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博士( 獣医学 )松尾 加代子

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Academic year: 2021

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博士( 獣医学 )松尾 加代子      学 位 論 文 題 名

多 包 条 虫 Ec カ 励 ococciits 7nultilocularis 代 替終 宿 主 モ デ ル の 改 善 と フ オ ー ゲ ル 包 条 虫 E . 'vogeli へ の 応 用

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  エ キノ コック スは 人獣 共通 感染 症の 原因 とし て, その 対策 が急 務となっている寄 生虫 のー つであ る. しか し, イヌ を用 いた 終宿 主レ ベル での 実験 はヒトへの感染を 防ぐ ため ,.大型隔離施設の必要性があり,研究が立ち後れているのが現状である.

小型 実験 動物を 用い た代 替終 宿主 モデ ルは 有用 であ るが ,そ の感 染成立機構につい ては 未だ 不明な 点が 多く ,改 善の 余地 が残 され てい る. 本研 究の 第I章でtまスナネ ズミ を用 いた多 包条 虫代 替終 宿主 モデ ルの 改善 を目 的に 薬剤 処置 ,投与法,宿主動 物 お よび 原 頭 節 に つ いて検 討を 行っ た. また 第n章では 代替 終宿 主モ デル の実 用性 を 検 討す る た め に , 多 包 条 虫 に 対 す る 駆 虫 薬 の 検 定 を 行 っ た .第m章 で は 発 見以 来, 虫体 につい ての 研究 がほ とん ど行 われ てい ない フオ ーゲ ル包 条虫の代替終宿主 モデルを確立し,成虫の発育を観察した.

  第I章 で は , ま ず, 投与 薬剤 につ いて 検討 を加 えた. スナ ネズ ミを 用い た多 包条 虫 代 替終 宿 主 モ デ ル で は , 薬 剤 処 置 と し て 従 来 ブチル 酢酸 プレ ドニ ゾロ ン(PTBA) を投 与し ている .こ のPTBAに かわ る薬 剤の 選択 を試 みた .特 に飼 料に混じて使用可 能 な 製剤 の 選 択 を 目 的 と し , こ れ ら の 薬 剤 の 経 口投与 での 効果 を含 め検 討し た.

PTBA,プ レドニ ゾ口 ン,  ベ タメ サゾ ン,  免 疫抑 制剤CyclosporinA,非ステロイ ド性抗炎症剤ZileutonとNimesulideの混合,NordihydrogualaretiCaCidおよびMepacrine を用 い, これら の薬 剤の 腹腔 内お よぴ 経口 投与 とPTBAの 皮下 投与 における小腸から の回 収虫 体数を 比較 した とこ ろ,PTBAの非 経口 投与 が最 も効 果的 であることが示さ れた.

  次 にPTBAの皮 下お よび 腹腔 内投 与に おける投与量の違い(Oー10mg/head)による 回収 虫体 数を比 較し たと ころ ,い ずれ の投 与経 路に おい ても ,と もに用量依存性に 回収 虫体 数は増 加し た. 虫体 は,PTBAの投 与量 が多 いほ ど, 小腸 上部から回収され る傾 向が あった .投 与量 に依 存し 宿主 末梢 血の りン パ球 百分 率は 低下し,血清総蛋 白量 は上 昇する こと が示 され た, この2つのパラメ一夕ーは,回収虫体数とも有意に 相関 し, より感 受性 の高 い代 替終 宿主 モデ ル動 物の 選択 に有 効な 指標となる可能性 が示 唆さ れた. また ,感 染前 と感 染後 のPTBAの 投与 期間 につ いて 検討したところ,

前投 与期 間の長 さは 回収 虫体 数と 正の 相関 を示 した .感 染後 の投 与期間の長さは回 収虫 体数 とは相 関を 示さ なか った が, 虫体 の発 育は 投与 期間 が長 いほど良好であっ た.

