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歩行者密度を考慮した歩車分離信号システムの整備に関する研究

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Academic year: 2022

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歩行者密度を考慮した歩車分離信号システムの整備に関する研究

北海道大学大学院工学研究科 学生会員 ○内田 絢佳 北海道大学大学院工学研究科 正 会 員 岸 邦宏 北海道大学大学院工学研究科 フェロー 佐藤 馨一

1. 本研究の背景と目的

信号交差点において、右左折車による巻き込み事故 を防止し、歩行者の安全を確保する有効な手段として、

歩行者と車両の通行を時間的に分離する歩車分離信号 が導入されている。警察庁は、全国で約1600箇所ある 歩車分離信号を平成15年度からの約5年間で倍増させ ようと、積極的な導入を推進している。しかし、歩車 分離信号について、車両交通の円滑化に関する研究は 数多くなされてきたが、歩行者の利便性や安全性を考 慮した研究は少ない。本研究は歩行者優先の観点で行 う信号制御設計が満たすべき条件を整理し、歩車分離 信号の整備基準を提案することを目的とする。

2. 歩行者優先の歩車分離信号システムの整備条件 歩車分離信号交差点の現状を探るため、札幌市中心 部の駅前通で現地観測を行った。観測は札幌西武前の 歩行者専用現示方式の交差点と、同規模の大同ビル前 の2現示制御交差点で行った。歩行者専用現示方式は 全流入路の車両を停止させ、専用の現示で歩行者を横 断させる歩車分離方式の一つである。観測の結果、歩 車分離は2現示制御に比べ信号待ち人数が多いこと、

小走りで横断する人や横断完了が赤信号にかかる歩行 者が多いことがわかった。そこで以下の3項目を、歩 行者優先の信号設計が満たすべき条件として挙げた。

• 信号待ち歩行者が要求速度で横断できる現示時 間の確保

• 信号待ち歩行者の滞留スペースの確保

• 十分な歩行者クリアランス時間の確保

3. 歩車分離信号の設計基準

(1) 現示時間

歩行者の現示時間は一般的に歩行速度の 10 パーセ ンタイル値である1.0m/sを基に設計されている。し かし、歩行速度は身体特性に加え、時刻・天候・歩行

目的といった要因にも強く影響を受ける。そこで本研 究では通勤と買物の歩行目的と高齢者に着目し、それ らが歩行者全体の速度に与える影響を求めた。ここで は、上述の歩行者群と一般の歩行者の速度分布を、割 合を変化させて合成を行った。各歩行者群の割合と歩 行速度分布を表1に、特に買物歩行者割合を変化させ て合成したものを図1に示す。

表1より、歩行速度の10 パーセンタイル値は高齢

者割合が20%程度で0.9m/sまで低下し、また、買物歩

行者が40%以上の場合も0.8~0.9 m/sまで低下するこ

とがわかる。さらに通勤者が60%以上の場合は1.1~

1.2 m/sまで上昇している。

通勤時間帯のオフィス街では歩行速度を上昇させ ても良いが、高齢者の利用が多い信号や買物客が多い 商業地区の信号設計に際しては、その利用者の構成に 応じて歩行速度を低下させる必要があると言える。

キーワード 歩車分離信号 歩行者交通 信号制御 歩行者密度

連絡先 〒060-8628 札幌市北区北13条西8丁目 交通制御安全工学研究室 TEL 011-706-6217 FAX 011-706-6516 図 1 買物歩行者と速度分布の関係

高齢 者 割合 100% 80% 60% 40% 20% 0%

平均歩行速度(m/s) 1.02 1.05 1.09 1.12 1.16 1.19 標準偏差 0.23 0.23 0.22 0.20 0.18 0.15 10パーセンタイル値(m/s) 0.73 0.76 0.81 0.86 0.92 1.00 買 物歩 行 者割 合 100% 80% 60% 40% 20% 0%

平均歩行速度(m/s) 1.08 1.10 1.12 1.15 1.17 1.19 標準偏差 0.23 0.22 0.21 0.19 0.17 0.15 10パーセンタイル値(m/s) 0.79 0.82 0.86 0.90 0.95 1.00 通 勤歩 行 者割 合 100% 80% 60% 40% 20% 0%

平均歩行速度(m/s) 1.65 1.56 1.47 1.37 1.28 1.19 標準偏差 0.15 0.24 0.27 0.27 0.24 0.15 10パーセンタイル値(m/s) 1.46 1.19 1.09 1.04 1.02 1.00

表 1 各歩行者群の割合と歩行速度分布 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

‑847‑

IV‑424

(2)

(2) 滞留スペース

a) 滞留スペースに関する歩行者密度実験 滞留スペースは歩行者密度に起因する快適性によっ て、確保すべき空間が決められる。そこで密度と快適 性の関係を調べるために歩行者密度実験を行った。

