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博士(医学)高田 実 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)高田   実 学位論文題名

cDNA アレイを用いた非小細胞性肺癌における      遺伝子発現解析

学位論文内容の要旨

    背景と 目的

  非 小 細 胞性 肺 癌 は肺 癌 全体 の 約80% を占 め , その5年 生 存率は悪性 腫瘍の中 で最も低 いもの のーつで あるが手 術を含む 治療法の 選択に役 立つ情報は貴重である,中でもりンパ 節転移 の有無は 重要な要 素となる ことから ,術前に これらが予測可能であれば,臨床上の 有用性 は高い.

  最近の 分子生物 学の進歩 は目覚ま しく,多 くの癌遺 伝子や癌抑制遺伝子が発見されてき た.し かし,単 一あるい は数個の 遺伝子に より与え られた転移の危険性や予後情報は,時 には正 しくない 結果を招 くことも ある.

  最近の 新しい技 術のーつ であるマ イク口ア レイの開 発によって,多くの遺伝子の発現変 動や遺 伝子異常 を一度に 検出する ことが可 能になっ てきた.本研究では癌関連遺伝子を搭 載 したcDNAア レ イを 用 いて , 非 小細 胞 性肺 癌 の 遺伝 子 発 現プ 口 フイ ー ル によ る 予後 因 子の予 測の可能 性を検討 した.

    方法

(1)患 者 と検 体 : 北海 道 大学 付 属 病院と 関連33施設 の協カによ り,2001年6月 から2002 年8月 に 手 術 を 受 け た 非 小 細 胞 性 肺 癌92例 ( 扁平 上 皮 癌37例, 腺 癌55例 ) から 得 た肺 癌組織を 対象とした .すべて の症例に っきイン フオーム ドコンセ ントが得られた.当研究 は北海道大学の倫理委員会において承認を得ている.

(2)病 理学的 デー夕: 臨床病理 学的因子 は各施設 における病 理診断を 使用した .pT(原 発腫瘍)因子とりンバ節転移の有無について検討した・

(3)cDNA arr.ay:摘出 臓器より 得られた 凍結検体 からTbtalRNAを抽 出した.次 に精製 キ ッ 卜 に よ りmRNAを精 製 し た.m心qA1ロgから 逆 転 写反 応 を行 い ,polyAを 付加 し た.

PolyパcDNAはbiotin‐16‐dUTPと と もにPCRで 増幅 し た,biotin標識cDNAを1,289種類 の癌 関 連遺伝 子と11個のHousekeepinggeneを搭載し たarrayfilterにハイ プリダイ ズさせ た . 得 ら れ た 画 像 か ら 解 析 ソ フ ト を 用 い て シ グ ナ ル 強 度 の 数 値 化 を 行 っ た .

(4)発 現プ口 フイール 解析:ア レイデー タはハイ ブリダイゼ ーション などの実 験条件の 違いによ り補正が必 要となる .遺伝子 発現値の 中でも比 較的安定 した部分を選択し,それ らの発現値の平均値で全遺伝子発現値を除算して標準化を行った.

  標準化を行った後に,2群間で発現に有意差を認める遺伝子を選択した(M0‐sidedt.test, p≦0.05).これは発現に安定性の得られない遺伝子を除くため施行した.その遺伝子群の

(2)

発現 値デ ータ で構 成さ れる デー 夕部 分空間が,期待される2群に実際に分離されるかを確 認す るた めに ,EMアル ゴリ ズム を行 った .次 に発現 バタ ーン 分類 に最適な遺伝子セット を選択するために特徴選択を施行した.バターンの抽出は順次特徴を追加し,Leave‑Oneー Out‑Errorを評価して最適な遺伝子組み合わせを同定するSequential Forward Selection法を 用 い た . 発現値 から2群 のク ラス 分け を行う 識別 器と して はk‑最近 隣法 を用 いた .こ の 結果 ,最 も誤識別率の低い遺伝子組み合わせ集合からなる最適遺伝子セッ卜を作成した.

