-70-本研究では, 人工膝関節の潤滑特性を膝関節シミュレータ試験機を用い て評価した. 本研究において明らかになった内容を以下に示す.
( 1 )軟質層を有する人工膝関節は, ある程度の粘度の潤滑液を使用する
と, UHMWPEの人工膝関節と比較して, 優れた潤滑特性を示すことが わかった. 人工軟骨としての使用が期待されているPVAハイドロゲルは,
若干の接触が生じる条件でも優れた摩擦特性を示し, 特にγグロプリンを 添加すると非常に低摩擦となった. また, 歩行条件下では, 速度が遅く,
荷重が高くなる位相で薄膜状態となり 厳しい摩擦状態になることが示さ れた.
( 2 )屈曲伸展運動を正弦波 腔骨軸荷重を一定荷重と正弦波で近似する
ことにより, 歩行運動時の荷重と屈曲伸展運動が潤滑膜形成に与える影響 を調べた. その結果 屈曲伸展運動 腔骨軸荷重ともに潤滑状態、に大きな 影響を与え, 速度が速くなる位相や, 荷重が低くなる位相が存在すると,
摩擦状態がかなり改善されることが示された. また P 1モデルによる数 値計算により得られた結果は 実験値と近いものであり 軟質層を有する 人工膝関節の最小膜厚の変化を良く再現しているものと恩われる.
( 3 )摩擦方向に長い接触域を有する場合は, かなりの直接接触が生じ,
非常に高摩擦状態となるが, 摩擦方向に対して直交方向に長い場合は, 同 一作動条件下で低摩擦状態となり 流体潤滑膜がかなり形成されることが 示された. また, 荷重が低く屈曲伸展運動の速度が速い遊脚期に流体潤滑 膜が形成されやすい二円弧型人工膝関節は 摩擦トルクと電気抵抗法によ る分離度から 円筒型よりも優れた潤滑性能を示し 薄膜条件下では有利 な形状であると思われる.
以上の結果より より長寿命の人工膝関節を設計するには 歩行運動条
件下で, 大腿部と腔骨部の直接接触を妨げるのに十分な厚い流体潤滑膜を 維持する必要がある. そのためには 材料設計と形状設計の両面から検討 を行う必要があり, 材料設計の面からは, 軟質層を有する人工膝関節が有 利であった. また 軟質層を有する人工膝関節の最小膜厚の計算には, p Iモデルが有効な手法であった. 形状設計の面からは 接触域への潤滑液 の十分な供給が期待される線接触の接触域を有し, 遊脚期の位相で潤滑膜 が回復するこ円弧型の人工膝関節が優れた潤滑性能を有すると思われる.
人工膝関節の潤滑膜形成には 屈曲伸展運動と腔骨軸荷重が大きな影響を 与えるので, その評価には, これらの影響を十分に考慮に入れなければな らない. また 臨床での使用には 潤滑膜形成だけでなく, 人工膝関節置
換後の膝関節の可動性や安定性も非常に重要となる. また耐久性を確認す るために, 長期の耐久試験を行わなければならない. 以上より, 人工膝関 節の設計には 潤滑膜形成を中心とした, 最適設計の指針を確立する必要 があると思われる.
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謝辞
本研究を終えるに当たり, 研究課題の発案から本論文のまとめにいたる まで, 終始変わらぬ懇切なる指導を賜りました, 九州大学工学部 ・ 村上輝
夫教授に, 心より感謝申し上げるとともに, 厚く御礼申し上げます.
九州大学工学部 ・ 市丸和徳教授, 山本雄二教授からは 種々の有益なご 教示, 御助言を承りました. ここに, 厚く御礼申し上げます.
また様々な場面において, 数多くの御助言を頂きました, 九州大学工学 部 ・ 杉村丈一助教授イ和泉直志助教授に, 深く感謝申し上げます.
さらに, 多くの御指導, 御協力を頂きました, 九州大学工学部 ・ 津江義 則講師に深く感謝申し上げます.
実験の遂行に当たり, 多くの御助言, 御指導を頂きました九州大学工学 部 ・ 日垣秀彦助手, 権藤誠吾助手, 小野文慈助手に心より御礼申し上げま す. また, 九州大学工学部 ・ 坂本弘技官, 橋本正明技官, 土井俊一郎技官 には, 実験装置や試験片の製作に当たり, 多大なご助力を頂きました. こ こに深く御礼申し上げます.
本研究の遂行に当たりご援助と御協力を頂いた九州大学工学部設計研究 室のみなさんのご助力に心より深く感謝いたします.