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っている.一方で,都心部において不足する自転車走行

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Academic year: 2022

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(1)自転車走行時の心理的負担に着目した自転車走行空間の比較評価 ~高松における「心電図トランスミッタ」を活用した調査を通して~ Evaluation for comparison of Bicycle Road Space that pays attention to psychological load when bicycle running ~Through the investigation that uses " Heart rate Monitor " in Takamatsu~ 鈴木清**・松田和香***・竹林弘晃****・砂川尊範****・新田保次***** By Kiyoshi SUZUKI**・Waka MATSUDA***・Hiroaki TAKEBAYASHI****・ Takanori SUNAGAWA****・Yasutsugu NITTA***** 1.はじめに 近年,自転車は,環境負荷の低い交通手段として注目. る定性的評価表「チェックリスト」を作成し,整備事例 に適用して比較評価を行っている.その評価では,自転. され,健康志向の高まりを背景にその利用ニーズが高ま. 車や歩行者等の交通量や速度,路面,段差,勾配,幅員,. っている.一方で,都心部において不足する自転車走行. 道路占有物,交差点等,自転車走行空間の評価に影響す. 空間の整備のためには,現状の道路空間の再配分が必要. ると考える多様な空間構成要素を体系的に抽出している.. であり、自転車走行空間の安全性や快適性といったサー. 本研究では,これらの空間構成要素が,自転車走行空. ビスレベルを客観的に表現できる評価指標や手法の構築. 間の快適性に影響を与えると考え,データ比較する路線. が重要である.. を抽出する際の参考とした.また一方で,既往研究では,. 特に,自転車交通は,人間が直接の原動力となるため,. 自転車の走行快適性に関する評価は,定性的評価が主体. 走行時に感じる心理的負担が,自転車走行空間の走行快. となっていることが多いことから,定量的な評価指標の. 適性に直接的に影響を及ぼす.そのため,自転車走行空. 抽出および調査手法の構築が課題と認識した.. 間の評価には,安全・安心に加えて,走行快適性の評価 も重要と考える.しかしながら,これらに関する既往研 究は,アンケート等を中心とした主観的な評価が多い. そこで,本研究では,今後ますます創出が必要となる 中心市街地での自転車走行空間の走行快適性を評価する ため,自転車走行中に感じる瞬時の心理的負担を把握す. 表 1 自転車走行空間の走行快適性を評価する空間構成 要素の研究・整理事例 タイトル ○ Bicycle Compatibility Checklist の 作 成 と 自 転 車 道 先 行 事 例 の 評 価 1) (金・五上). る指標及びその指標を計測する調査機器,さらにその指 標を用いた心理的負担の評価手法について,高松市内の 道路において実測したデータをもとに分析・検討した. 2.走行快適性を評価する空間構成要素の研究事例 自転車走行空間の走行快適性を評価する空間構成要素 について研究・整理した事例を,表 1に示す1)2)3)4).