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オーチャードグラスの可溶性炭水化物と その含量に関する育種学的研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 眞 田 康 治

学 位 論 文 題 名

オーチャードグラスの可溶性炭水化物と その含量に関する育種学的研究

学位論文内容の要旨

  北 海道 の基 幹イ ネ科 牧草 であ るオ ー チャ ード グラ ス(Dactylis glomeraぬL. )は、収量 性や 混播 適性 にI優 れる が、 もうーつの基幹イネ科牧草であるチモシー(Phle um  pra tense L. )よ り 飼料 品質 と越 冬性 が劣 るこ とか ら、 これ らの 改良 が求 め られ てい る。 本研究は、

オ ー チ ャ ー ド グ ラス につ い て高 品質 で安 定栽 培が 可能 な優 良品 種育 成の ため に、 飼 料品 質 と 越 冬 性 に 密 接 に 関 連 す る 可 溶 性 炭 水 化 物 (WSC)に 注目 し、 育種 に必 要な 特性 の 解明 を 行 っ た も の で あ る 。WSCは 、 光 合 成 産 物 で あ る 単 少 糖 と 貯 蔵 性 炭 水 化 物 で あ る フ ル ク タ ン の 総 称 で あ る 。 サ イ レ ー ジ 発 酵 な ど と 関 連 す る 飼 料 品 質 と し て のWSCに つ い て 、 そ の 遺 伝 的 変 異 や 遺 伝様 式お よ び効 率的 な選 抜方 法を 明ら かに した 研究 であ る。 また 、 越冬 性 と の 関 連 が 知 ら れ て い るWSCに つ い て 、 越 冬 前 後 のWSC含 量 の 推 移 と そ の 変 異 を 明 ら か に し て 、 秋 季 の生 育特 性 、越 冬性 およ びそ の関 連形 質と の関 係を 解明 した 研究 で ある 。 得ら れた 結果 は、 っぎ のよ うに 要約 さ れる 。

1. 飼 料 品 質 と し て のWSC含 量 の 遺 伝 的 変 異 と そ の 選 抜

(1) 遺 伝 資 源 に お け るWSC含 量 の 変 異

  WSC含 量 に 注 目 し た 育 種 を 開 始 す る に 当 た っ て 有 望 な 育 種 素 材 を 見 出 す 必 要 が あ る 。 導 入 品 種、 育成 品種 ・ 系統 、栄 養系 、エ コタ イプ およ び亜 種の 遺伝 資源 につ い て、 出穂 茎 が 少 な く 飼 料 成 分 の 変 動 が 小 さ い2番 草 を 中 心 に 、 茎 葉 部 のWSC含 量の 変異 を 調査 した 。 い ず れ の 遺 伝 資 源 に つ い て も 、WSC含 量 に は 大 き な 変 異 が あ る こ と を 明 ら か に し て 、 育 種 に 有 望 な 材 料 を 見 出 し た 。2番 草WSC含 量 は 、 年 次 間 変 動 が 小 さ く1番 草WSC含 量 と の 相 関が 高い こと か ら、 選抜 指標 とな るこ とを 明ら かに した 。フ ルク タン 含 量の 変異 幅 は 、 単 少 糖 含 量 の 変 異 幅 よ り 大 き い こ と を 見 出 し た 。WSC含 量 と 茎 の 太 さ お よ び 病 害 罹 病 程 度 との 間に 、そ れ ぞれ 正と 負の 相関 があ るこ とを 見出 した 。し たが って 、 病害 罹病 程 度 と 茎 の 太 さ は 、WSC含 量 の 間 接 選 抜 の た め の 指 標 と な る こ と を 明 ら か に し た 。

(2)W.SC含 量 の 遺 伝 的 変 異 と 遺 伝 率

  WSC含 量 の 選 抜 を 効 率 的 に 進 め る た め に 、WSC含 量 の 遺 伝 率 を 明 ら か に す る 必 要 が あ る 。 単 少 糖 、 フ ル ク タ ン お よ び 合 計WSC含 量 の 狭 義 の 遺 伝 率 は 、0.5前 後で 比 較的 高い こ と か ら 、そ の遺 伝は 相 加的 遺伝 子に よる もの であ るこ と見 出し た。 フル クタ ン は、 単少 糖

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より遺伝的変異が大きく遺伝率も高かったので、より選抜効果が高いことを明らかにした。

WSCは 、繊 維成 分と の間 に負の表現および遺伝相関を示すことを見出し、WSC含量の増 加と 繊維 成分 の減 少によ る飼 料成 分の 平行 改良 が可 能で ある こと を明 らか にした 。

(3)WSC含量の簡易選抜法の開発

  WSC含量 の育 種に 当た っては、多数の個体を評価する必要がある。WSC含量の選抜を 効率的に行うために、近赤外分光法により単少糖、フルクタンおよび合計WSC含量を簡 易にかつ高精度で評価する手法を開発した。

