頭部 また は尾 部 組織 を 欠損 した ツ メガ エル 胚 にお け る 内臓 左右 軸 形成 一胚 の 中軸 組 織 は内臓 左 右 軸 の 向 き に影 響 す るか?‑
Left‑rightaxisformationinthedorsalizedorventralizedXenopuslaevisembryos:
Doesdorsal‑midlinedevelopmentaffecttheleft‑rightorientationofvisceralorgans?
神 奈 川 大 学 理 学 部 応 用 生 物 科 学 科
豊 泉 龍 児 ・樋 ロ 麻 美 ・金 田 昌 子 ・ 日 野 晶 也 ・竹 内 重 夫 RyujiToyoizumi,AsamiHiguchi,MasakoKaneda,AkiyaHinoandShigeoTakeuchi
【要 旨 】
Yostら(1995)は 、 ツ メ ガ エ ル 受 精 卵 の 表 層 回 転 を 阻 害 す る こ とで 頭 部 組 織 を 欠 損 させ た 胚 や 、 卵 割 期 の 背 側 割 球 にXwnt‑8mRNAを 微 量 注 射 す る こ とで 頭 部 組 織 を 欠 損 させ た 胚 に お い て 、 心 臓 逆 位 が 高 率 に生 じる こ とを 発 見 した 。 彼 らは そ の 理 由 に つ いて 「頭 部 中軸 組 織 は 内臓 の 左 右 軸 の 決 定 に 関与 す る 因 子 を 放 出す る の で 、 頭 部 が 欠 け る と 内臓 が 左 右 軸 の 手 が か りを 失 い 内臓 逆 位 が 生 じる 」 と した 。 筆 者 らは 、彼 らと は異 な る 以 下 の3つ の 処 理 方 法 を 用 いて 頭 部 欠 損 症 状 を持 った 胚 を人 工 的 に作 出 し、 そ れ らの 心臓 や 腸 管 の 左 右 非 対 称 性 の 正 位/逆 位 を 調 べ た 。 頭 部 欠 損 の 程 度 と 内臓 逆位 の 出現 率 とが 相 関 す るか 否 か を解 析 す る こ とで 、Yostら の 仮 説 の 検 証 を 試 み た 。
胚 の 頭 部 形 成 を 阻害 す る こ とが 知 られ る レチ ノイ ン酸 で 短 時 間 暴 露 処 理(パ ル ス 処 理)し た ツ メ ガ エ ル 胞 胚 〜 神 経 胚 の 内臓 逆 位 の 出 現 率 につ いて 調 べ た 。1‑10オMレ チ ノ イ ン酸 処 理胚 は 著 しい頭 部 欠損 症 状 を示 した に もか か わ らず 、そ れ らの 内臓 逆 位 出 現 率 は1%
(3/263)と 、 無 処 理 胚 に お け る逆 位 の 自然 発 生 率 と同 レベ ル で あ った。
カ ル シ ウ ム イ オ ノ フ ォ アA23187の パ ル ス処 理 によ って 、 発 生 段 階依 存 的 に 頭 部 欠 損 胚 また は 尾 部 欠 損 胚 が 得 られ る(後 藤 ら,1994)が 、 そ の 場 合 の 内臓 逆 位 出現 率 につ いて 調 べ た 。 後 藤 らの報 告 で は 、初 期 卵 割 期 の 処 理 で は胴 尾 部 欠 損 胚 が 得 られ 、 卵 割 後 期 〜 胞 胚 期 の 処 理 で は 頭 部 欠 損 胚 が 得 られ る と あ るが 、 我 々 の 実 験 結 果 は そ れ と正 反 対 の もの で あ った 。 初 期 卵 割 期 の 処 理 で は 頭 部 欠 損 が 見 られ 、 後 期 胞 胚 〜原 腸 胚 期 の 処 理 で は胴 尾 部 欠 損(特 に尾 部 欠 損)が 観 察 され た 。原 腸 胚 期 にA23187処 理 を行 った 胚 の63%(15/24) が 内臓 逆 位 を 示 した 。 処 理 によ って 尾 部 を欠 損 した 胚 の 多 くは 内 臓 逆 位 胚 で あ った 。
塩 化 リチ ウム処 理 で 内臓 逆 位 が 生 じる こ とが 、 高 谷(1949)に よ って 明 らか に され て お り、一 方 、 品 川 ら(1989)に よ り胞 胚 期 〜原 腸 胚 期 の リチ ウム処 理 で 頭 部 欠損 胚 が 得 られ る こ とが 報 告 され て い る 。 そ こで 、 リチ ウム 処 理 によ る頭 部 欠 損 の 程 度 と 内 臓 逆 位 の 出現 との相 関 につ いて 調 べ た 。 原 腸 胚 期 の リチ ウム 処 理 で 、11%(8/72)の 個 体 に 内臓 逆 位 が 生 じた 。 同 じ処 理 群 の 中 に頭 部 が 欠 損 した 胚 も 多数 得 られ 、 頭 尾 軸 欠 損 指標Dorso‑
Anteriorlndex(Kao&Elinson,iii)の 平 均 は4.35で あ った(n=72)。 しか しな が ら、
個 々 の 胚 につ いて 頭 部 欠 損 の 程 度 と逆 位 発 生 との 相 関 を調 べ る と 、逆 位 胚 の75%はDAI5
【序論 】
高等 脊椎動 物 の 内蔵 諸 器 官は 、その 外部 形態 の対 称性 とは う らは らに、体 腔 内 にお いて、
著 しい左右性 を示 す もの が ある(脾 臓 、膵 臓 、腸 管、 心臓.̲etc.)。 古来 か ら、発 生 学研 究 の中心 的な 問題 と して 、 この左右 性の 成 立の機 序 は、発 生学 者 の興 味 を掻 き立 てて きた。
器 官の 左右性 は、 自然界 にお いては通 常一 定 の厳 密な規 則性 が あ る。 と ころが希 に、内蔵 の左右 性の逆 転 した 個体 が現 れ る。 これ を 内蔵 逆位 と い う。 人 間 に も、他の 遺伝 的 な疾 患 症状 と連動 した形 で逆 位 が現 れ る ことが知 られ て いる。
動 物 胚の か らだ は、頭 尾軸 ・背 腹軸 ・左 右軸 の3つ の軸 を も とに3次 元 的 に構 築 され る。
先 に頭 尾軸 や背腹 軸 が 細 長 い胚体 の 中軸構 造(神 経管 や脊 索や体 節)を 左右 対 称 につ く り あげ、 それ か ら心臓 や腸 管 の左右 非対 称性 が 顕在化 して くる。胚 の 中軸 構造 と左右軸 とは、
干渉 しあ うことのな い独 立な メ カニズ ム に よ って決 定 され るの だ ろ うか?そ れ とも両者 は 連 鎖 関係 にあ って 、た とえ 内臓器 官 を形成 す る予 定運命 の細 胞群 が 無傷 で あ って も、胚 の 中軸構 造 に生 じた 障害 が 内臓 の左 右軸 に影 響 する ので ろ うか?
