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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 山 梨 顕 友

     学 位 論 文 題 名

Free rider stability of Lindahl equilibria under negative monotone prefrenCeS

(負外部性公共財を含む経済のりンダール均衡における      フ リ ー ラ イ ダ ー 安 定 性 に 関 す る 研 究 )

学位論文内容の要旨

    近年 温暖化 現象な どの 環境問 題が注 目され てい るが、これらの問題の主要な部分の原因は、負の外部 性 を も た ら す 公 共 財 を 持 つ 経 済に お い て パ レ ート 最 適 が 達 成さ れ て い な ぃこ と に あ る と言 え る 。     私的 財のみ を持つ 経済 の一般 均衡模 型は、 経済 学上の主要な関心の対象である、パレート最適を実現 する模 型の 代表的 な例で ある。 しかし なが ら、こ の模型を公共財を持つ経済に拡張する一般的な試みにお いては 、フ リーラ イダー 問題と 呼ばれ る問 題を解 決できなぃためにパレート最適を実現出来ていない。本 研究は 、外 部性を 取り扱 うため の代表 的な 試みの ひとっであるりンダールの方法を改良して、負の外部性 を も た ら す 公 共 財 を 持 つ 経 済 に お い て 、 パ レ ー ト 最 適 を 実 現 す る 一 般 均 衡 模 型 を 提 示 す る 。     まず 一般均 衡模型 とは 、市場 を通じ て各プ レイ ヤーが相互に財を交換することで達成される需要と供 給の整 合条 件を満 たした 状態( 達成可 能な 状態) を選ぴ 出す模型である。なお、この模型において各プレ イヤー (模 型にお ける行 動主体 として その 行動、 効用を 観察される対象のこと)は、自分以外のプレイヤ ーがど のよ うな行 動をと るかを 知る必 要は 無く、 市場に おいて定められた規則(予算制約)にしたがって 振舞う こと のみが 想定さ れてい る。こ の性 質は実 際上き わめて望ましい性質であり、現在広く採用されて いる経 済制 度の模 型とし て妥当 である 。な お、各 プレイ ヤーが従う予算制約の規則を定める変数は価格と 呼ばれ る。

    ー般 均衡模 型の解である状態(すべてのプレイヤーの行動の組のこと)は均衡と呼ばれることがある。

具体的 な均 衡は知 られて いない が、そ の存 在にっ いては 不動点定理を用いて証明がなされる。さらに、経 済が私 的財 のみを 持ち公 共財を 持たな ぃ場 合には 、均衡 はパレート最適であることと、逆にパレート最適 は均衡 であ ることが示されている(厚生経済学の定理)。このパレート最適の性質は経済を取り扱う模型に とって 最も 望まし い性質 のひと っとさ れる 。なお パレー ト最適な状態とは、経済状態として考えられるす べての 状態 の集合 を定め た上で 、注目 する 状態を あらゆ る達成可能な状態と比較するとき、その別の状態 を望ま しく ないと 感じる プレイ ヤーが 少な くとも 一人存 在するか、またはすべてのプレイヤーにとってい ず れ の 状 態 も 同 程 度 に 望 ま し い こ と を 言 う 。 パ レ ー ト 最 適 な 状 態 は 一 般 に 複 数 存 在 す る 。     私的 財を持 つ経済 の一 般均衡 模型は 、様カ な方 面に一般化の試みがなされているが、そのひとっとし て公共 財を 持つ経 済への 拡張が 挙げら れる 。公共 財とは 、通常考えられる財である私的財と対になる用語 であり 、ひ とたび 作り出 される とすべ ての プレイ ヤーが その使用による便益を享受しうる財のことを指す

(非競 合性 )。さらに各公共財が各プレイヤーにもたらす便益(もしくは被害)について、あるプレイヤー が利益 を得 る場合 そのプ レイヤ ーにと って 正の外 部性を 持っと言い表し、またその財の存在により損失を 被る場 合に は負の 外部性 を持っ と言う 。公 共財を 持っ経 済の一般均衡模型においても、私的財のそれと同 様に均 衡が パレー ト最適 である ことが 示さ れる。 しかし ながら、そのような模型は実用性の観点からする と、現 実を 記述も しくは 実際の 運用に とっ て妥当 な模型 ではないと考えられている。その主要な根拠は、

フリー ライ ダーの 問題ま たは選 好顕示 の問 題など と呼ぱ れてい る。

    フリ ーライ ダー問 題は 市場操 作の一 種であ る。 市場操作とは、ある主体が自分以外の主体の行動を変 化させ るこ とを想定して行動することをいう。それに対して、一般均衡模型をはじめとする多くの模型は、

各主体 が市 場操作を試みない(自分以外の主体の行動が不変であるとして行動する)ことを期待している。

市場操 作を 試みる 主体が いる場 合、模 型が パレー ト最適 の状態を達成することはなぃと考えられている。

フリー ライ ダーと は、こ れら市 場操作 を試 みる主 体のう ちで、特に(財の価格ではなく)公共財購入の際 の費用 負担 配分を 操作す ること で自身 の利 益を図 ろうと する主体をいう。市場操作の問題の中で特にフり

