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配転・出向をめぐる判例法理の課題

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(1)

著者 金子 征史

出版者 法学志林協会

雑誌名 法学志林

巻 94

号 3

ページ 39‑78

発行年 1997‑03‑10

URL http://doi.org/10.15002/00006515

(2)

一般に、企業は、企業目的にそって有能な人材を雇い入れ、かつ一展い入れた労働者を適所に配置し、効率のよい経

鴬を指向するものである。その意味で、労働者を適所に配慨する人事異勅は近代的企業にとって必要不可欠な雁川椅

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l本稿で検討の対象とする配転・出向の定義

配転・川向の背最と近年における特色 配転・出向をめぐる判例法叫の課題

2143

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令子

(3)

配松は、広義には、昇進、外桁、職梛・職務の変史、職場や勤務地の変更のような期限のない企業内の人珈兇助で

あるが、このうち、本稿で配転として扱うのは、職耐・職務の変更、職場や勤務地の変更をする人事異動である。勤

務地の変更がなされる配転については特に転勤と呼ばれているが、当然これも検討対象としての配転に含まれるもの

である。同じく企業内の人蛎異動であっても、応援、Ⅲ眠のような、多くの場合に師川の期限付人平兇勁はここでい

う配蛎ではないのでここでの検討の対象ではない。

同じ人覗兇仙でも配転と比べて川向は企業外への人小皿肋である点で兇なりを灯するものである。そして、企業外

への人事異動である川向も、地位の設定の仕方によって在繍出向、松繍に分頗されるのが普通である。このうち、前

者は出向元企業の籍を残したまま川向先の他企業での労務に従事する点で「在籍」出向というが、通常は単に出向と

いった場合、在籍出向を指すものである。他方、転籍は、文字通り出向元企業から出向先企業へ籍が移る、つまり、

川向元企業との労働契約関係を解消して川向先企業と新たな労働契約関係に入るものである点で(在繍)出向とは異

なるのである。その怠味で、蛎斯は、移厭、転屈などとも呼ばれることがある。ここでは、この向背を検討の対象と 法学志休節九十W巻節三号Ⅲ○

皿の手法である。こうした意味を有する人耶異勁は、配慨転換(配転)、兄進、外桁、川向、継懸鞘、派逝などさまざ

まな呼称・形態でなされる。このうち、とりわけ配転・出向は、今uのわが国の企業社会のなかでもっともポピュ

ラーな人事異動策として広範囲に行なわれているが、後述するように、その労使双方に及ぼす影響から実際に多くの

法的問題を抱えている人事異動である。したがって、ここではさまざまな人事異動のうち、配転・出向を中心に法的

問題を検討することにするが、具体的な問題検討に先立ち、検討の対象とする配松、川向などについての定義を一応

明らかにしておく。

(4)

労働者を適所に配置する人事異勅、つまり配転・出向は、わが国において効率的な経営をめざす近代的企業にとっ

てきわめて敢要な役削を果たしてきた。もっとも、同じ人事兇勅でも配転と川向とではその役割のもつ意味は内容的

にも雌史的にもやや異なりがあったといえる。

雌史的にみれば、配転が企業社会のなかで果たした役判は川向よりはるかに先行している。戦後の時期に限定した

場合でも、配転はその当初から企業にとって瓶甥な廊味を持つものとして考えられていた。すなわち、まず第一に、

終身M川、年功衝金を特色としてきたわが国の企業では、一定の定年制をとり労働力の新陳代謝をはかる必要がある

ため、労働者を適切に再配慨し、外進・昇格させる配祇・転勤は艮川間にわたっての企業内教育を突践する役割を果

たすものであった。それと関迎して、第二に、こうした長期間にわたっての企業内教育は、企業側が労働者一人ひと

りの能力や適性を的確に把握することを可能とするものであったから、企業の適正な人事配悩を容易にする役割を果

たすものであった。したがって、こうした利点を有する配転はわが国の企業にとって経営上不可欠の雇用管理の手法

であったし、今日でも依然として同様の認識を有しているものである。

出向も少なくとも今日の企業にとっては配転と同様の意味合いを持つものと認識され、実施されてきている向きも

配侭・川向をめぐる判例法皿の烈湖(金子)Ⅲ一 する。

2配転・川向の目的と意義

Ⅲ企業にとっての配転・出向の意義

(5)

わが川の企業にとって経徴上不川欠な雁川符皿の手法としての配転・出向は、同時に労働行にとっても人きな迩味

をもっている。なんといっても、まず第一に、配転によって多くの職椰・職務や職場・勤務地を経験することが自分

自身の多面的な能力開発やキャリア形成につながる効果をももたらすことになる。労働者にとっては、就職した一企

業内で数多くの経験を枇むなかで自然に業務知識の習得や能力開発につながるわけであるから、これは大きな財産で

もある。第二に、出向の場合も、当初からみられた「監督・指導的」目的をもったものはいうまでもなく、前述した

法学志林第九十四巻第三号四二

あるが、配転に比べるとこうした人事施策としての出向はかなり後発的なものであった。昭和二○年代、三○年代に

おいては、企業にとって川向はまれなケースであって、側述企業の慌督・指導的役割の意味を行するものが中心で

あった。その時代には、川向対象労働者が企業の符皿職に限定されており、処遇の面で不利な扱いを意図するもので

はなく、むしろ爾後の川世の試金石としての役削を果たすものであった。しかし、今日の出向をみると、その月的は

多様化してきている。平成八年版の労働口評によれば、労働省の「一雁川管理調査」に対して、企業側は、「川向先企

業の人手不足の補充」「本人の能力向上」「川向先企業での経営脂導・技術指導」「山側先企業との結び付き強化」「経

営の多川化により新会社設立」「役且ポスト不足解洲」「余剰人貝対箙」「定年以降の凧川脈保」などあらゆる洲在馴(1) 月にそれぞれⅢ当数の回答を寄せている。こうした多様化した目的を行する△丁日の川向は、企業のグループ化の一届

の進展のなかで、企業内人事異動と同様の認識で実施されることもしばしば生じ得ることとなってきた。つまり、実

態的にみて疋彼的に配祇との境界線があいまいになってくる川向が少なからず篭場してきたのである。

②労働者にとっての配転・川向の横極的意義

(6)