ッメガエ ル受 精卵 の表 層 回転 を紫外 線 照射 によ って 阻害 す る ことで 、頭部 組織 が 欠損 ★ した胚 が得 られ る ことが知 られ て いる(Gerhartら,1989)。DanosとYost(1995)は 、 こう して得 られ た頭 部 組織 欠損胚 にお いて、 心臓逆 位 が 高率 に生 じる ことを発見 した。
頭部欠 損 の度合 いが 著 しい胚 ほ ど、逆 位 が高 頻度 で起 こる こと も見 出 した。Xwnt‑8 mRNAを 卵 割期 胚 の背側 赤道 域 に注射 す る こ とで も頭 部欠損 胚 が得 られ る(Sokolら,
1991)が 、 この 処理 を行 った 場 合 に も頭部 欠損 の度 合 いと内臓逆 位 の発 生率 が正 の比 例 関係 にあ った。 これ らの結果 か らYostら はr頭 部 中軸 組織 は、 内臓 の左右 性 を決 定 す る』
墨
ゼ ブ ラフ ィ ッシ ュの 脊索 欠損 突然変 異胚flh(floatinghead),ntl(notaiDや 、頭部 背 側 組織 を切 除 した ツ メガエル 胚 にお いて 、高 頻度 の 内臓逆位 が 見 出 され る との 報告(Yost
ら,1996)の 中で も、彼 らの主 張 は繰 り返 され て いる。
彼 らの仮 説が 一般 化 で きる もので あ るな らば、Yostら とは別 の方 法 で作 出 した頭部 欠 損胚 において も、 内臓 左右 軸 は反転 す るはず で ある。 そ のよ うに考 え た筆者 らは、 頭尾 軸
に沿 った 欠損胚 を高率 で生 じさせ る ことが知 られ て いる以 下 の3つ の処 理 を行 った胚 につ いて、頭 部組織 の 欠損 が 内臓逆 位 を誘起 す るか否 か につ いて調 査 した。
*レ チ ノイ ン酸 処理
*カ ル シウム イオ ノ フ ォアA23187処 理
*塩 化 リチ ウム処理
これ らの 物質 に短 時 間浸 した ツメ ガエ ル 胚 を培養 し、3日 胚 の 時期 に、頭 尾軸 に沿 った 中軸構 造 の欠 損 の度 合 いを調 べ た。処 理 胚 が4日 胚 にな ってか らは、 心臓 と腸 管の 左 右非 対 称性 が正 常 な もの(正 位)か 、 左右 反転 した もの(逆 位)か につ いて判 定 した 。 個 々の 処理 胚 にお ける 中軸構 造 の 欠損 の 程 度 と 内臓 の 左右 性 の 正位/逆 位 の2つ の 情報 を照合 し、頭 尾 軸 と左 右軸 との連 鎖 の有 無 につ いて 定量 的 に検 討 した 。 最後 に、得 られ た結 果 を も と に Yostの 仮説 につ いて の検証 を試 み た。
★ ..本稿 で は 、 「欠 損 」 と い う 言 葉 を 「楼 小 化 」 ま た はr欠 失(欠 落)」 と 定 義 す る 。
【材料 と方法 】
特 定 の 遺 伝 的 な バ ッ ク グ ラ ン ドを 持 た な い 野 生 型 の ア フ リ カ ツ メ ガ エ ル(Xenopus
laevis)を 人 工 受 精 さ せ て 得 た 胚 を 材 料 に し た 。2.5%チ オ グ リ コ ー ル 酸 溶 液(pH8.2)ま た は2%シ ス テ イ ン 酸 溶 液(pH8.2)を 用 い て 、 第 一 卵 割 後 に 室 温 で 脱 ゼ リ ー し た 。 淡 水 相 当 の 浸 透 圧 を 持 つ10%ス タ イ ン バ ー グ 氏 液(pH7.3)中 で 、 必 要 な 発 生 段 階 に 達 す る ま で 室 温 (18〜24℃)で 培 養 し 、(1}〜(3)の い ず れ か の 処 理 を 室 温 で 行 っ た 。
〈 実験1/レ チ ノイ ン酸 処 理 〉
レチ ノイ ン酸 をDMSOに 溶 か して か ら10%ス タ イ ンバ ー グ氏液 で 希釈 し、0.1‑10オMの 濃 度 の レチ ノイ ン酸 溶液 を調 製 した 。胞 胚(stage8)〜 神経 管 閉鎖 期 の初 期 尾芽 胚(stage 20‑22)を これ に30分 間浸 した 。 実験 群 にお けるDMSOの 最終 濃 度 は0.1%以 下 にな るよ
うにス トック溶 液 を調 製 した。
<実 験2/calciumionophoreA23187処 理>
DMSOに 予 め 溶 か し10%ス タ イ ン バ ー グ 氏 液 で 希 釈 し た1オMのcalciumionophore