2.越冬性関連形質としてのWSC含量の変異と越冬性との関係

(1)越冬前後のWSC含量と越冬性との関係

  北海道における牧草の安定栽培のためには、越冬性が良好であることがもっとも重要で あ る。越冬関連形質として重要であるWSC含量について、越冬前後の冠部または刈り株 に お け るWSC含 量と越 冬性 との 関連 を調 査し た。 越冬 前の 冠部 のWSC含量 と耐 雪性 な ど 越冬関連形質との間に一定の傾向は認められないが、越冬後の冠部のWSC含量が高い 品種は、越冬性および雪腐病抵抗性に優れ、越冬後の再生量が多いことを見出した。秋季 の低温に反応して刈り株のフルクタン含量が増加するが、夏季のフルクタン含量に対する 越冬前のフルクタン含量の増加量が、越冬性、耐雪性および雪腐病抵抗性と密接に関連す ることを見出した。

(2)秋季WSC蓄積と越冬性および秋季の生育特性との関係

  越冬性に優れる上に秋遅くまで生育を続ける品種育成のためには、秋季の生育特性と WSC含量との関係を解明する必要がある。単少糖およびフルクタンの冠部への蓄積と秋 季休眠性は、低温よりも短日条件によって促進されること、耐凍性の変化と冠部の単少糖 含量および酵素活性の変化が一致することを見出した。越冬性と秋季の生育に優れる「は るねみどり」は、秋季の低温に反応して冠部の単少糖含量が増加し耐凍性が急速に増大す ることを見出した。

  以上の結果から、越冬前よりも越冬後の冠部においてWSC残存量が多いことが、越冬 性に優れる品種育成のための指標となることを明らかにした。秋季の生育を維持し越冬性 に優れる品種の理想的な生育バターンとして、低温感受性が高く秋季休眠と冠部への単少 糖蓄積が急速であることを明らかにした。

  本研究の成果として、飼料品質としてのWSC含量を改良するための育種素材を見出し、

選抜と交配によりWSC含量を高めることができることを明らかにした。本成果を実際の 品種育成事業に取り入れ、いくっかの高WSC含量系統がすでに育成されおり、その中か ら近い将来品種登録される見込みである。また、最近育成した越冬性と秋季の収量性に優 れ、理想的な生育バターンを示す優良品種「はるねみどり」について、その要因を解明す る と と も に 、 よ り 優 れ た 系 統 を 今 後 育 成 す る た め の 有 用 な 情 報 が 得 ら れ た 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

オーチャードグラスの可溶性炭水化物と その含量に関する育種学的研究

  本 論 文 は4章 か ら 構 成 さ れ 、 表69、 図20、 引 用 文 献192編 を 含 む210頁 の 和 文 論 文 で あり、別に5編の参考論文が添えられている。

  本研究は、北海道の基幹 イネ科牧草であるオーチャードグラス(Dactylis gめ皿e朋ぬL.)

に つ い て 、 高 品 質で 安定 栽培 が可 能な 優良 品種 育成 のた めに 、飼 料 品質 と越 冬性 に密 接に 関 連す る可 溶性 炭水 化物 (WSC)に 注目 し、 育種 に必 要な 特性 の解 明を 行っ たものである。

WSCは 、 光 合 成 産 物 で あ る 単 少 糖 と 貯 蔵 性 炭 水 化 物 で あ る フ ル ク タ ン の 総 称 で あ る 。 サ イ レ ー ジ 発 酵 な ど と 関 連 す る 飼 料 品 質 と し て のWSCに つ い て 、 そ の 遺 伝 的 変 異 や 遺 伝 様 式 お よ び 効 率 的 な選 抜方 法を 明ら かに した 研究 であ る。 また 、越 冬 性と の関 連が 知ら れて い るWSCに つ い て 、 越 冬 前 後 のWSC含 量 の 推 移 と そ の 変 異 を 明 ら か に し て 、 秋 季 の 生 育 特 性 、 越 冬 性 およ ぴそ の関 連形 質と の関 係を 解明 した 研究 であ る 。得 られ た結 果は 、つ ぎのように要約される。