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妓近の川向のなかにみられる、「本人の能力向上」を目的とするもの、「経営の多角化による新会社設立」を目的とし

たものなど、労働者にとって能〃開発にプラス面の多いものもみられる。第三に、同じく川向の場合に、「定年以降

の凧川雌保」をⅡ的としたもののように商船者の凧川の安定につながるものもある。

③配転・川向をめぐる労働法上の問題点

(7)

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法学志林第九十四巻第三号四四

川調狼の側面を併せ持つものであり、ここでもまたそれが濫川され、頭穏突上の解雁に臓結されてきた事実などをみる

ことができる。むしろ、今日においても使川者との関係において労働者は依然として弱い立場にあることは否定でき

ないため、労働者が解雁を避けようとして意に添わない配転・川向命令に従うことのほうがごく普通の状況であるが、

この場合には社会的に問題視されている単身赴任のように労働者の労働生活と家庭生活との調和を根底から崩すよう

な事態が生ずることもある。このように、配転・出向も、その祇極的意義とともに労働者にとっての消極的側而がう(2) しろ△いわせになっているのである。配転・川向が判例上川越とされる契機はこうした消楓的側面においてであること

はいうまで●もない。

(1)労働行「平成八年版労働白謝」二七W画および三八五頁。(2)下川他人「配概縁換・川向」日本労働研究雑誌四○八号七几頁。(3)なお、筆者には、配転・出向をめぐる妓高奴判例の到達点の細介をした別稿「人瓢異動」労働判例七○二号六頁以下があるが、本碗は、それとは異なり、叩なる判例皿論の柵介にとどまらず、視点を変えて配転・出向の機能変化と側述づけて法理論上の問題点に一両

(8)

まず岐初に配転・転勤をとりあげるが、後述する川向・転繍をも含めて企業の人事異動を命ずる根拠をどこに求め

るのかといった点が法的問題の小心的諜馳である。配転についてみると、労働法上、配転に関する明文規定が存しな

いなかで、仙川背が配転命令を川す根拠をどこに求めることができるのか、といった点がⅢ皿となる。

この点、初期の判例は、「一般に労働関係において、仙川者がその従業員に転勤を命ずる抽冠は、労務の内容等を

指定または変更するものと解せられ、かかる摘世は業務の述営上広く使用者の蛾賦に属するもので、特別の事情のあ

るほか、その当否を論ずるに適しないもの」(国民生命保険事件・来京地決昭二七・二・七労氏集三巻一号)として、

配転命令を当然の使用者の裁量事項とする見解をとっていたものがみられた。しかし、こうした当初の判例の見解は

まもなく改められ、労働関係の始まりが労働契約の締結によることの認識から、単純に使用者の裁賦権限とする見解

は影をひそめ、労働契約に根拠を求める立場に立つ見解が主張されることとなっていった。契約関係が菰視されるべ

配転・出向をめぐる判例法理の課題(金子)四五

二配転の法理と課題

及するものである。別稿も併せて参照されたい。

l判例にみる配転命令の法的根拠

便川村の奴賦椛に根拠を求める見解

(9)

労働契約に根拠を求める立場からの判例の見解をみると、それはひとつにまとまったものではなく、二つの異なっ

た見解が対立して存在しているといえる。労働契約に根拠を慨く立場の見解のひとつは、.股に労働契約において

は、労働者は企業巡営に寄与するため使川者に対し労働力を提供し、その使川を包捌的に使川者に委ねるのに対し、

使用者はその労働力の処分権を取得し、その裁量に従い提供された労働力を按配して使用することができるものであ

る。すなわち当該労働契約において特に労働の祁賊・態嫌・場所についての合臓がなされていない限り、これらの内

容を個別的に決定し仙象的な凧Ⅱ関係を具体化する椛限は使川者に委ねられており、使川者は右椛限に雌づいて労務

の指抓として自川に’但し、労働協約に定めがあるときはその蛙率に従って、l具体的個別的にその内容を決定する

ことができる。配枇転換・舩勒等の人邪異勅は使川者の灯する右のような権限に雌づく命令であって、それは仙川打

がさきに向ら決定していた労働契約の具体的個別的内容を一方的に変更する行為というべく、その意味においての一

種の形成行為と解するのが相当である。したがって、それが労働契約その他に定められた有効要件を備えていないと

きは命令の雌効を来たすことになるといわなければならない。」(北海道放送事件・札幌地判昭三九・二・二〃〃氏災

一五巻一号)との判例に代表される見解である。すなわち、この見解は、一般に労働契約は、労働者が具体的労働の 法学志林節九十四巻第三号四六

き近代的労使関係の下において、使川者の専権的・不可侵的権限として配転命〈加椛を柵成する見解は、どうみても成

り立ちがたいものであるから、学説はいうに及ばず、判例の世界でもこうした見解は採川されるはずがなかったので

ある。

②包価的合な説と労働契約説

(10)

給付を約するのではなくて、労働力の処分権を使川者に委ねるという内容をもつものであり、労働の秘類・態様・場

所などがとくに合意されないかぎり、使用者は、労働指揮権の行使として一方的に配転を命じうるが、ただし、この

配転命令樅は形成樅であり、椛利の濫川にあたる場合には労働者を拘束しないとするもので、一般的に「包括的合意(1) 説」と呼ばれている。この包括的合意説は、労働契約締結時に職種・職務や勤務場所・勤務地を特定することが少な

いというわが国の労働関係の突態を考臓し、配転命令樅を形成権と解することによって、椛利濫川の皿論で不当配転

をチェックするという手法をとるものであり、使用者の一力的な配転命令に一応の歯止めをかけることができるため、

労働者の保捜の視点からは枇極的評価ができるものであった。しかし、椛利濫川皿論によるイ当配転のチェックが可

能といっても、包柄的合意説は労働契約の本質を労働力処分樅の誠渡と把握するものであるから、基本的に使川者に

労働者の配偶をいかようにも決定しうる権限を認める点において近代的労働契約法の根本原則にそぐわないとの批判(2) が学説によって強くなされていた。

第二の見解は、「使川者が労働者に対し指抑命令権を行使して配樋栃換をして、従前と異なる労務の提供を命じう

るのは弥働者が労働契約によって仙川者に提供すべきものと定めた労務の椰顛ないし範川に限られ、その範川を川た

のでは、その労働契約の趣旨に反するから、会社の債権者に対する右命令によって、債権者が会社に対しこれに応じる労働を給付すべき我務を負仙するものでないことは明らかであり、また仮に右命令を職加に関する合蔵の変更巾込であると解するとしても、依椛者がこれを拒絶したことは、すでに認定したところであるから、これによって、所期の効力を生じるに川はない。」(日野回動巾事件・東京地利昭四二・六・一六労氏災一八巻三号)との判例や、「一般