A23187溶 液 に5分 一1時 間 浸 し た 。 実 験 群 に お け るDMSOの 最 終 濃 度 は0.1%以 下 に な る よ う に ス ト ッ ク 溶 液 を 調 製 した 。 予 備 実 験 に よ り 、 死 亡 率 を 抑 え 、 か つ 頭 尾 軸 に 沿 っ た 欠 損 症 状 が 最 も 大 き く な る 処 理 時 間 を 探 し た 。 そ の た め 、 実 験2の 処 理 時 間 は 初 期 卵 割 期 胚 (stage4‑6)で5‑10分 と し 、 後 期 胞 胚 〜 原 腸 胚(stage9‑10)に 対 し て は60分 と し た 。 stage2‑3の 初 期 卵 割 期 胚 は3‑5分 間 の1μMA23187溶 液 処 理 で 全 滅 し た 。
<実 験3/塩 化 リチ ウム処 理>
0.3MLiCl‑10%ス タ イ ンバ ー グ氏液 に胞胚(stage8)〜 神 経管 閉鎖期 の初 期 尾 芽胚(stage 20‑22)を10分 間浸 した 。表3に 処理 条件 を記 した 一部 の 例数 につ いて は 、濃 度/処 理 時
い ずれ の処 理 の 場 合 も 、処 理 後 は10%ス タ イ ンバ0グ 氏液 で 数 回 胚 を洗 浄 し、24穴 マ ル チ ウエル プ レー ト(岩城 硝 子 製)に10%ス タ イ ンバ ー グ 氏液 を2ml満 た した 中で18‑24。C で 飼 育 した 。発 生 段 階 の 同 定 はNieuwkooP&Faber(1967)の 発 生 段 階 表 を も と にお こ な った 。
3日 胚(尾 芽 胚 期)に 達 した 胚 の 頭 部 ま た は胴 尾 部 の 欠 損 の 程 度 をKao&Efinson
(1988)のDorso‑AnteriorIndex(DAD(図M‑1)で 定 量化 し、24穴 マル チ ウエ ル プ レー トの 各個 室 の 上 面 に記 録 した 。 処 理 胚 が4日 胚 に達 して か ら、 心 臓 と腸 管 の 左 右 非 対 称 性 の 正位/逆 位 を(主 にstage42‑45で)判 定 し、 同様 に24穴 マ ル チ ウ エ ル プ レー トの各 個 室 の 上 面 に記録 した 。 こ う して 個 々 の処 理 胚 のDAIと 内臓 の 正 位/逆 位 を 両 方 と も追 跡 した 。
判 定 に際 して は 、処 理 胚 を生 き た状 態 の ま ま ピペ ッ トに吸 い込 ん で 観 察 す る ことで 判 定 を 行 った(図M‑2)。 ア フ リカ ツ メ ガ エ ル 胚 の4日 胚 は 透 明 な た め 、腹 面 の 胚 外 皮 越 しに 無 傷 の ま まで 内臓 器 官 の 観 察 が で き る 。 心 臓 と腸 管 の 左右 性 の 正 位(正 常 胚 の 大 部 分 が 示 す 左 右 性 を持 つ もの)と 逆 位(正 位 胚 の そ れ と は左 右 非 対称 な 臓 器 の配 置/形 態 を持 つ もの) の 判 定 を行 った 。 本 稿 で は、 特 に 断 らな い限 り心 臓 も しくは 腸 管 の 少 な く と も一 方 が 逆 位 を 示 す 胚 を 「逆 位 胚 」 と した 。 心 臓 と腸 管 の 両 方 と も逆 位 を示 す 胚 をr全 逆 位 胚 」 と した 。
心 臓 の 左 右 性 の 判 定 に お い て は 、 心 室 か ら動 脈 球 へ流 れ 込 む 血 流 の 向 き に着 目 した 。 心 室 に対 し動 脈 球 が 胚 の 右 側 に位 置 す る もの を正 位 、 左 側 に位 置 す る もの を逆 位 と した 。 腸 管 に 関 して は 、stage41‑42に お いて 、腸 管 の 最 初 の く びれ 目が腹 側 か ら見 て3時 方 向 にで きた も の を 正 位 、9時 方 向 にで きた もの を逆 位 と した 。stage43以 降 の胚 で は 、 腸 管 は 長 さ を増 しな が ら、腹 部 体 腔 内で 巻 き始 め るが 、 そ の 巻 き方 の 向 きが 反 時 計 ま わ り の もの を正 位 、 時 計 まわ りの もの を 逆 位 と した 。
【図M‑1】Xenopus胚 のDorso‑Anteriorlndex(DAI)[Kao&Elinson(1988)に よ る]
m mcr
c a rn nコ
℃コO
}峯C
o堕3◎
u勝涌 O吻n榊
↓乏騨
O︾婆
↓︾×輪
司︾淑魑
Z◎"叢卸
も 撫
5
レつむヵれまゆき
藷 蝉
鱒 ψ ︑ ︑
費 ︑ .
( Ψ ◎ 綱
【図M‑2】 ツ メ ガ エ ル4日 胚 の 心 臓 な らび に腸 管 の 正 位/逆 位 の 判 定
左 右 性 判 定 の 基 準(初 期4日 胚st.41‑42の 場 合)
St.42
正 位 逆位
脈球
St.42胚 に お い て は 、
心 室 に対 して 向 か って右 側 に動 脈 球 が 存 在 す る もの を 心 臓逆 位 、 向 か って 左側 に腸 に くび れ が で き る も の を 腸 逆位 と した 。
左 右 性 判 定 の 基 準(後 期4日 胚st.44‑46の 場 合)
腸 管の巻 き方が どち ら回 りか?