  一 方, アレイデータの標準化を行った後に,腫瘍サイズに関連して発現値が増加あるい は 減 少 す る 遺 伝 子 を 抽 出す る た め に , 一般 化線 型モ デル によ る回 帰分 析を 施行 した ,

    結果

  92例の 非小 細胞性 肺癌 につ いて 遺伝 子発 現解 析を 行っ た. 扁平 上皮 癌と腺 癌に おいて 有意 差の あっ た遺伝 子は205個で あっ た. このこ とか ら扁平上皮癌と腺癌は分子病態上大 き く 異 な る こ と が 推 測 さ れ た た め , 以 後 の 解 析 は2つ の 組 織 型 を 分 離 し て 行 っ た .

(1) リ ン バ 節 転 移 の 有 無: 扁平 上皮 癌に おい て手 術時 にお ける りン バ節 転移症 例16例 と転 移な し症 例21例 の発 現プ 口フ イー ル差 を検 討し た, その 結果 発現 に有意 差を 認めた 遺伝 子は45個 であっ た.EMア ルゴ リズ ムで は2例 を誤 って分類した(誤識別率=5.4U/o). Sequential Forward Selection法を用いて特徴選択を施行した結果,最適遺伝子セットとし て12〜23個 の 遺 伝 子 が 選 択 さ れ た , 誤 識 別 率 はOu/oでEMア ルゴ リズ ムに て正確 に分 類 できなかった2症例も正確に識別できた.

  同 様に ,腺 癌にお いて60個 の遺 伝子 が有 意差 をも って 選択 され た( リンパ 節転 移症例 19例 , 転移 な し 症 例33例 ) .EMア ル ゴ リ ズ ム に て6例 が 誤 っ て 分 類 さ れ た ( 誤 識 別 率

̲11.5r:70). 60個の遺伝子からSequential Forward Selection法を用いて最適遺伝子セットを 検討 する と5‑‑ 43個 の遺 伝子 が選 択さ れ, 誤識 別率 は5.8u/oでEMアル ゴリズ ムよ り識別 率が 改善 され た.扁 平上 皮癌で有意差のあった45個の遺伝子、と腺癌の60個では一致して 選択された遺伝子はーっだけであった.

(2)pT( 原 発 腫 瘍 ) 因 子:pT因 子に おい て有 意差 のあ った 遺伝 子の うち 扁平上 皮癌 と 腺癌で共通であったものは5個であった.

  っ ぎに 腫瘍 の進展 に線 形に 関係 する 遺伝 子を 抽出 する ため に,pT因 子にっ き一 般化線 形モ デル を用 いて回 帰分 析を 行っ た. その 結果 ,pT因子に関連して扁平上皮癌で231個,

腺癌 で75個の 遺伝子 が選 択さ れた .こ れら のこ とか ら, 腫瘍 の進 展を 反映す る遺 伝子発 現 プ ロ フ イ ー ル の 変 化 は , 腺 癌 よ り 扁 平 上 皮 癌 で 大 き い こ と が 示 唆 さ れ た ,

    考察 とま とめ

  本 研 究で は ,cDNAア レ イ に よ る 非 小細 胞性 肺癌 患者 の予 後因 子,特 にり ンパ 節転 移 の有 無における予測の可能性について検討した.今回の研究は腺癌と扁平上皮癌の両者に お け る り ン バ 節 転 移 の 予 測 の 可 能 性 を 示 し た は じ め て の 論 文 で あ る ,   分 類の特徴に最も関係があって必要なものを抽出するために特徴選択法を用いた.これ らの 方法により扁平上皮癌と腺癌でそれぞれ非常に重要な遺伝子を23個と43個選択した.