に、労働の種類、態様、場所は、労務提供の具体的な内容をなすものであり、併せて労働者の生活にとってもきわめ

配駈・出向をめぐる判例法理の課題(金子)四七

(11)

法学志林第九十四巻第三号四八

て亜要な意義を有するのであるから、労働契約の内容をなすものというべきであり、これら労働の加類、態様、場所

の変更は、労働契約の内容を変更するものであって、当該労働契約によって予め合意された範川を超える労働の赫赫ぺ

態様、場所の変更は、労働者の個別的な合意がない場合においては、使用者の一方的命令によっては、これをなし得

ないものと解すべきである」(広島中央電報局事件・広島地判昭六三・七・二六労民集三九巻四号)との判例に代表

されるもので、「労働契約説」と呼ばれているものである。この見解によれば、仙川者の配転命令樅は労働契約に

よって約定された範囲内においてのみ効力を有するものであって、あらかじめ約定された範凹を越える配転はあらた

めて労働者の同意を必要とする、ということになる。学説では、包括的合意説に対する前述した批判を展開するなか

で、多くの論者が、包括的合意説の欠陥を補う考え方として、この労働契約説の立場から配転命令権の根拠を論ずる

こととなっていった。もっとも、ここでいう〃側契約説には論者によって滞干の雑がある。すなわち、就労場所や業

務内容は労働契約によって特定されるべきものであるからそれを超える配転命令は労働者の同意を必要とされるとす(3) る見解や独特の契約関係のと雪bえ方を前提として、配転はあらゆる意味でその契約内容の変更の申し入れであるから(4) 労働者の個別の同意がないかぎり法的拘束力を持たないとする見解などがみ》しれるが、通説は前掲・広島中央電報局

耶件・広島地裁判決(昭六三・七・二六)のような考え方であり、特に「限定的合意説」と呼ばれることもあるが、(5) ここでは「労働契約説」と呼ぶことにする。

こうした労働契約説の考え方は、職種・職務や勤務場所・勤務地を賃金、労働時間と並んで重要な労働契約の要素であるととらえるところから、使川者の配転椛限を当該労働契約の解釈を通じて限定的に解する点において近代的契

約原理に柵うもので、この点、包括的合意説と雑本的に対立するものともいえるのである。しかし、包括的合意説で

(12)

わが図の労働契約の突際をみると、契約締結時に職獅・職務内容や勤務場所・勤務地が特定されることは少なく、

むしろ就業規川や労働協約などで配転や転釛について包柄的規定をおくことの刀が普通といった火態がある。した

がって、こうした尖態を前提とするかぎり、どちらの説に立っても、結果として配転命令樅の行使が広範に解される

ことになりがちである。流動性を特色とする労働法であるから労使関係の実態にあった法解釈をすることもあながち

否定はできない向きもあるが、しかし、こうした実態があれば法理論としてそれにあわせるべきとか、どちらの説で

もよいとか、伽巾に考えてはならないのがこれまた労働法の解釈でもある。法の規範的怠味内容を法目的にかなった

視点から解釈することがむしろ頑要であると思われる。こうした視点からいえば、配転の法理を考えるとき、考臓さ

れるべきは、配転が企業社会で枇極的愈味を有することとともに、洲極的趣味を合わせもっているということの問題

である。この点、次に細介する最高裁判例の法理をみた上で、後述する。 も、労働の極頬、勤務場所が特定されている場合には、その変更に労働者の同意を必要とするし、労働契約説でも、「契約締結に際して、予め、業務上の那合による転勤に応ずる旨の明示ないし黙示の包折的川怠を与えている場合に(6) は、その都度の同意は必要としない」との見解にみられるように、当該労働契約の解釈の結果として配転について包括的な権限の委譲が導きだされるならば、両説の実際上の差異はさほど生じない、との指摘が多くの学説によってな(7) されているところである。

包捌的合意税と労働契約説との見解が錯綜するなか、

配転・川向をめぐる判例法理の課題(金子)

(3) 最高裁判例の見解

配転をめぐる岐初の岐商蛾判決が盗場することとなった。束

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(13)

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(14)

東亜ペイント事件最高裁判決は、配転のなかでもいわゆる転勤(勤務地の変更)に関するリーディングケースとな

る岐高故判決であるが、その後、転勤のみならず職種の変更(いわゆる狭義の配転)に関するケースでも最高裁は同

様の判断枠組みを示した。すなわち、経験年数一七年から二八年の熟練機械工らに対する自動化された車両組立ライ

ンへの職獅の変更を命ずる配転命令の効力が争われた日産自動車村山工場事件の岐高奴判決(般一小判平元・一二・

七労判五五四号)は、①就業規則において業務上必要があるときは配転・転勤などを命ずることがある旨の規定があ

り、②企業内に以前から職種間異動の慣行があり、さらに、③「我が国の経済の伸展及び産業構造の変化等に伴い、

多くの分野で職種変更を含めた配転を必要とする機会が増加し、配転の対象及び範囲等も拡張するのが時代の一般的

趨勢であること」などに鑑みると、「業務迦営上必要がある場合には、その必要に応じ、個別的同意なしに職穂の変

更等を命令する椛限が被上告人に冊係されていた」とみるのが雁伽契約における当事者の合理的愈凪に沿うものとい は、業務上の必要性を肯定すべきである。こうした判例法肌の下に、具体的事案では、業務上の必要性を肯定し、転勤対象労働者の生活上の不利益は、転勤に伴い通常甘受すべき穐度のものであるとして、本件転勤命令は権利の濫用