滞留スペースとなる交差点の角部は、信号待ちと通 り抜けの歩行者が混在する(図 2)。そこで 2m×3m

もしくは1m×3mの待機エリアに数名が入り、通過役

の一名が区画内を1往復する実験を行った。一定時間 後にエリア外に出てもらい、待機や通過の快適性を回 答してもらう。またその様子は上から写真撮影をした。

これを,荷物やコートのない状態(以下、夏・荷物な し)と鞄や紙袋を持ってコート着用の状態(以下、冬・

荷物あり)で行い、待機役の人数により密度を変化さ せた。

b) 滞留スペースの整備水準

実験結果は歩行者密度の逆数である平均歩行者空 間を用い、TRBのHCM2000にある滞留スペースのサ ービス水準と同等の水準となるよう整理した(表2)。

快適性や安全性の面から、余裕を持った「冬・荷物あ り」の結果を用いることにした。よって歩行者が最も 集中する赤時間の終了時にも、通り抜けが可能である

0.5 m2/人以上の空間が確保されるべきであり、パニッ

クが起こるような密度である0.25 m2/人以下になる交 差点設計は避けるべきだと言える。

(3) クリアランス時間

クリアランスのために表示される青点滅の時間は、

歩行速度を1.5m/sとして計算されるが、更なる交差点 進入者を防止するために10秒を上限値としている。2 現示制御の場合、右左折車両のクリアランスのため、

歩行者信号が赤でも同方向の車両信号が青の時間帯が ある。現地観測では、歩行者は青点滅時間とその時間 帯を利用して横断を完了していた。しかし歩車分離信 号の場合その時間がないため、横断が次の車両現示に かかってしまっている。安全に横断を完了するために は、青点滅時間の上限値を見直し、十分なクリアランス 時間を確保する必要がある。

4. 札幌駅前通の交差点の評価

以上の3条件を、観測を行った札幌駅前通の西武前 交差点に適用し、評価した。一般に現示時間は、横断 歩道長や歩行速度、信号待ち人数等を用いて求める。

そこで歩行速度には交差点利用者のうち4割が買物歩 行者だとする0.9m/sを用い、横断歩道1箇所あたりの 待機人数が5人・20人の場合を想定した。クリアラン ス時間は横断歩道長を1.5m/sで除して求めた。

表3に必要時間と実測値を示す。なお、この交差点 の実際の滞留スペースは大変広く、待機歩行者が20人 の場合でも快適な密度となる。

よってこの交差点はクリアランス時間に工夫の余 地があるが、現示時間と滞留スペースは歩行者優先の 整備条件を満たしていることが明らかになった。

歩車分離信号は今後増設される動きであり、買物客 が多く集まる地区では、本研究で提案する整備基準を 考慮する必要があると考える。

表 2 平均歩行者空間と滞留スペースのサービス水準(LOS)

構造物

通り抜け

待機歩行者群

交差点の角部のイメージ 実験の様子 図 2 歩行者密度実験

表 3 現示・クリアランスの必要時間と実測値 信号待ち5人 信号待ち20人

現示時間 29秒 32秒 37秒

クリアランス時間 16秒 16秒 10秒 現地 実測値 必要時間

荷 物 あ り

荷 物 な し

( 参 考 値 ) H C M

他 の 待 機 者 と の

関 係 待 機 場 所 の 通 り 抜 け 快 適 性

A 1 .2 0 .7 5 1 .2

他 者 の 妨 げ に な ら な い

制 限 を 受 け ず 、 他 者 を 妨 害 す る こ と な く 可 能

B 0 .7 5 0 .6 0 .9

他 者 へ の 妨 害 を 回 避 で き る

部 分 的 に 制 限 さ れ る が 、 他 者 へ の 妨 害 を 回 避 し な が ら 可 能

C 0 .5 0 .3 0 .6

他 者 の 妨 害 に な

制 限 さ れ 、 他 者 へ の 妨 害 に な る

が 可 能 快 適 な 範 囲 内

D 0 .3 0 .2 0 .3 接 触 し な い

ひ ど く 制 限 さ れ 、 前 進 は グ ル ー

プ と し て の み 可 能 長 時 間 の 待 機 は 不 快 E 0 .2 5 0 .1 0 .2 接 触 が 不 可 避 不 可 能

不 快 で あ る が 、 短 時 間 の 場 合 の み 耐 え ら れ る

F 0 .2 5 0 .1 0 .2

エ リ ア 内 の 全 待 機

者 が 接 触 し て い る 全 く 動 け な い

非 常 に 不 快 群 集 が 大 き く な る と 、 パ ニ ッ ク が 起 き る 可 能 性 が あ る L O S

平 均 歩 行 者 空 間 ( ㎡ / 人 )

土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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参照

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