    ―1031―

(2)

  宿主 の改善を目 的とし,北 大繁殖スナ ネズミと2系統の近 交系スナネ ズミ (MONI Jms/ Gbs SlcおよびMGS/ Sea)について,回収虫体数について比較した が,有意な差は観察されなかった,また,野外で捕獲されたモンゴル産スナネズ ミと比較したところ,北大繁殖スナネズミでは,有意に回収虫体数が多く,現在 用 い て い る 北 大 繁 殖 ス ナ ネ ズ ミ よ り 好 適 な 宿 主 は 選 別 で き な か っ た .   次いで寄生虫の改善を目的に,採集地域,継代方法および継代回数の異なる4つ の多包条虫原頭節(コットンラット分離株,衛研分離株,当別分離株および野幌 97分離株)の虫体回収率を比較した.使用する原頭節によって虫体の虫体回収率 は大き<変化した.スナネズミからの回収虫体数は,虫卵感染によって維持され ているコットンラソト分離株およびエゾヤチネズミから回収された後,スナネズ ミ腹腔内投与による継代1代目の野幌97分離株で多<,コソトンラット分離株をス ナネズミで2代継代した衛研分離株およびエゾヤチネズミから回収された後,スナ ネズミ継代9代目の当別分離株では少なかった.回収虫体数が多かった分離株で は,シスト塊は包液に富む小シストから構成され,含まれる原頭節が大きく,逆 に回収虫体数が少ない分離株では,小シストが密集しており,含まれる包液も少 なく,原頭節が小さかった.これらのことから,継代回数を重ねると,シスト組 織 が 密 に な り , 原 頭 節 の 感 染 能 が 低 下 す る 可 能 性 が う か が わ れ た .   第H章において,代替終宿主モデルの実用性を検討するため,ハムスターを用 いてプラジクアンテルによる小腸内の多包条虫の駆虫試験を行ったところ,多包 条虫代替終宿主モデルが,イヌにかわる駆虫薬検定モデルとしても有用であるこ とが示された.

  現在,世界的に多包条虫およぴ単包条虫の研究は多く行われているが,フオー ゲル包条虫についての研究はほとんど進んでいない.そこで第皿章において,多 包条虫代替終宿主モデルを応用し,PTBA処置を施したスナネズミにフオーゲル 包条虫原頭節を経口投与したところ,その腸管内で虫体が定着,発育した.フオ ーゲル包条虫の成虫の発育についての報告はこれまでなく,本研究が始めての報 告である.感染後7日目では片節形成開始の兆しであるノヾンドが出現し,感染後14 日目には第2片節の形成が認められ,生殖原基および精巣の形成が確認された.感 染後21日目では,第2片節内に生殖器が完成し,精巣および受精嚢内に精子が,子 宮内には分裂した卵細胞が観察された.感染後28日目には第3片節が完成し,子宮 内の虫卵には鉤が確認され,感染後34日目の虫体では虫卵に幼虫被殻の形成が認 められた.感染後35日目には,糞便内に正常な形態を持つ虫卵が検出された.発 育の割合は,感染後7日目では頭節のみ,感染後14目目では1片節,感染後21日目 では2片節形成虫体が最も多く,感染後28日目には子宮内に鉤を備えた虫卵を含む 3片節虫体が20ー30u/o認められるようになった.感染後35日目の虫卵排出個体では 3片節虫体が約70u/oを占めていた.フオーゲル包条虫感染スナネズミ糞便中の虫体 由来抗原は,多包条虫成虫虫体抗原に対するモノク口ーナル抗体検出可能である ことが示された.糞便内抗原価は感染後7日目以降上昇し,感染後18日目でピーク に達した後,感染後28日目以降は緩やかに下降した.

  フオーゲル包条虫代替終宿主スナネズミにおいて形態的に正常な虫卵が産生さ れたが,この虫卵の感染能を調ぺるために,スナネズミ,Hertley系モルモット,

(3)

ACN系ゴールデンノヽムスター,C.B.‑17/ Icr scidマウスおよびBALB/ cA scidマウス に経 口投 与あ るいは 腹腔 内投与した.感染後30−50日目の剖検では病変は確認で きず,虫卵の感染能は確認できなかった,

  ス ナネ ズミ と同じ <, 多包条虫の代替終宿主として用いられているハムスター につ いて ,フ オーゲ ル包 条虫 代替 終宿 主と して の可 能性を検討した.ACNおよび CN系 ゴー ルデン ハム スタ ーに スナ ネズ ミと 同量 のPTBA処 置を 行い ,フオ ーゲ ル 包 条 虫原 頭節を 経口 投与 した が, 回収 虫体 数は スナ ネズ ミに 比ペ ,非常 に少 な

〈,代替終宿主モデルには適さないことが示された.

