OKAYAMA UnLyersJ'ty EarthScJ'enceReports,
Vol・9,No・1,25‑30,(2002)
傾斜 区分図 と第三紀層の分布でみた 吉備高原の地形発達史
Thes l o pemapo rt he K i bipl a t e au
藤 原 貴 生 ( Ta kaoFU
JIWARA)*鈴 木 茂 之 ( Shi ge yukiSUzUKI ) **
ApeneplainisevidentinTakahashiarea丘.omslopemappresentedinthispaper.Themapshowsthatolder gentlevalleysexistintheKibiP一ateau.Miocenemarinedepositsarecoloredon山eslopemap.TheMiocene marinedepositsmostlydistributealongtheoldervalleys・ThedistributionofthePaleogenegravelriver depositsisnotcontrolledbytopography.
Keywords: KibiPlateau,slopemap,Miocene・
1. は じめに
近年 ,情報技術 の発達 に ともない電子化 された地 図情報 を手軽 に扱 えるよ うになった.国土地理院か ら 発行 され てい る数値地図 50mメ ッシュ (標 高)のデ ー タ (国土地理院,1997)をコン ピュー タで処理 して 傾斜 区分図 を作成 し,それ に第三紀層 の分布 を重ね合 わせ て検討す ることによ り,吉備 高原地域 の地形発達 史の解析 をこころみた.
本稿 で取 り上 げる傾斜 区分図は,地図の標 高デー タを1次微分 して求 めた傾斜 量 を使 って作成 した も のである.傾斜 区分図は通常の地形等高線 図 よ りも, 急傾斜 の地形 と緩傾斜 の地形 を明瞭 に見分 け るのに 適 してい る.
吉備 高原地域 の地形学的 な研 究は,様 々な高度 に 分布す る小起伏地形 を道後 山面,吉備 高原 面,瀬戸内 面な どのい くつかの平坦面に分 け,地層 の との関係 に よ り地形 の形成年代 の推 定がな され て きた (貝塚, 1977;小畑, 1991な ど).
しか し,最近 になって, これ まで第 四紀層 だ と思 われ ていた 山砂利層 が古第 三紀層 で ある ことが判 明 す るな どし,地層 の年代 の見直 しに伴 う地形発達史の 再検討 が必要 とされ るよ うになって きた.
そ こでまず,吉備 高原 に分布す る平坦面や傾斜地 を可視化す るための一手法 として,前述の コンピュー タ処理 に よる傾斜 区分 図の作成 を試みた.その結果, 新 しい浸食 によ り急傾斜 となった地形 と,古い小起伏
か らなる地形 をよく区別す ることがで きた. さらに, 作成 した図に第三紀層 の分布 を重 ね合 わせ るこ とに
よ り吉備 高原 地域 中の緩 い谷地形 と第三紀層 との間 に興味深 い関係 を兄いだす ことができた.
ⅠⅠ. 傾斜 区分図の作成
国土地理院発行 の数値地図50mメ ッシュ (標 高) のデー タ (国土地理院,1997)を用いて傾斜 区分図を 作成 した.その作成方法について以下に簡単に説 明す る.なお図を作成す るにあたって,野上 (1985),野 上 ほか (1986)な どを参考に した.
まず, メ ッシュの各点 にお ける地面の傾斜量 を求 め る.傾斜 量は標 高デー タを 1次微分す ることに よっ て求めることができるが,コンピュー タを用いた メ ッ シュデー タの計算方法については,特 に画像処理 な ど の分野 で研 究が盛 ん に行 われ て きてお り何種類 かの 計算方法 が考案 され てい る.今 回,傾斜量 を求めるに あたっては以下の よ うな方法 を用いた.
メ ッシュ上のある点の東西南北各方 向に隣接す る 4つの点の標 高値 を使 い,東西 に隣接す る2点か ら東 西方 向の傾斜 量,南北 に隣接す る2点か ら南北方 向の 傾斜 量 を求 め,直行す る2方 向の傾斜 量 を合成 して, ある点の傾斜 量 とした.
