地 方 公 共 団 体 の 課 税 権
渋 谷 秀 樹
は じ め に︱
︱問 題の 所在 一 租税 に関 する 憲法 の規 定の 解釈 二 地方 政府 の課 税権 の根 拠 三 理論 の適 用︱
︱臨 時特 例企 業税 につ いて 四 むす びに かえ て は
じ め に︱
︱問 題の 所在 憲法 九四 条は
、﹁ 地方 公共 団体 は、 その 財産 を管 理し
、事 務を 処理 し、 及び 行政 を執 行す る権 能を 有し
、法 律の 範囲 内で 条例 を制 定す るこ とが でき る﹂ と規 定す る。 この 規定 を受 けて
、理 論的 に、 地方 公共 団体 の権 能を
、自 治 組織 権、 自治 行政 権、 自治 財務 権、 自治 立法 権に 分類 する のが 一般 的で
( )
ある
。さ らに 自治 司法 権と いう べき 権能 を
1
もつ か否 かの 議論 も
( )
ある が、 地方 分権 改革 と連 動し て、 地方 公共 団体 の自 治課 税権 の根 拠と 範囲 が改 めて 問わ れる
2
よう な事 案が 目に 付く よう にな った
。近 時の 例と して
、神 奈川 県が 法定 外普 通税 とし て二
〇〇 一︵ 平成 一三
︶年 三 月に 制定 した 臨時 特例 企業 税を めぐ る訴 訟が ある
。こ の訴 訟の 第一 審判 決︵ 横浜 地判 平成 二〇 年三 月一 九日 判時 二〇
二〇 号二 九頁
︶は
、同 税は 地方 税法 の規 定の 趣旨 に反 し違 法で ある とし たが
、控 訴審 判決
︵東 京高 判平 成二 二年 二月 二五 日判 時二
〇七 四号 三二 頁︶ は、 第一 審判 決を 取り 消し
、同 税は 適法 であ ると した
︵二
〇一
〇年 一二 月一 日、 現在 上 告中
︶。 この 訴訟 をめ ぐり
、い くつ かの 論考 が出 され て
( )
いる が、 憲法 論に まで 立ち 入っ て論 じた もの は少 ない よう
3
に思
( )
える
。本 稿は
、憲 法の 定め る租 税に 関す る規 範お よび 地方 自治 の原 理に さか のぼ って この 問題 に関 する 基本 的
4
論点 を概 観し よう とす るも ので ある
。
( ) 詳細 は、 塩野 宏・ 行政 法Ⅲ 一五 六頁 以下
︵第 三版
、二
〇〇 六年
︶︵ 以下
、﹁ 塩野
・行 政法
Ⅲ﹂ と引 用︶
、宇 賀克 也・ 地方 自治 法概 説八 七頁 以 下 1
︵第 二版
、二
〇〇 七年
︶。 ( ) 渋谷 秀樹
・憲 法六 九五 頁︵ 二〇
〇七 年︶ 参照
︵以 下、
﹁渋 谷・ 憲法
﹂と 引用
︶。 ( 2 ) 第一 審判 決の 評釈 類と して
、高 木光
・自 治実 務セ ミナ ー四 七巻 一〇 号四 頁、 一一 号四 頁︵ 二〇
〇八 年︶
、人 見剛
・自 治総 研三 六九 号二 六頁
︵ 3 二〇
〇九 年︶
、吉 村政 穂・ 自治 研究 八六 巻三 号一 二六 頁︵ 二〇 一〇 年︶
、斎 藤誠
・ジ ュリ スト 一三 九八 号四 六頁
︵二
〇一
〇年
︶、 金子 宏・ 税経 通信 六四 巻二 号一 七頁
︵二
〇〇 九年
︶、 岡田 正則
・早 稲田 法学 八四 巻二 号二 六七 頁︵ 二〇
〇九 年︶
、渋 谷雅 弘・ 地方 税六
〇巻 九号 二頁
︵二
〇〇 九年
︶、 松村 一成
・別 冊判 例タ イム ズ二 五号
︵平 成二
〇年 度主 要民 事判 例解 説︶ 二五
〇頁
︵二
〇〇 九年
︶、 村上 正・ 税研 JT R一 二五 巻三 号一 九〇 頁、 佐藤 竜一