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ーライダー問題 の解決が困難であ るとされる。その 理由としては、各個 人の市場占有率が 十分に小さぃ極 限(独占的主体 が存在しない仮定 )の下で、価格の 、操作による遷移が 無視可能であると 考えられている のに対して、費 用負担配分は、む しろ遷移が生じや すくなると考えられ ている点にある。 もしこの問題を 取 り 扱 う の で あ れ ば 、 費 用 負 担 配 分 に 関 わ る 要 素 を 抽 出 し て 研 究 す る こ と が 望 ま し い 。     本研究にお いては、公共財を 持つ経済を取り扱 うに際して、その古 典的な方法である りンダール模型

(リンダールメ カニズム)を用い 、その考え方を一 般均衡模型を拡張( そのような模型は りンダール均衡 模型と呼ばれる )するために用い る。リンダール模 型は、共同で公共財 を購入する場合に 、その費用負担 の配分を決める ために考案された 多数の模型のうち のひとっである。こ の模型固有の特徴 としては、負担 配分を決める際 に各構成員に求め られる手続きが、 (私的財を扱うための)予算制約の規則と類似した簡易 な手続きのみで ある点が挙げられ る。現在までにり ンダール均衡模型の 定式化の方法とし て知られている ものには、私的 財空間の拡張によ り公共財を記述す る方法や、均衡条件 の等価変形を用い て公共財を取り 扱う方法などが 知られている。し かしながら、私的 財に関しては予算制 約の規則を用いた 制度が広く採用 されているのに 対して、このりン ダール模型が公共 財を供給するために 実際に採用された ことはない。こ れ は 、 リ ン ダ ー ル 模 型 に お い て も フ リ ー ラ イ ダ ー の 問 題 が 解 決 さ れ て い な い た め で あ る 。     本研究において はりンダール均衡 模型を定義するに あたり、負の外部性 を持つ公共財と、 コモンズと 呼ぱれる共有資源の 利用を研究する分 野との関連性に注 目した。

    負の外部性を持 つ財としてまず挙 げられるのは、様 々な公害や、環境問 題の例であるが、 一方で、そ れらとは多少異なる 例として指摘され るべきなのは、一 部の漁業または林業 などの、自発的に 再生する財 を扱 う事 業 における環 境資源の利用であ る6この場 合、環境からの採 集量(例えぱ漁獲 量)をひとっの負 の外部性を持つ公共 財として考えるこ とができる。なぜ ならば、多量の漁獲 は将来における魚 の減少をも たらし、漁業にかか る費用の増大を招 くため、漁獲は各 漁業者にとって負の 外部性をもつ公共 財であると いえるからである。 これらの負の外部 性を持つ公共財は コモンズと総称され 、多くの実証的な 研究がなさ れている。

    それらのうちで 注目する点は、負 の外部性を持っ公 共財が存在する経済 であっても、適当 な慣習的制 度の導入によりそう した問題が顕在化 しない例があるこ とである。漁業およ ぴ林業などの事業 者は同業者 の共同体を組織し、 各構成員にその資 源利用の上限値を 権利として分配する 。ただしその値は 常に一定で はなく、自然資源の 変動に応じて、資 源の過度の消費を 防ぐように全員の資源の利用総量は随時変化する。

このような制度が資 源の枯渇を招かず に安定を保つ例が あることを考えると 、このような性質 を持っ制度 を模型化する試みに は相応の意義があ ると考えられる。

その上で、・本研究においては以下がなされた。

1. 上 述 の 慣 習 的 制 度 を 記 述 し う る よ う な り ン ダ ー ル 均 衡 模 型 を 定 義 し た 。

・ 私 的財 を持 つ 経済 の一 般 均衡 模型 に 準じ て、 不 動点 定理 を 用い て均衡の存在証明 を行なった。

・ リ ン ダ ー ル 模 型 に お け る 負 担 率 調 節 を 表 現 す る 対 応 を 用 い て 定 式 化 を 行 っ た 。

・ 均 衡の パレ ー ト最 適の 証 明を 行な っ た。

2. 本 研 究 に お い て 用 い る フ リ ー ラ イ ダ ー 問 題 を 表 す 模 型 を 定 義 し た 。 32より1の模 型に フ リー ライ ダ ーが 生じ な い条 件を 得 た。1の模 型においてフリー ライダー問題     は解 決さ れ ない こと が わか る。

4.1で定 義 した りン ダ ール 均衡 模 型の 拡張 を行 なった。この拡張に より、権利配分が 変更されうる     制度 を記 述 する こと に なる 。

・ 不 動点 定理 を 用い て、 拡 張さ れた 均 衡の 存在 の 証明 を行 な った 。

・ 拡 張さ れた り ンダ ール均衡 模型には、公共財 が負の外部性をもた らす仮定などの適 当な仮定の下     で、フリーライ ダー問題が生じない ことが証明された 。なお1と 同様に、この均衡 はパレート最   適 であ る。