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(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教 授  神 谷 正 男 教 授  藤 田 正 ― 助 教 授  奥  祐 三 郎

教 授   金 澤   保 ( 産 業 医 科 大 学 ) 室 長  伊 藤  守 ( 実 験 動 物 中 央 研 究 所 )

     学位論文題名

多包条虫 Ec カ励ococczts ynultilocularis 代替終宿主 モデルの改善とフオーゲル包条虫 E . vogeli への応用

  工 キノコッ クスは人 獣共通感 染症の原 因として, その対策 が急務と なっている寄生 虫 のーつで ある.し かし,イ ヌを用い た終宿主レ ベルでの 実験はヒ トへの感染を防ぐ た め,大型 隔離施設 の必要性 があり, 研究が立ち 後れてい るのが現 状である.小型実 験 動物を用 いた代替 終宿主モ デルは有 用であるが ,その感 染成立機 構については未だ 不明な点が多く,改善の余地が残されている.

  本 研究 の 第I章で は ,まず, 投与薬剤 について 検討を加 えた.スナ ネズミを 用いた 多 包 条 虫 代 替 終 宿 主 モ デ ル では , 薬剤 処 置 とし て 従 来ブ チ ル酢 酸 プ レド ニ ゾ口 ン (PTBA)を 投 与 し て い る . こ のPTBAに か わ る 薬 剤 の 選 択 を 試 み た . 特 に 飼 料 に 混 じ て使用可 能な製剤 の選択を 目的とし ,これらの 薬剤の経 口投与で の効果を含め検討 し た .PTBA,プ レ ドニ ゾ 口 ン, ベ タメ サ ゾ ン, 免 疫抑制剤CyclosporinA,非ステロ イド性抗炎症剤ZileutonとNimesul・ldeの混合,NOrdihydroguaia¢ticacidおよびMepac血e を 用 い ,こ れ らの 薬 剤 の腹 腔 内 およ ぴ 経口 投 与 とPTBAの皮 下投与にお ける小腸 から の 回 収 虫体 数 を比 較 し たと こ ろ ,PTBAの 非 経口 投 与が最も 効果的であ ることが 示さ れた.

  次 に阿BAの皮 下 およ び 腹 腔内 投 与に お け る投 与 量の違い (0−10mg/head)によ る 回 収虫体数 を比較し たところ ,いずれ の投与経路 において も,とも に用量依存性に回 収 虫 体 数は 増 加し た . 虫体 は ,PTBAの 投 与 量が 多 いほど, 小腸上部か ら回収さ れる 傾 向があっ た.投与 量に依存し宿主末梢血のりンノヾ球百分率は低下し,血清総蛋白量 は 上 昇 する こ とが 示 された ,この2つ のパラメ 一夕ーは ,回収虫体 数とも有 意に相関 し .より感 受性の高 い代替終 宿主モデ ル動物の選 択に有効 な指標と なる可能性が示唆 さ れ た .ま た ,感 染 前 と感 染 後 のPTBAの 投 与期 間 について 検討したと ころ,前 投与 期 間の長さ は回収虫 体数と正 の相関を 示した.感 染後の投 与期間の 長さは回収虫体数 と は 相 関 を 示 さ な か っ た が , 虫 体 の 発 育 は 投 与 期 間 が 長 い ほ ど 良 好 で あ っ た .

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  宿 主の改善 を目的とし ,より多 くの虫体 を回収可 能なスナ ネズミ系 を選択するため に 当 教室 に お いて 生産さ れている スナネズミ (北大繁 殖スナネ ズミ)と2系統の近 交 系 スナネズ ミおよび野 外で捕獲 されたモ ンゴル産 スナネズ ミについ て,回収虫体数に つ いて比較 したが,現 在用いて いる北大 繁殖スナ ネズミよ り好適な 宿主は選別できな かった.