・速 報判 例解 説︵ 法学 セミ ナー 増刊
︶四 号二 四一 頁︵ 二〇
〇九 年︶
、品 川芳 宣・ TK C税 研情 報一 七巻 六号 五三 頁︵ 二〇
〇八 年︶ があ る。 控訴 審判 決の 評釈 類と して
、占 部裕 典・ 税六 五巻 六号 一二 頁︵ 二〇 一〇 年︶
、品 川芳 宣・ TK C税 研情 報一 九巻 四号 一六 二頁
︵二
〇一
〇年
︶、 同・ 週刊 T&
Am as te r二
〇一
〇年 八月 二日 号、 吉村 政穂
・ジ ュリ スト 一四
〇四 号七 四頁
︵二
〇一
〇年
︶、 同・ 政策 法務 Fa ci li ta to r 二〇 一〇 年七 月号
、水 野忠 恒・ 税経 通信 六五 巻五 号三 八頁
︵二
〇一
〇年
︶、 宇賀 克也
・法 学教 室三 五六 号三 二頁
︵二
〇一
〇年
︶、 武田 昌輔
・月 刊税 務事 例四 二巻 五号 一頁
︵二
〇一
〇年
︶、 依田 孝子
・税 理五 三巻 六号 一七 七頁
︵二
〇一
〇年
︶、 渋谷 雅弘
・税 理五 三巻 一〇 号一 九四 頁︵ 二〇 一〇 年︶
、三 木義 一・ 自治 総研 三六 巻一
〇号 四八 頁︵ 二〇 一〇 年︶ があ る。 ( ) なお
、大 林文 敏﹁ 租税 法律 主義 と地 方税
﹂大 石眞
=石 川健 治編
・憲 法の 争点 二九 二頁
︵二
〇〇 八年
︶参 照。 4
一 租税 に関 する 憲法 の規 定の 解釈 自治 課税 権の 問題 を考 察す る前 提と して
、ま ず現 行憲 法の 租税 に関 する 条項
、す なわ ち八 四条 と三
〇条 の内 容を 確認 する 必要 があ る。 憲法 八四 条は
、﹁ あら たに 租税 を課 し、 又は 現行 の租 税を 変更 する には
、法 律又 は法 律の 定め る条 件に よる こと を必 要と する
﹂と し、 いわ ゆる 租税 法律 主義 を定 める
。ま た憲 法三
〇条 の﹁ 国民 は、 法律 の定 める とこ ろに より
、 納税 の義 務を 負う
﹂と する 規定 も、 法律 の定 めが なけ れば 納税 義務 を負 わな いこ とを その 趣旨 とす るの で、 合わ せ て、 主と して イギ リス にお いて 中世 以降 国王 と封 建諸 侯と の間 で、 後に 治者 と被 治者 一般 の間 で妥 当す ると され て きた
﹁代 表な けれ ば課 税な し﹂ とい う政 治原 理を 継承 し、 具体 化す るも ので あり
、政 府の 財政 権力 作用 を被 治者 の 代表 の集 う議 会が 統制 する 必要 性を その 根拠 とし てい る。 明治 憲法 六二 条一 項に 同旨 の規 定が ある が、 現行 憲法 八四 条に は、 明治 憲法 六三 条に ある
﹁現 行ノ 租税 ハ更 ニ法 律ヲ 以テ 之ヲ 改メ サル 限ハ 旧ニ 依リ 之ヲ 徴収 ス﹂ と同 旨の 規定 はな い。 しか し、 現行 憲法 八四 条の 文言 表現 から し て、 既存 の税 制の 維持 につ いて は法 律の 規定 また は法 律の 規定 によ る変 更は 不要 とし
、新 規課 税と 既存 の税 制の 変 更の みに つき 法律 また は法 律の 規定 によ る変 更を 要す ると した もの と解 され る。
ઃ
﹁租 税﹂ とは 何か 本稿 のテ ーマ は地 方公 共団 体の 課税 権で ある
。し かし
、こ の問 題を 解明 する 際に まず 憲法 八四 条に 規定 する