こうした二つの最高裁判決における肝腎の配転命令権の根拠についての判例理論のとらえ方については評価が分かれており、労働契約説に近いアプローチをとったものとみるものがある一方、必ずしもその意味するところが明確で(8) はないとも評されている。しかし、その理論的不明確さはあるにしても、東亜ペイント事件最高裁判決以降の日産、

動車村山工場事件最高裁判決を含む蚊判例をみると、判例理論に共通する蕊本的な考え方には、少なくとも配転に際

配転・出向をめぐる判例法剛の課題(金子)五一 うべきであるとした。 にあたらないとした。

(15)

法学志休第九十四巻第三号五こ

して労働者の個別的同愈を必要としない傾向にあることは疑いない。逆にいえば、労卿剛協約、就業規則などの配転義

務規定および配転慣行の存在などを根拠に配転命令権を肯定している。さらに、東亜ペイント事件最高裁判決では、

勤務地限定の合意がなかったことも配伝命令樅聞疋の根拠としている。その愈味でいえば、一応「弥勧契絢説」ない

しそれに顛似した立場に立って、配転命令権を広範に解する傾向にあるといってよいと思われるが、実画的にはいわ

ゆる包拙的合意説に依っているとみるべきであろう。

勤務地限定ないし職椰限定の合意の、脈についてみると、來弧ペイント耶件岐商奴判決以降の判例のなかで〈川意を

肯定されるケースはきわめて少ない。いわゆるUターンⅣ就職の而接時に高齢の両親の世話を動機として大幅収入減

をⅡ叉して応募した』川を述べている吻合に勤務地限定の合愈があったとした西村叫肘珈件(新潟地決Ⅲ六三.-,一

一労判五一九号)のほかは、就業規則に配転または職務変更に関する条項を根拠にした大学教員に対する事務職への

配紙のケースで、入学の諸規定等に照らして教育・研究的職務に限疋されたものと解すべきで、枕梁川川上の配撚ま

たは職務変更に関する条項は限定的に解すべきであるとした金井学園補丼工大事件(福井地判昭六二・三・二七労判

川九四号)がそれに近いものといえるにとどまる。こうした判例を除けば、弊災公告に峨稲が明記されていたこと

(関西中央ソニー販売事件・大阪地決平元・一二・二七労判五五五号)、求人表・採用通知謀に勤務場所が明記されて

いたこと(プックローン馴件・神戸地判平二・h.二〃労判、八三号)、特定の嚇業場に腫年勤務していたこと(日

本電信電話事件・東京高判平四・七・一五労判六一三号)、一七年から二八年にわたって熟練機械工として勤務して

きたこと(Ⅱ雄、動中村山工場事件・岐一小判平元・一二・七労判ⅡⅡ四号)、編染部納皿課を当初の勤沙鰯勘所とし

て指定されたこと(よみうり事件・名古帰高判乎七・八・二三労判六八九号)などがいずれも勤務地ないし職耐限定

(16)

束Ⅲペイント叩件・岐商奴判決にみられるように判例皿論がこうした傾向にあるのは、企業社会における配栃の火

際の機能の拡大を老噸してのことであろう。前述したように、終身歴川、年功貸金を特色としてきたわが国の企業で

は、一定の定年制をとり労働力の新陳代謝をはかる必要があるため、労働者を適切に再配置し、昇進・昇格させる人

事異動、つまり配転は経営上必要不可欠のものであった。そればかりか、労働背にとっても、配転によって多くの職

種・職務および職場・勤務地を経験することが自分自身の多面的な能力開発やキャリア形成につながる効果をももた

らすことになる。そこで、こうした意味を持つ配転といった人事異動は当初からわが国企業社会で硫極的に受け入れ

られてきたし、社会経済愉勢の変化のなかで孟要な役割を果たしてきたことは疑いない。今旧、大企業のほとんど企

てにおいて配転が実施されている実態や配転・転勤に際して労働者の同意を必要とするケースがあまりないといった

炎態は企業経営上の配転の必要性を意味するし、それだけに判例も配転命令権の拡大を承認する傾向にあることもう

なずける。しかし、こうした配紙は、前述したように、企梁および〃働打にとって枇極的な味だけを持つものでない

こともまた事尖である。古くからみられる組合活動家をねらった不当労働行為として問題とされた配柘のみならず、

近年において問題視される家庭生活を考慮しないで叩身赴伍を強いる蛎釛、長年の職雁や技能を乃咽しない配椛など

労働満にとって納得し難いケースも決して少なくない。しかも、多くの場合、労働者はこうした配転・転助を抓否し

配転・出向をめぐる判例法理の課題(金子)五三 の合意を認めることにはならないと判断されているように、判例の大勢は合意の存在について厳しい判断をする傾向にある。

2判例法理の内包する問趣点

(17)

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(18)

束Ⅲペイント事件岐商奴判決以来、判例は広く配転命令樅を認める立場に立つが、もとよりそれによって使川行が

、巾裁駄により無制約的に配転を命じ得ることを認めたわけではない。東亜ペイント事件肢高裁判決は、前記判旨②

にみられるように、使用者の転勤命令権が濫川によって制約されることを明らかにしている。そして、使用者の転勤

命令権が椛利の濫川となる指標として、①業荷上の必要性が存しない場合、②その必要性があっても、転勤命令が他

の不当な釛機・月的をもってなされたものである場合、③労働者に対し通常Ⅱ受すべき樫度を耕しく超える不利腋を

負わせるものである場合などをあげ、さらにこれらの指標のうち、「業務上の必要性」については、「転釛先への異動

が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは棚当ではなく、労働力の適正配紐、業務の

能率聴進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる

限り、業務上の必要性を問疋すべきである。」とも述べている。ちなみに具体的耶案では、本件転勤が適正なロー

テーション人事異動であることから業務上の必要性の存在を肯定し、当該労働者の家庭生析上の不利縦(生まれてか

ら大阪を離れたことのない母親と無認可の保育所に努める妻および二歳の長女と母親名義の家屋に居住していたため

転勤の場合には別冊を余儀なくされるといった不利樅)は、松釛に伴い通常Ⅱ受ずべき限度のものであるとしている。

転釛命令樅の根拠につき学説から厳しい批判を受けた來亜ペイント事件岐商奴判決の核心はこの椛利濫川法皿の通

配転・出向をめぐる判例法理の課題(金子)五五 3配転命令権の濫川とその雌堆

Ⅲ配転命令権の濫用の法理

(19)

