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膝関節シミュレータによる人工膝関節の潤滑特性の 評価

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

膝関節シミュレータによる人工膝関節の潤滑特性の 評価

森山, 茂章

九州大学工学機械科学

https://doi.org/10.11501/3123014

出版情報:Kyushu University, 1996, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)
(3)

高山 r4 l' る 評 ょ の に

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特 一 滑 レ

潤 ユ の : 、

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シ 関 市市 交中小 六仁炉 口H川

関 工 膝

森山茂章

(4)

目次

第一章 緒言 -

1 ・ 1 研究の目的 - 1 . 2 研究の背景 ・ 1 . 3 本論文の構成 ・

2

5 9

第二章 膝関節シミュレータ試験 ・

2 ・ 1 膝関節シミュレータ試験機概要 ・

2 ・ 2 軟質層を有する人工膝関節の潤滑特性 ・ 2 ・ 2 ・ 1 実験方法 ・

2 ・ 2 ・ 2 結果及び考察 ・

2 . 2 ・ 2 ・ 1 軟質層を有する人工膝関節と

UHMWPEの比較 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・17 2 ・ 2 ・ 2 ・ 2 軟質層を有する人工膝関節の

ハU‘,EA

11 14 14 17

2 ・ 3

2 ・ 2 ・ 2 ・ 3 まとめ ・

粘度による潤滑特性の変化 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・20 PVAハイドロゲルの潤滑特性 ・ ・ ・ ・ ・22 26

第三章 変動荷重 ・変動速度条件下における人工膝関節の潤滑特性 . . 27 3 ・ 1 膝関節シミュレータによる実験 ・

3 ・ 1 ・ 1 運動条件 ・ 3 ・ 1 ・ 2 実験方法 ・ 3 ・ 1 ・ 3 結果及び考察 ・

30

30

32 33

3 . 1 ・ 3 ・ 1 歩行運動条件下の摩擦特性 . . . . . . . 33

3 ・ 1 ・ 3 ・ 2 一定荷重条件下の摩擦特性 . . . . . . . 34

(5)

3 . 1 ・ 3 ・ 3 作動条件の摩擦係数への影響 . . . . 35 3 ・ 2 P Iモデルによる最小膜厚の計算 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 39

3 . 2 ・ 1 王な記号 . . . . 40 3 ・ 2 ・ 2 P Iモデルによる最小膜厚の計算法 . . . . 40 3 ・ 3 実験と計算の比較 . . . . 43 3 ・ 3 ・ 1 分離度とP Iモデルによる最小膜厚の比較 . . . . 48 3 ・ 3 ・ 2 歩行運動との比較 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 50 3 ・ 4 まとめ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 52

第四章 人工膝関節の潤滑特性に及ぼす形状の影響 ・ ・ ・ ・ ・・ 53 4 ・ 1 接触域形状による潤滑特性の比較 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 55 4 ・ 1 ・ 1 実験方法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 55 4 ・ 1 ・ 2 結果及び考察 . . . . 56 4 ・ 2 二円弧型人工膝関節の潤滑特性 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 59

4 ・ 2 ・ 1 実験方法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 59 4 ・ 2 ・ 2 結果及び考察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ . 61 4 3 ・ 歩行運動条件下における二円弧型人工膝関節の潤滑特性 . . 65

4 ・ 3 ・ 1 実験方法 . . . . 65 4 ・ 3 ・ 2 結果及び考察 . . . . 66 4 ・ 4 まとめ . . . . 69 第五章 結言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 70

参考文献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ . . . . . . 73

謝辞 ・ ・ ・ ・ . . . . 76

(6)

緒 立早

1 . 1 研究の目的

1 ・ 2 研究の背景

1 . 3 本論文の構成

(7)

1 . 1 研究の目的

正常な生体関節は 日常生活の様々な条件下において常になめらかに動

き, 生涯を通してその機能を維持している. 特に股関節や膝関節などの下 肢関節は, 高荷重で低速往復運動という潤滑に対して非常に過酷な条件に も関わらず, 優れたトライボ特性を有している. 一方, 何らかの理由によ り機能障害を起こした関節の代替部品である人工関節は, 現在では, 1 0

年以上の耐久性を実現し, 寒痛を取り除き運動機能の回復をもたらしてい る. しかし, 人工関節は, 生体関節の機能を完全には復元できておらず,

今後若年層への人工関節置換術の適用増加にともない, 耐用年数のさらな る向上のために, 緩みや摩耗などのトライボロジーに関する問題を解決す る必要がある.

現在, 臨床で使用されている人工膝関節の多くは, 生体膝関節の形状を 規範とした解剖学的デザインの人工膝関節である. またその材質は, 一般 的に大腿側を耐食性の金属あるいはセラミックス, 腔骨側を超高分子量ポ リエチレン(UHMWPE)とする組合せが用いられている. これらの解 剖学的デザインの人工膝関節は, 人聞が本来行う運動に近い可動域を有し ており, 靭帯に大きな負荷をかけないが, 高荷重となる歩行条件では, 形 状適合性が不良なデザインでは高面圧となり, 十分な流体潤滑膜が形成さ れにくく, 摩耗の発生が避けられない. これらの問題を解決するために,

人工膝関節の設計に際して, 形状設計と材料選択の両面で, トライボロジー 的改善を考慮に入れる必要がある.

本研究では, 膝関節シミュレータを新たに製作し, 様々な人工膝関節の 潤滑特性の評価を行った. この膝関節シミュレータでは, 従来のシミュレー タを改良したことにより, 種々の条件下で人工膝関節の摩擦挙動をより精

-2-

(8)

密に測定することが可能になった. そこで, 最初に膝関節シミュレータの 基本的な特性を調べ 次に材料選択の面から人工関節の摩擦面における軟 質材の使用を検討した. 軟質材を使用する目的は, 低弾性率を持つ軟質材 料を摩擦面に使用することにより E H L (弾性流体潤滑)膜形成能を向 させ, 摩耗の原因となる直接接触を未然に防ぐことである. そこで, 軟 質層を有する人工膝関節を試作し, 歩行条件下において, 軟質層のない人 工膝関節と軟質層を有する人工膝関節の潤滑特性の比較を行い, 軟質層を 有する人工膝関節の有用性を検討した.

次に人工膝関節の設計を行う際に, 人工膝関節の作動条件における潤滑 膜形成状態と接触の過酷さの評価法がいまだ十分には確立していないと考 えられる. よって より優れた潤滑性能を有する人工膝関節を設計するた めには, 作動条件が潤滑膜形成に与える影響を根本的に把握する必要があ ると思われる. そのために 数種の屈曲伸展運動と腔骨軸荷重を設定し,

作動条件が潤滑膜形成に与える影響を検討した.