⑦
・反 時 計 回 り→ 正 位1
・時 計 回 り → 逆 位
鯨
》
正 位 逆 位 ノ
【実験結 果】
実験1.レ チ ノイ ン酸処理胚 にお ける内臓 の左右 性
ツ メガ エ ル 初 期 胚 を レチ ノ イ ン酸 処 理 す る こ とで 、 頭 部 の 楼 小 化 〜 欠 失 した 胚 が 大 変 高 率 に生 じる こ とが 知 られ て い る(RuiziAltabaら,1991)。
コ ン トロ ール と して 、 レチ ノ イ ン酸 をSteineberg氏 液 に溶 か す た め の 両 親 媒 性 溶 媒 で あ るDMSOの み を0.2‑4%(v/v)含 むSteineberg氏 液 中 で 飼 育 した 胚 の 内 臓 の 左 右 性 に つ い て調 べ た 。 致 死 濃度 以 下 の0.2%DMSO単 独 投 与 で は 、 内 臓 逆 位 は生 じな か った(表1‑1) 。
1‑10オMレ チ ノ イ ン酸投 与 で 、stage8(胞 胚)〜stage19(後 期 神 経 胚)の いず れ の 時 期 の 胚 も頭 部 媛 小 化 を示 した(n=263)。 そ のDAIは1.0(10オM,stage8で 処 理)‑4.5(1オM, stage18‑19で 処 理)の 間 に存 在 し、 定 量 的 に も 明 らか に頭 部 組 織 の 欠 失 〜罎 小 化 の 数 値 を示 した(表1‑1,写 真1)。 次 に、 レチ ノ イ ン酸 の パ ル ス 処 理 で 頭 部 組 織 が 欠 損 した 胚 に お ける 、 心 臓 や 腸 管 の 左 右 性 につ いて 調 べ た 。DAIの 変 動 か ら明 らか な よ うに 、 レチ ノイ ン 酸 は 頭 尾 軸 には確 か に作 用 して い た が 、 得 られ た 頭 部 欠 損 胚 は 自然 逆位 の 発 生 率(2%)と 同 程 度 の 逆 位 率 しか 示 さな か った(n=263中3,1%)。
レチ ノイ ン酸 処 理胚 で 内臓 逆 位 を 示 した もの が263処 理 個 体 中3胚 あ った 。 しか しな が ら、 そ のDAIは4が2個 体 、5が1個 体 で あ り、DAIが1‑3の 頭 部 が 完全 に欠 失 した 胚 に属 したわ けで は な か った。 即 ちYostら(1995)が 報 告 した よ うな 「頭 部 の 欠 失 の 度 合 い に比 例 して逆 位 が 生 じる 」 と い う傾 向 はな か った(表1‑2)。
【表1‑2】 レチ ノ イ ン酸 処 理 胚 に お け る逆 位 発 生 例 のDAI別 集 計
DAI 1 2 3 45(正 常)
逆位胚数
...
....:.t
tiff'::4:nvs・.
...::ti. 莞..ヒ
灘 …,}…̲…̲、
購 一灘灘 灘 灘灘 灘鑛
逆位(%) 一 一 0 411
生存数
6 10 58 4882レチ ノ イ ン酸 処 理 胚 のDAlは す べ てDAI5以 下 で あ った 。
【表1‑1】 レチ ノ イ ン酸 処 理 に よ って 得 られ た 頭 部 欠 損 胚 のDAIと 内臓 逆 位 発 生 率
自然胚 調査数 正位 全逆位 心臓のみ逆位 腸のみ逆位 死亡 不 明(奇 形) 逆位(%)
1127 1102 8 17 0 0 一 2.2%
RAな し DMSO濃 度;0.2〜4%
DMSO濃 度 処理胚数 正位 全逆位 心臓のみ逆位 腸のみ逆位 死亡 不 明(奇 形)
o.z 24 18 0 0 0 4 z
2 24 11 0 1 0 5 7
4 24 0 一 一 一 24 一
総計17212910111013319
RA濃 度:0.1μMDMSO濃 度:0.0001%
処 理stage 処理胚数 正位 全逆位 心臓のみ逆位 腸のみ逆位 死亡 不 明(奇 形) DA1平 均
10 23 18 0 0 0 z 3 5.0
17‑19 48 42 0 1(2%) 0 0 5 5.0
RA濃 度:1μM DMSO濃 度:0.01%
処 理stage 処理胚数 正位 全逆位 心臓のみ逆位 腸のみ逆位 死亡 不 明 く奇 形) DAl平 均
8 24 0 0 0 0 9 15 2.5
10 24 16 0 0 0 5 3 3.7
12 24 0 0 0 0 11 13 2.8
18‑19 24 24 0 0 0 0 0 4.5
RA濃 度:10μM DMSO濃 度:0.1%
処 理stage 処理胚数 正位 全逆位 心臓のみ逆位 腸のみ逆位 死亡 不 明(奇 形) DA!平 均
8 24 0 0 0 0 18 6 1.0
io 24 0 0 0 0 4 zo 3.0
18‑19 48 17 0 0 2(4%) 9 zo 3.4
レチ ノ イ ン 酸 処 理 し た 総 胚 数=263 う ち 、 逆 位 を 示 し た 胚 の 総 数=3
レチ ノ イ ン 酸 に よ る 逆 位 発 生 率=1.1% (P.>o.〉 〉
tr
DAIに 関 して は濃 度 依存 的 に効 いて い る
レチ ノイ ン酸処 理 に よ って 、 胞胚 一後 期 神経 胚 の 頭 部 が 欠損 した が 、
内臓 逆 位 は 自然胚 レベル に しか生 じな か った。(自 然 胚 の デ ー タ は 昨年 度 年 報 の も の を再 掲)
【写真1】 レチ ノイ ン酸 処 理 によ って 頭部 を欠 失 した胚 の例
stagelO胚 を1オMの レチ ノイ ン酸溶 液 に30分 間暴 露 した 。 DAI3DAI1
