に影響を与えるすべての事項に及ぶの

1雇用契約における労働条件の決定

関法第四六巻第四•五・六号四〇

(16)

NLRA8条い項⑥号および同条囮項は︑使用者に対して﹃賃金︑労働時間︑その他の雇用条件﹄に関して被

用者の労働組合と交渉することを要求している︒使用者は︑被用者に影響を及ぼしているすべての事項について組合

と交渉しなければならないのであろうか︒画期的な事件であるNLRB対ボーグ・ワーナー社ウースター部事件︵連

( 1 3 )  

一九五八年︶において︑最高裁はこれを否定した︒この事件では︑使用者は次の条項に組合が同意しない

限り労働協約に署名することを拒否するとの態度をとっていた︒即ち︑使用者の最終提案に関して組合員および非組

合員がスト開始前に秘密投票する旨の条項と︑協約の当事者をNLRBによって認証されている国際組合から同組合

の認証していない支部に変更することに同意する旨の承認条項である︒

NLRBは︑これらの条項のいずれかに使用者が固執すれば︑第8条い項固号に違反する交渉拒否にあたると判断

した︒最高裁はこれに同意して次のように判示した︒いずれの条項も第

8

条国項固号にいう義務的交渉事項 (m an da to ta ry u   s bj ec t  o f  b ar ga in in g)

 ではない︒それもかかわらず︑使用者が︑これらの条項に組合が賛成すること

を労働協約締結の条件にしたことは︑第8条い項固号に違反する︑と︒具体的にいうと︑まず︑投票条項は︑組合と

使用者の関係にかかわるもので︑雇用条件にかかわるものでないから義務的事項ではない

ノー・ストライキ条項の一形態とは見なかった︶︒この条項はまた︑被用者を代表する組合の権利を侵害するものと

も考えられた︒なぜなら︑これによって︑使用者は実質的に組合とではなく被用者と交渉することが可能となるから

である︒次に︑承認条項も義務的事項ではないが︑NLRAは︑会社に対して認証された被用者の代表と交渉するこ

とを義務づけており︑これは︑使用者が組合に対し放棄することを求めることができない義務である︒

2妥結に条件を付することと誠実団交義務

0

(

10

五 ︶

︵最高裁は︑この条項を

(17)

交渉範囲を拡大し︑こうして使用者の裁量権を制限することを望むのはたいていの場合組合であるから︑ポーグ・

ワーナー事件判決は結果的には交渉事項を拡大しようとする組合の権限を制限したことになる︒この判決には︑活発

な議論が寄せられた︒これに賛成する見解は︑判旨は法律の文言に従ったものであり︵しかし︑法律の文言は必ずし

も明らかでない︶︑また交渉対象から周辺的な事項を除くことによって合意を見るのを容易にした︑という︒加えて︑

労使のいずれかが圧倒的に優勢な経済力をもついる場合には交渉に有害な結果を生むおそれがあるが︑ボーグ・ワー

ナー事件判決は︑その経済的悪影響の及ぶ範囲を小さくするものであるとも指摘されている︒

これに対して︑ボーグ・ワーナー事件判決については︑そのもたらす結果に対して次のような危惧を抱く意見も強

かった︒即ち︑これにより︑交渉議題が率直に議論されるこくなく地下に追いやられることになる︒というのは︑そ

の提案が義務的事項でないと退けられた組合は︑その後は義務的事項に関して強硬な態度をとるかもしれない︒特定

の組合要求を退けるに足る充分な経済力を有している使用者は︑義務的事項をそうでないとして反対し︑本来なら不

要なNLRBの介入を招くことになるかもしれない︒また︑NLRBと裁判所は︑いずれも労使関係の充分な実務経

験をもったスタッフを有していないから︑交渉事項が義務的事項か否かを区別する専門的能力に欠ける︑との非難も

なされた︒さらに︑法律上の義務的事項に関する定義自体がNLRBと裁判所を指導する上で充分に精確なものでは

ない︑との意見も見られた︒義務的事項とそうでない事項との区分は︑問題となっている産業が異なれば違った線引

きがなされるべきでなる︒のみならず︑同一産業でも︑当事者の利害および重要性の変化を反映して︑時とともに変

わることもあろう︒ところが︑この点︑NLRBは一般的に判断せざるをえないので︑義務的事項がどうかの判断は︑

産業間の違い︑また同一産業内の時間的変化を反映しないものとなるおそれがある︒﹂

関法第四六巻第四・五・六号

0

(

10

六 ︶

(18)