これ によ ルリ ンバ節 転移 の有 無の 分離 は,EMア ルゴ リズ ムに よる分類と比較して扁平上 皮 癌 で 94.6%か ら 1000/0へ , 腺 癌 で 88.5% か ら 94.2%へ 増 加 し た .   非 小細 胞性 肺癌に おい てCTによ るりンパ節転移の診断率は約70u/o程度である,今回の 症 例 中 ,精 密CT検 査 を 施 行 し た 扁 平 上皮 癌15例と 腺癌14例 のり ンパ節 転移 の放 射線 専

(3)

門医による正診率を検討したところ,扁平上皮癌では73.3%,腺癌では6413%だった.以 上のことから,今回の研究でほぽ正確にりンパ節転移の予測が可能だったことは,術前の 分 子 生 物 学 的 診 断 へ の 実 用 化 の 可 能 性 を 示 し て た も の と 考 え ら れ た .   今回の研究では予後の予測のほかに肺癌の分子生物学的進展を理解するためにpT因子 の一般化線形モデルによる回帰分析を行ったが,腫瘍の進展に関係する遺伝子の抽出が 可能であった.これらの選択された遺伝子を端緒として肺癌の悪性度を理解する研究がさ らに進展するものと期待される.

  腫瘍の悪性度を正確に予測することが可能であれば,術前の生検組織を用いて病態を予 測することにより,リンパ節郭清の程度あるいは適切な手術選択の決定に用い得る.今後 臨床の場で実際に使用するためには,大規模な前向き研究にて実際の診断率の確認と一般 化のための確認作業が必要と思われる.

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

cDNA アレイを用いた非小細胞性肺癌における      遺伝 子発 現解 析

  非 小 細 胞 肺 癌 は 肺 癌 全 体 の 約80% を 占 め , そ の5年 生 存 率 は 悪 性 腫 瘍 の 中 で 最 も 低 い も の の ー つ で あ る が 手 術 を 含 む 治 療 法 の 選 択 に 役 立 つ 情 報 は 貴 重 で あ る . 中 で も り ン パ 節 転 移 の 有 無 は 重 要 な 要 素 と な る こ と か ら , 術 前 に こ れ ら が 予 測 可 能 で あ れ ば , 臨 床 上 の 有 用 性 は 高 い . 今 回 , 申 請 者 は 癌 関 連 遺 伝 子 を 搭 載 し たcDNAア レ イ を 用 い て , 非 小 細 胞 性 肺 癌 の 遺 伝 子 発 現 プ ロ フ イ ー ル に よ る 予 後 因 子 の 予 測 の 可 能 性を 検討 した .

  北 海 道 大 学 病 院 と 関 連33施 設 の 協 カ に よ り ,20016月 か ら20028月 に 手 術 を 受 け た 非 小 細 胞 性 肺 癌92例 ( 扁 平 上 皮 癌37例 , 腺 癌55例 ) か ら 得 た 肺 癌 組 織 を 対 象 と し た . す べ て の 症 例 に っ き イ ン フ オ ー ム ド コ ン セ ン ト が 得 ら れ た .pT( 原 発 腫 瘍 ) 因 子 と り ン バ 節 転 移 の 有 無 に つ い て 検 討 し た . 摘 出 臓 器 よ り 得 ら れ た 凍 結 検 体 か らmRNAを 精 製 し た .biotin標 識 cDNA1289種 類 の 癌 関 連 遺 伝 子 と11 個 のHouse keeping geneを 搭 載 し たarray filterに ハ イ ブ リ ダ イ ズ さ せ た . 得 ら れ た 画 像 か ら 解 析 ソ フ ト を 用 い て シ グ ナ ル 強 度 の 数 値 化 を 行 っ た . 標 準 化 を 行 っ た 後 に12群間 で発 現に 有意 差を 認 める 遺伝 子を 選択 した(two−sidedtーtestp≦0.05)・