形状設計の面では 二次関節液のような低粘度の潤滑液を使用しでも流 体潤滑膜が形成されやすい人工膝関節の形状とする必要がある. 現在多く 用いられている解剖学的デザインの人工膝関節では, 高粘度条件下でもか なりの接触が生じているが, 幾何学的な適合性に優れる円筒型デザインで,

軟質材を使用した条件では, ある程度粘度が高い潤滑液を使用すれば, 流 体潤滑が有効に機能するものと思われる. そこで形状が潤滑膜形成に与え る影響を調べるために, 数種の人工膝関節を試作し, 潤滑膜形成状態を検 討した.

本研究の目的は, 膝関節シミュレータを用いて, 軟質層を有する人工膝 関節の潤滑特性を摩擦挙動と潤滑膜形成の視点から評価するとともに, 作

(9)

動条件が潤滑膜形成に与える影響を調べ, よりすぐれた潤滑性能を有する 人工膝関節を提案することである.

-4-

(10)

1 . 2 研究の背景

正常な生体関節 特に股関節や膝関節などの下肢関節は, 高荷重で低速 往復運動という潤滑に対して非常に過酷な条件にも関わらず, 優れたトラ イボ特性を有している. 生体内(in vivo)の計測では, 笹田らによる人膝を 用いて, 麻酔下で振子試験を行った例(1 )がある. その結果, 摩擦係数は,

0.006 ---- 0.01と非常に低い値を示している. 生体外(in vitro)の計測では,

O'Kellyら(2 )や, 馬淵ら(3 )による人股関節の振り子試験により, 摩擦係数

は, 0.003 ----0.03になることが報告されている.

この優れた潤滑性能を解明するために多くの研究報告がなされている.

池内ら(4 )やMedleyら(5 )による関節軟骨の低弾性率を考慮したソフトEH

L (弾性流体潤滑)やDowsonらによる軟骨表面の微小粗さを考慮に入れた マイクロEH L (6)などが提案されている. これら EHLは 生体関節の

耐久性や低摩擦を説明しているが 流体潤滑のみの摩擦より実際の摩擦が 高いことを馬測ら(3 )は示し そのほかの摩擦の要因が存在することを論じ ている. このような生体関節の優れた潤滑機構を説明するために, 村上ら

( 7) ( 8) ( 9 )は, 多モード適応潤滑を提案した. 多モード適応潤滑とは,

Dowson (10)及び笹田(11). (12)による生体関節の潤滑に関する提案を基礎に, 村

上らが総括的に提唱した潤滑機構である. 優れた潤滑性能を有する生体関 節では, 通常歩行時には, 関節面の弾性変形効果と関節液の粘性効果に基 づくEHL作用が主体となり, 摩擦面間に流体潤滑膜を形成する. しかし,

流体潤滑膜の形成が困難となり, 軟骨間接触が生じるような過酷な条件下 では, 渉出潤滑(13). (14) (15)やマイクロEHLなどの補助的な潤滑機構が機 能することで 潤滑膜の維持を助け, 更に厳しい条件下では 蛋白質(16)(17) や脂質(18)(19) . (20)という生体成分による境界潤滑やゲル膜潤滑(21)が機能し,

(11)

摩擦面表面を保護する. このように, 多モード適応潤滑では, それぞれの 潤滑機構が, 状況に応じて協調的に機能することで, 常に良好な潤滑状態、

を保っていると考えられる. このような優れた潤滑機能を有する生体関節 と比べ, 人工関節は, 摩擦面材料が, 生体軟骨と異なる物性及び界面特性 を有するために生体関節の性能には及ばないものと考えられる. 摩擦 ・ 摩 耗挙動の実態の評価によれば, 人工関節の潤滑モードは, 混合潤滑から境 界潤滑であるものと思われる. 特に膝関節は, 高荷重, 低速往復運動とい う潤滑に対して非常に過酷な条件に加え, 大きな可動域を有しなければな らないのでその傾向は顕著である. このような状況において, 人工軟骨と して軟質層を人工関節に取り入れたのは, Medleyら(22)である. Medleyらは,

軟質層を有する人工関節の潤滑状態に対して理論的な解析を行った.

Unsworthら(幻)(24) (お)は 人工軟骨を有する人工股関節を製作し, 股関節シ

ミュレータを用いて その摩擦特性を評価した. また, 笹田らは, 高含水

のP V A (ポリビニルアルコール)ハイドロゲルを人工軟骨材料として人

工関節を試作し, 優れた摩擦特性を示すことを報告した(26)

一般に人工関節に用いる材質を選択するには, シミュレータ試験に先立 ち材料の摩擦摩耗試験を行うために, ピン ・ オン ・ ディスク試験機などの 単純な試験が行われる. しかし, このようなin vitroにおける試験では, 設 定される環境や条件により, 結果が大きく変化する.

そこで, 村上らは, 膝関節シミュレータを用いて, 歩行運動条件下にお ける人工膝関節のトライボ特性を評価した(27)(お) (汐) (30) 電気抵抗法によ る分離度測定から潤滑膜形成状態を評価し, 軟質材を使用すると, 歩行条 件下でも流体潤滑膜の形成が容易になることを示した. 関節シミュレータ 試験機は, 種々の形式があるが(31), 大きく二つのタイプに分けられる.

-6ー

(12)

つ同のタイプは 人工関節の詳細な摩擦特性を評価するためのものである.

これは, 生体の運動を正確に模擬することが望ましいが, 生体の運動は非 常に複雑なので 複雑な機構が必要となる. もう一つのタイフのシミュレー タ試験機は, 歩行運動に近い条件で, 人工関節の長期間の摩擦 ・ 摩耗試験 を行うものである. しかし このシミュレータによる耐久試験は, 大幅な 加速試験を行うことができず, 多くの時間と費用が必要となる. また, 長 期の試験に耐えうる耐久性が必要となる. そこで, 屈曲伸展運動や, 腔骨 軸荷重は, ある程度歩行運動を模擬したものが使用され, その多くは, 運 動を正弦波などで近似し, 荷重は, 一定荷重や正弦波を用いている. しか るに, このような荷重や速度条件が, 潤滑膜形成状態、や人工関節の耐久性 に与える影響については, 十分には検討されていない.