実 馬2:calciumionohore処 理 胚 に お け る 旦 尾 車 欠 ロと 内 逆 立の 相
細 胞 内Ca2・ イ オ ン は 細 胞 内 情 報 伝 達 系 に お い て セ カ ン ドメ ッ セ ン ジ ャ ー(シ グ ナ ル 分 子) と し て 働 く 。calciumionophoreで 細 胞 を 処 理 す る と 、 細 胞 外Ca2・ イ オ ン の 流 入 な ら び に 細 胞 内Ca2・ イ オ ン 貯 蔵 プ ー ル か ら のCa2・ イ オ ン の 放 出 が 促 さ れ 、 細 胞 内Ca2・ イ オ ン 濃 度 が 上 昇 す る こ と が 知 られ て い る 。
calciumionophoreA23187の パ ル ス 処 理 に よ っ て 発 生 段 階 依 存 的 に 頭 部 楼 小 化 胚 ま た は 尾 部 罎 小 化 胚 が 得 ら れ る こ と が 知 ら れ て い る(後 藤 ら,1994)。 我 々 は 、 原 腸 胚 期 〜 神 経 管 期 の ツ メ ガ エ ル 胚 をA23187に 漬 け た ま ま 飼 育 す る と 、 内 臓 逆 位 が 最 適 条 件 下 で は50%の 確 率 で 生 じ る こ と を 見 い だ し たC95総 合 理 学 研 究 所 年 報'95(1996),Develop.
Growth&Differ.誌 一印 刷 中)。 以 上 の 知 見 を も と に 、 卵 割 期 〜 胞 胚 期 のA23187パ ル ス 処 理 を 行 い 、 頭 尾 軸 の 形 成 不 全 と 内 臓 逆 位 の 出 現 率 と の 相 関 に つ い て 調 べ た 。
後 藤 らの報 告で は、rツ メガエル 胚 をカル シ ウムイオ ノ フォ アで 処理 す ると、初 期卵割 期の処 理で は胴尾 部の矯 小化 が 、卵割後 期 か ら胞胚 期 の処理 で は頭 部 の楼小 化又 は欠損 が 観 察 された』(日 本動 物学 会第65回 大会 予稿 集一1994か ら引用)と ある。 しか しなが ら、
彼 らと同 じcalciumionophoreA23187を 同 じ1オMの 濃 度で用 いて 処理 を行 った に もか かわ らず 、結 果 の発生 段 階依 存 性 は、彼 らと反 対の もの にな った(図2)。 即 ち、初 期卵 割 期で あ るstage4,stage5に おけるA23187処 理 で は頭 部の 媛小化 〜 欠失が 観察 され (DAI平 均値 は いつれ も4.2)、 胞 胚期 であ るstage9や 初期 原腸胚 期 であ るstage10の 処 理 では 、胴 尾部 特 に尾部 の罎 小化が 観察 された(DAI平 均値 はそれ ぞれ7.0,5.7;写 真2)。
胚尾部 の組織 の罎 小化 が生 じたstage10の 処 理胚(DAI平 均5.7)24例 の うち、15例
(63%)で 内臓 逆位 が観察 され た。 心臓 のみが 逆位 を示 す もの、腸 管の みが逆 位 を示す もの 、 全 逆位 を示す もの 、 いずれ のケ ース も得 られ た(全 逆 位4例 、心 臓の み逆位5例 、 腸 管の み逆位6例)。 そ こで、 それ らにつ いて、DAIの 数値 と内臓 の正位/逆 位 との相 関 を2x2表 の形 に集計 した(表2)。24処 理例 中の逆位 胚15個 体 の内訳 は、DAIが5で あ る ものが9例 ・ DAIが6の ものが5例 、DAIが9の ものが1例 であ った。従 って胚 の胴 尾 部の 削れ ぐあ いが 高 い もの ほ ど逆 位が 生 じる とい う比例 関係 はな か った。 しか しなが ら、DAIが6‑7で あ っ た個 体9例 の うち、正位 の胚 は2例 で ある の に逆位 の胚 が5例 もあ った こと(表2の ワク部 分)か ら、胚の尾 部 欠損 と して表 現 され る頭方化 現象 が左右 軸 の決定 機構 と連動 して いる 可 能性 が ある。例 数の追 加が 必要 で ある。
stage9の 処理 で は4日 胚 にな る まで生存 胚の大 半が 奇形 を起 こ した。 しか し4回 の 実験 の うち1回 は 処理 胚24中11が 内臓逆位 で あ った 。今後 精 密な実 験条件 の検 討 を行 う 必要 があ る。
【図2】
DAI発 生 段 階 別 のionophore処 理 に よ る 欠 損 状 況 平 均 値
8 t7
胴尾部倭小化6 正 常 胚 →5 t4
頭部短小化 3
̲ノ 誌 撚 鹸 練 早辮
反 対 にな った 。
※初 期 卵 割 期 の 処 理 → 頭 部 矯 小 化 が 生 じた 。 内臓逆位が生 じた・
n=15/24
※後 期 胞 胚 の 処 理 → 胴 尾 部 罎 小化 が 生 じた 。
̲̲̲処 理時間等 の条件 の違いのせいかも しれな い。
國
III醐1囲
騨 謹 ・ 圏
発 生 段 階
A23187処 理 胚 のDAI分 布
DAl
(上 のグ ラ フの使 用 デ ー タ)
3日 胚
12345678910 DAI平 均 判定数 総処理数 生存率
4 192 4.2 12 24 50%
5 12412921 4.2 31 48 65%
6 2182551 4.7 42 120 35%
9 714362032 7 82 119 69%
10 14631 5.7 24 24 100%
【表2】
A23187calciumionophoreに お け る 内 臓 の 左 右 性 とDAIと の 相 関