まず飾一に、「業務上の必要性」のが否である。業務上の必婆性といった於軌は、たとえば「使川打にその樅能の

行使は無制限に許されるものではなく、労使川の信義則に照らし合理的な制限に服さなければならないと解すべきで

あって、その制限は具体的事案において当該転勤の業務上の必要性の程度と当該転勤によって労働者が被る不利益の

限度とを比較考駄して判断されなければならない」(新潟鉄工所珈件・前橋地利昭Ⅲハ.七・二七〃氏災二二巻四号)

との判例にみられるように、來肛ペイント堺件岐尚奴判決以前からⅢいられてきたものである(同旨、ニチバン耶

件・名古屋地決昭五三・三・三一労判二九八号)。業務上の必要性のない配転命令は当然のごとく権利濫川にあたる

ことは疑いない。ただ、業務上の必要性といったときに、その意味する内容として、使川者側にとっての利俄の増進

といったもののみが前川に川てくることも冴えられるが、判例は、「労Ⅲ〃の適服配川、業務の能串燗進、労働者の能力川発、勤務意欲の問掛、業務迎営のⅢ柵化など企業の介皿的迎営に寄与する点が認められる限り、業務上の必要性を肯定すべき」として、単に使用者側の利益のみを強調するものではなく、労働者の能力開発や勤務意欲の高陽のように労働者側の利硫にⅢわる点をも勘案して「企業の介皿的迎瀞」を判断すべきことを指摘している。学説でも、 若干の検討を加えておく。 法学志林輔九十Nを第三号(Ⅱ) 川に関する部分にあるとい》える。そして、がれていくこととなった。

東亜ペイント事件最高裁判決以降の判例による権利濫川の基準を示すこととなった点は前述した三点である。以下 ②判例による椛利濫川の於琳の検討 五六

ここでの椛利濫川法那の適川に関する雅準はその後の判例のなかで受け継

(20)

勤はいうに及ばず、“

価されることになる。 業務上の必要性判断にあたって、労働者の能力開発や勤務意欲の高揚といった利舳が生じる点こそが「企業の合理的(皿)運営」における「△口理性」に沿うものであるとして、特にこの点を強調するものもみられるが、本来的に業務上の必要性といった場合には、単に使川者側の利樅のみを指すものではなく、従業貝にとっても利維があるか否かといった「企業」全体のレベルでみることが肝要であると思われる。その意味で、こうした指摘は的を射たものといえるであろう。判例のいう「企業の合理的迎徴」もこうしたものとして理解することが妥当するといえよう。

「業務上の必要性」の判断に際して、判例は、配転が「余人をもっては容易に替え難い」といった高度の必要性に

限定することは机当ではないという立場に立っている。こうした考え力は、東亜ペイント事件岐高蚊判決以前からの(皿)判例の傾向でもあったし、その後の判例もこうした傾向にある。

第二に、業務上の必要性がある場合でも、転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるか否かで

ある。古くからみられた不当労働行為意思を有する配転・転勤や思想信条を理由とした差別的意図をもった配転・極

勤はいうに及ばず、嫌がらせや報復意図をもった配転・転勤はたとえ業務上の必要性があったとしても権利濫用と評

第三に、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるか否かである。東亜ペイン

ト事件岐高蚊判決では、生まれてから大阪を離れたことのない叶親と無認可の保育所に努める妻および二歳の長女と

母親名義の家屋に居住していたため転勤の場合には別居を余儀なくされるといった当該労働者の主張する家庭生活上

の不利雛は、枢釛に伴い通常Ⅱ受すべき樫度のものであるとしている。

配極・山向をめぐる判例法剛の課題(金子)

(21)

しかし、火Ⅲペイント耶件岐問奴判決以降の判例をみると、あきらかにこの肢満奴判決の彫粋を受けて、「皿常Ⅱ

受すべき温度を著しく超える不利益を負わせるものであるか否か」といったことを問題とし、しかもそれに該当しな

いといったケースが多くなってきている。たとえば、スナック経営と兼業のマンション椅理人に対する片道一時間以

上の別のマンションへの転勤命令を、変の一府の協〃や側助努〃によっては、スナックの絲営が不可能になるとは断定することができず、その不利益は転勤に伴い通常甘受すべき程度のものというべきであるとしたケース(ダイア管 東亜ペイント事件は、いわゆる単身赴任を問題としたケースであるが、この事件の最高裁判決以前においては、家族のなかに三人の介謹を要する病人を抱えている労働打への来京本社から広島文肘への転勤命令が、業務上の必要性とその労働者に及ぼす影裡とを比較考賦すると、杵しく均衡を失しているとしたケース(H本砿気鞭件・東京地判昭四三・八・三一労氏集一九巻四号)、敢度の身体障害児をもつパス会社の整備工に対しての別府営業所から熊本営業所への転勤命令が、「原告及びその一家にとっては、その一生をも変更する樫の桁神的、経済的苦痂を与えるであろうことが認められるので」人事樅の濫川にわたるとしたケース(九州国際観光パス蛎件・人分地判昭四九・四・一七労判二○一号)、商Ⅲ爪症で視力障害の荷船の〃をもつ者に対する不況対莱の一環として新潟県のⅢ場から緋川叺の工吻への転効命令は、労働打の受ける影粋.f利樅が杵しく火きいので、椛利の濫川にあたるとしたケース(川本軽金属新潟東港工場事件・新潟地判昭五九・一○二五労判四四六号)など、権利の臘川を認めたケースがわずかではあるが認められる。

しかし、來雌ぺ. 法学志林第九十四巻第三号③椛利濫川扶皿の妥当性について 五八

(22)

