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〔特 別 掲 載〕
(東女医大誌第30巻第10号頁2158−2160昭和35年10月)
ウレアーゼについての知見補逡:
3. 血中尿素定量法の検討
東京女子医科大学生化学教室(主任 松村義寛教授)
藤野怜子・安井秀子
フジ ノ Vイ コ ヤス イ ヒデ コ(受付昭和35年9月5日)
血液あるいは尿など臨床材料を検体とする尿素定量法 にはジアセチル1), ジアセチルモノオキシム2)N4),キサ ンFヒドU一ル5)などのような尿素と特異的に反応する 試薬を用い,かっそれぞれに適当した発色試薬の組み合 せによって比色分析が行われるので光電比色計の普及と あいまって分析操作は著しく簡単となりしかも迅速に行 われるようになった。
これらの方法は臨床材料のようなほぼ条件が一定した 試料についての定:量法としては一応満足すべき状態にあ るものと思われる。しかしながら研究上に用いるための 血申尿素あるいは酵素化学の諸実験における試料につい
ての定量法としては種々の妨害物質による影響を蒙むり やすいため,ウレアーゼの厳密な特異性を応用する酵素 的定量法は捨て難い利点を有している。試料にウレアー ゼを作用させると尿素は炭酸アンモニアに変化し,生成 されたアンモニアを定量する二とにより尿素量が分析せ られる。
アンモニアの定量:には反応液に直接ネスレル化を行う
:方法もあるが時には混濁を生じて定量不能となり,ま た,種々の添加剤,還元性物質,重金属塩キレート剤 などの共存により呈色が不定となる。
アンモニアを反応液より蒸留,通気,拡散などの方法 により分離したうえでネスレル化を行うと上のような妨 害は除かれる。
通気法,拡散法は操作に長時間を要するため著者らは 通常のPregl−Parnas型の窒素蒸留装置を用いて定量を 試み好結果を得た。
実 験 方 法 a) 器 具
1,試験管 重金属など酵素阻害剤の汚染を除くため
四硝酸に一度浸漬したのち充分に水洗したものを用い た。ピペヅトなどのガラス器具も同様に清洗した。
2.画線付共栓試験管(10,15,20,25m1に画線を 付したものが便利である),上記と同様清平して使用し
た。
3.Pregl−Parnas型微:量窒素蒸留装置
冷却管の部分のガラス管は充分長くして試験管を受器 として使用したときに底部に:先端が達するようにした。
4.光電比色計 AKA−5D型を用いた。
b)試 薬 1. ウレアーゼ
Jack Bean Meal(Sigma)のグリセリン抽出液を用
いた。
2. 酉乍酸緻面液1.3M pH 5.9
酢酸ナトリウム結晶15gと氷酢酸1mlとに永を加
えて100m1とする。3.ホウ酸ナトリウム飽和液(4%)
4. 0.IN HCI 5. o. IN NaOH
6. ネスレル試薬(Koch−McMeekin法6)1こよつて製 した)
7. アンモニア標準液(第一化学製品)
8.10g/d1タングステン酸ナトリウム 9. 2/3N H,SO4
c)測定方法 1、血中尿素の定量法
1)除蛋白 血液あるいは血漿をFolin−Wuの:方法 に従って除蛋白炉液を得る。
2) ウレアーゼによる尿素の分解
除蛋白渉=液5ml,酢酸緩衝液2滴,ウレアーゼ溶液1
Reiko FUJINO and Hideko YASUI (Department of Biochemistry, Tokyo Women s Medical College) : Supplernentary contributions on urease. 3. Some considerations on blood urea determination.