処 理 条 件st.10,1オM,60min.の パ ル ス 処 理 例 数24
尾 の先 の無 い胚 が 多 く(DAI6‑7)、 それ らの大 半 は逆 位 を示 した。
【写 真2】
後 期 胞 胚(stage9)の 時 期 に1オMのA23187calciumionophore溶 液 に60分 間 漬 け る 処 理 で 尾 部 組 織 が 著 し く 欠 損 し た3日 胚(DAI=7)
鍵
,3:塩 ヒリ チ ウ ム 処 理 胚 に お け る 音 欠 自と 内 臓lt'立 の 相 関
塩 化 リチ ウム処 理 で 内臓 逆位 が 誘起 され る こ とが 、 高谷(1949)に よ って明 らか に され て いる。卵 割 期 リチ ウム処 理 によ って 胴尾 部 欠損 が 起 こる こ とはよ く知 られ て いるが 、 後 期胞 胚 期〜 原腸 胚 期 の リチ ウム処 理で は 頭 部 欠損 が 生 じる(品 川 ら,1989)。 そ こで後 期 胞胚 以 降の リチ ウム処 理 によ って 、頭 部 欠損 胚 を作 出 し、 個 々の 胚 につ いて頭 部 の倭 小 化 〜 欠失 の程 度 と 逆 位 の発 生 率 との 関連 につ いて調 べた。
品 川 ら の 報 告 と 同 様 に 、 後 期 胞 胚 期 で あ るstage8や 原 腸 胚 期 で あ るstage10に お け る リ チ ウ ム 処 理 で 、DAIが そ れ ぞ れ4.7(n=49),4.3(n=24)で あ る 頭 部 欠 損 胚 が 得 ら れ た (図3)。 神 経 胚 期 に な る と リチ ウ ム 処 理 に よ る 頭 尾 軸 へ の 影 響 は み ら れ な く な っ た 。 stage12‑14(神 経 胚 期)で の 処 理 胚 のDAIは5.1(n=96)で あ り 、stage15‑22で の 処 理 胚 で は ほ と ん どDAIが5の 正 常 胚 が 得 ら れ た(n=412)。
内臓逆 位 の発 生 率 につ いて は、stage8(胞 胚 期)の 処 理 で は4日 胚 内臓の 奇 形率 が 高 く、
内臓 の 左右 性 を判 定 で きな か った 。stage10胚(原 腸 胚)で は処 理胚 総 数 の うち21%に あ た る5例 で 内臓 逆 位が 観 察 され た 。初 期神 経 胚期 〜後 期 神 経胚 期 を通 じて8〜6%の 内臓 逆 位胚 が 得 られた 。 リチ ウム処 理 によ る 内臓 逆 位 の発 生率 と、1127調 査例 中25例 が 逆位 で あ った 自然 逆位 胚 の発 生 率 の2.2%(神 奈川 大 学総 合 理学 研 究所 年報'95参 照一1996)と を 2×2分 割表 を 用 いた カ イニ 乗検 定 を用 いて比 較 した 。 その 結果 、 「stage10‑19に お け
る処 理 群 の逆位 発 生 率 の いずれ もが 自然逆 位 発 生率 よ りも有意 に高 い」 と有 意水 準1%で 判 断 され た。 上 記の1127例 の 自然胚 の 調査 時 には、 得 られ た 自然逆 位 胚25例 の うち、
腸 のみ の 逆位 は1例 も得 られ な か ったが 、 リチ ウム処 理 によ って 心 臓 のみが 逆 位 を示 す も の、腸 管 のみ が逆 位 を 示す もの 、全逆 位 を示 す もの、 いず れ のケ ー ス も得 られ た(写 真3)。
表3の 処 理群 にお いて 全逆 位10例 、 心臓 のみ 逆位13例 、 腸 管の み逆 位6例 で あ った 。 神 経 管の 閉鎖 後 のstage20‑22の 胚 にお いては逆 位 胚 は全 く観 察 され な か った(n=48)。
この 時期 にな る と左 右 軸の 最 終 的な 決定 が お こな われ 、 その後 は リチ ウム処 理 を行 って も左 右軸 の変 更 が 不可 能 にな る もの と考 え られ る 。
stage10以 降 に リチ ウム処 理 を行 った 胚216例 につ いて、 頭部 欠 損 の程 度 と内臓逆 位 の 出現 につ いて 表 の形 で整 理 した(表3)。DAI平 均 が4.3で 、集 団 と して は頭 部が 罎 小化 し たstage10の リチ ウ ム 処 理 胚72例(図3の24例 を 含 む)の う ち 、8例 が 逆 位 を 示 した 。 逆 位胚 のDAIの 内訳 はDAI5が6例 、DAI3が2例 で あ った 。 この こと は、 リチ ウム によ る頭
§tageIZ以 降にリテウム処理をして得 られた逆位胚21倒 のむち、20倒 までがDAI5の
全 く 正 常 な 胚 で あ っ た 。stage12‑14の 処 理 胚72例 の う ち7例 が 逆 位 を 示 し た が 、 逆 位 胚 のDAIの 内 訳 はDAI6が1例 、DAI5が6例 で あ っ た 。stage15‑16の 処 理 胚72例 の
う ち14例 が 逆 位 を 示 し た が 、 逆 位 胚 のDAIは す べ て5で あ っ た 。
【図3】
リチ ウ ム処 理 によ る逆 位 胚 の 出現 とDAlの 変 化
25%
20%
逆15%
位
10%
率
5%
0% 4 89 1012‑1415‑1718‑1920‑22 249621614848
誕 瓢
'1Z
頭 部 楼 小 化4.60D .40 A4
4.20
11
3.80
■ 逆位胚出現率 十DAl平 均値