﹁租 税﹂ とは そも そも 何を 指す のか を明 らか にし なけ れば なら ない
。
﹁租 税﹂ とは
、政 府が その 活動 の経 費に 充当 する ため に、 その 統治 に服 する 私人 等か ら強 制的 に徴 収す る金 銭ま
たは 財物
︵財 貨︶ をい う。 税の 種類 とし て、 労役
︵夫 役︶ の徴 用︵ 租庸 調で いう 庸︶ もあ るが
、こ れは 憲法 一八 条に よっ て禁 止さ れ、 税は
﹁租
﹂︵ 租に 代わ る調 も含 む︶ つま り財 貨に 限定 され る。 次に
、形 式は 租税 では ない が、 政府 が強 制的 に賦 課す る金 銭も
、﹁ 租税
﹂に 含ま れる か否 かが 問題 とな る。 明治 憲法 六二 条二 項の
﹁但 シ報 償ニ 属ス ル行 政上 ノ手 数料 及其 ノ他 ノ収 納金 ハ前 項ノ 限ニ 在ラ ス﹂ に対 応す る規 定が 現 行憲 法に はな いか らで ある
。 そこ で、
﹁国 が、 ある 特定 の個 人に 対し て何 らか の役 務を 提供 し、 これ に対 する 反対 給付 とし て要 求す る一 定の 対価
︵手 数料
・使 用料 など ま︶ でを
、こ うし た﹃ 租税
﹄の 中に 含め て、 課税 法律 主義 を適 用す べき 合理 的理 由は 見 当た らな い﹂ とす る考
( )
え方
︵租 税狭 義説
︶も ある
。こ れに 対し て、
﹁固 有の 意味 の﹃ 租税
﹄に 属す るも ので なく と
5
も、 すべ ての 公権 力に より 一方 的に 賦課
・徴 収さ れる 金銭 につ いて は、 本条 の適 用が ある と解 すべ きで ある
﹂と す る考
( )
え方
︵租 税広 義説
︶が むし ろ有 力に 説か れ、 財政 法三 条は この 趣旨 を確 認し た規 定と され た。
6
最高 裁は
、保 険税 とし てで はな く保 険料 とし て徴 収す る国 民健 康保 険条 例が 問題 とな った 事案 にお いて
、﹁ 国又 は地 方公 共団 体が
、課 税権 に基 づき
、そ の経 費に 充て るた めの 資金 を調 達す る目 的を もっ て、 特別 の給 付に 対す る 反対 給付 とし てで なく
、一 定の 要件 に該 当す るす べて の者 に対 して 課す る金 銭給 付は
、そ の形 式の いか んに かか わ らず
、憲 法八 四条 に規 定す る租 税に 当た ると いう べき であ る﹂ と
( )
した
。こ の判 決は
、形 式的 に租 税と され るも のは
7
仮に 反対 給付 であ って も﹁ 租税
﹂に あた ると
( )
した ほか
、強 制加 入と 強制 徴収 は、 社会 保険 とし ての 国民 健康 保険 の
8
目的
・性 質に 由来 する もの とし
、保 険料 と保 険給 付を 受け 得る 地位 との 牽連 性は
、立 ち切 られ てお らず
、反 対給 付 とし ての 性格 は失 われ てい ない とし た。 これ は、 租税 狭義 説を 採っ たも のと 解さ れる
。 もっ とも
、こ の判 決は
、﹁ 憲法 八四 条に 規定 する 租税 では ない とい う理 由だ けか ら、 その すべ てが 当然 に同 条に 現れ た上 記の よう な法 原則 のら ち外 にあ ると 判断 する こと は相 当で はな い﹂ とし てい る。 実際 の判 断に あた って
は、
﹁租 税以 外の 公課 であ って も、 賦課 徴収 の強 制の 度合 い等 の点 にお いて 租税 に類 似す る性 質を 有す るも のに つ いて は、 憲法 八四 条の 趣旨 が及 ぶと 解す べき であ るが