も効果的な方策として議会によって導入された枠組み

こ ︒ ﹁ボーグ・ワーナー事件判決だけでは︑

NLRB

が特定の組合の要求事項を義務的事項

(m

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yo

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)

か非義務的

事項

(n on ma nd ay or y) かをいかに判断すべきかは︑よくわからない︒これ以上の判断基準が︑議論のあるファイ

( 1 4 )  

( c o n t r a c t i n g u t   o ) が義務的交渉事項にあたるかどうか︑ということであった︒同事件の事実 は︑当該交渉事項を義務的であると認定するに充分なものがあった︒使用者が交渉を経ずに下請けに出そうとしてい た仕事は︑使用者の工場でなされねばならなかった保全の仕事であったが︑使用者は下請労働者の賃金が交渉単位内 の被用者の賃金より安かったので︑労働コストを削減しようとして下請に出したである︒その仕事を下請に出した後︑

使用者は保全被用者はもはや雇用しないこと︑およびこれらの被用者のための新交渉は意味がない︑との立場をとっ 最高裁は︑下請化が義務的交渉事項であると認定する理由をいくつか挙げた︒第一に︑法律の規定する﹃扉用条

件﹄という用語に文字通り該当する︒下請化は被用者の雇用の終了をもたらすものであるから︑この結論に到達する ことは容易であった︒第二に︑下請化を義務的交渉事項であると宜言することは︑本法の目的を実現することにか なっていたからである︒なぜなら︑この宣言の結果︑﹃労使双方が重大な関心をよせる問題を︑産業平和の実現に最 に︑最高裁は︑他の使用者の産業慣行を観察し︑下請化を制限することは多くの協約で普遍的であると認定した︒し

かし︑最高裁は注意深く判旨を制限し︑同判決の及ぶのは︑代替される交渉単位内の被用者と雇用条件が類似し︑か 部を下請けに出すこと ヤーボード紙製品会社対

NLRB

事件︵連邦最高裁︑ 3仕事の下請化と義務的交渉事項

I I

0 の中に取り込むことになる﹄からである︒第三

(

10

七 ︶

で示された︒そこでの争点は︑使用者の仕事の

(19)

出していたからである︒ ホーム

(

10

八 ︶

つ同一の仕事を行う被用者を雇用する独立の下請業者に限定されるとし︑さらに︑同判決が他の形態の下請にも及ぶ

スチュアート裁判官は同意意見を書いたが︑これは後に多数意見よりも影響力をもつこととなった︒同裁判官は︑

多くの経営上の決定が労働者の職の安定に影響を与えるであろうが︑決定のうちのあるものはその安定に間接的で

はっきりしない影響しか与えない︑と述べた︒労働節約機械への投資︑財産の売却︑事業の廃止等の例を引きながら︑

同裁判官は︑﹁本日くだされた最高裁判決は︑このような経営上の決定に関し団交義務を課するものと解釈されるべ

きではない︒﹂このような決定は企業家による支配の根幹にかかわるものである︒投下資本の使途および企業の基本

的行動範囲に関する決定はそれ自体︑基本的には雇用条件にかかわるものではない

ファースト・ナショナル・メインテナンス会社対

NLRB

事件︵連邦最高裁︑

ヨーク市内で事業を営む顧客に対して消掃およびメインテナンスサービスを提供する会社であった︒同社は顧客のそ

れぞれに対して別個の被用者を雇用し︑事業場間で人事異動をする顧客のうちの一っが︑ブルックリンのナーシング

パーク社の仕事では赤字を出していたように思われる︒というのは︑グリーンパーク社に対して契約の終了の通知を

この頃︑組合は︑グリーンパーク社で働くファースト・ナショナル社の被用者の組織化に成功をおさめつつあった︒

︑ ︒ ︶ ︒

であるグリーンパーク・ケアー・センターであった︒ファースト・ナショナル社はグリーン

NLRBによって被用者の代表として認証されたが︑同社はグリーンパーク社との契約の終了の決定を組合 と判断されることは不本意であると表明した︒

( 1 5 )  