処 理 し たstage(上 段),例 数(下 段)
stage8(胞 胚 期)の リチ ウム処理 で は、頭 部罎 小化 は 生 じたが 内臓 は奇 形 で あ った 。 stage10(原 腸 胚 期)の リチ ウム処 理で は、 内臓逆 位 も 頭 部の 罎小 化 もみ られ た。
stage12以 降(神 経 胚期)で は、 リチ ウム処 理 によ り内臓 左右 軸 のみ が変 更 を受 け、
頭尾 軸 異常 は生 じな くな った 。
【表3】 リチ ウム 処 理胚 にお ける 内臓 左右 軸 とDAIの 相 関 に関 す る調 査 St.10
処 理 条 件O.3M‑10min,0.15M‑15min,0.03M‑20minの い つ れ か 例 数72
10 9 8 7 6 S 4 3 2 1
3日 胚 以 前 に奇 形 ↓
正位 42 1
逆位 1竃
纏::,.'f
影 弓. 漁 灘 唱
麦鑛
霧 層 ・蹴 華ウ埠
ノ.1 DAl判 定 出 来 ず
efi>..洛 観 張,,信 翫,斌 彦卸.隠,%,..㌻ 灘i互鼎 鐸: ㌘象 .奪
西 再'
占 ウ
奇形 2 3 3 1 1 1
死亡 4 1 1 1 3
DAl判 定 後 に死 亡 判定以前 に死亡
St.12‑14
処 理 条 件0.3M‑10min 例 数72
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
3日 胚 以 前 に奇 形 ↓
正位
1 59逆位
v;罪擁懸 舷
,♂、 o懸 饗 序
鞍 灘 、
,焔 ノ"轡'触 嚇甕 DAl判 定 出来 ず奇形
1 1死亡
3DA1判 定 後 に死 亡 判定以前 に死亡
St.15‑16
処 理 条 件03M‑10min,0.3M‑30min,0.15M‑15minの い つ れ か 例 数72
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
3日 胚 以 前 に奇 形 ↓
正位 1 57
逆位
し ご∫' ・;琶乞ご;∴'・
,∵〆 層
♂}
・辮1 編'
り解 ・翫'、
鱗 …混:鷲
㌻'曜4ぞ
'㌧'棚 拶
、 叫 欝 DAl判 定 出来 ず
奇形 死亡
DAl判 定 後 に死 亡 判定以前 に死亡
stagelO(原 腸 胚)の リチ ウ ム処 理 で は、 多 数 の 頭 部 倭 小化 胚 が 得 られ た。 しか しな が ら 個 々 の胚 に つ いてDAIの 変 化 と内 臓 の 正 位/逆 位 を 追 跡 した とこ ろ 、逆 位 を示 した胚 の 多 く は DAIが5の 頭 尾 軸 異 常 を 持 た な い 正 常胚 で あ る こ とが 分 か った 。Yostら の仮 説 ど お りな らば
「頭 部 欠損 の度 合 い の著 しい胚 ほ ど 、逆 位 が 多 く 出現 す る 」 とい う傾 向 にな る こ とが
【写真3】
リチ ウム処 理 によ って 得 られた 心臓 逆位 胚stage44胚 で 腸 は正位 。
stage18の 時期 にO.3M塩 化 リチ ウム溶 液 に10分 間 暴 露処 理 した 。左 右性 の 判定 にっ い て は 図M‑2参 照 。
【結 果 の まとめ】
レチ ノ イ ン酸 処 理:
処 理で 得 られた 頭部 欠損 胚 は 内臓逆位 を示 さなか った 。 calciumionophoreA23187処 理:
処 理 に よ っ て 引 き お こ さ れ た 胚 細 胞 内 部 の 細 胞 内Ca2・ イ オ ン 濃 度 の 上 昇 が 、 原 腸 胚 の 頭 尾 軸 と 左 右 軸 の 両 方 に 作 用 す る こ と が 分 か っ た 。
stagelO(原 腸 胚)のA23187処 理 で 、 尾 部 欠 損 と 内 臓 逆 位 が 共 に 生 じ た 。 尾 部 欠 損 胚 の 多 く は 内 臓 逆 位 を 示 し た 。
リチ ウム 処 理=
原腸 胚期 の処 理で 、頭 部 の欠損 と内臓 逆位 が生 じた 。 しか し逆位 胚 の大 半 はDAIが5で 、 頭尾 軸 に関 して は正 常な胚 に逆 位 が生 じて いた といえ る。
神経 胚期 の リチ ウム処 理 は胚 の頭 尾軸 には影響 せ ず、 左右 軸のみ に作 用 した 。
【考 察 】
レチ ノイ ン酸 処 理 や リチ ウム処 理で 得 られ た頭 部 欠損 胚 にお いて は、 頭尾 軸 と左 右 軸 と の 連鎖 関係 は生 じて いな か った。胞 胚 期 以 降の胚 にお いて は 、心 臓や 腸 管 自身 が 内臓 の左 右 性 に関連 す る位 置情 報 を既 に備 え て いて 、頭 部 中軸 組織 の有 無 の影 響 を 受 けな か った と 考 え られ る。calciumionophore処 理 によ る尾 部 欠損胚 の 多 くは内臓 逆位 を示 した こ と
か ら、 これ らの尾 部 欠損 胚 にお いて は後 方 の 中軸組 織 が無 か った こ とが 内臓 の 左右 軸 に影 響 した可能 性 は残 され た。
〈Yostら の仮 説 に対す る本 実 験 の解 釈 〉
リチ ウム処 理 の結 果 は 、r頭 部 欠損 の程 度 の大 き い胚 ほ ど 逆位 を 生 じや す い』 とい う 結果 にはな らな か った 。 更 に レチ ノイ ン酸 処 理 によ って 得 られ た頭 部 欠損 胚 が 内臓逆 位 を 殆 ど示 さな か った ことか ら、Yostら の仮 説 に対 してr頭 部 欠損処 理 の す べてが 内臓 逆位 に繋 が るわ けで はな い』 と結 論 され る。
