公共工事発注システムに潜む危険 公共工事発注システムに潜む危険
株式会社 建通新聞社
首都圏本部 編集局
脇坂章博
こうしている今も、国内のどこかで …
○例えば―
21
日午前11
時・A
市では…
「
B
中学校南棟階段室アスベスト改修」一般競争入札<競争参加資格>
①建築一式・総合点数750点未満の市内業者
②アスベスト施工に対応する資格を有する技術者を主任技 術者として現場に配置できること
<工事概要>
・アスベスト除去54・2平方㍍、天井改修67・6平方㍍
<予定価格>
328万8600円
○なぜ、建築一式なのか?
○なぜ、発注ロット(予定価格)で?
そして、一番の疑問―
○「アスベスト施工に対応する資格」って何だ?
○おそらく「石綿作業主任者」(特定化学物質等 作業主任者)「特別管理産業廃棄物管理責任
者」を指している?
…
しかし…
競争参加資格はこれでいい?
石綿対策工事に対応する資格
・石綿作業主任者
・特管廃棄物管理責任者
・石綿障害予防規則に 基づく特別教育受講者
講習(座学)を 受講するだけ で取得できる
技術能力のチェックがな
い! 「『現場』の施工条件・環境は千 差万別。一つとして同じ現場はな
佐渡市両津小学校・6月30日アスベスト対策工事中 に発生
飛散事故
*7/11日現在、児童3 2人と教師3人がばく露した可能性
不幸な事故。だが―「起こるべくして起こった!」
「氷山の一角にすぎない!」
(アスベスト専門対策業者の指摘)
心配が現実になってしまった!
この事故は偶然、それとも・・・
○工事概要
・工事件名―両津小学校大規模改造工事
・概要―アスベスト除去a=530平方㍍
・入札方式―指名競争入札
・指名対象―建築一式
・入札日―2006年3月28日
・落札者-新潟県内に本社のある全国中堅ゼネコン
しかし、アスベスト専門工事業者に下 請けさせ→その業者がさらに下請けに
○請負業者は「負圧除じん機のフィルター が目詰まりしていた
…
」などと説明。アスベスト対策専門工事業者からは疑問の声。
○飛散事故直後、校長が作業員に知らせようと したが「養生内に声が届かなかった」等の証言
「石綿作業主任者は養生外で気圧と空気の流れ を定期的にチェックしているもの
…
」(アスベスト対 策専門業者)との指摘も。事故の原因
事故に見え隠れする問題の本質
○7月7日付で「事故に対する今後の対応」(佐渡 市建設部建設課)
1.危機管理体制の徹底 2.緊急連絡網の整備
3.施設管理者への工事説明 4.学校や地域住民への通知 5.課内検査の実施
6.請負業者への指示
○「対応」(前項同)
3、危険の度合いや工程・工事状況を施設管理者に説 明します。
4、学校内の工事については学校を通じて家庭に連絡 する。地域住民への通知については事前に広報など を通じてお知らせします。
6、・施設管理者への工事説明の徹底
・近隣住民への工事説明
問題の本質(前項から続く)
リスク・コミュニケーションの欠落 には気付いていた。だが
…
。○県議会総務文教委員会(7月10日)
▼委員の主な発言(11日の朝日新潟版・地元紙 から引用)
「業者と学校側の意志の疎通の不足が原因。工 事計画書を業者に出させ、事前に打ち合わせを すべきだ」
「学校の安全を揺るがす大問題。教育現場は一 体どうなっているのか」
▼県教育長の答弁
問題の本質(前項から続く)
少なくとも、この時点までは―
発注~完成引渡しの過程をチェックする
「発注者責任」が欠落している
検査体制はどうか!?
「各工程の段階検査、抜き打ち検査を実施
…
」(市)人口7万人の地方都市
マンパワーがあるのか、どうか
…
もう一度、佐渡市の場合を見てみましょう
市教委の技術職員は1人だけ
文教施設関係の業務は建設課に支出委任
決して、めずらしい話ではありません。
小規模な地方自治体の典型的な例。
佐渡市両津小の事故を受けて
…
「アスベスト対策工事を行う際の安全対策につい て」(7月3日付都道府県教委他施設担当部課長宛て事務 連絡:大臣官房文教施設部施設企画課長)~抜粋~
平成18年6月30日、新潟県佐渡市両津小学校(中略)関係法 令および関係省庁の通知などを遵守し、地方公共団体の関係 部局や施工業者と十分連絡調整のうえ、適切な作業が行われ るようお願いします。(中略)域内の市区町村教育委員会また は所管の学校及び学校法人などに対して、周知徹底されます ようお願いします。
文部科学省の対応は?
○当事者意識を希薄にする組織構造
○三位一体改革 国補の交付金化
=
曖昧になった国と地方の関係 「責任」の不在「責任」の不在○「安全な施工」を担保する視点の欠落
「隙間のない対策を―」(国の総合対策) 「隙間だらけ」を露呈 指針の作成・通知の類だけで「安全」は確保できるのか?
このままでは、第 2 、第 3 の両津小が …
① 競争参加資格審査は?
② 入札契約方式の選択は?
③ 明確な指名基準の設定は?
④ 個別案件ごとの競争条件の設定は?
⑤ ダンピング(不当廉売)防止策は?
⑥ 施工段階のチェックは?
「発注者」責任の履行
いま、発注者としてできることは?
東京都ー競争参加資格審査申請の段階で
「石綿処理」を独立した区分で設定 要件は―
「石綿作業主任者と特別産業廃棄物管理責 任者を直接的恒常的に雇用していること」
「発注者責任」履行の実際①
~神奈川県の文教施設アスベスト対策の場合~
【建通新聞:神奈川6月6日1面 ~抜粋~】
県土地建物保全協会は、県から受託した県立高 校や県営住宅のアスベスト(石綿)関連修繕工事 の発注に先立ち、同協会の登録(有資格)業者を 対象に、「石綿作業主任者」など資格者の有無と、
過去5年間のアスベスト関連工事の受注状況を予 備調査する。7月7日まで予備調査届出書を受け 付け、資格者がいることなどを確認できた業者の 中から指名する考えだ。
「発注者責任」履行の実際②
• Q.アスベスト対策の目的は何ですか?
• もちろん、関係法令(大防法・廃掃法・安衛法(石 綿則)・建築基準法・建設リサイクル法・騒音規制 法・振動規制法・条例 … )の遵守=コンプライアン スは重要ですが―。
• Q.「手段」が目的になってはい ませんか?
• (広義の)「市民」を守るというパッション、組織横 断的な「計画」、そして「行動」が求められている。
求められる
パッション・ミッション・アクション
◇一人の記者としての提案
○「それぞれの立場(知事部局内・外、市・区・
町村、そして労働基準行政―)で、できること を考え、行動しましょう」
○「新たな健康被害者を出さないために、組織 にとらわれず連携を!」
アスベスト対策の安全性を
担保するために
行政も社会の一員
行政=「社会の構成員」
市民から見れば