、そ の場 合で あっ ても
、租 税以 外の 公課 は、 租税 とそ の性 質 が共 通す る点 や異 なる 点が あり
、ま た、 賦課 徴収 の目 的に 応じ て多 種多 様で ある から
、賦 課要 件が 法律 又は 条例 に どの 程度 明確 に定 めら れる べき かな どそ の規 律の 在り 方に つい ては
、当 該公 課の 性質
、賦 課徴 収の 目的
、そ の強 制 の度 合い 等を 総合 考慮 して 判断 すべ きも ので ある
﹂と した ので ある
。 この 判決 が、 対価 性を
﹁租 税﹂ の判 断基 準と する 点に は、 合理 性が ある
。し かし
、そ れ以 外の 金銭 等の 強制 徴収 につ いて も、 法律 また は条 例に 拠る べき 場合 があ り、 それ をケ ース
・バ イ・ ケー スの 判断 に委 ねる 点は
、今 後の 判 断基 準の 明確 化と いう 点で 問題 を残 した
。こ の点 につ いて は、 必ず しも 法律 また は条 例で 定め るこ とを 要さ ず、 憲 法八 三条 の問 題と とら えて
、決 定手 続を 法律 また は国 会の 議決 で定 める こと まで 容認 すべ きと する 考
( )
え方 に合 理性
9
があ ると いう べき であ る。 最後 に、 本条 にい う﹁ 租税
﹂と は国 税の みを 意味 する のか
、そ れと も地 方税 をも 含む のか
、の 問題 があ る。 この 判決 にお いて 最高 裁は
、﹁ 国又 は地 方公 共団 体が
、課 税権 に基 づき
、そ の経 費に 充て るた めの 資金 を調 達す る目 的 をも って
、特 別の 給付 に対 する 反対 給付 とし てで なく
、一 定の 要件 に該 当す るす べて の者 に対 して 課す る金 銭給 付 は、 その 形式 のい かん にか かわ らず
、憲 法八 四条 に規 定す る租 税に 当た ると いう べき であ る﹂ とし てい るの で、 地 方税 をも 含む とす るが ごと くで ある
。こ のよ うな 解釈 が妥 当か 否か こそ
、本 稿の 結論 にか かわ ると ころ であ る。
﹁法 定﹂ の対 象 法律 によ って 定め なけ れば なら ない 事項 は、 租税 の実 体的 要件
︵課 税要 件︶
、す なわ ち納 税主 体と して の納 税義 務者
、課 税対 象と して の課 税物 件と その 帰属
、課 税基 準と なる 課税 標準
、税 額算 出の 割合
・料 率を 示す 税率 と、 租
税の 手続 的要 件、 すな わち 賦課
・徴 収手 続で
( )
ある
。
10
⒜
通達 変更 によ る課 税 法律 によ る課 税と の関 係で 問題 とな るの は、 まず 通達 変更 によ る課 税で ある。こ れが 問題 とな った 事案 にお い て、 最高 裁は
、﹁ 課税 がた また ま所 論通 達を 機縁 とし て行 われ たも ので あっ ても
、通 達の 内容 が正 しい 解釈 に合 致 する もの であ る以 上、 本件 課税 処分 は法 の根 拠に 基く 処分 と解 する に妨 げ﹂ はな いと
( )
した
。こ の事 案は
、旧 物品 税
11
法の もと で非 課税 対象 とし てき た物 件を 通達 によ る変 更で 課税 対象 とし たも ので ある が、 従来 の解 釈は 誤り とす る 通達 によ る変 更は 認め られ ると した ので ある