金ら は,自転車走行空間整備の妥当性を評価するために,欧 米の評価手法等を参考にして,利用者の立場で評価でき *キーワーズ:自転車交通計画,公共事業評価法 **正員,国土交通省 四国地方整備局 香川河川国道事務所 (香川県高松市高松町2422-1,TEL087-844-4316, E-mail: suzuki-k8814@skr.mlit.go.jp) ***正員,博(社会工学),国土交通省 四国地方整備局 道 路部道路計画課(香川県高松市サンポート3-33,TEL087851-8061,E-mail: matsuda-w92gk@skr.mlit.go.jp) ****正員,株式会社建設技術研究所 (大阪市中央区道修町 1-6-7,TEL 06-6206-5689, E-mail: sunagawa@ctie.co.jp) *****正員,工博(土木工学),大阪大学工学研究科地球総 合工学専攻(大阪府吹田市山田丘2-1,TEL06-6879-7609, E-mail::nitta@civil.eng.osaka-u.ac.jp). ○自転車と歩行者の混在 状態下における通行快適 性 に 関 す る 調 査 2) ( 諸 田・大脇ら) ○岡山市内国道 53 号線に おける自転車道整備効果 の検証 3) (阿部・崎ら) ○既存道路空間を活かし た自転車レーン設置によ る自転車・自動車の共存 可能性 4) (吉村・亀野). 空間構成要素 交通量(歩行者,自転車,自動車), 速度(歩行者,自転車,自動車),路 面 , 段 差 , 勾 配 ( 縦 断 , 横 断 ), 幅 員,道路占有物(電柱,植樹帯,街 灯・照明,歩道橋,バス停,駐輪自転 車,駐車自動車,標識),交差点,走 行快適性に関する満足度など 交通量(歩行者,自転車,自動車), 速度(自転車,自動車),走行快適性 に関する満足度(アンケート調査に基 づく) 交通量(歩行者,自転車),速度(歩 行者,自転車),走行快適性に関する 満足度(アンケート調査に基づく) 交通量(歩行者,自転車,自動車), 走行快適性に関する満足度(アンケー ト調査に基づく). 3.心理的負担評価指標および計測方法の検討 (1)自転車走行時の心理的負担評価指標の検討 ストレスなどによる心理的負担を把握するには,一般 的に心拍変動を表す「RR間隔(心電図の波形で,最も大 きく出るR波と次のR波までの間隔)」(図 1)を計測し, 解析する手法が用いられる. 斉藤・清田5)は,ホルター心電図等を用いてRR間隔を 計測し,RR間隔の変動の周波数成分を解析して求める 「LF(0.04~0.15Hzの低周波成分)」,「HF(0.15~0. 4Hzの高周波成分)」を求め,副交感神経活動を反映す るといわれる,その成分比「LF/HF」により,歩行者と.

(2) R波. R波. R波. (2) 自転車走行時の心理的負担計測手法の検討 装着者の心拍変動(RR間隔)を計測する機器としては,. RR間隔i+1. RR間隔i. ホルター心電計を始め様々な機器があるが,持ち運びや 取り付けが容易で,装着者が運動状態の計測にも適し, リアルタイムでの心拍変動の確認も可能な機器である 「心電図トランスミッタ」を用いて,心理的負担状況を 図 1 RR間隔. 計測することとした(図 3).. 自動車や自転車のすれ違い評価を行っている.. 自転車走行調査では,心電図トランスミッタを被験者. 6). また,本多・塚口 らは,斉藤らと同様に,RR間隔変. に装着し,心理的負担状況を把握する他,心理的負担要. 動の周波数成分の解析により求めた「LF/HF」により,. 因を特定するためにビデオカメラ,さらには走行位置情. 心理的負担をとらえ,あわせて身体エネルギー消費量を. 報を把握するためにGPSを,自転車に搭載して計測する. 測定し,歩行者の「あせり」や「緊張」といった意識を. ものとした.. 定量化している.. この計測手法の実施可能性を確認するため,実走によ. 上記の研究事例は,歩行者の心理的負担を計測する手. る試験調査を行った.調査概要を表 2に示す.. 法として,有用な手法と考える.