人工膝関節の形状に関しては, 現在では解剖学的デザインの人工膝関節 が多く用いられている. 過去には, 膝関節の動きを二次元的にとらえ, 蝶 番型の人工膝関節が用いられたこともあったが, 回旋や前後方向の移動を 無視しているために, 骨との固定部に緩みを生じるものが多数あった. そ こで, 生体の膝関節を規範とした形状設計が行われた. この形状は, 人間 が本来行う運動に近い可動域を有しており, 靭帯に大きな負荷をかけない い. しかるに 高荷重となる歩行運動条件下では 形状適合性が不良なデ ザインでは, 高面圧となり十分な流体潤滑膜を形成する形状とはなりにく い. 一方, 生体の大腿骨形状は, 高荷重域である立脚期では, 曲率半径は 大きく, 遊脚期に曲率半径が小さくなっている( 32) この形状について潤滑 の視点から考察すると, 歩行時の遊脚期における荷重が低く, 屈曲伸展運 動の速度が速い位相において流体潤滑膜の形成を促す可能性もある. 大月 らは, この形状を基に, 複数の円弧からなる人工膝関節を提案した(ロ). (お)

(13)

( 34) また, 生体の骨の修復を規範とするリモデリングによる設計(お)も

部で行われている.

上述の技術的背景を考慮すると, 高性能人工関節を実現するためには,

人工関節の設計基準を材料設計と形状設計の両面から検討する必要がある と思われる.

-8-

(14)

1 . 3 本論文の構成

本研究では, 膝関節シミュレータによる人工膝関節の摩擦試験を中心に 人工膝関節のトライボ特性について論じる. 次章では, 新たに製作した膝 関節シミュレータの概要を説明するとともに, その基本的な特性を示す.

また, 導電性シリコーンゴムと人工軟骨材料として期待されるポリピニル アルコールハイドロゲルを軟質層として有する人工膝関節の摩擦特性につ いて論じる.

第三章では, 屈曲伸展運動と腔骨軸荷重が潤滑膜形成状態、に与える影響 を検討するため, 屈曲伸展運動と腔骨軸荷重をともに正弦波の組合せで近 似し, その摩擦状態をシミュレータ試験により調べ, また軟質層を有する 人工膝関節の最小膜厚の計算を行う.

第四章では, 形状が潤滑膜の形成状態に与える影響を調べるために, 接 触域の異なる楕円接触と, 二円弧大腿形状に対する線接触に対して, 数種 の人工膝関節を試作し, その潤滑特性を検討する.

第五章では, 膝関節シミュレータを用いた人工膝関節の潤滑膜形成能を 材料, 形状, 作動条件などの視点から検討し, 本研究のまとめとする.

(15)

立早一一ル弟

膝関節シミュレータ試験

2 ・ 1 膝関節シミュレータ試験機概要

2 ・ 2 軟質層を有する人工膝関節の潤滑特性

2 ・ 2 ・ 1 実験方法

2 . 2 ・ 2 結果及び考察

2 ・ 2 ・ 2 ・ 1 軟質層を有する人工膝関節とUHMWPEの比較

2 ・ 2 ・ 2 ・ 2 軟質層を有する人工膝関節の粘度による潤滑特性の変化

2 . 2 ・ 2 ・ 3 PVAハイドロゲルの潤滑特性 2 ・ 3 まとめ

ハリ唱Baa

(16)

2 ・ 1 膝関節シミュレータ試験機概要

本研究で使用した膝関節シミュレータを図2-1に示す. この膝関節シ

ミ ュレータの特徴は 屈曲伸展運動と腔骨軸荷重を自由に設定することが でき, 人工膝関節の詳細な摩擦挙動を測定することができることである.

従来より用いられていた膝関節シミュレータは, 揺動運動部にラック ・ ピ ニオン機構を使用していたが 本関節シミュレータでは, クランク機構を 採用し, なめらかな運動を実現している. また, 大腿部品の取付部のサド ル構造を廃止して, 両端支持軸受と同心の真直軸に取り付ける構造とした.

そのことにより 大腿軸トルク測定値に含まれる慣性及び偏心による成分 がきわめて小さくなり, 従来のような相対トルクを用いることなく大腿軸 トルクによる評価を行うことができるようになった.

本膝関節シミュレータでは, 図2-1に示す6自由度の動きを実現して いる. このシミュレータでは, 二台の油圧シリンダを使用しており, 一台 はlの屈曲伸展運動を行い もう一台は2の腔骨軸方向(ドライベアリン グでガイド)に変動荷重を加える. 油圧シリンダは, パソコンにより制御 され, 腔骨軸荷重と屈曲伸展運動をともに目標の作動条件を再現すること ができる. 3の回転運動には, 大腿骨試験片と腔骨試験片の片当たりを解

消するために, ビン継手を使用した. 4, 5と6の直線及び回転運動は,

腔骨側試験片がカップ型の場合は, 大腿骨試験片と腔骨試験片の位置関係 を合わせるために, スラスト玉軸受を利用して 腔骨側が自由に移動でき る構造とした. 腔骨側試験片が 平板型の場合は, 腔骨試験片の摩擦による 移動を防ぐために 腔骨試験片を拘束する必要があるため, 下部腔骨試験 片を腔骨軸側に固定し, 4, 5, 6の運動を拘束した構造とした.

大腿骨部品と腔骨部品開の摩擦挙動を観察するために, 大腿側駆動軸に

(17)

貼付けたひずみゲージにより軸トルク変動を測定するとともに, 腔骨側に 取付けたロードセルにより腔骨側の前後方向力の変化を測定し, 摩擦状態 の評価を行った. また 大腿側がSUS316製で腔骨側に導電性シリコーンゴ

Hydraulic actuator for flexion motion

Tibial component

Hydraulic actuator for tibial axis load

Femoral comoonent

新しく開発した膝関節シミュレータ

従来の膝関節シミュレータ

図2-1 膝関節シミュレータ

-12-

(18)

R,

010 103 10s

Resistance n

図2-2 電気抵抗法による分離度回路と抵抗と分離度の関係

ムを用いた実験を行う場合は いずれも導電性を持つ材料であることから,

図2-2に示す電 気抵抗 法 に よ る 分離度(=測定電圧/完全分離電圧, 分 離度= 1 :完全分離 分離度=0 :接触)を測定し, 潤滑膜の形成状態を

検討した. この際, 完全分離電圧は100mVとし, 並列抵抗は510.0とした.

また, 評価条件に応じて, 測定感度を変えるために, 完全分離電圧を1V,

並列抵抗を1kQとした回路も使用した.

(19)

2 ・ 2 軟質層を有する人工膝関節の潤滑特性

軟質層を有する人工膝関節の潤滑特性を調べるために, 従来より人工膝 関節材料として多く用いられているUHMWPEと, 導電性シリコーンゴ ム及びPV A (ポリビニルアルコール)ハイドロゲルの軟質層を有する人 工膝関節の潤滑特性を検討した. P V Aハイドロゲルは, 含水性, 多孔質 性といった生体軟骨類似の性質を持った材料であり マクロなEHL効果 に加え, 薄膜潤滑状態において, マイクロEHLや渉出潤滑などが機能し,

低摩擦状態を維持することが期待されている材料である.