。し かし
、こ のよ うな 扱い は、 実質 的に 新た に納 税義 務を 創設 する も ので ある から
、憲 法八 四条 の﹁ 現行 の租 税を 変更 する
﹂場 合に 該当 し、 法律 によ るべ きで ある
。
⒝
﹁法 律の 定め る条 件に よる
﹂の 意味 憲法 八四 条の 規定 にあ る﹁ 法律 の定 める 条件 によ る﹂ とす る文 言の 意味 は必 ずし も明 確で はな い。 この 意味 につ いて
、関 税は 関税 法・ 関税 定率 法に よる が、 関税 は、 その 性質 上、 条約 の定 める とこ ろに よる 場合 があ るの で、 そ のよ うな 条約 によ る例 外を 想定 して いる とす る考 え方
︵条 約想
( )
定説
、︶ 課税 要件 の全 部に わた って 常に 法律 で定 めな
12
けれ ばな らな いと いう ので はな く、
﹁こ との 性質 上、 例外 的に は多 かれ 少な かれ 他の 法形 式へ の委 任が 許さ れる
﹂ とす る趣 旨と みる 考え 方︵ 委任 立
( )
法説
、︶
﹁法 律以 外の 規定 に基 づく 課税 も認 めら れな いわ けで はな い﹂ とす る趣 旨
13
とす る考 え方
︵例 外容
( )
認説
︶、 条例 その もの が﹁ 法律 の定 める 条件
﹂に ある とす る説
︵条 例条
( )
件説
︶が ある
。
14
15
本条 が、 国際 法上 の例 外の みを 想定 して 規定 され たと は想 定し がた いし
、ま た委 任立 法は 租税 固有 の問 題で はな く、 法律 一般 の問 題で ある から
、こ の文 言に こと さら
、こ の趣 旨を 読み 込む 必要 はな い。 委任 立法 説に よる と、 課 税要 件・ 課税 標準
・税 率・ 納税 義務 者等 につ いて の基 本事 項は 法律 で定 める 必要 があ り、 実際
、内 閣以 下の 行政 機 関の 定め る命 令に つい ては
、無 制限 な委 任を 定め るこ とが 許さ れな いと する のは 当然 のこ とで ある から であ る。 そ
して
、こ の説 をと ると
、現 に存 在す る関 税法 の規 定︵ 例え ば同 法三 条︶
、地 方税 法の 規定
︵例 えば 同法 三条
︶は
、委 任立 法を 許容 する 要件 をみ たさ ず、 違憲 と判 断せ ざる を得 ない こと とな ろう
。 これ に対 して
、例 外容 認説 は、 法律 によ って 大枠 を定 める
﹁枠 法﹂ また は﹁ 標準 法﹂ では ある もの の、 詳細 は他 の法 形式 が設 定す るこ とを 容認 する もの であ り、 例外 を容 認す る根 拠は 他に 憲法 の規 定ま たは 原理 に求 める 必要 が ある
。そ して
、関 税法 の規 定は 条約 の法 律に 対す る
( )
優位
︵憲 法九 八条 に︶
、ま た地 方税 法の 規定 は地 方自 治の 本旨
16
の中 に含 まれ る地 方統 治権
︵団 体自 治︶ の趣 旨︵ 憲法 九二 条︶ にそ の根 拠を 求め るこ とが でき
、現 行憲 法の 趣旨 に最 も適 うも のと 考え る。 なお
、条 例条 件説 は、 法律 の規 定中 に、 課税 に関 する
﹁条 件﹂ を﹁ 条例
﹂で 定め よ、 とい う 規定 のな い限 り、 条例 で地 方税 を定 める こと がで きず
、結 局こ の規 定自 体が