その一方で,本研究で は,分単位で環境が変化する自転車走行時の心理的負担 を把握する必要があるため,周波数解析によって5分間 など一定時間帯データの解析で求められる「LF/HF」で の評価は難しいと考える.そこで,一定の速度で走行す る自転車の心理的負担評価は,可能な限り瞬時の心理的. 図 3 心電図トランスミッタ. 負担を計測できる必要があると考え,RR間隔のLP(Lore 表 2 試験調査の概要. nz Plot)により解析する手法の適用を考えた. RR間隔のLPによる評価とは,周波数解析を行わずに, 時系列信号を評価する方法である.LPとは,横軸をn番 目のRR間隔,縦軸をn+1番目のRR間隔としてグラフ上に プロットしたもので,LF/HFから導き出される副交感神 経活動評価よりも,簡易に瞬時に分析できる手法である とされている7).また,心電図を用いた自律神経機能検 査の一つとして用いられてきており,RR間隔の変動を視. 項目 被験者 調査方 法 対象路 線. 内容 6人(性別・年齢(3区分)別に1名ずつ) 被験者は,心電図トランスミッタとGPSを,追走す る記録要員の自転車には,ビデオカメラを装着. 高松市内にあるメイン ストリートである中央 通り(自転車走行空間 は構造分離),商店 街,海岸沿いの道路. 覚的に捉える有用な方法と報告されており,LPの面積が 大きい場合は,そのときの心理的負担が大きいと判定さ れる(図 2).本研究では,このLP面積を用いて,自転 車走行時の心理的負担の把握を行うものとした.なお, この心理的負担が,自転車での走行快適性を阻害してい ると表現していると考えた.ただし,この心理的負担は 人間が知覚(認識)したストレスに反応するので,認識 していない安全性には反応しないと想定している. (ms). RR間隔が等間隔. (ms). RR間隔が不等間隔. 試験調査を実施した結果,自転車走行中における心電 図トランスミッタによるRR間隔データは,属性,走行路 線等に関係なく計測でき,LP面積を算出できた. LP面積を1分帯ごとで算出した結果(23歳男性デー タ)を,図 4に示す.図 4に示すように,他の時分帯よ りも突出してLP面積が高い時分帯が存在する.このうち, 「14:58」は自動車の飛び出し,「15:03」は歩行者の飛 び出しが発生していることが,ビデオカメラ画像により. RR間隔i+1. RR間隔i+1. 確認できた.したがって,この突発事象要因の影響を受 け,心理的負担が大きくなったと考える. LP面積 LP面積大. 一方で,「15:13」は,飛び出し等の突発事象が発生 していない時分帯であった.この要因把握のため,時間. LP面積 LP面積小. 帯1分間の心拍一拍一拍の傾向を確認した.その結果,R R間隔が突如著しく大きくなった波形があり,不整脈発 RR間隔i. RR間隔i. 図 2 RR間隔によるLP面積の解析方法. 生が確認された.なお,不整脈の判断には,一般的に, 瞬時心拍数(RR間隔を毎分の心拍数に換算したもの)が.

(3) LP面積 5000. 歩行者の 飛び出し. 自動車の 飛び出し. 6000. 5352. 3997. 4000. 3219 2690. 2611 2541. 2329. 3000 2000. 不整脈. 1635. 1226. 1622 1098. 1262. 1561 1027. 1693. 1510 1578. 1058. 906. 738. 1000 0. 15:15. 15:14. 15:13. 15:12. 15:11. 15:10. 15:09. 15:08. 15:07. 15:06. 15:05. 15:04. 15:03. 15:02. 15:01. 15:00. 14:59. 14:58. 14:57. 14:56. (時間) (時間). 歩行者飛び出し. 瞬時心拍数の変化割合 30.0%. 最小増加率 (最小瞬時心拍数/平均瞬時心拍数). 