2 . 2 ・ 1 実験方法

図2 - 3に膝関節シミュレータによる摩擦試験に使用した人工膝関節を 示す. 大腿側は, SUS316製の円筒型(自乗平均粗さRrms = 0.02μm)を用い た. また腔骨側は, 厚さ3mmの導電性シリコーンゴム(縦弾性係数(単軸 圧縮) E = 9.1 MPa, Rrms = 3.3μm)をアクリル樹脂上に固定したものを用い た. P V Aハイドロゲルは, 平均重合度約2000, 平均ケン化度約98.5 -- 99.4mol%の完全ケン化PVAを蒸留水に溶解し, これを反復凍結( 36)するこ とにより, 厚さ2mmのシート状のPVAハイドロゲルを製作した. この時 のゲルの含水率は77%であり, 球面による押し込み試験により得られた縦弾 性係数は1.5MPaで, これをアクリル樹脂上に固定したものを使用した. また,

比較のために現在臨床で最も多く用いられている材質であるUHMWPE (分子量:約4.4X 106, E = 800MPa, Rrms = 0.5μm)の平板型を使用した.

軟質層を有する人工膝関節の接触状態を調べるために, 膝関節シミュレー タを用いて, 臨床で用いられている人工膝関節(解剖学的デザイン, パイ

ー14-

(20)

タリウム/UHMWPE製)と軟質層を有する人工膝関 節(円筒/平板型,

SUS316/導電性シリコーンゴム)の接触状態の比較を行った. 測定には,

内外側2面同時に計測可能なタクタイルセンサー(厚さO.lmm, 1.27mm間隔,

SUS316

Ø60 Femoral component

UHMWPE

Tibial component

図2-3 人工膝関節試験片

(21)

。。刀ω一mccco一×ω一 100

50

T�e, o__ff Swing phase

(Wal川m伽,)

40 60

Percent of cycle Stance phase

Heel strike

2

zv二UMWO一ω一×ω一EDF

100 0 80

20

歩行時の膝関節における腔骨軸荷重と屈曲伸展運動 図2-4

感度: O.4MPa と感圧紙(超低圧用,

感度:約O.4MPa以上) 26X 22の格子状,

を使用した.

以上)

粘度の異なるシリコーン油(動粘 摩擦試験を行う際の潤滑液としては,

と蒸留水を使用した.

以後S-10---- S-100と称する.

250C,

度: 10---- 100mm2/s,

関 節液中に存在するムコ PVAハイドロゲルを使用した実験では,

また

(平均分子量1.95X 106) を生 多糖の一種であるヒアルロン酸のナトリウム塩

および関節液中に存 理食塩水に0.5wt%溶解した溶液(以下HAと称する)

在する蛋白成分であるγグロプリンをHA中に0.5%添加した溶液を用いた.

で行った.

(22t + 20C) 実験は室温条件下

図 2 - 4に示す歩行運動 運動条件である屈曲伸展 運動と腔骨軸 荷重は,

この腔骨軸荷重と屈曲伸展運動は, 従来より を模擬した条件を使用した.

それらの屈曲伸展 シミュレータ試験に用いてきた運動パターンであるが,

ー16-

(22)

運動と腔骨軸荷重が潤滑膜の形成状態に与える影響は第三章で詳細に検討 する.

2 . 2 ・ 2 結果及び考察

2 ・ 2 ・ 2 ・ 1 軟質層を有する人工膝関節とUHMWPEの比較

刈2-5に, 歩行運動時に最大荷重で, 低速状態となる屈曲角5度, 荷重 2kNにおける人工膝関節の接触状態を示す. 図2-5 -(a)の臨床で使用され ている解剖学的デザインの人工膝関節は, タクタイルセンサーにより接触 圧力を測定した. その結果, 接触面積は非常に小さく, 接触中心部の接触 圧力は20MPa以上となり かなり高面圧となっている. 次に, 図2 -5 -(b),

(c), (d)の大腿側が円筒型, 腔骨側が平板型の人工膝関節の接触状態を感圧 紙で測定した. 図2-5 -(b)のUHMWPEでは, 平均面圧は15MPaで、あり,

解剖学的デザインに比べると面圧は低下しているものと思われる. 図2- 5 -(c)の導電性シリコーンゴムを軟質層として使用した場合は, 接触面積 は非常に広く かなり低い接触圧力(3.6MPa)である. また, 図2-5 -(d)

のPVAハイドロゲルを軟質層として使用した場合は, 導電性シリコーン ゴムより厚みが薄いにもかかわらず, その低弾性率のために, 導電性シリ コーンゴムと同程度の接触面積を有し, 導電性シリコーンゴム同様に低い 接触圧力(3.8MPa)となった. よって, 円筒型で軟質層を有する人工膝関節 は, 接触面圧が低いほどソフトEHL膜形成を良好にするとのDowsonら(10) の指摘にしたがえば, 1閏滑膜の形成についても有利であると考えられる.

本研究では, 円筒/平面の組合せについて摩擦特性の比較を行った.

図2-6に人工関節材料として多く用いられているUHMWPEと軟質

(23)

/

〆//ベ、\

-

KINEMAX,

small size, common Tactile sensor

(a)

輔磁醸務磁鞠棚機鱒糊絡機綴織喝務鰯務緩瀦議機

UHMWPE cylindrical / flat Prescale

(b)

Conductive silicone rubber cylindrical / flat

Prescale (c)

28MPa 21MPa 14MPa 7MPa OMPa

10mm

PVA hydrogel cylindrical / flat Prescale

(d)

刈2-5 人工膝関節の接触状態

-18-

(24)

層である導電性シリコーンゴムを使用したときの実験開始から25周期 の 潤滑液に粘度の低い蒸留水を用いた 摩擦トルク の一周期中の変化を示す.

非常に大きな摩擦ト 腔骨側が導電性シリコーンゴムの場合は,

条件では,

腔骨側がU HMWPEの場合は, 導電性 これに対し,

ルクを示している.

j閏滑液に粘度の低い シリコーンゴムと比較して低い摩擦を示す. これは,

直接接触が生じた 接触が生じた際の摩擦が非常に大

(Distilled water)

厚い流体潤滑膜が形成されず,

導電性シリコーンゴムは,

v「

蒸留水を用いたために ためである.