、条 例に 地方 税に 関す る事 項を 委任 し てい るこ とに なり
、委 任立 法説 と実 質的 に同 じこ とを 言う にす ぎな い。
અ
八四 条の
﹁法 律﹂ とは 何か 例外 容認 説を とれ ば、 八四 条自 体は 地方 公共 団体 の課 税権 の根 拠に なら ない こと にな り、 当然 に、 八四 条に いう
﹁法 律﹂ には 条例 は含 まれ ない こと に
( )
なる
。た だ、 これ まで の学 説・ 判例 は、 その よう に展 開し てい るわ けで はな
17
いの で、 以下
、こ の点 につ いて の問 題状 況を 概観 して おく
。そ もそ も、 憲法 八四 条に いう
﹁法 律﹂ は、 形式 的意 味 の法 律を 意味 する のか
。
⒜
形式 的﹁ 法律﹂説 本条 の﹁ 法律
﹂は 形式 的意 味の 法律 に限 定さ れる と解 する
︵法 律限 定説
︶と
、地 方政 府の 課税 権に つい て、 典型 的に は、 二つ の考 え方 がで てく るこ とに なる
。 その 第一 は、 地方 政府 の課 税権 は、 もっ ぱら 法律 によ って のみ 認め られ る、 すな わち 中央 政府 から 伝来 する と解
する もの であ る。 この よう な考 え方 をと ると きに は、 地方 政府 の課 税に も、 法律 によ って 地方 税に つき 規定 する 法 律、 すな わち 現行 制度 にお ける 法律 でい えば
、地 方税 法の 根拠 を必 要と し、 その 委任 の範 囲内 での み税 条例 を定 め なけ れば なら ない こと にな ると する 考え 方︵ 地方 税法 定説
︶に
( )
なる
。こ の説 をと ると
、本 条の
﹁租 税﹂ には 地方 税
18
が含 まれ るこ とに
( )
なる
。も っと も、 根拠 を定 める 法律 の条 例に 対す る拘 束の あり 方の 問題 はな お存 在し
、あ くま で
19
大枠 を定 める にす ぎな いも のな
( )
のか
、そ れと も厳 格に 細目 まで 規律 する
( )
のか につ き解 釈は 分か れる
。
20
21
これ に対 して
、そ の第 二は
、地 方政 府の 課税 権は
、本 来的 に地 方政 府に ある と解 する もの であ る。 この よう な考 え方 をと ると きに は、 本条 の規 定は
、﹁ 代表 なけ れば 課税 なし
﹂と いう 本条 に示 され た租 税に 関す る一 般原 則の 国 税に おけ る具 体化 と解 する こと にな るの で、 地方 税に 関し ても
、こ のよ うな 一般 原則 を本 条に 読み 込み
、こ の一 般 原則 が条 例に 準用 され ると 解す るこ とに なる
。そ して
、法 律の 根拠 また はそ の委 任は 不要 であ るが
、住 民代 表の 集 う地 方議 会の 制定 する 条例 に基 づい て、 租税 を課 税す べし とい うこ とに なり
︵租 税︹ 地方 税︺ 条例 主
( )
義説
︶、 法律 の
22
根拠 がな くて も、 地方 政府 は課 税で きる こと に
( )
なる
。も っと も、 憲法 九四 条は
、条 例は
﹁法 律の 範囲 内﹂ で制 定で
23
きる とす るの で、
﹁法 律の 範囲
﹂を 超え ない 限り とい う限 界に 服す るこ とに なる
。
⒝
条例 包含 説 憲法 八四 条の﹁法 律﹂ に条 例も 含ま れる と解 す
( )
ると
、同 条の
﹁租 税﹂ には 地方 税も 含ま れる こと に