理事件・名古屋地決平二・一○・二二労判五七九号)、蝦約肛後の労働者になされた神戸工場から岐阜工場への転勤

命令につき、新蜥当初から別居を余儀なくされる限度の生活上の不利益は予測されないものではなく本人と蜥約者の

選択の結果であるから、受忍限度を著しく超える不利袖とはいえないとしたケース(川崎菰工業事件・神戸地判平

元・六・一労判五四三号)、両親と同居する独身の女子行員に対する大阪から東京への転勤命令につき、単身赴任ま

たは親を伴う赴任を余儀なくされることは、転勤に伴い通常予想される樫度の不利樅の域を超えるものではないし、

子どものいる既妬女子行貝の巾身赴任について、たとえ家族に対する影轡が入きいというイ利樅が生じても、それは

「共働き夫婦の一〃が転釛を命じられて単身赴任を余儀なくされる場合に迦術生じる腿皮のもの」としたケース

(チェース・マンハッタン銀行酬件・大阪地決平三・四・一二労判〃八八号)などにみられるように、判例では「通

常Ⅱ受すべき程度を箸しく超える不利縦」といった事情をほとんど肯定しなくなっているに等しい状況にある。配転

の日常化といった機能変化は、労働者が「通常甘受すべき程度」の幅を機能変化に沿った極限まで拡大してきている

というよりも、すでに限度を超えてしまったといわなければならない。こうして椛利濫川の次元でみるかぎり、配

転・転勤について労働者側がその効力を争うことは、第二の指標、つまり、配椛命令が不当勿働行為性を行するなど

明白に他の不当な動機.Ⅱ的をもってなされたものである場合を除いて、判例上はかなり難しくなってきていると

こうした判例法理は配転の法理論として問題である。配転の実際の積極的機能にあまりにも引きずられすぎている

といわなければならない。すでに、配転命令権の根拠のところでも論じたが、配紙は企業および労働者にとって積極

的恵味だけを持つものでないことも考慮しなければならない。不当労働行為性をもった配転はおいたとしても、近年

配転・出向をめぐる判例法理の課題(金子)丘九 いってよいであろう。

(23)

単身赴征をせざるを得ないような転勤の場合には、労働者の不利彼性が存在することは明らかであるから、使川者

は何らかの手立てを識ずるのが実際であろう。その点で、近年の判例のなかに、転勤に伴う労勧者の不利雑を軽減・

回避すべき仙川者の信義川上の義務について川言しているものがあらわれてきていることは注目すべきである。すな

わち、「転隅を伴う柘勤は、一般に、労働者の生活関係に影紳を与え、特に、家族の病気の世話、子供の教育・受験、

持家の符理、配偶者の仕事の継続、赴任先での住宅事竹等のやむを得ない理由から労働者が単身赴任をしなければな

らない合理的な事情がある場合には、これが労働者に対し経済的。社会的・糖神的不利縦を負わせるものであるから、

使川者は、労働者に対してこのような維勤を命するに際しては、信義川上、労働者の右不利樅を軽減、回避するため

に社会通念上求められる描慨をとるよう配岻すべき義務があるものというべきである」(帝国臓器卵件・東京地判平

五・九・二九労判六三六号)という考え刀の判例である。もっとも、この醜業では、使川者側に労働契約上負うべき信義川上の配慮義務にかけるところはないものとして、結論的には配慮義務述反の存在を否定しているが、「転勤を

命ずるに際しては、信義川上、労働者の右不利樅を軽減、回避するために社会通念上求められる拾慨をとるよう配脳

法学志林第九十四巻第三号六○

において問題視される家庭生活を考慮せずに単身赴任を強いる転勤、長年の職歴や技能を一切考慮することのない配

転などについてさえ立場の弱さゆえに枢否することもできず、生活のために仕力なく従わざるをえない労働者が数多

く存在するといった事愉を考えるとき、包括的合意説とほとんど変わらない法的根拠論に立ち、かつ権利濫川の成立

の余地の少ない基準をたてる近年の判例法理はあまりにも企業偏敢的すぎるといわざるをえない。

4便川者の配慮議務

(24)

こうした転勤に際しての使川者の配慮ないし階慨が判例上側趣とされたことは、これまでにもなかったわけではな

く、むしろかなりのケースで芳慮されてきているといえる。同一企業でない共働き夫婦の夫に対する転勤命令につき、

変の就職斡旋の巾し入れ・三DKの社宅の提供(日本合成ゴム珈件・沌地判昭四兀・六・二労民災二一巻三号)、

同一企業でない共働き夫婦の火に対する転釛命令につき、別居手当・住宅手当の文給(三井來爪化学名古屋工場事

件・名古凧地利川四七・一○・二三労判一六六Mが)、同一会社の子持ち夫婦に対する夫への転勤命令につき、赴任先

での妾の就職斡旋ないし単身赴任の場合の保育園への送迎時間などの便宜の約束(吉野石膏事件・東京地決Ⅲ五三・二・一五労民集二九巻一号)、婚約直後の男性の転勤命令につき、婚約者の就職斡旋・社宅の提供等特別の配慮(前掲、川崎重工業事件・神戸地判平元・六・一)などにみられるような判例は数多い。ただ、これら従来の判例での「配慮ないし描樋」は、椛利濫川の判断於準の一部として部分的に川いられているにすぎないため、使川者の配砥な

いし梢悩のもつ法的怠味あいとか一般的峨恥とかいったものが考慮されているとは言い難い。こうした判例状況のな

かで、帝刷臓器邪件・来京地成判決は、労働契約上の信義川から導きだされる配賦義務、といった法的概念をⅡ旨し(Ⅱ) たことに特色がある。その結果この配慮義務の内容は、椛利濫川の次一工でとらえるよりも、より広範なものが要求さ

れることになる。しかしながら、この判例で示された配慮義務が「労働契約上負うべき信義川上の」ものとの川言は

なされているものの、この事業での具体的配慮義務の内奔をみると、権利濫川の次元でのものなのか、それとも労働(旧)契約上の信義川から導きだされるものなのか、ほとんどⅢ脈に区別・到心識されていない』川の脂摘もあり、より川碓に

脆鯨・川向をめぐる判例法剛の課題(金子)上ハー 確かである。

すべき義務がある」と明言したことは今後の配抵、特に肌身赴征のような縁釛取件に与える彩騨が少なくないことは

(25)

法学志林第九十四巻第三号一ハーー〈肥)