一九八一年︶の使用者は︑

︵従って︑義務的交渉事項ではな 0

(20)

に告げもしなかった︒これについて交渉することもなかった︒同社との契約終了の結果︑そこで働いていた被用者ら

は仕事を失った︒NLRBは︑ファースト・ナショナル社は第8条い項⑥号および①号に違反したと認定した︒即ち︑

契約終了の決定は義務的交渉事項であるからこの決定につき交渉しなければならないのに︑同社はこれを行わなかっ

最高裁はこれを破棄した︒最高裁が

NLRB

の命令を破棄する場合の常套手段であるが︑

NLRB

の専門性

(B oa rd 's   ex pe rt is e)

には触れないというやり方をとって︑多数意見は次のように理論を展開した︒経営上の決定の

中には︑雇用関係への影響が間接的で弱いが故に明らかに非義務的交渉事項といえるものがある︒例えば︑宣伝︑製

品のデザインと型式および財務措置である︒しかし︑その決定の中には︑ほとんどが専ら労使関係の側面に関するも

のがあるから︑それは明らかに義務的交渉事項といえるものがある︒例えば︑レイオフならびに復職の順番︑仕事の

割当および就業の規則である︒第三の種類の決定として︑雇用に直接の影響はもつけれども経営上の関心が雇用関係

とは全く別の経済的利益性に向けられているものがある︒例えば︑事業を継続するかどうかといった決定である︒し

かし︑これは︑﹃組合および組合員にとっては重要で差し迫った関心﹄でもある︒

0 法律の目標は︑労使双方にとって重大なかかわりのある事項は労使を交渉のテープルにのせることにある︑と最高裁は考えた︒しかし︑そのような目標は︑﹃交渉の対象として提案されている事項が︑交渉手続を通じて解決するのに馴染むものである場合に限って︑適切なものとなる︒使用者は︑事業経営で利澗をあげるのに必要な範囲で︑交渉手続による制限から開放されていなければならない︒また︑使用者にとっては︑不当労働行為の烙印を押されるのを心配せずに決定をなしうるのはいかなる場合か︑予めある程度確実に判断できることが必要である︒⁝⁝雇用継続の

たからである︒控訴裁判所はNLRBの命令を支持した︒

(

10

九 ︶

(21)

うために用いられることもあろう︒﹂

(

0

) 

可能性に対して相当の影響を及ぼす経営上の決定に関する交渉は︑労使関係および交渉手続にとってのメリットが︑

事業経営に対する負担にまさる場合に限って︑承認されるべきである︒﹄﹂

部分的閉鎖と義務的交渉事項

﹁最高裁はついでこれらの原則を本件に適用していった︒部分的閉鎖

( p a r

t i a l

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  の場合の組合の関心は︑主

としてこの閉鎖を遅らせるか︑止めさせることにある︒しかし︑この閉鎖が非義務的交渉事項であると判断されても︑

組合が保護を全く失うわけではない︒部分的閉鎖の影響について交渉する権利を有することは明白であり︑また︑反

組合的動機による閉鎖

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8条い項③号により禁止されている︒このよ

うな状況における使用者の関心は︑もっと複雑である︒﹃労働コストの問題が経営悪化および閉鎖決定の主要な要因

である場合には︑経営継続が利澗をあげうるものとなるような妥協策を求めてすすんで組合と協議する気持ちになる

であろう︒⁝⁝また︑使用者が事業機会をつかみ︑緊急事態に対応するためには︑スピード︑柔軟性および秘密が大

いに必要となることもあろう︒この種の決定を義務的交渉事項に分類すると︑組合は決定を遅らせる強力な武器を手

に入れたことになろう︒この武器は︑組合が企図していた問題の効果的な解決とは無縁な仕方で使用者の意図を損な

最高裁はついで︑現行の労働協約の条項でこの種の決定に関し団交を求めているのは稀である︑ことを指摘した︒

最高裁はまた︑使用者が直面している経済的必要性によって結論を左右するという判断基準の採用を拒否した︒とい

うのは︑このような基準は︑タイミングが重要となりそうな状況下では︑交渉義務のあることに関し使用者に充分な

関法第四六巻第四・五・六号

0

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