( )
なる
。こ の考
24
25
え方 をと ると
、地 方政 府の 課税 権を 直接 的に 本条 にも 求め るこ とが でき るこ とに なり
、法 律の 根拠 がな くて も、 地 方政 府は 課税 でき るこ とに なる
。ま た、
﹁法 律の 範囲
﹂を 超え ない 限り とい う限 界に 服す るの は、 地方 税条 例主 義 と同 様で ある
。
( ) 大石 眞・ 憲法 講義
Ⅰ一 九六 頁︵ 第二 版、 二〇
〇九 年︶
︵以 下、
﹁大 石・ 憲法 講義
Ⅰ﹂ と引 用︶
。た だし
、﹁ 国民 の職 業生 活の ため にす る許 認可 5
など に際 して
、国 が手 数料
・免 許料 を徴 収す るの は、 一方 的な 賦課 とい う効 果を もつ ので ある から
、そ の限 りで
﹃租 税﹄ に準 じた 取扱 いが 必 要に なろ う﹂ とす る。 芦部 信喜
︵高 橋和 之補 訂︶
・憲 法三 四四 頁︵ 第四 版、 二〇
〇七 年︶
︵以 下、
﹁芦 部・ 憲法
﹂と 引用
︶、 佐藤 幸治
・憲 法一 七 九頁 以下
︵第 三版
、一 九九 五年
︶︵ 以下
、﹁ 佐藤
・憲 法﹂ と引 用︶ もほ ぼ同 旨。 ( ) 宮沢 俊義
︵芦 部信 喜補 訂︶
・全 訂日 本国 憲法 七一
〇頁
︵一 九七 八年
︶︵ 以下
、﹁ 宮沢
・全 訂﹂ と引 用︶
。佐 藤功
・ポ ケッ ト註 釈憲 法下 巻一
〇九 四 6 頁︵ 新版
、一 九八 四年
︶︵ 以下
、﹁ 佐藤
・註 釈下
﹂と 引用
︶、 樋口 陽一
=佐 藤幸 治
=中 村睦 男= 浦部 法穂
・注 解法 律学 全集
・憲 法Ⅳ
︵二
〇〇 四 年︶
︵以 下、
﹁樋 口ほ か・ 注解
Ⅳ﹂ と引 用︶
︵浦 部執 筆︶ 等。 ( ) 旭川 市国 民健 康保 険条 例事 件・ 最大 判平 成一 八年 三月 一日 民集 六〇 巻二 号五 八七 頁。 ( 7 ) 最高 裁は
、括 弧書 きの 中で
、﹁ 国民 健康 保険 税は
、…
…目 的税 であ って
、…
…反 対給 付と して 徴収 され るも ので ある が、 形式 が税 であ る以 上 8 は、 憲法 八四 条の 規定 が適 用さ れる こと とな る﹂ とし てい る。 ( ) 佐藤
・憲 法一 八〇 頁参 照。 これ は、 その 根拠 とし て、 財政 法三 条の
﹁法 律又 は国 会の 議決 に基 づい て﹂ と、 憲法 八四 条の
﹁法 律に よる
﹂と の 9 意味 の相 違に 言及 して いる
。 ( ) 最大 判昭 和三
〇年 三月 二三 日民 集九 巻三 号三 三六 頁。 ( 10 ) パチ ンコ 球遊 器通 達課 税事 件・ 最判 昭和 三三 年三 月二 八日 民集 一二 巻四 号六 二四 頁。 ( 11 ) 佐藤
・註 釈下 一一
〇九 頁、 樋口 ほか
・注 解Ⅳ 一八 五頁
︵浦 部執 筆︶ 等。 ( 12 ) 宮沢
・全 訂七 一五 頁、 辻村 みよ 子・ 憲法 四九 二頁
︵第 三版
、二
〇〇 八年
︶等
。こ の説 をと る下 級審 判例 とし て、 名古 屋地 判平 成一 三年 五月 二 13 三日 判タ 一一 二〇 号一 五二 頁参 照。 ( ) 大石
・憲 法講 義Ⅰ 二六 一頁
。 ( 14 ) 須貝 脩一
・行 政法 の基 礎知 識二 四五 頁︵ 一九 七八 年︶
。 ( 15 ) 憲法 と条 約の 関係 につ いて は、 議論 があ るが
、条 約と 法律 の関 係に つい ては