20.0% 15.0% 10.0% 5.0%. 15.0%以上:不整脈. 最大増加率 (最大瞬時心拍数/平均瞬時心拍数). 25.0%. 12.1%. 10.7% 10.4%. 8.9% 8.4% 6.6% 12.2% 11.3% 10.5% 8.7% 8.0% 7.9%. 23.0%. 11.3%. 7.4% 14.0% 12.8% 6.9% 6.8%. 4.1%. 0.0%. 14.8%. 13.2% 11.1%. 12.5%. 7.2% 7.0% 12.9% 4.4% 10.5% 4.6% 10.2% 10.0% 7.6% 6.9% 5.1% 6.5%. 10.1% 11.3% 12.8% 8.5%. 自動車飛び出し. 15:15. 15:14. 15:13. 15:12. 15:11. 15:10. 15:09. 15:08. 15:07. 15:06. 15:05. 15:04. 15:03. 15:02. 15:01. 15:00. 14:59. 14:58. 14:57. 14:56. (時間). 図 4 試験調査での心理的負担状況の計測結果(23 歳男性,中央通り) 用いられており,その基準は,瞬時心拍数の変化幅が1 分間平均値の15%以上か否かに基づく.この考え方にし たがうと,「15:13」の時間帯は,瞬時心拍数1分間平均 値110.2に対して最小瞬時心拍数が84.9で23.0%と,15% を上回っていることから,不整脈と判断した. また,本試験調査では,若年層から高齢層での計測と したが,高齢層での不整脈の発生頻度は,若年層に比べ て,多頻度であった.LP面積による解析は,LF/HFによ る解析方法に比べて,直接的に不整脈の影響を受けやす いことから,不整脈発生頻度の低い若年層による計測が 不可欠であり,また若年層においても発生する不整脈デ ータの除去が,適切な評価を行うためには重要と考える. 4.自転車走行空間構成要素の違いによる自転車走行時 の心理的負担状況比較のための調査 道路を自転車で走行する上では,多様な走行空間が存 在し,また,自転車走行空間を構成する多様な要素が重 なり,自転車の走行快適性に影響を与えている. そこで,どのような自転車走行空間構成要素が,自転 車走行時の心理的負担により大きく影響を与えるかを明 らかにするため,先に示した計測手法により,高松市内 の路線で実走し,比較分析するものとした.. 表 3 本調査の概要 項目 内容 調査日 2009年11月24日(火)~27日(金) 被験者 若年層延べ36人 調査項目 LP面積:心電図トランスミッタ 突発事象の発生状況:ビデオカメラ 自転車走行位置:GPS 調査方法 ・各被験者に心電図トランスミッタを装着し,自転 車にはビデオカメラ,GPSを取り付けて,対象路 線を普通自転車で走行. 対象路線 ・自転車走行位置(7路線) 路線1 自転車道 路線2 自転車歩行者道(構造分離) 路線3 自転車歩行者道(視覚分離:カラー) 路線4 自転車歩行者道(視覚分離:ライン) 路線5 自転車歩行者道(幅員広い,分離なし) 路線6 自転車歩行者道(幅員狭い,分離なし) 路線7 路肩 ・駐輪・駐車状況(3路線) 路線8 放置自転車・駐車自動車が多い, 路線9 放置自転車・駐車自動車が少ない 路線10 商店街 ・交差点横断方法(5路線) 路線11 信号交差点 路線12 地下道(歩行) 路線13 地下道(エレベーター) 路線14 歩道橋(スロープを歩行) 路線15 歩道橋(エレベーター). 本調査の概要は,表 3に示す.対象路 線は,自転車走行位置(7路線),駐輪・. 心電図トランスミッタ. 駐車状況(3路線),交差点横断方法(5 路線)別に抽出し,それぞれ比較するも. ビデオカメラ. のとした.それぞれ比較する対象路線は, 比較する自転車走行空間構成要素以外の 構成要素は,極力同様となる区間を抽出 した.なお,自転車道は,最も自転車で. GPS. 図 5 調査実施状況.