次 に 発 現 バ タ ー ン 分 類 に 最 適 な 遺 伝 子 セ ッ ト を 選 択 す る た め に 特 徴 選 択 を 施 行 し た . パ タ ー ン の 抽 出 は 順 次 特 徴 を 追 加 し ,LeaveOneOutErrorを 評 価 し て 最 適 な 遺 伝 子 組 み 合 わ せ を 同 定 す るSequeritial Forward Selection法 を 用 い た . 発 現 値 か ら 2群 の ク ラ ス 分 け を 行 う 識 別 器 と し て はk一 最 近 隣 法 を 用 い た . こ の 結 果 , 最 も 誤 識 別 率 の 低 い 遺 伝 子 組 み 合 わ せ 集 合 か ら な る 最 適 遺 伝 子 セ ッ ト を 作 成 し た .   一 方 , ア レ イ デ ー タ の 標 準 化 を 行 っ た 後 に , 腫 瘍 サ イ ズ に 関 連 し て 発 現 値 が 増 加 あ る い は 減 少 す る 遺 伝 子 を 抽 出 す る た め に , 一 般 化 線 型 モ デ ル に よ る 回 帰 分 析 を 施 行 した .

    409

之 敬

紘  

  哲

藤 木

加 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

  結果として扁平上皮癌と腺癌において有意差のあった遺伝子は205個であった.

このことから以後の解析は2つの組織型を分離して行った.扁平上皮癌において手 術時におけるりンバ節転移症例16例と転移なし症例21例の発現プ口フイール差を 検討 した .その結果発現に有意差を認めた遺伝子は45個であった.EMアルゴリ ズムでは2例を誤って分類した(誤識別率‑5.4%).Sequential Forward Selection 法を用いて特徴選択を施行した結果,最適遺伝子セッ卜として12〜23個の遺伝子が 選択された,誤識別率は0%でEMアルゴリズムにて正確に分類できなかった2症例 も正確に識別できた.同様に,腺癌において60個の遺伝子が有意差をもって選択さ れた(リンバ節転移症例19例,転移なし症例33例).EMアルゴリズムにて6例が 誤って分類された(誤識別率‑11.5%),60個の遺伝子からSequential Forward Selection法を用いて最適遺伝子セットを検討すると5〜43個の遺伝子が選択され,

誤 識 別 率 は 5.8% で EMア ル ゴ リ ズ ム よ り 識 別 率 が 改 善 さ れ た .   っぎに腫瘍の進展に線形に関係する遺伝子を抽出するために,pT因子にっき一般 化線形モデルを用いて回帰分析を行った,その結果,pT因子に関連して扁平上皮癌 で231個,腺癌で75個の遺伝子が選択された.これらのことから,腫瘍の進展を 反映する遺伝子発現プ口フイールの変化は,腺癌より扁平上皮癌で大きいことが示 唆された.

  以上の結果から扁平上皮癌と腺癌において遺伝子発現プ口フイールの違いがみら れたことから分子病態上大きく異なることが示唆された,非小細胞肺癌を扁平上皮 癌と腺癌にわけて解析することで有カな予後因子のーつであるりンパ節転移の有無 を高い精度で診断することが可能であった.このことは術前の分子生物学的診断へ の実用化の可能性を示していたものと考えられた.

  口頭発表において、吉木教授より診断に用いたりンパ節の部位,扁平上皮癌・腺 癌に特徴的な遺伝子,実用化に向けての課題について質問があった.ついで守内教 授より臨床上の問題点,小細胞癌について質問があった.最後に加藤教授より腺癌 と扁平上皮癌の分子生物学的な違いに対する考察,環境や喫煙との関連性について 質問があったが、申請者はおおむね妥当な回答をした.

  非小細胞肺癌における遺伝子発現プ口フイールを解析し,リンパ節転移有無の予 測,分子生物学的診断への実用化の可能性を示唆した本研究の意義は大きく,審査 員一同協議の結果I本論文は博士(医学)の学位授与に値するものと判定した.

参照

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