、条 約優 位で ある こと に異 論は ない と思 われ る。 ( 16 ) 金子 宏・ 租税 法八 七頁
︵第 一五 版、 二〇 一〇 年︶
。 ( 17 ) 清宮 四郎
・憲 法Ⅰ 二六 二頁
︵第 三版
、一 九八 一年
︶︵ 以下
、﹁ 清宮
・憲 法Ⅰ
﹂と 引用
︶。 ( 18 ) 宮沢
・全 訂七 一一 頁は
、地 方税 は八 一条 の﹁ 租税
﹂に は含 まれ ず、 八四 条に いう
﹁法 律﹂ にそ の地 方公 共団 体の 条例 を含 むと みる べき であ る 19
、と する が、
﹁法 律﹂ に含 まれ る﹁ 条例
﹂に よっ て課 され る﹁ 租税
﹂は
﹁地 方税
﹂以 外の もの では あり えな いか ら、 この 説は 意味 不明 と解 す るほ かな い。 ( ) 清宮
・憲 法Ⅰ 二六 三頁
。 ( 20 ) 佐藤
・註 釈下 一一
〇七 頁。 ( 21 ) なお
、下 級審 判決 の中 には
、﹁ 地方 自治 に関 する 憲法 九二 条に 照ら せば
、地 方自 治の 本旨 に基 づい て行 われ るべ き地 方公 共団 体に よる 地方 22
税の 賦課 徴収 につ いて は、 住民 の代 表た る議 会の 制定 した 条例 に基 づか ずに 租税 を賦 課徴 収す るこ とは でき ない とい う租 税︵ 地方 税︶ 条例 主 義が 要請 され ると いう べき であ つて
、こ の意 味で
、憲 法八 四条 にい う﹃ 法律
﹄に は地 方税 につ いて の条 例を 含む もの と解 すべ き﹂ とす るも の もあ る。 仙台 高秋 田支 判昭 和五 七年 七月 二三 日行 集三 三巻 七号 一六 一六 頁︵ 秋田 市国 保税 事件
︶参 照。 ( ) 佐藤
・註 釈下 一一
〇六 頁は
、﹁ 租税
﹂に 地方 税を 含め た上 で、
﹁法 律﹂ には 条例 を含 めず 租税 法律 主義 の﹁ 例外
﹂と する が、 この
﹁例 外﹂ の 意 23 味が
、憲 法八 四条 の例 外を 意味 する とす れば
、条 例で 定め られ る地 方税 が、 八四 条の
﹁租 税﹂ に含 まれ る余 地は 論理 的に あり えな い。 ( ) 芦部
・憲 法三 五四 頁。 ( 24 ) 芦部
・憲 法三 四四 頁。 25
二 地方 政府 の課 税権 の根 拠 地方 政府 が地 方税 を課 税す る根 拠は 何か
。こ の問 題は
、そ もそ も地 方政 府が 地方 統治 権︵ 地方 自治 権︶ を有 する 根拠 は何 か、 とい う一 般論 の一 環を 構成 する 問題 であ る。
ઃ
地方 統治 権に 関す る諸 説 地方 統治 権の 根拠 の一 般論 につ いて は、 これ まで 諸説 が展 開さ れて きた こと は周 知の とこ ろで ある。こ こで
、簡 単に これ を概 観す るこ とに する
。
⒜
固 有 権 説 地方 自治 権、 特に それ を構 成す る団 体自 治の 要素 の根 拠に つい ては、日 本国 憲法 制定 当初 にお いて
、固 有の 自然 権的 な地 方統 治権 をも つと いう 考え 方、 いわ ゆる 固有 権説 が唱 えら れた
。す なわ ち、
﹁地 方自 治を 規定 した 歴史 的 経過 と指 導的 理念 とは
、地 方自 治権 をも って 個人 にお ける 基本 権と 同様 に、 人類 の多 年に わた る自 由獲 得の 努力 の 成果 とし て現 在及 び将 来の 国民 に対 し不 可侵 の永 久の 権利 とし て信 託し たも のと 解す る余 地を 与え
﹂る もの であ