(4) 路線1 路線 自転車道. 路線6 路線 自転車歩行者道 (幅員狭い 幅員狭い,分離なし 分離なし) なし). 路線2 路線 自転車歩行者道 (構造分離) 構造分離). 路線7 路線 路肩. 路線3 路線 自転車歩行者道 (視覚分離: 視覚分離:カラー) カラー). 路線8 路線 駐輪・ 駐輪・駐車が 駐車が多い. 路線4 路線 自転車歩行者道 (視覚分離: 視覚分離:ライン) ライン). 路線9 路線 駐輪・ 駐輪・駐車が 駐車が少ない. 路線5 路線 自転車歩行者道 (幅員広い 幅員広い,分離なし 分離なし) なし). 図 6 調査対象路線 走行快適性が高い路線と仮定し,全被験者(延べ36人) が走行して基準値とした.なお,調査の実施状況は,図 5に,走行した対象路線の断面構成は,図 6に示す. 5.計測データのクリーニング手法の検討 (1)データクリーニングの流れ. 不整脈多 発被験者 の除去. の評価をする際,不整脈による影響を除去したデータと. 不整脈 不整脈 として除去 として除去. 増減比率 15%未満. のため,走行毎に異なる自動車飛び出し等の突発事象に そこで,本調査で計測したデータは,図 7に示す流れ. 分析対象外 分析対象外 被験者 被験者. 増減比率 15%以上. 瞬時心拍数による 瞬時心拍数による サンプルの分類 サンプルの分類. 不整脈 の除去. する必要がある.また,自転車の走行空間としての評価. 不整脈 1割以上. 空間分析対象 空間分析対象 被験者の選定 被験者の選定 不整脈 1割以下. 前述したように,自転車走行空間における心理的負担. よる影響を除去したデータとする必要がある.. 瞬時心拍数の 瞬時心拍数の 算出 算出. 調査実施 調査実施. 突発事象 突発事象 として除去 として除去. ビデオデータ等か ビデオデータ等か ら突発事象を抽出 ら突発事象を抽出. 突発事象 の除去. によりデータクリーニングを行い,空間要因が分析可能 なデータとする. データクリーニングは,まず「不整脈多発被験者の除 去」を行い,「サンプルごとの瞬時心拍数による不整脈. 図 7 データクリーニング方法の流れ. の除去」,「突発事象の除去」を段階的に行って,空間. 不整脈の発生割合. 要因を比較できるデータとした.. 20.0% 12.6%. 12.0% 8.0%. タとしての分析が難しくなる.. 2.3%. 3.2% 0.0% 0.0%. 1.1%. 2.0%. 0.1% 0.0% 0.7% 0.3%. 0.2%. 0.2%. 図 8 被験者別の不整脈発生割合. 被験者20. 被験者19. 被験者18. 被験者17. 被験者16. 被験者15. 被験者14. 被験者13. 被験者12. 被験者11. 被験者9. 被験者10. 被験者8. 被験者7. 被験者6. 0.0% 被験者5. 度の高い人は,データの欠損が多くなり,連続したデー. 1.2%. 0.2% 0.0% 被験者2. 不整脈は誰しもが起こる心拍の動きであるが,発生頻. 4.0% 被験者1. (2)不整脈多発被験者の除去. 8.2%. 7.0%. 5.7%. 5.4%. 被験者4. 調査結果のデータクリーニング結果を示す.. 16.0%. 被験者3. 以降では,段階別のデータクリーニングの方法と,本. 空間要因の 空間要因の データ抽出 データ抽出. 路線別・被験者別、 路線別・被験者別、 LP面積を算出 LP面積を算出.

(5) 本調査の被験者20人に対して,心拍一拍一拍に対して, 不整脈か否かを瞬時心拍数に基づき確認した結果,不整. るまでの63拍目までを突発事象の影響により増加したと して,突発事象を除去するものとした.. 脈データが1割以上ある被験者1名について,分析対象か 6.自転車走行空間別の心理的負担状況の比較分析結果. ら除外することとした(図 8).. 本調査で計測したデータを,前述したデータクリーニ ング手法による処理により空間要因データとして生成し. (3)瞬時心拍数による不整脈の除去 試験調査時に示した瞬時心拍数による不整脈の判断手 法により,サンプルごとの不整脈を除去した(図 9). 