4

nu E・zggDF

住面

トイì � : ; 区三l

-4 0.6

nu E・zgEρ

-0.6

0 100 0

UHMWPEと導電性シリコーンゴムの比較

20

図2-6

(25)

きいが, UHMWPEは, 良好な自己潤滑性のためある程度の低摩擦状態、

を維持したと考えられる.

これに対し, 潤滑液にS-30を使用した条件では, UHMWPEは, 潤滑液 に蒸留水を用いた場合より若干の摩擦トルクの減少を見せるが, 導電性シ リコーンゴムは 大幅に摩擦トルクが減少する. これは 主として導電性 シリコーンゴムの低い弾性係数に基づくソフトEHL効果により, UHM WPEより厚い潤滑膜が形成されたため, 直接接触が滅少し, 良好な摩擦 状態、になったものと考えられる. よって シリコーンゴム製の軟質層を有 する人工膝関節は, 低粘度条件下でかなりの直接接触が生じる場合には,

非常に高い摩擦を示すが, ある程度の粘度の潤滑液を使用するとF 優れた 潤滑特性を得られることがわかった.

2 . 2 ・ 2 ・ 2 軟質層を有する人工膝関節の粘度による潤滑特性の変化

膝関節シミュレータにより, 図2-4の歩行運動条件下で, 腔骨側に導 電性シリコーンゴムの試験片を用い, 潤滑液に蒸留水と二種の粘度のシリ コーン油を使用した条件での実験開始後25周期目の大腿軸トルクと, 腔骨 前後方向力, 分離度(並列抵抗: R = 510 Q, 分離電圧100mV)を図2-7に 示す. 潤滑液に水を使用した場合の摩擦トルクと腔骨前後方向力を比較す ると(図2-7 -(a), (b)) ほぼ同様の波形を示す. また腔骨前後方向力 に大腿側試験片の半径を乗じることにより得られるトルクと大腿軸トルク を比較すると ほぼ近い値が得られており 従来より用いている大腿軸ト ルクによる人工膝関節の評価(州は, 妥当なものであると考えられる.

次に図2-7の(a)より潤滑液の粘度による摩擦トルクの違いを考察する.

潤滑液に, ある程度粘度が高いS-lOOを用いた場合には, 摩擦トルクは非常 -20-

(26)

E・ZωコEDF

(a)

4

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(b)

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0 0 ω ‘ー

ロ3ω

(d)

一一(Distilled water1--

0.5

100 40 60 80

Percent of cycle (e) 20

cozω」伺且ωω』00ω」白ω凸

粘度に対する摩擦トルクと前後方向力及び分離度の変化 図2-7

(27)

に小さい値となり, また図2 - 7 -(c)より分離度も全周期でほぼlとなる.

よって, かなり厚めの潤滑膜が形成され, ほぼ流体潤滑が行われていると 考えられる.

潤滑液にS-10を用いた条件では, 摩擦トルクはS-100と比較して上昇し,

また45%前後の位相で分離度の落ち込みが見られる(図2 - 7 -(d)) . た歩行周期の30% --- 50%にかけて, スティック ・ スリップを起こしているこ とから非常に厳しい摩擦状態であると思われる. よって, 作動条件の緩や かな遊脚期では摩擦面聞はかなり分離しているが, 条件の厳しい立脚期で は局所的な接触が生じているものと考えられる. 次に, 潤滑液に蒸留水を 用いた場合は 摩擦トルクは, 非常に大きな値を示し, また, 分離度も全 位相にわたって低い(図2 - 7 -(e)) . 特に腔骨軸荷重が高く, 屈曲進展 運動の速度が遅い20%前後や45%前後の位相では, 分離度は大きく落ち込み,

かなりの直接接触が生じ 非常に厳しい摩擦状態にあると考えられる.

以上より, O.lPa.s程度の潤滑液(S-100)を使用すると, 全周期にわたっ てほぼ流体潤滑を行うことが出来るが O.OlPa. s程度の潤滑液(S-l 0)では 作動条件が厳しい位相では接触が生じ, 蒸留水ではほぼ全位相で直接接触 が生じる. 特に速度が遅く荷重がピークとなる位相ではかなり厳しい接触 状態、になることが示された.

2 . 2 ・ 2 ・ 3 PVAハイドロゲルの潤滑特性

ここで使用するPVAハイドロゲルは, 高含水性材料であり, 渉出機能 も有するとみなされる. したがって, シリコーン油を潤滑液として使用す れば, 複雑な界面挙動が潤滑膜形成に影響する可能性がある. そこで, 本 節では, 水系の潤滑液を使用する. 特に, 関節液中のムコ多糖成分である

-22-

(28)

ヒ アルロン酸は, 増粘作用を有することが知られているため, ここではヒ アルロン酸 ナ ト リ ウ ムの生理食塩水溶液(HA)と, それに関節液中の蛋 白成分であるγグロプリンを添加した 溶液 を潤滑液 として使用した. 図2 -8にコーン ・ フレート型粘度計を用いて測定した室温でのHAの 粘度特 性を示す. このように, HAは, 非ニュートン性を示すので, 1 04 -- 1 05 S.Iの

高せん断速度条件では, O.OlPa' S 以下の低粘度になると推定される. このH Aを使用したときのUHMWPEとPVAハイドロゲルの摩擦トルクを図 2-9に示す. UHMWPEとPVAハイドロゲルの摩擦トルクを比較す ると, 摩擦トルクは, UHMWPEよりPVAハイドロゲルがかなり小さ く, 優れた潤滑特性を示した. しかし, 摩擦トルクが大きくなる40%前後の 位相において, P V Aハイドロゲルではスティック ・ スリップが生じてお

り, 若干の直接接触が生じていると思われる. 導電性シリコーンゴムの場 合は, 直接接触が生じると, 急激に摩擦トルクが上昇したが PVAハイ ドロゲルの場合は, 摩擦トルクの上昇が小さい. これは, P V Aハイドロ ゲルの低弾性率によるソフトEHL効果に加え, マイクロEHL効果や漆

ω 1

I 口 ,....� .. �D.�� … (

l

_J白; :

0.1 �"""""""""""'(""""""""""j""""...jLl口 己"

5 | ; ; ;

円口 l

J

5 0.01 r---...rL

・ HAHAO.5wt% O.5wt% + y-Globulin O.5wto/q) ì

0.1 10 100

Shear rate S-1

1000 10000

図2-8 ヒアルロン酸ナトリウム溶液の粘度特性(200C)

(29)

E-zoコσ」β

100

C UHMWPE).___f...)