頭 尾軸 と左右 軸 の連 鎖 に関す るYostら の結 果 と我 々の 結果 との相 違 は 、何処 か らきた の だ ろ うか?筆 者 らは 、用 いた 胚 の発 生 段 階の違 いが主 な 原因 で あ る と考 え て い る。
Yostら の実 験 は 、第 一卵 割 前 の受 精卵 や初 期 の卵 割 期 の胚 を用 いて いる。
ご く初 期 の胚 にお いて は頭 尾軸 成 立機 構 と左 右軸 成 立機 構 とは不可 分 な 連鎖 関係 にあ るが 、 胚 自身のzygoticな 遺伝 子 の 転写 ・翻 訳 が 開始 され る中期 胞胚 期 以 降の胚 で は 、頭 尾軸 の 成 立機 構 と左右 軸 の それ との分 離 が進 む の で はな いだ ろ うか?(中 期 胞 胚以 前 の胚 は 、 卵細 胞 質 中 に大量 に蓄 え られ たmRNAや タ ンパ ク質 を 元 に発生 す る ことが知 られ て いる。) 言 い換えれ ば、Yostら が 実 験 した 極 く若 い発 生 段階 の胚 で は 、頭尾 軸 と左右 軸 とが まだ 連 動 して いる時 期 であ った の で 頭 部 欠損 が 内臓 逆位 を ひ きお こ したが 、 我 々が 実験 に用 いた 中期 胞胚 よ り後 の 胚で は、頭 尾 軸 の成 立機 構 と左右 軸 の それ とが 分 離 独 立 して いた の で 頭部 欠 損処 理が 内臓逆 位 を 引 き起 こす 原 因 とは な り得 な か った ので はな いだ ろ うか?
この よ うに考 え る と、Yostら の 実験結 果 と本 実 験結 果 との結果 の 相違 を、 両 実験 に対 し て矛 盾無 く包 括 的 に解 釈 出来 る と思 う。
Yostら は 、 内臓 の左右 性 の 正位/逆 位 を心臓 の み につ いて しか見 て いな い。 ツ メガエ ル 3日 胚 〜4日 胚 前 半 にか けて は、腸 管 は頭 尾軸 に沿 って 長細 く分布 して い る。 頭部 欠損 と 内臓 一般 の 左右 非 対称 性 との関 連 を論 じる にあた って は、頭 部 にとて も近 い心臓 の みな ら ず 、頭部 か ら離 れ て分 布 して いる腸 管 につ いて も、正 位/逆 位 の 判定 を行 うべ き であ ろ う。
そ の よ うな 視点 か ら、心 臓逆 位 と腸 管 逆位 との 出現頻 度 の差 異 につ いて 注意 を 払 った。
結果 と して は 、実 験群 で 逆位 が 出た リチ ウム処理 とcalciumionophore
動物胚 の頭尾 軸 につ いての研 究 も、左右 軸 につ いての研 究 も、片方 だ けを扱 った論 文 は 多数 あ る。 しか しな が ら、胚の 頭尾軸 と左右 軸 とは連 動す るか?と い う発生 分野 の研 究者 な ら誰で もふ と考 え る問題 に現 実 に取 り組 んだYostら の研究 は意外 に も類 を見ず 、貴重 な もの に思われ る。 胚の 左右軸 成 立機構 に関 して、新 しい視点 ・着想 の研 究 を世 に問 い続
けて いるH.J.Yost博 士 の一連 の著 作 に敬意 を払 いた い。
【引用文 献】
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Develop.Growth&Differ.(印 刷 中)
豊 泉 ・福 田 ・菊 川 ・大 場 ・小 林 ・高 橋 ・塩 尻 ・松 下 ・竹 内(1996)
ア ドレ ナ リ ン作 動 性 神 経 伝 達 物 質 処 理 並 び に カ ル シ ウ ム イ オ ノ フ ォ ア 処 理 に よ る ツ メ ガ エ ル 胚 並 び に ニ ワ ト リ胚 の 内 臓 逆 位 の 人 為 的 誘 発
神 奈 川 大 学 総 合 理 学 研 究 所 年 報'95pp.21‑47.(原 報)
YamaguchiY.andShinagawaA.(1989)
Markedalternationatmidblastrulatransitionintheeffectoflithiumonformationofthelarval bodypatternofXenopuslaevis.
Develop.Growth&Differ.31,531‑541.
Nieuwkoop&Faberの 発 生 段 階 表(1967)の 図 版 は 、 以 下 の サ イ トか ら入 手 し 、 本 稿 の 説 明 補 助 の た め 使 用 さ せ て い た だ き ま し た 。http://timpwrmac.clh.icnet.uk/xenopus.htmI
【学会 発 表】
第49回 動物 学 会 関東 支部 大 会 一 般 口演P‑5(1997/3/28,於 神 奈 川大 学)
【謝 辞 】
本研 究 は、神 奈 川大 学 総合 理 学研 究 所 の助 成 による 、理 学部 応 用生 物科 学科 竹 内重 夫研 究 室 と 日野 晶也研 究 室 の学 内共 同研 究 「水棲 動物 胚 の 左右 軸 に関す る研 究:器 官 配置 の 逆位(situsinversus)誘 発処 理法 の開 発 を中 心 と して」 の 一環 と して 行わ れ ま した 。 本研 究 計画 を ご支 援下 さ いま した総 合 理学 研究 所 所 長な らび に所 員各位 に こ こに深謝 致
します 。