    結果と して、フリーライ ダー問題が生じな い、パレート最適な 均衡を解としてあ たえる負外部性公共 財を持つ経 済におけるりンダ ール均衡模型が示 された。

    すなわ ち、負の外部性を もたらす公共財を 持つ経済において、 リンダールの方法 によりそれら公共財 の供給量と 負担率とを決める 際に、次のような 排出権の配分がなさ れているならぱ、 フリーライダーが存 在せずパレ ート最適が実現す るという主張であ る。

    ・ 制 度 の 管 理 者 は 、 各 プ レ イ ヤ ー に 公 共 財 排 出 権 ( と 解 釈 さ れ う る 数 値 ) を 配 分 す る 。     ・ すべ て のプ レイ ヤ ーに 配分されている公 共財排出権の総和を 実際の公共財総供 給量と比較して、

    そ の量 が 異な って い た場 合、 管 理者 はそ の 量が 一致 す るよ うに 公 共財排出権を 調整する。ただし     そ の調 整 は、 各プ レ イヤ ーの 公 共財 排出 権 の変 化量 が 、各 プレ イ ヤーの公共財 負担比率に比例す     るよう に行なう。

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学位論文審査の要旨

主 査

  

准 教 授

  

根 本 幸 児 副 査

  

教 授

  

大 川 房 義 副 査

  

教 授

  

網 塚

  

副 査

  

教 授

  

町 野 和 夫 ( 経 済 学 研 究 科 )

    

学 位 論 文 題 名

Free rider stability of Lindahl equilibria under negative monotone preferenCeS

( 負 外 部 性 公 共 財 を 含 む 経 済 の り ン ダ ー ル 均 衡 に お け る

    

フ リ ー ラ イ ダ ー 安 定 性 に 関 す る 研 究 )

  

昨今、統計物理学の方 法を応用して経済活動の動的性質を理解しようと試みる経済物理 学なる境界分野が発展し つっある。そのような状況の中、本論文は一般均衡模型を負の外 部 性 公 共 財 の 経 済 に う ま く 適 応 さ せ る 方 法 を 新 た に 提 案 す る 重 要 な論 文で ある 。 近年温暖化現象などの環 境問題が注目されているが、これらの問題の主要な部分の原因 は、負の外部性をもたら す公共財を持つ経済に船いて最適が達成されていないことにある と言える。私的財のみを 持つ経済の一般均衡模型は、経済学上の主要な関心である最適を 実現する模型の代表的な 例である。しかしながら、公共財を持つ経済にこの模型を拡張す る一般的な試みは、フリ ーライダー問題と呼ばれる問題を解決できたいために最適を実現 出来ていない。本論文は 、外部性を取り扱うための代表的な試みのひとつであるりンダー ルの方法を改良して、負 の外部性をもたらす公共財を持つ経済において最適を実現する一 般均衡模型を提示してい る。

  

フリーライダー問題は 市場操作の一種である。市場操作とは、ある主体が自分以外の主 体の行動を変化させるこ とを想定して行動することをいう。それに対して、一般均衡模型 をはじめとする多くの模 型は、各主体が市場操作を試みない(自分以外の主体の行動が不 変であるとして行動する )ことを期待している。市場操作を試みる主体がいる場合、模型 が最適の状態を達成する ことはないと考えられている。フリーライダーとは、これら市場 操作を試みる主体のうち で、特に(財の価格ではぬく)公共財購入の際の費用負担配分を 操作することで自身の利 益を図ろうとする主体をいう。公共財を持つ経済に一般均衡模型 を拡張したりンダール均 衡模型はこのような市場操作に対して不安定であることが知られ ていた。 本論文では、まず公共資 源の利用権分配をうまく記述できるようなりンダール均衡模型 をひとつ定義し、不動点 定理を用いてその模型に均衡状態が存在すること、さらにフリー ライダー問題を考慮しな い仮定の下でそれがパレート最適であることを証明した。この拡 張はフリーライダー問題 の解析に適した定式化を採用しているので、それを利用してフリ ーライダーの市場操作に 対する安定条件をこの模型上で解析し、フリーライダーの生じな い条件を与えた。その条 件を整合条件に取り込む形で権利配分を変更しうるようにりンダ ール均衡模型を拡張した 。この模型においても均衡状態の存在およびパレート最適性が証 明できるので、結果とし て負の外部性公共財の管理者がフリーライダー問題を生じないよ う に 権 利 配 分 す る こ と が 可 能 で あ る こ と を 示 し た と い う こ と が で き る 。

  

このように、本論文は 負外部性公共財を持つ経済において、フリーライダー問題を考慮

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し た上で最適の実現する均衡が存在することが示されたという点で重要であり、経済学お よ ぴ 経 済 物 理 学 に 新 た な 知 見 を も た ら す こ と 大 で あ る と い う こ と が で き る 。 よ っ て著 者は 、北 海道大学博士(理学)の学位を授与 される資格あるものと認める。

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