参考として,不整脈を除去しない場合のLP面積と比較. て,自転車走行空間構成要素別の心理的負担状況の比較 を行った結果を以下に示す. ○自転車走行位置での心理的負担結果(図 11) ・心理的負担状況を示すLP面積の値は,感覚的にも. した結果,LP面積が7千から,不整脈除去後には3千と大. 自転車走行性が高いと考える「自転車道」で1,45. 幅に補正された被験者データとなった.. 2と最も小さい.一方,自転車走行性が低いと考 える「路肩」や「自転車歩行車道(幅員狭)」は,. (4)突発事象の除去. LP面積が各4,046,3,940と高い結果となった.. 自転車走行空間の評価に阻害となる突発事象の要因は,. ・また,自転車歩行者道の中での比較では,「ライ. 対向する歩行者,自転車や自動車の飛び出し,追い抜き,. ン形式の視覚分離」,「カラー形式の視覚分離」. すれ違い行為があげられる.そこで本調査では,ビデオ データとの3軸加速度を分析することで,自転車走行時. のLP面積が,視覚分離されていない「自転車歩行. に偶発した突発事象を抽出した.. 車道」よりも,低い値となり,走行快適性が高い 結果となった.. 突発事象の除去は,不整脈の除去とは異なり,突発事. ・その一方で,「構造分離」のLP面積が高く,走行. 象が発生した瞬間だけのデータを取り除くことでは,不 十分である.突発事象を認知し,心理的負担が高くなり,. 快適性が低い結果となった.この要因としては,. その高まりが標準値に戻るまでの間のデータを除去する. 歩行者との安全性を高める分離柵が,障害物と認. 必要がある.. 識されることにより圧迫感を与え,走行快適性を 低下させているものと推測される.. 本調査で計測した突発事象発生前後の全データの瞬時 心拍数の増減は,図 10に示すように,発生後に瞬時心. ○駐輪・駐車状況での心理的負担結果(図 12) ・感覚的にも障害物や交錯機会が多く自転車走行性. 拍数が右肩上がりとなり,次第に微減している.そこで, 突発事象発生前の瞬時心拍数を標準値とし,標準値に戻. 5,000. (LP面積). 120. 15.0%以上不整脈. 100 90. 2,896. 3,000 2,000. 4,046. 3,024 2,622. 1,452. 1,000. 80 15.0%以上不整脈 瞬時心拍数. 130.0. (LP面積). 平均:99.7. 標準値以下: 64拍目99.6. 図 10 突発事象の除去方法. 路線10 商店街. 路線9 駐輪・駐車が 少ない. 時間(心拍単位). 路線8 駐輪・駐車が 多い. 70. 60. 50. 40. 30. 20. 10. 60.0 0. 路線7 路肩. 1,000. 30拍平均 -10. 1,596 1,076. 0. 70.0 -20. 2,411. 2,000. 全データ. 突発事象発生. -30. 3,000. 路線1 自転車道. 80.0. 3,997 4,000. 100.0 90.0. 5,000. (n=186). 突発事象による による 突発事象 増のため除去 のため除去. 110.0. (n=11). 図 11 自転車走行位置における路線別平均 LP 面積. 図 9 不整脈の除去方法 120.0. 路線6 自歩道(幅員狭). 51秒.3 51秒.9 52秒.5 53秒.0 53秒.6 54秒.2 54秒.8 55秒.4 56秒.0 56秒.6 57秒.2 57秒.7 58秒.3 58秒.9 59秒.4 00秒.0 00秒.6 01秒.1 01秒.7 02秒.3 02秒.8 03秒.4 04秒.0 04秒.6 05秒.1. 心拍発生時間. 路線5 自歩道(幅員広). 不整脈判断の下限. 路線4 視覚分離:ライン. 不整脈判断の上限. 50. 路線3 視覚分離:カラー. 0 瞬時心拍数の1分間平均値. 路線2 構造分離. 60. 路線1 自転車道. 70. 瞬時心拍数. 瞬時心拍数. 110. 3,940. 3,662. 4,000. 130. (n=12). 図 12 駐輪・駐車状況における路線別平均 LP 面積.