一2158一
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m1を加えてよく混和し37。Cの恒温槽あるいは60。C の温湯600m1を盛ったビーカー中に15分間保つ。
3) アンモニアの蒸留
画線付試験管に0.1NHCI lmlを入れて蒸留装置の 受器とする。2)の分解液を蒸留室に定量的に移し,ホ ゥ酸ナトリウム飽和液4m1を加え漏斗は水1mlで洗
い込む。
1分間5mlの速度で蒸留して大約15mlまで蒸留を 行ない,受器(試験管)を下げ,冷却管のまわりを浄水
1 m1で洗い込む。ゴム帽ピペットあるいは洗瓶を使用 する。また冷却管の内面は約2m1ほど蒸留をつs けて 洗い込む。
4)発色
受器をはずして氷水中に浸漬して充分冷却したのちネ レル試薬2.5m1を加えて,水を追加して25mlの画線 に合わせ,混和後10分間静置して比色する。
5)比色
適宜の光電比色計を用いて比色する。
二者らはAKA−D5型光電比色計を用い光路長10mm のキaベヅトでS47のフィルターを用いた。対照管とし て0.1NHC11 ml,標準管には0.1NHCIlml,アン モニア標準液1m1(一〇.1mgN)を盛りそれぞれネスレ ル試薬2..5mlを加えi水を加えて25m1とした。
実 験 結 果
蒸留操作が定量的であって,未分解の尿素により妨害 のないことは第1表,第1〜4図により示される。
尿素液にウレア一二を作用せしめたものについては第 2表に示すように略100%の回収率を示した。
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x.o
蒸;9しtaいで発色
一〈/rゴけ 一一一一ノ〉+N素
1
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t ノ
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t y
ノ
p
0 ioo Zoo 300 ktwt no
/V埠
実線はアンモニア標準液における発色 点線はアンモニア標準液に0.1M尿素液を加え たもの
尿素の共存により吸光度の変化のないことが示 される
第1図 アンモニア濃度吸光度曲線
第3表他法との比較
第1表 アンモニアの定量
付号年三性別陸
アンモニア N
O. 05mg
O. 10 0. 15 0. 2e O. 25 0. 30 0. 4e O. 50
直接発色
O. 191 0. 376 0. 534 0. 677 0. 743 0. 88 1. 00 1. 32
蒸留後発色
e. 194 0. 374 0. 562 0. 582 0. 787 0. 84 1. 07 1. 37
ジアセチルモ 法 ノオキシム法 0.1M尿素
1mlを加
えて蒸留
第2表 尿素の定量
O.194
0. 374 0. 532 0. 702 0. 735
Nを等しく する標準液 の吸光度
A
B o
D
E
56 29 20 24 35
尿 素mg N
吸光度
0/e103. 8 98. 8 96. 5 94. 7 99. 5
9 8 9 9 6
O. 111 e. 219 0. 326 0. 408 0. 535
o. le6 0. 222 0. 338 0, 432 0. 538
18. 3mg/d1
12. 3 20. 8 34. 8 10. 3
O. 03 0. 06 0. 09 0. 12 0. 15
17. 5mg/d1
11. 6 20. 8 35. 0 10. 3
臨床的材料として数名の患者の血液について分析した 値をジアセチルモノオキシム法によって得た結果と比較
したものは第3表の如くなった。
考 察
通気法では夏季の如く30。C以上の温度で行えば100 μg程度のアンモニアは30分内外で定量的に移すことが できるが,20。C以下の室温ではアンモニアの移動ヵ湛 だ緩徐となり通気時間を3時間以上とする必要がある。
ことにアンモニアの量の大きい揚合は更に長時間を要す
る。
拡散法では微量を用いて拡散時間を短縮しているので あるから分析材料中のアンモニアは少量を用いることに なり,比色分析がやりにくい。
一2159一
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1,e
/
1 ノ
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ダ
Na」OH(蒸溜)
N
一一一一一一N+尿素
1
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,XP一一咽一 一一
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NaBo4〈蒸溜>
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一一一一一N+尿素
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一
7 p
a loo 20n 30p uao sno
〈/眉
実線はアンニモア標準液のみを蒸留処置後発色 せしめたもの
点線はアンモニア標準液に0.1M尿素液を混じ たものにつき2N NaOHを添加して蒸留した もの,強アルカリ.性のため尿素が分解してくる 第2図 2N NaOH 4mlを加えて蒸留した場合 E
2,a
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5 pI
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N㍉ご03(蒸溜)
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一.t一_N÷尿素戸
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o ifo・ 2ao 3 ap Aoo {ea
N N7,
Na2CO3アルカリ性では:分解が僅かながら見ら れる
第3図2N Na2CO34mlを加えて蒸留した揚合
0 1〃〃 ノ〃 3グ〃 4〃 5〃〃
〈〆淋う
添加尿素の分解は極めて僅かである 第4図 NaBO2飽和液を加えて蒸留した場合 本法では100PCにての蒸留により蒸留時間を短縮す
ることが出来た。
蒸留によりアンモニアを単離するのであるから不揮発 性のものが試料中に添加共存していても妨害が避けちれ るので酵素の阻害実験7)などにも便利に使用される。
要 約
微量窒素蒸留器を用いウレアーゼ法による血中尿素定 量法を検討した。
血液0.5〜1. Oml中の尿素が約20分間にて定量され 5%以下の精度が得られる。
本法はまたウレアーゼの測定法としても用いることが でき,阻害実験などにおける阻害剤の妨害を避けること が容:易であるQ
本報の要旨は日本臨床病理学会第1回総会(昭和29年 10月31日,於東京大学医学部)に発表した8)。
文 献
1) Natelson, S. et al.: Am. J. Clin. Med. 21 275 (1951)
2) Omsby, A. A.: J. Biol, Chem. 146 595(1942)
3) Kawerau, E.: Sci. Proc. Roy. Dublin Soc.
24 63 (1946)
4) Barker, S.R.: J. Biol. Chem. 152 453 (1944)
s) Lawrie, H.: Clin. Chem. 2 691 (1957)
一2160一
6)
7)
8)
藤井暢三:生化学実験法定量編11版(昭33)
南山堂東京250頁
藤野沿子,松村義寛:東女医大誌30(9)(昭35)
藤野沿子,松村義寛=臨床病理380(昭30)