は今後の判例の集積を待つことになろう。学説では配慮義務の重要性を指摘するものがみられるが、権利濫用の次一工 ではなく、信義川上の次元での配慮義務の問題としてこの点を強調することは配転の「業務上の必要性」と不当配転

のチェックとのバランスを考える上で有効な手法として評価できるものと思われる。

(5)学説として、萩沢清彦「配置転換の効力停止の仮処分」成践法学二号一画、秋川成就「人事権の法的構成l特に配転命令に関してl」季刊労働法八三号二四頁、青木宗也「個別的労働関係法』八五頁、片岡昇「配転命令権の限界」法学論議一○○巻五・六号五七頁、片岡卿他耕『新労働於坤法論』一川八画(執飛担当蝿〃降令)など。(6)外尼健一『採川・配転・出向・解馳」(労働法実務体系9)一九Ⅶ頁。(7)下丼隆史「配転・出向と労働法理論」季刊労働法別冊『労働基準法』七二頁以下。(8)村中孝史「転勤命令権と権利の濫用」学会誌労働法六九号二九頁、萩澤清彦「配転」別冊ジュリスト労働判例百選[第五版]三八画、佐藤敬二「配転」別Ⅱジュリスト・労働判例百選[第六版]六六画など。(9)佐麟・前掲町頁。 (1)学説として、木多沖亮「配慨転換・転勤をめぐる法律問題」服川調縦と人耶問題四二頁以下、同「配悩転換・転勤の法的性質」大阪市立大学法学雑誌一九巻三・四号一七一頁。配転法理については多くの論稿があるが、さしあたり、渡辺裕「配置転換・転勤と出向の法理」労働法文献研究会編『文献研究労働法学』一五頁以下、和田肇「文献研究4・人事異動」季刊労働法一六四号一八九頁以下、高木紘一「配転・出向」Ⅱ本労働法学会編「現代労働法講座一○巻』二六頁以下、山水古人「配転・川向」『労働契約の研究・本多漉兇先生週勝記念』二○五画以下など参照されたい。(2)山川俊夫「五十嵐キネマ事件・判例批評」ジュリスト三一三号一五三頁。(3)吾妻光俊「労働者の権利・義務」労働法大系5四六頁、「特約説」ないし「特定的合意説」と呼ばれる。(4)渡辺章「配樋転換と労働契約」労働問題研究第四集川九頁、「配転命令否認説」と呼ばれる。もっとも、後に論者自身によれば、この凡解は火矼的に沁(3)の「特約説」とⅢ様のものであるとされる(同「労働法皿論における法規的梢成と契約的柵成」川本弥働法学会誌七七号三二画)。

(26)

企業内の人事異動である配転については、判例は、前述したような今uにおける配転の穣極的機能、実態の下で、

労働契約締結にいたる経緯、就業規則や労働協約などによる配転規定の内祥、配職の実情などに触づいて労伽契約を

配侭・出向をめぐる判例法理の課題(金子)一ハーニ

三出向の法理と課題

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四)東亜ペイント事件最高裁判決以前の判例として、栗本鉄工所事件・大阪地決昭四四・三・一○労民災二○巻二号、福岡銀行蛎件・福岡地判昭四七・一・二八労判一四八号など参照。それ以後の判例としては、笠戸船渠事件・山口地裁徳山支部判昭六一・一二・一○労判四八九号、帝国臓器製薬事件・班凪地判平五・九・二九労判六三六号など参照。さらに、徳山凹達事件・山u地決昭丘一・一一・九打判二,二号のように、〃働打の不利雌性が大きい珊合には、「余人をもって件え難い」岡肛の業扮上の必喫性が芯ければならないとするものもみられるが、それはあくまでも一部の判例にすぎず、傾向的には東亜ペイント耶件般商奴判決の立場が主流である。U新谷興人「叩身赴任と転勤命令権の効力」季刊労働法一七○場一六川面。

l判例にみる川向命令の法的根拠 山川・前側一○画以r、

''1付け lllll11ij

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Iiiiili前 掲|凶掲九一一 lx二二

Ⅲ出向命令の特色と問題の所在 二三頁。.当りi、llyr 上川道夫「配転」山本門人監修『岐新刀術行理の法休知識」一三六口。

波辺・前脚Ⅱ水労働法学会誌七七号一二画など。

(27)

使川者の川向命令の法的根拠についてのリーディング・ケースは、よく知られているように、H立電子事件・來戒

地奴判決(Ⅲ四一・三・三一労氏災一七巻二号)である。判決では、まず、「仙川者が企業体の絲憐者として〃働宥

の労働力を業務目的のため利川処分する椛能は、当該労働者との契約により初めてこれを取得するところであって、

この契約関係を離れて、労働力を処分利川できる使川者の剛有椛限は存しないものといわなければならない。」とし

て、まず、企業経営樅に内在する間、の椛能として川向を命じうるとの本件での仙川背側の主根について、川向は使

川者の経悩椛に払づいて当然に内在する固有の椛限として命じうることができない旨を明言した。そして、「労働力

法学志林第九十四巻第三号六四

解釈することにより、配転命令権を広く肯定し、さらに、制約法皿としての権利濫川の適川に関しても緩やかに解し

ており、結果として便川村の配転命令樅の合川性を比較的広範に肯定する傾向にある。つまり労働契約の締緋段附で

の包招的合愈にその根拠を求めているとみることができるのである。

しかし、川向の場合には、配転のような企業内人事異動と異なり、法人桁の異なる他企業への人事異動である点で

同様に考えるわけにはいかない邪怖がある。つまり、配紙・転勅はどんな職祁やどこの職場に配慨替えされても弥働

契約の根幹をなす労務提供の州一十万が変更されるわけではないのに、出向はそれが変更されるのである。その点に川

向の基本的問題が存在するのであるが、この場合、労働者の同意を得ずにした出向命令の有効性はどうなるのであろ

うか。換言すれば、川向命令の法的根拠はどこに求めることができるのかということがまず問題とされなければなら

ない。

②判例法理の構造

(28)

