4 ・ 1 接触域形状による潤滑特性の比較
4 ・ 1 ・ 1 実験方法
4 ・ 1 ・ 2 結果及び考察
4 ・ 2 二円弧型人工膝関節の潤滑特性
4 ・ 2 ・ 1 実験方法
4 ・ 2 ・ 2 結果及び考察
4 ・ 3 歩行運動条件下におけるこ円弧型人工膝関節の潤滑特性
4 . 3 ・ 1 実験方法
4 ・ 3 ・ 2 結果及び考察 4 ・ 4 まとめ
現在臨床で用いられている人工膝関節は, 一部では, 円筒面型( 45)や半月 要素を有する型( 46)など良好な形状適合性を有する潤滑を考慮に入れた形状
も使用されているが, 多くは, 解剖学的デザインである. そこで, よりす ぐれた潤滑性能を有する人工膝関節の形状設計を行うために 軟質層を有 する数種の人工膝関節を試作し 形状が潤滑特性に与える影響を検討した.
最初に, 基礎的な実験として, 球形の大腿部と円弧凹面腔骨部の組合せ により, 同一接触面圧で摩擦方向に対する接触域の形状を異ならせて, 摩 擦特性に与える影響を調べた. また 遊脚期における潤滑膜の回復を意図 した二円弧型人工膝関節について, 円筒型と比較することによりその潤滑 性能を検討した. 二円弧形状の潤滑性能評価に際しては, まず, 加工が容 易であるアクリル樹脂で4種の大腿側試験片を製作し, 単純化した歩行運 動模擬条件下でシミュレータ試験を行った. この材料の組合せでは, 摩擦 トルクからのみの評価に限定されたので 良好な潤滑膜形成が認められた 形状を選定し, 大腿部をステンレス鋼で製作することにより 電気抵抗法 による分離度の評価を含めて試験を行った.
-54-4 . 1 接触域形状による潤滑特性の比較 4 ・ 1 ・ 1 実験方法
接触域(Conjunction)の形状が摩擦方向に対して同方向に長い条件と直交 方向に長い条件との比較を行った. 歩行運動条件下で 膝関節シミュレー
タを用いて, 大腿軸トルクと, 電気抵抗法による分離度(並列抵抗:R=
510Q, 分離電圧100mV)を測定し, 評価した. 使用した試験片を図4 -1に 示す. 大腿側は, SUS316製で半径30mmの球面型を用いた. 腔骨側は, 半径 39mmのカップ型で, アクリル樹脂上に3mmの導電性シリコーンゴムを接着
したものを使用した. 図 4-2に示すように, 球形の大腿側試験片を用い ることにより, 腔骨側の方向を900 変化させることにより, 接触面積を変 化させずに摩擦方向に対する接触域の方向を変えて比較を行った. r間滑液 としては, S-30を使用した
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SR30mm の80
コJ
Femoral component Tibial component
図4-1 試験片形状
Longtitudinal Transverse
図-4-2 試験片のシミュレータへの取り付け
coZQω』一万一ωcoZQZhL
Longtitudinal
co一voφ』一万一ccozo一』比
Transverse
旦旦旦4
図4-3 2kN におけるSR30mmの接触面積
4 ・ 1 ・ 2 結果及び考察
図4 -3に2kNに おけ る接触面積を示す. 長径と短径の比は ほぼ2 : 1
である. 図4-4に接触域が摩擦方向に長い場合と摩擦方向に直交方向に 長い場合の摩擦トルクと分離度の比較を示す. 接触域が摩擦方向に長い場 合は, 全位相で非常に高い摩擦トルクを示している(図4 -4 (a)) . また
電気抵抗法による分離度も低い値を示し(図4-4 (c)) , 全位相でかなり の 直接接触が生じ, 非常に厳しい摩擦状態となっている. これに対し, 接
-56-3
nu
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)(Transvers司
40 (d) 60 Percent of cycle
図4-4 接触域の方向による摩擦挙動の比較
触域が摩擦方向に対して直交方向に長い場合は, 摩擦方向に長い場合と 比 較して摩擦トルクは大きく減少する(図4 - 4 (b)) . また分離度からも,
45%前後の位相で若干の低下が見られるが, それ以外の全位相で分離度はほ ぼlであり(図4 - 4 (d)) , かなり良好な摩擦状態にあると考えられる.
これは, 接触域が摩擦方向に対して直交方向に長い場合は, 接触域に潤滑 液が十分に供給され, また形成された流体潤滑膜が維持されるが, 接触域 が摩擦方向に長い場合は, 潤滑液の供給が不足傾向になるとともに, 潤滑 液の側方への漏れが大きいために, 直接接触が生じ 高摩擦状態になった も のと考えられる. よ って, 人工膝関節の形状は 摩擦方向に対して直交
方向に長い形状が潤滑膜形成には有利であると考えられる.
次節では, 接触域への潤滑液の十分な供給が期待され 潤滑液の側方へ
の漏れが少ない線接触を対象として 大腿側が二円弧形状である人工膝関 節についてネ食言すを行う.
-58-4 ・ 2 二円弧型人工膝関節の潤滑特性
生体の大腿骨形状は, 高荷重域である立脚期では, 曲率半径は大きく,
遊脚期に曲率半径が小さくなっている. この形状について潤滑の視点から 考察すると, 歩行時の遊脚期における荷重が低く, 屈曲伸展運動の速度が 速い位相において流体潤滑膜の形成を促す可能性もある. この形状を基に,
複数の円弧からなる人工膝関節が提案されているが, ここでは, 単純な一 円弧型の人工膝関節を円筒型と比較することによりその潤滑特性を検討す る.