\

:;ド /(\...r じ二

;ド亡...__/

lHA O.5wt% SalineJ (PVA)

ト�日\

し---r一一一__./ :

・31lHÃO.5wt%Saline J ....-:

Percent of cycle

e-D ; i i

-J 任量D

; ; i

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レノー一一---./:

-31(HA O.5wt% Saliner...-:...r...1 [(HA O.5wtO/o +γ-Globulin O.5wt刈

Percent of cycle Percent of cycle

図2-1 0 γグロプリンが摩擦トルクに与える影響

PVAハイドロゲルとUHMWPEの摩擦ト ルクの比較 図2-9

E・Zωコσ」戸

100

PVA ハ イ ド ロ ゲル の優れた潤滑特性によるものと考えられ 出効果など,

若干のスティック ・ スリ 本条件下の薄膜となる位相では,

しかるに,

る.

そこで,

耐久性を考え る上では問題となる.

ップの発生が認められており,

成分の一種であるγ グ ロ プ リ ンを添加した場合に同 関節液に含まれる蛋

蛋白の添加によ その効果を図2-1 0に示すが,

様の試験を行ってみた.

摩 擦自体も低減 複雑な SUS316製の大腿側試験片と多孔質で含水率が高 く ,

-24-

スティック ・ スリップの発生が抑止されるとともに,

した. これは,

hり

(30)

微細構造を有するPVAハイドロゲルに, 潤滑液中のγグロプリンの保護 膜が形成し, その保護膜が境界潤滑性を有するためだと考えられる. 本膝 関節シミュレータによる摩擦計測の精度向上により, このような微細な変 化も計測可能となった.

(31)

2 . 3 まとめ

新たに開発した膝関節シミュレータを用いて, 軟質層を有する人工膝関 節の潤滑特性を検討した. その結果 導電性シリコーンゴムの軟質層を有 する人工膝関節は ある程度の粘度の潤滑液を使用すると UHMWPE の人工膝関節と比較して 優れた潤滑特性を示すことがわかった. 人工軟 骨として期待されるPVAハイドロゲルは導電性シリコーンゴムと比較し て, 直接接触が生じても優れた潤滑特性を示し, 特にγグロプリンを添加 すると, 非常に低摩擦となった. また, 歩行条件下では, 速度が遅く, 荷 重が高くなる位相で薄膜状態となり 厳しい摩擦状態になることが示され た.

(32)

立早 一一一 第

変動荷重 ・ 変動速度条件下における 人工膝関節の潤滑特性

3 . 1 膝関節シミュレータによる実験

3 1 1 運動条件

3 . 1 2 実験方法

3 . 1 . 3 結果及び考察

3 1 3 1 歩行運動条件下の摩擦特性

3 . 1 3 2 一定荷重条件下の摩擦特性

3 . 1 3 3 作動条件の摩擦係数への影響

3 2 P 1モデルによる最小膜厚の計算

3 2 1 主な記号

3 2 2 P 1モデルによる最小膜厚の計算法 3 3 実験と計算の比較

3 3 . 1 分離度とP 1モデルによる最小膜厚の比較

3 3 2 歩行運動との比較

3 . 4 まとめ

(33)

人工膝関節の設計に際して 形状と材料の両面で, トライボロジー的改

主主を考慮に入れる必要がある. 現在臨床で使用さ れている人工膝関節 は,

潤滑膜形成が困難な形状 ・ 材質になっているが, これは, 人工膝関節の作 動条件に おける潤滑膜形成と接触の過酷さの評価法が十分には確立してい ないことも一因だと考えられる. よって, より優れた潤滑性能を有する人 膝関節を設計するために 作動条件が潤滑膜形成に与える影響を根本的 に把握する必要があると思われる.

人工膝関節の主要な作動条件である歩行運動には, 多くの自由度があり,

その運動は非常に複雑であるが, 本研究では, 潤滑膜形成に大きな影響を 及ぼすと思われる屈曲伸展運動と 腔骨軸荷重のみについて考察を行う. 図 3 -1に, 第二章の歩行運動条件下の人工膝関節 評価のシミュレータ試験 に用いたMurrayら(幻)の屈曲伸展運動と, Morrison (児) による腔骨軸荷重を示

Heel strike

Stance phase Toe 0行』:�II Swing phase

2 100

zt刀旬。一ω一×何百五戸 ロ3

てコQ.) Q.) ロ3 50 æ

c o

× Q.) u..

20 40 60

Percent of cycle

80 0

100

図3-1 歩行時の膝関節における腔骨軸荷重と屈曲伸展運動

(34)

す. この運動条件は, 位相の600/0以前の立脚期では, 腔骨軸荷重は高く屈曲 伸展運動の速度は遅いため, 流体潤滑膜の形成は困難と思われる. しかし,

60%以降の遊脚期では 腔骨軸荷重は低く屈曲伸展運動は速いため, 潤滑膜 形成に有利な運動条件となることが期待される. そこで, UHMWPEと

軟質材である導電性シリコーンゴムを腔骨側に使用した場合について, 歩 行運動を模擬した膝関節シミュレータ試験により, 摩擦特性と潤滑膜形成 を調べた. また, 腔骨軸荷重と屈曲伸展運動を任意に与えることができる

、1/膝関節シミュレータを利用して, 軟質材を使用した場合について, 腔骨 軸荷重と屈曲伸展運動を多様に変化させることにより, 作動条件が潤滑膜 形成に与える影響を検討した. なお, シリコーンゴム製の腔骨部品の結果 を評価するために 軟質層を有する傾斜平面P 1モデルによる数値解析を

行い, 潤滑膜の変化を算出し, 実験値と比較した.

(35)

3 . 1 膝関節シミュレータによる実験 3 ・ 1 ・ 1 運動条件

腔骨軸荷重と屈曲伸展運動による摩擦状態、を調べるために図3-1の歩 行運動を模擬した条件の他に, 図3-2に示す運動条件を設定した. 図に 不すように, 屈曲伸展運動は, 正弦波で近似し, 腔骨軸荷重は正弦波とそ の平均荷重である一定荷重を用い, 屈曲伸展運動と腔骨軸荷重を組み合わ

せて使用した.

屈曲伸展運動は,

[30] :屈曲振幅(最大屈曲角) = 300

[60] :屈曲振幅= 600 (速度が[30]の2倍)

[30/60] :最初の屈曲振幅二300 二番目の屈曲振幅二600 の三種を用いた.

腔骨軸荷重は

[A] :最大荷重が1.0kN, 最小荷重がO.lkN [B] :最大荷重が2.0kN, 最小荷重が0.2kN

[B'] : [B]の荷重条件で位相を900 変えた条件

[C] :最大荷重が2.0kN, 最小荷重が1.0kN

[D] : [C]の荷重の位相のうち750/0前後で0.2kNまで荷重を減少する条件

[D'] : [D]の位相を900 変え, 荷重が減少する位相を若干長くした条件 及び,

[0.55kN] : [A]の平均荷重である0.55kNの一定荷重

[l.lkN] : [B]の平均荷重である1.1kNの一定荷重 という荷重条件を使用した.