の処分利川を目的とする雁伽契約は、民法六二三条にいうとおり労務者が使川者に対してその指図(指揮命令)下に

労務に服し、その対価として賃金を得ることを内容とし、目的たる給付の性質上使用者と労務者との間における命令

服従の人的関係をその基盤とするものであって、右契約の特質に鑑みれば、労務者は別段の特約がない限り当該使用

者の指揮命令下において使用者のためにのみ労務提供の義務を負担し、使用者が労務者に求め得るところも自己の指

揮命令下に自己のためにする労務の給付にとどまるものと解するのが相当であり、民法六二五条が使用者の第三者へ

の椛利譲渡、労務者の第三者による労務提供につきいずれも机手刀の承諾を要する旨規定した趣旨も、上述したよう

な労務給付義務(又はこれに対応する権利)の一身専属的な特質を考慮したものといえる。右のような屈州契約の特

質は、近代企業において使川者・労務者間の人的関係における個人的色彩が薄れ、組織化された雇傭関係においても

失われるものではなく、むしろ法はかような労務者の特定企業への従属性を配慮して、使用者に対し労務契約締結の

際の労働条件の詳細を労働者に明示することを要求することにより(労働基準法一五条一項、同施行規則五条)、労

働者の保護を図っているのであって、右法の桁神からいっても、使川者は労働契約に際し明示した労働条件の範囲を

超えて当該労働者の労働力の自川専窓な使川を許すものではなく、当該労働者の承諾その他これを法律上正当づける

特段の根拠なくして労働者を第三者のために第三者の指揮下において労務に服させることは許されないものというべきである。」と述べて、出向命令も、「労働者の承諾その他これを法律上正当づける特段の根拠なくして」当然に正当

づけるわけにはいかないことを明言した。ここで日立電子事件・東京地裁判決のかなり長い引用をしたが、この判決

の論理構造を知る上で意味があると思われるがゆえにあえて紹介したのである。そして、この判決論理のなかで翻意

すべきは、①雇伽契約が特定の「使川者と労務者との間における命令服従の人的関係をその基盤」としていること、

配転・出向をめぐる判例法珊の課題(金子)六五

(29)

判例法皿によれば、仙川背が川向を命じうるためには、「労働舌の承諾その他これを法祁止服当づける特段の根拠」

を要することとされるが、問題は、この場合の「労働背の承諾(同意)」または「特段の根拠」の態様である。当初

の判例は、この点をあまり川脈に意識していたとは思えず、どちらかといえばその那皮の個別的同意が必要との立場

に立っているような判断をしていたとも解せられる。たとえば、出向命令に同意していないがゆえにその効力を否定

するといったケース(西阿生コン事件・徳島地決昭六○・七・一九労判四六二号)などは、逆にいえば同意の必要性

を求めているものであったともいえるのである。しかし、日立屯子事件来京地放判決が示した「労働者の承諮その他

これを法律上正当づける特段の根拠」という判断枠糾みは、「労働者の承諾」、つまり「同意」のみに限定されず、

法学志休第九十四巻第三号レハ土ハ

したがって、②「労務者は別段の特約がない限り当該便川者の指抑命令下において使川者のためにのみ労務提供の義

務を負担し、使川者が労務者に求め得るところも、己の指抑命令下に自己のためにする労務の給付にとどまるもの」

であること、③「民法六二五条が使用者の第三者への権利譲渡…につき…相手方の承諾を要する旨規定した趣旨も…

労務給付義務の一身専属的な特質を考慮したもの」であることなどの認識である。そして、判決は、こうした認識は

近代の凧Ⅲ側係の下でも生かされるべきであるから、前述したように、川向命令も、「刀働者の承諾その他これを法

律上正当づける特段の根拠なくして」当然に正当づけるわけにはいかないと論じたのである。これが爾後の判例にお

ける川向命令権の判断枠紺みとされることとなった(Ⅲ火タイヤ事件・来京岡利昭Ⅲ七・四・二六判時六七○号、

〈上告群〉岐二小判昭四八・一○・一九労判一八六号)。

③「労働者の承諾」の態様について

(30)

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六労判三八八号)。

配転・出向をめぐる判例法理の課題(金子)

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(31)

節汀に、労使慨行による川向義務についても肯定的であるが(前掲・日立電子耶件・東京地利、前掲・ダイワ桁工

事件型爪地哉八王子支判など)、具体的事業で慨行の成立を認めたものは少ない(慣行の成立を認めたケースとして、

新日本製餓珊件・桶川地成小、文判平八・一一一・二六町経速一江九W号)。

第六に、他企業への人事典勁、つまり、労帥契約の机手刀・脂抑命令椛者が変わる川向の特殊性をおもんぱかって、

就業規川や労働協約に間接的に川向を予想し得る職度の規定があるだけでは、それを根拠とすることができない。た

とえば、就業規則にもとづく休職規定に、他社川向などの必要があるときには休職を命じ得る旨の規定があるだけでは出向義務を根拠づけることはできないし(前掲・日來タイヤ事件・岐二小判)、労働協約上の「配慨転換条項」(小 ○・四・二五労判ニニトタイム事件・岐二小判)。 法学志林第九十四巻第三号六八

第二に、①労働協約の出向人事条項があれば労組法一六条を根拠に川向義務の発生を肯定するし(神鋼晒機事件・

沐地決川四六・五・七労判一三三湯、新日本ハイパック邪件・長野地奴松木‐又判平元,二・三労判〃二八号)、②入

社時の労働契約において川向義務を約さなくても労働協約の成立により川向義務の刎設がなされたときにもその義務

が発生する(H本晒気事件・蕊爪地判昭四三・八’三一労氏災一九巻四号)。

節三に、①就業規川に川向義務規定があれば川向義務が発化するし(jR來梅珈件・人阪地決川六二・一一・三○

労判五○七号)、②改訂就業規則において出向義務規定を設けたときも、それが合理的なものであるかぎり、たとえ

不利雑変更だとしても出向義務は発生する(ゴールド・マリタイム那件・妓二小判平四・一・二四労判六○四号)。

第四に、労働協約・就業規則の双〃に川向義務規定があれば川向義務が発生する(洸洋自動車事件・大阪地利昭五

○・四・一一五労判二二七号、セントラル硝子事件・山口地判昭五○・七・二○労判二八一号、前掲・ゴールド・マリ

参照

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