1. 飼 料 品 質 と し て のWSC含 量 の 遺 伝 的 変 異 と そ の 選 抜

(1) 遺 伝 資 源 に お け るWSC含 量 の 変 異

  WSC含 量 に 注 目 し た 育 種 を 開 始 す る に 当 た っ て 有 望 な 育 種 素 材 を 見 出 す 必 要 が あ る 。 導 入 品 種 、 育 成品 種・ 系統 、栄 養系 、エ コタ イプ およ ぴ亜 種の 遺 伝資 源に つい て、 出穂 茎 が 少 な く 飼 料 成 分 の 変 動 が 小 さ い2番 草 を 中 心 に 、 茎 葉 部 のWSC含 量 の変 異を 調査 した 。 い ず れ の 遺 伝 資 源 に つ い て も 、WSC含 量 に は 大 き な 変 異 が あ る こ と を 明 ら か に し て 、 育 種 に 有 望 な 材 料 を 見 出 し た 。2番 草WSC含 量 は 、 年 次 間 変 動 が 小 さ く1番 草WSC含 量 と の 相 関 が 高 いこ とか ら、 選抜 指標 とな るこ とを 明ら かに した 。 フル クタ ン含 量の 変異 幅 は 、 単 少 糖 含 量 の 変 異 幅 よ り 大 き い こ と を 見 出 し た 。WSC含 量 と 茎 の 太 さ お よ ぴ 病 害 罹 病 程 度 と の 問 に、 それ ぞれ 正と 負の 相関 があ るこ とを 見出 した 。 した がっ て、 病害 罹病 程 度 と 茎 の 太 さ は 、WSC含 量 の 間 接 選 抜 の た め の 指 標 と ぬ る こ と を 明 ら か に し た 。

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彦 肇

司 介

敏  

  誠

田 木

藤 村

   

   

山 荒

近 喜

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(2)WSC含量の遺伝的変異と遺伝率

  WSC含量の選抜 を効率的 に進める ために、WSC含量の遺 伝率を明 らかにする 必要があ る。単少糖 、フルク タンおよび合計WSC含量の狭義の遺伝率は、0,5前後で比較的高いこ とから、その遺伝は相加的遺伝子によるものであること見出した。フルクタンは、単少糖 より遺伝的変異が大きく遺伝率も高かったので、より選抜効果が高いことを明らかにした。

WSCは、繊維成 分との間 に負の表 現および 遺伝相関 を示すこ とを見出し 、WSC含量の増 加と 繊 維成 分 の 減少 に よる 飼 料 成分 の 平行 改 良 が可 能であ ることを 明らかにし た。

(3)WSC含量の簡易選抜法の開発

  WSC含量の育種 に当たっ ては、多 数の個体 を評価す る必要が ある。WSC含量 の選抜を 効率的に行 うために 、近赤外 分光法に より単少 糖、フルクタンおよび合計WSC含量を簡 易にかつ高精度で評価する手法を開発した。

2.越冬性関連形質としてのWSC含量の変異と越冬性との関係

(1)越冬前後のWSC含量と越冬性との関係

  北海道における牧草の安定栽培のためには、越冬性が良好であることがもっとも重要で ある 。越冬関 連形質と して重要 であるWSC含 量にっい て、越冬前後の冠部または刈り株 に お けるWSC含 量と 越 冬性 と の 関連 を 調査 し た 。越 冬 前の 冠部のWSC含量 と耐雪性 な ど越 冬関連形 質との間 に一定の 傾向は認 められな いが、越冬後の冠部のWSC含量が高い 品種は、越冬性およぴ雪腐病抵抗性に優れ、越冬後の再生量が多いことを見出した。秋季 の低温に反応して刈り株のフルクタン含量が増加するが、夏季のフルクタン含量に対する 越冬前のフルクタン含量の増加量が、越冬性、耐雪性および雪腐病抵抗性と密接に関連す ることを見出した。

(2)秋季WSC蓄積と越冬性およぴ秋季の生育特性との関係

  越冬 性に優れ る上に秋 遅くまで生育を続ける品種育成のためには、秋季の生育特性と WSC含量 との関係 を解明す る必要が ある。単 少糖およ びフルクタンの冠部への蓄積と秋 季休眠性は、低温よりも短日条件によって促進されること、耐凍性の変化と冠部の単少糖 含量および酵素活性の変化が一致することを見出した。越冬性と秋季の生育に優れる「は るねみどり」は、秋季の低温に反応して冠部の単少糖含量が増加し耐凍性が急速に増大す ることを見出した。

  以上 の結果か ら、越冬 前よりも 越冬後の 冠部にお いてWSC残存量が多いことが、越冬 性に優れる品種育成のための指標となることを明らかにした。秋季の生育を維持し越冬性 に優れる品種の理想的な生育パターンとして、低温感受性が高く秋季休眠と冠部への単少 糖蓄積が急速であることを明らかにした。

  本研究の成果として、飼料品質としてのWSC含量を改良するための育種素材を見出し、

選抜 と交配に よりWSC含量 を高める ことがで きることを明らかにした。本成果を実際の 品種 育成事業 に取り入 れ、いく っかの高WSC含量系統がすでに育成されおり、その中か ら近い将来品種登録される見込みである。また、最近育成した越冬性と秋季の収量性に優 れ、理想的な生育パターンを示す優良品種「はるねみどり」について、その要因を解明す る と と も に 、 よ り 優 れ た 系 統 を 今 後 育 成 す る た め の 有 用 な 情 報 が 得 ら れ た 。

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以上のように、本研究は飼料成分および越冬関連形質として重要なWSC に関する基礎 的 知見を明らかにするとともに、実際の育種に成果を取り入れて高WSC 含量系統を育成 したことから、学術的にも高く評価できる。よって、審査員一同は、眞田康治が博士(農 学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと認めた。

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