以後の摩擦係数や潤滑膜厚の図中では, 30-Aのように屈曲伸展運動ー荷重 -30-

(36)

ロ)

90

て3ω

急60

C

ê5

30

× LL

�:

(a)Flexion-extension patterns

I 面画

330|;;;;YF;;;JiiiJス

さ1...

....-..l... ..._...f...- _ . ._----.

..l

A

)_

一一一一ー

0505 円ζ 41

41

nu

ZX刀ωo一ω一×ω一52一ト

(b)Tîbial axis load patterns

100

(b)Tibial axis load pa口erns

膝関節シミュレータで用いる腔骨軸荷重と屈曲伸展運動

刈3-2

(37)

条件として表現する.

3 ・ 1 ・ 2 実験方法

全ての運動条件で一周期を2.0sとし, 1周期日は, 屈曲伸展運動を行いな がら腔骨軸荷重を徐々に上昇させ, 2周期日より目標の運動を行い30周期

まで摩擦トルクと分離度の測定を行った. 以後, 摩擦係数や分離度は, 実 験開始後25周期日の値を使用した. 試験片は, 図3-3に示すように, 大

腿側は円筒型(SUS316製) , 腔骨側は平板型(UHMWPEと導電性シリ

Femoral component Ø60

ぱ3

UHMWPE

lïbial component

刻3-3 人工膝関節試験片 -32-

(38)

( S-30) を 全て30mm2/sのシリコーン油

潤滑液は,

を用いた.

コーンゴム製) 使用した.

結果及び考察 3

3

歩行運動条件下の摩擦特性 3 3

図3-4に歩行運動条件下の摩擦トルクとその摩擦トルクから得られた 完全分離電圧100mV) を示す.

摩擦係数及び分離度(並列抵抗: R = 510 Q,

トペぺ

μ 三;

0.6

E-Zωコσ』。←

、、,,,,hU ,,.‘、

: 6Nalking motion)

;---一人 : れνノ\

i5…il ………両 ii……ぷi一…ふ山5一ぷ一ふ5F」ム:;-iLj

(a)

0.05 c o ...

(.) ...

Mドー悼E0 4同dc

ω ιコ 芯=<1>

0 0

・0.05 0 -0.6

;(Walking motion bilicone rubberJ

20

Percent of cycle

40 (e) 60 80 (d)

100 100

1.0 C

...

c ‘ー

ω cl...

岡田・�o

O O O ...

ロ3<1>

Q

歩行運動時の摩擦特性 図3-4

:。Nalkingmotion

れベっ � ー

: ぃγへ� :

(uHMWP@ :

(39)

これより導電性シリコーンゴムを使用した場合(b)は, UHMWPEを使用 した場合(a)よりも低い摩擦トルクを示している. またそのときの分離度は(e) より, 全位相でほぼlである. したがって, 30mm2/s程度の粘度の潤滑液を 使用すると, 軟質材を有する人工膝関節の場合は, 歩行条件下ではソフト EHL作用により, かなりの流体潤滑膜が形成され, UHMWPEよりも 優れた潤滑性能を有すると思われる.

なお, 導電性シリコーンゴムでは, 60%前後の位相で摩擦トルクはあまり 大きくないものの 摩擦係数の大きな上昇が見られる. 一方, U HMW P E (c)では, 摩擦係数の急激な上昇は荷重低下時のこの位相において見られ ない. これは, 導電性シリコーンゴムの場合, 変形回復が遅れ, 広領域で 薄膜状態が持続するため低荷重下で大きな摩擦係数を示したものだと考え られるが, 摩擦力自体は小さいので, この影響は少ない.

このように, 歩行状態では特に過酷な条件の立脚期において軟質材の優 位性が認められたので, 以後は軟質材を用いた場合に限定して結果と考察 を述べる.

3 ・ 1 ・ 3 ・ 2 一定荷重条件下の摩擦特性

刈3-5に一定荷重条件下の摩擦係数を示す. 速度が遅く荷重が低い条 件(a)30-0.55kNでは, 摩擦係数の最大値が, 約0.05とやや高めの値を示してい る. これに対し, 荷重が2倍である条件(b)30-1.1 kNでは, 摩擦係数は, さら に0.2近くまで上昇し 非常に高い値を示している. 一方, 速度が2倍の条

件((c)60-0.55kN, (d)60・1.1kN)では, どちらの荷重条件でも摩擦係数は, 非 常に低い値を示し, かなり流体潤滑に近い状態だと考えられる. この一定 荷重の条件下では, 変動荷重下におけるようなスクイーズ効果(則, (紛)をあ

-34-

(40)

((a)

3ひ0.55

川 ヘ\十J

100

:

(

(d) 60・1.1kN

)

20 40 60 80

Percent of cycle

100 0

: (

(c) 60-0.55k

ト==4=i一寸一一一

20 40 60 80

Percent of cycle

nu

n/」

内/』

門/』

円ζ nu

nu nu

nu

cozo三Fovco一口一位ωoocozo一」』』ovcω一ω一ヒω00

一定荷重下の摩擦挙動 刈3-5

くさび効果による潤滑作用が主体であるため, 速度が速 まり期待できず,

速度が遅い小振幅で低荷重条件下ではあまり摩擦は大 い大振幅の場合や,

小振幅で高荷重条件下では流体潤滑膜の形成が十分 高摩擦を生じるものと考えられる.

きくならないものの,

にはなされないため,

作動条件の摩擦係数への影響 3

3 3

速度, 荷重と 図3-6に速度 ・ 荷重条件による摩擦係数の違いを示す.

その平均荷重である図3- 5の一定荷重条件 もに低い(a)(30-A)の条件では,

荷重が低い このことより

(a)30-0.55kNよりやや低めの摩擦状態となった.

過大な接触を防ぐ程度の潤 速度が遅くともくさび作用により,

条件では,

非常に高い摩 その平均荷重は同じであ 一定荷重では,

擦係数を示した図3-5 -(b)30-1.1kNと比較して,

滑膜が形成されていると考えられる. 一方,

(41)

ドでの若干の摩擦係数の トロークエン

る図3 -- 6 --(b)30-Bの条件では,

図3--6 --(a)30-Aと 低摩擦状態を維持しており,

昇が見られるものの,

高い荷重域で運 動する条件(c)30-Cで、

位相 次に,

。) 3亘

; 〕λ: バ

トゾ ; 円� :

非常に厳しい摩擦状態となる.