数式で表す と, メ ッシュ上のある点(x
, y)
にお け るの標 高 をu( x , y)
,東西,南北方 向のメ ッシュ間隔 をそれぞ年,d
,,d
,とす る とき,*竜天天文台公 園,〒701‑2437岡山県赤磐郡吉井町 中勢実2978‑3
*
RyutenAstroPark,Nakaseijitsu2978‑3,Yoshii,Akaiwa,Okayama70112437,Japan** 岡山大学理学部地球科学科,〒700‑8530岡山市津島中3丁 目1‑1
**DepartmentofEarthSciences,FaculityofScience,Okayam aUniversity,Okayam a700‑8530,Japan
2 6
藤 旅 鈴 生 ・ 鈴 木 茂 之
図1 .I吉備F.}7原地域の#L斜 区/I)Lg)および荊三紀屑分布図
傾斜 区分提Jと荊三紀屑 の分布 でみ た吉仙 南JErの地形発 通 史 27
2 8
東西方 向の傾斜量 Jは,
u ( x+1 , y) ‑u( x‑1 , y) 2d,
南北の傾斜量 刑 は,
m u( x, y+ 1 )‑ u ( x , y‑I )
藤 原 貴 生 ・鈴 木 茂 之
2d
,傾斜角 βは,
t a n
o=抑
となる.
ここで注意が必要 なのは,国土地理院発行 の数値 地 図は経緯度 を基準 に して メ ッシュを作成 してい る ため,メ ッシュ間隔が東西方 向 と南北方 向で異なるこ とである.また緯度 に よって東西方 向のメ ッシュ間隔 が変化す るため,使用す る地図の範囲によって個別 に
d
x妄畠 宗 謡 漂 至芸浩 トに よって行 う.メ ッ シュデー タを表計算 ソフ トに読み込み,上述の式 に基 づいて範囲内の全座標 において傾斜 量 を計算 した.次 に,表計算 ソフ トの等高線 図作成機能 を用いて 求まった傾斜角か ら10度 ごとに区分 して塗 り分けた 傾斜 区分図を作成 した (図 1).傾斜 区分図は色が濃 いほ ど傾斜 の急 な領域 を表 してお り,白色の領域 は傾 斜 角 10度以下の平坦 な地形 を表 してい る.
ⅠⅠⅠ.第三紀層 と地形の関係
作成 した傾斜 区分 図に地質調査所発行 の 20万分 の 1地質図幅 「高梁」 (寺岡ほか∴ 1996)か ら抽 出 し た第三紀層 の分布 を重ね合 わせ て,地形 と地質の関係 を検討す る.地質分布 は,藤原 ほか (2001),鈴木 ほ か (2003)な どの調査結果 に基づ き一部修正 を加 えて い る.
A.
中新世の地層 と地形の関係吉備 高原地域 に分布す る中新世 の地層 (図 1,黄 色の領域)は,中新世 中期 の陸成お よび海成堆積物か らな り,勝 田層群 (河合, 1957),備北層群 (今村 ほ か, 1953;今村, 1966;糸魚川 ・西川, 1976な ど) に相 当す る.層相 はおお ざっぱに,下位 よ り非海成 の 磯岩砂岩層,浅海榛 の貝化石 を多産す る砂岩 お よび泥 岩層,深海榛 の貝化石 を産す る泥岩お よび砂泥互層か らな り,相対的海水準の上昇 に ともなって堆積 してい った地層 である と考 え られてい る(藤原 ほか,2001).
津 山 北房 ,新見,哲西,庄原地域 の中新世 の地層 は, 緩傾斜 の谷地形お よび盆地 に沿 って分布 し,地形 との 関連性 が強い.また一部,西城 ・東城 ,川上 ・芳井地 域 な ど吉備 高原 面 に相 当す る山地 の尾根 っ たいに分 布す るもの もある.