4 ・ 2 ・ 1 実験方法
二円弧型人工膝関節の潤滑性能を検討するために 図4-5に示す人工
膝関節を試作した. 大腿部品は加工が容易なアクリル樹脂製で,
( a )半径30mmの円筒型 ( b )半径29-30mmの二円弧型 ( c )半径28mm-30mmの二円弧型
( d )半径26mm-30mmの二円弧型
の四種を数値制御切削加工機を用いて製作した. (b), (c), (d)
の二円弧型では 屈曲角450 の接触部に相当する位置で円の中心をそれぞ れlmm, 2mm, 4mmず、つ変位させ二つの円弧の接線が一致するような形状と して, 曲率を変化させた. 大腿部品は 立脚期に大腿駆動軸と同心となる ように取付けた. また, 腔骨部品は, アクリル樹脂上に3mm厚の導電性シ リコーンゴムを固定したカップ型を使用し, 摩擦面形状については,
(A )半径33mm
( B )半径36mm ( c )半径39mm
の三種を試作し実験を行った. 実際に人工膝関節を体内で用いる場合には,
生体から分泌される体液や二次関節液で潤滑を行うことになるが, これら
(a) 30mm
(c) 28-30mm (d) 26-30mm
Femoral component (at flexion of 45 deg.)
Tibial component
図4-5 試験片形状
-60-100
ロ30 てコω
・一一' 一一 - 4 50 ロ35
c o
× 。 LL
0
人メ
100腔骨軸荷重と屈曲伸展運動
2
ZU4刀ωo一ω一×ω一ED戸
20
図4-6
。
そこで潤滑液としては, 生体と の実効粘度は0.002� 0.1Pa. sとみなされる.
2S0C,
同程度の数種の粘度を有するシリコーン油(動粘度: 10� 100mm2/s,
と低粘度の極限に相当する蒸留水を使用した.
以後S-10� S-100と称する)
複雑な歩行条件を正弦波で近似した 腔骨軸 荷重 と 屈 曲 伸 展 運動として,
これは, 歩行局 図 4 - 6の条件を用いて形状や材質による影響を調べた.
実際の歩 期の75%前後で荷重 が減少する遊脚期を考慮した運動条件で,
また遊脚期の位相が短いので潤滑 行運動より立脚期の荷重 減少が少なく,
第三章で示したように歩行運動における潤滑状態 に近い状態であると考えられる.
に対して若干厳しいが,
結果及び考察 2
4 2
許容面庄の制限によ 軟質層を有する人工膝関節の臨床適用に際しては,
第三章で示した り摩擦面聞の形状適合性の向上を考慮する必要があるが,
ように遊脚期における潤滑膜の回復も重視すべきである. そこで, 遊脚期 における形状の効果に着目して 二円弧形状の大腿部を有する人工膝関節 の潤滑特性を円筒型と比較して調べた. 図4-7の(1)に大腿側に円筒型と
一円弧型, 腔骨側にカップ型, 潤滑液にS-10を用いたときの実験開始後25周 期目の摩擦トルクの一周期中の変化を示す. また図4-7の(2), (3), (4)に 潤滑液にS-30. S-10 蒸留水を用いたときの摩擦トルクが安定し始める4周 期目から30周期目の摩擦トルクの絶対値の平均値を示す. この平均値を求 める際に, 二円弧型の場合は, 偏心によるトルクが影響を生じうる. そこ で, 全試験片とも屈曲角450 以上のデータを除いて平均値を算出した.
潤滑液にS-30を使用した条件(図4-7 -(2))では, 摩擦トルクは低く,
流体潤滑が主体となっていると考えられる. 大腿側が円筒型である( a )で比 較すると, 腔骨側の半径すき間が小さい(A)では, (B), (C)と比較して摩擦 トルクが上昇している. これは 半径すき聞が小さく潤滑液の粘度が高い ため, 潤滑液の導入性が悪化したため(灯)だと考えられる. 次に, 半径すき 聞が大きい場合((B), (C))には大腿側が二円弧型の方が, 円筒型より摩 擦トルクが若干大きくなっているが, 大差は無い. よってS-30程度の粘度が 高めの潤滑液を使用した条件では 小すき間の場合を除き 低摩擦を維持 しうる流体潤滑膜が形成されるので 二円弧型を採用しでも あまり変化 はないと思われる.
次に潤滑液にS-10を用いたときの25周期日の摩擦トルクを比較すると, 図
4-7の(1)より二円弧型は円筒型と比較して, 曲率を変化させた位相だけ
でなく, 全位相において摩擦トルクが減少している. このことから曲率の 変わる遊脚期で形成された流体膜が全位相で有効に維持されたと思われる.
また腔骨側にどの試験片を用いても円筒型より二円弧型の方が摩擦トルク
-62-Femoral:仁二](a):30mm 瞳盟掴(c):28-30mm (b):29-30mm :-_二二:(d):26・30mm
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長面
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4.5 3 1.5 E・Zωコσ」戸cωω三 6
形状による摩擦トルクの変化
図4-7
が減少している(図4- 7 - (3)) . よって, S-10程度(約O.OlPa. s)の潤滑 液を使用する場合には 二円弧型の人工膝関節は円筒型より優れた潤滑性
能を有すると考えられる.
潤滑液に蒸留水を使用した場合には
摩擦トルクは非常に高く(図4-7一(2)) , かなりの直接接触が生じていると思われる. 腔骨側の形状で比
較すると, 半径すき聞が小さい(A)の摩擦トルクがどの大腿側試験片に対し ても一番小さくなっている. また二円弧型による摩擦トルクの減少も見ら れない.
以上より, 大腿側を二円弧型にする形状は, 潤滑液にS-10を使用した場合 に特に摩擦トルクを減少させた. このことから 潤滑膜形成に関して潤滑 液の粘度域に応じた最適な形状があると思われ その形状の一つが二円弧 型であることが示された.