也竺主

\ ト~ーよーノーヘ : トム一一一ノ

!V j V7--v ; しかし,

ほぼ同程度の値を示している.

極端に上昇し,

は摩擦係数は,

\ ; 同\ トf

Jυ ;日 ←

100

((g)

30/60・

\ ! μ-�ーペ j __;

ホ、ノ : ←→---0

20 40 60 80

Percent of cycle

nu

n/』

司L n/』

円ζ

司ζqLnζ門/』

nu

nu

nu

nu nu

nu

nu

nu

cozo一」』』ovco一ω一ヒωoocozu一」』』ovcω一ω一位。oocozo一」』』ovco一o一tooocozoz』』ovcω一U一zooo

(

(e) 60・c

)

100

屈曲伸展運動と腔骨軸荷重が摩擦挙動に与える影響 図3--6

-36-

(42)

の75%で荷重が減少する条件(d)30-Dでは, (c)30-Cと比較して, 荷重が低くな る位相(75%付近)を除いて, 全位相において摩擦係数の減少が見られる.

以上より速度が遅く くさび効果が少ない条件では, 荷重の影響は, 最大 荷重の値よりも, 低荷重域の有無により潤滑状態、が支配されるものと考え られる. また 全位相中で, 一度低荷重となる位相があると, その低荷重 の位相で回復した潤滑膜が, 高荷重下の位相の初期膜厚となるために全行 程の改善をもたらす.

位相を変化させることによる摩擦係数の変化を図3-6の(b)30-Bとの30-B' で比較する. 速度が速い位相で荷重が高い条件((b)30-B)が速度が遅い位 相で荷重が高くなる条件((f)30-B')より摩擦係数が小さくなっている. こ れは, くさび作用による潤滑膜が形成されないストロークエンドの位相で,

荷重が高くなるために, その位相で潤滑膜が薄膜となり, その後の速度が 速い位相で十分に潤滑膜が回復しないために摩擦係数が上昇するためと思

われる.

次に, 速度条件による摩擦係数の違いを示す. 速度を[30]の2倍にした条 件の図3-6 -(e)60-Cでは, 図3-5の一定荷重の場合同様に[30]と比べて 摩擦係数はかなり減少する. 特に最大荷重が高く, 最小荷重が高いCの荷重 条件では, かなりの摩擦係数の低下が観察される(図3-6 -(c)→(e)) .

また[60]の速度条件では, 荷重条件による摩擦係数の大きな差は見られなか った. 以上より 速度が速い条件では, 荷重条件が厳しくてもある程度の

流体潤滑膜は形成されると考えられる.

そこで, 最初は速度が遅く次の屈曲伸展運動で速度が速い[30/60]の条件を 試みたところ, [30]の速度が遅い条件と比較して, かなり低い摩擦状態とな り, [60]に近い摩擦係数を示した. このことより, 速度が速くなる位相があ

(43)

るとその位相でくさび作用により潤滑膜が形成され, 速度が遅い位相にお いても膜厚の低下が有効的に抑えられるために, かなり良好な潤滑状態に なると考えられる. 以上の結果より, 遊脚期に速度が速くなる位相がある 歩行運動は, 速度条件から考えて潤滑膜形成に有利な条件であると考えら れる.

-3 8-

(44)

3 ・ 2 P 1モデルによる最小膜厚の計算

シミュレータ試験により得られた流体潤滑膜の形成状態の測定値と数値 解析による最小膜厚の計算値との比較を行うために, Medleyら(5 )によって

提案されたP 1 ( 傾斜平面Plane lnclined surface) モデルを用いた. そのモデ ルを図 3-7に示す. これは, 歩行運動時の生体関節に見られるような,

周期的な変動荷重と往復運動を受ける軟質材摩擦面をモデル化したもので あり, 動的な条件下での流体膜厚の変化を予測するため, 線接触条件下の 軟質材摩擦面のEHL理論を簡略化したものである. このモデルは, 流体 潤滑下での摩擦面形状を傾斜平面とし 弾性接触幅の中央で圧力が最大に なると仮定したものである.

本研究では, 軟質層を有する摩擦面を対象として解析を行ったGladstone(41) らの計算手順に従い l周期中の最小膜厚の変化及びその最小膜厚から得

A叩 初夜

X

図3-7 P 1 (傾斜平面)モデル

(45)

られる摩擦トルクを求めた.

3 2 1 主な記号

b:弾性線接触幅

B:運動方向潤滑面長さ D:潤滑面傾斜

E:縦弾性係数

F' :単位幅 当たり荷重 ho :最小膜厚

hc:中心部膜厚

hmin :定荷重 - 定速度条件下における最小膜厚

1 :潤滑面幅

p:流体圧力 R:等価半径

t :時間

t h :軟質材厚さ

T:トルク u:平均速度

u:すべり速度 η:粘度

3 . 2 2 P 1モデルによる最小膜厚の計算法

最初に, 一次元レイノルズ式を式( 1 )に示す.

-40-

(46)

ま(

hJ

!)

= 12

+

弓)

式(1 )

ここで, 摩擦面を傾斜平面と仮定すると, 次式のようになる.

h二h-

t

x 式(2 )

式(1), (2)を解くことにより, 式(3 )を得る.

式(3 )

ここで圧力中心は,

-hB

X=

一一一一一一

2h+D

式( 5 )

弾性接触幅の中央で最大圧力が生じるので, BとDの関係はMeijers (幻)の式 による接触幅を用いて求めた.

B=

b(1引

式(4 )

次に低荷重 ・ 低速条件下での傾斜平面形状と負荷容量の関係よりBとDを求 める.

、EEEEl、rElBEEノ

DD

一今ノM 一'n

2 一 +-

\1111111ノ

D一丸

+

/Illi--\

rill--tlo--、

n

M7

F

式(6 )

膜厚hminはHook (伺)の計算結果よりGladstoneらが求めた式(6 )を用いた.

ny OB nU内‘J oo εJ OAU

4ノω 勺L

\11111ajノ 4

b一九 /lill--\

ハリ 司、〕

/O /O

+

ぺ‘JnU1J

ζJ 今ん OAU 一一

一h

m

式(7 )

ここで,

γ- hminF'

- -rrun ηuR

式(8 )

(47)

0.375 g3 =

_,/ 一一-=--

F'

ηuER

式(9 )

また, すべり速度u=oとなる付近では, 次式で近似した.

dho _

F'ば

dt η'B3 式(1 0)

摩擦トルクは次式で近似した.

T=ゆ

、,.. �プ、 I._ I._ 1....

Db

=ho + ー

2B

式(1 1)

式(1 2 )

ー42-

参照

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