B.
古第三紀層 と地形の関係吉備 高原地域 の古第三紀層 (図 1,オ レンジ色の 領域)は,始新世か ら漸新世 までに断続的に堆積 した 河川成堆積物か らな り,吉備層群 (鈴木 ほか,2003) いわゆる山砂利層 に相 当す る.層相 は中大磯 主体の襖 岩層で,その分布 は南北に細長 く追跡 で き当時の河川 流路 を示 してい ると考 え られてい る.
御 津,成羽地域 に分布す る古第三紀層 は,中新世 の地層 の分布 とは異 な り現地形 との関連性 は兄 いだ せ ない.
ⅠV.ま とめ
数値地図を利用 して作成 した傾斜 区分 図は地形 の 緩急 を明瞭 に示 し,地形判読 をす る上で有用である.
これ に地質分布 を重ね合 わせ て検討す るこ とに よっ て地形発達史を伺 い知 ることができる.
吉備 高原地域 の傾斜 区分 図 と中新世 の地層お よび 古第三紀層 の分布 をか らいえることは,
1. 吉備 高原 地域 の 中新世 の地層 の分布 は緩傾 斜 の 谷地形お よび盆地地形 と強い関連性 を示す.
2. 吉備 高原地域 の古第三紀層 の分布 は現地形 との 明瞭な関連性 を示 さない.
3. 1,2よ り吉備 高原 の地域 の現地形 は, 中新世 の 地層堆積 時の谷お よび盆地地形 を強 く反 映 して い るが,古第三紀層堆積 時の地形 は反映 していな い.す なわち,本地域 のある領域 の地形形成年代 は少 な くとも中新世 の地層堆積 以前 まで遡 る こ
とがで きるといえる.
引用文献
藤原貴生 ・田口栄次 ・鈴木茂之 (2001),有漢町に分布する 中新統有漢累層,岡山大学地球科学研究報告8,ト12.
今村外治(1966),岡山県津高町日応寺よりMioIDPSinakotoi
HANZAWAの発見と岡山市周辺のいわゆる第三系の地質 時代.岡山大学理学部地学研究報告1,1‑10.
今村外治 ・梅垣嘉治 ・小島竹見 (1953),上根 ・船佐 ・三好 ・ 三良坂・庄原・勝光山地質巡検案内書.広島大理学地鉱, 59p.
糸魚川淳二 ・西川 功 (1976),岡山一広島県下の古瀬戸内 申新銃の2,3の問題.瑞浪市化石博物館研究報告3, 127‑149.
貝塚爽平 (1977),日本の地形一特質と由来‑.岩波新書, 234p・
河合正虎 (1957),5万分の 1地質図幅 「津山東部」および 同説明書.地質調査所,63p.
傾 斜 区分 図 と第 三紀層 の分 布 でみ た吉備 高原 の地形発 達 史
国 土地坪 院 (1997),数 値 地 図50mメ ッシ ュ (標 高)日本一III
CD‑ROM版 .国 土地理 院 .
野 上 道 男 (1985),数 値 地 形 分析 の た めの処理 システ ム.也 形 6,245‑264.
野 上道 男 ・杉 浦芳 夫 (1986),パ ソコンに よる数値 地理 学 演 習 . 古今 書院,275p.
小畑 浩 (1991), 中国地 方 の地形 ,古今 書院,262p.
鈴 木 茂 之 ・檀 原 徹 ・田中 元 (2003), 吉備 高原 に分布 す る第 三 系 フ ィ ッシ ョン ・トラ ック年 代 ,地学 雑 誌 112, 印刷 中.
寺 岡易 司 ・松 浦 浩 久 ・牧本 博 ・吉 田史郎 ・神 谷雅 晴 ・広 島俊 男 ・駒 滞正 夫 ・志 知龍 一 (1996),20万分 の 1地 質 図幅 「高梁」.地 質調 査所 .
29