(6) が低いと考える「商店街」が,LP面積3,997と特. 面がすべて表現されているわけではなく,人間が知覚. に高い値となった.また,「駐輪・駐車が多い区. (認知)できる安全性のみが表現されうると考える.し. 間」は,「駐輪・駐車が少ない区間」に比べて,. かし,例えば,本調査では,構造分離の道路断面の走行. LP面積が高く,走行快適性が低い結果を確認した.. 快適性が低い結果となったが,構造分離は,歩行者・自. ○交差点横断方法での心理的負担結果(図 13). 転車の交錯機会の減少による安全性向上を重視した改良. ・平面で横断する信号交差点での横断が,地下道や. である.このため,こういった人間が認知していない安. エレベーターでの横断よりもLP面積が高いのは,. 全性の側面も含めたサービスレベルの表現も重要である. 横断時に自動車など注意を払うべき対象物が多い. ため,今後の課題としたい.. ことが起因していると推測される.. 本指標は,市街地などの面的に広がる自転車走行空間. ・また,エレベーター利用が,スロープ利用よりも. ネットワークのサービスレベル向上に向けたマネジメン. 比較的LP面積が高くなっており,エレベーターと. ト指標として実務的に有効に活用できると考える.この. いう閉鎖空間が心理的側面に影響していると考え. ため,本計測手法を体系的にマニュアル化するなど,汎. る.なお,被験者のうち女性(1名)のLP面積は,. 用化できるようにすることも念頭に置いている.. 特にエレベーターの利用で高い値を示した.. 1,092. 2,039 2,000. 0. 0 路線11 信号交差点. 1,000. 路線1 自転車道. 1,000. 1,239. 862. 路線13 地下道 (エレベーター). 2,000. アドバイスを頂いた.感謝の意を表する.. 2,807. 3,000. 路線12 地下道(歩行). 2,183. (LP面積). 3,000. 自転車を 押して歩行. 4,000. 参考文献. 1)金 利昭,五上尚美:Bicycle Compatibility Checklist 路線15 歩道橋 (エレベーター). 自転車に 乗って走行. 4,000 (LP面積). 医学系研究科 公衆衛生学領域 大平哲也講師に多くの. 5,000. 路線14 歩道橋 (スロープを歩行). 5,000. なお,本調査実施及び分析にあたっては,大阪大学. (n=11). 図 13 交差点横断方法における路線別平均 LP 面積 7.まとめ 本研究では,自転車走行空間の安全性や快適性といっ たサービスレベルを人間の生理的な現象によって客観的 に表現することを目的とし,心電図トランスミッタを活 用して自転車走行時の心理的負担状況を計測する手法を 構築した. この際、分単位で環境が変化する自転車走行時の心理 的負担を把握するため,心拍変動であるRR間隔を周波数 解析せず,時系列信号を評価する方法であるLP面積を評 価指標とした.不整脈データの除去等を行うデータクリ ーニング手法を検討し,心理的負担状況を精度良く工夫 を行った結果、LP面積は対象路線別に差異があり、サー ビスレベル評価指標として適用可能であることが確認で きた. さらに,その調査・分析手法を用いて,自転車での走 行快適性に影響を及ぼす空間構成要因別の比較分析を行 い,心理的負担により影響を与える構成要因を抽出した. 今後,他地域での適用や,本指標によってサービスレ ベルが低いとされた箇所の改善効果を把握するなどして, 調査データをさらに蓄積し,本評価手法の信頼性を向上 していく必要がある. また,本指標では,3章で示したとおり,安全性の側. の作成と自転車道先行事例の評価,土木計画学研究・ 講演集, Vol.37, 2008.6 2)諸田恵士,大脇鉄也,奥谷正:自転車と歩行者の混在状 態下における通行快適性に関する調査,土木計画学研 究・講演集, Vol.37, 2008.6 3)阿部宏史,崎大樹,岩元浩二,冨田修一:岡山市内国道 53号線における自転車道整備効果の検証,土木計画学研 究・講演集, Vol.37, 2008.6 4)吉村充功,亀野辰三:既存道路空間を活かした自転車レ ーン設置による自転車・自動車の共存可能性,土木計画 学研究・公園集,Vol.39, 2009.6 5)斉藤健治,清田勝:自動車,自転車とのすれ違いにおけ る歩行者のストレスに関する心拍変動による評価,佐賀 大学理工学部集報34(2) ,pp.1-7,2005.12 6)本多竜,塚口博司,里見潤,坂本剛健:身体的エネルギ ー消費量および心理的負荷を考慮した歩行行動評価に関 する研究,交通工学,2009,vol44 No.4 7)豊福史,山口和彦,荻原啓:心電図RR間隔のローレンツ プロットによる副交感神経活動の簡易推定法の開発, 第21回生体生理工学シンポジウム,2006.

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