  次 いで , 採集 地 域,継代 方法およ び継代回数 の異なる4つの多包 条虫原頭 節(コツ ト ンラット 分離株,衛 研分離株 ,当別分 離株およ び野幌97分 離株)の 虫体回収率を比 較 した,使 用する原頭 節によっ て虫体の 虫体回収 率は大き <変化し た.継代回数を重 ね る と. シ ス ト組 織 が 密に な り, 原 頭 節の 感 染能が低 下する可 能性が示 唆された .   第 矼章にお いて,代替 終宿主モ デルの実 用性を検 討するた め,ハム スターを用いて プ ラジクア ンテルによ る小腸内 の多包条 虫の駆虫 試験を行 ったとこ ろ,多包条虫代替 終 宿 主モ デ ル が, イ ヌ にか わ る駆 虫 薬 検定 モ デルとし ても有用 であるこ とが示さ れ た.

  第 皿章 に おい て , 多包 条 虫代 替 終 宿主 モ デル を応用し ,PTBA処置を 施したス ナネ ズ ミにフオ ーゲル包条 虫原頭節 を経口投 与したと ころ,そ の腸管内 で虫体が定着,発 育 した,フ オーゲ´レ包条虫の成虫の発育についての報告はこれまでなく,本研究が始 め て の報 告 で ある .感染 後7日目で は片節形成 開始の兆 しである バンドが 出現し, 感 染 後14日 目 には 第2片 節 の形 成 が認 め ら れ, 生 殖原 基 お よび 精 巣の 形 成 が確 認され た . 感染 後21日 目 で は, 第2片 節内 に 生 殖器 が 完成 し , 精巣 お よび 受 精 嚢内 に精子 が , 子宮 内 に は分 裂した 卵細胞が 観察された .感染後28日目には 第3片節が 完成し,

子 宮内の虫 卵には鉤が 確認され ,感染後34日目の虫 体では虫 卵に幼虫 被殻の形成が認 め られた. 感染後35日目 には,糞 便内に正 常な形態 を持つ虫 卵が検出 された.フオー ゲ 少包条虫 感染スナネ ズミ糞便 中の虫体 由来抗原 は,多包 条虫成虫 虫体抗原に対する モ ノ クロ ー ナ ル抗 体検出 可能であ ることが示 された, 糞便内抗 原価は感 染後7日目 以 降 上 昇し , 感 染後18日目 で ピー ク に 達し た 後, 感染後28日 目以降は 緩やかに 下降し た.

  フ オーゲル 包条虫代替 終宿主ス ナネズミ において 形態的に 正常な虫 卵が産生された が , この 虫 卵 の感 染 能 を調 べ るた め に ,ス ナ ネズミ,Hertley系モルモ ット,ACN系 ゴールデンハムスター,C.B.−17/ Icr scidマウスおよびBALB/ cA scidマウスに経口投与 あ るいは腹 腔内投与し た. 30ー50 DPIの 剖検では病変は確認できず,虫卵の感染能は 確認できなかった.

  ス ナネズミ と同じく, 多包条虫 の代替終 宿主とし て用いら れている ハムスターにつ い て .フ オ ー ゲル 包 条 虫代 替 終宿 主 と して の 可能 性 を 検討 し た.ACNお よびCN系ゴ ー ル デン ハ ム スタ ー に スナ ネ ズミ と 同 量のPTBA処 置を行い ,フオー ゲル包条 虫原頭 節 を経口投 与したが, 回収虫体 数はスナ ネズミに 比べ,非 常に少な く,代替終宿主モ デルには適さないことが示された.

  以 上のよう に,申請者 は多包条 虫代替終 宿主モデ ルの改善 と従来, 研究がほとんど 進 んでいな いフオーゲ ル包条虫 の代替終 宿主モデ ルを初め て確立し ,今後の当該研究 領 域の発展 に資する成 果を得た .よって ,審査員 一同は, 上記博士 論文提出者松尾加 代 子 の博 士 論 文は ,北海 道大学大 学院獣医学 研究科規 程第6条の 規定によ る本研究 科 の行う博士論文の審査等に合格と認めた.

参照

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