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肝 細 胞 癌 に お け るマ イク ロウ ェー ブ照 射抗 原

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Academic year: 2021

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(1)

学 位 論 文 題 名

博 士 ( 医 学 ) 齋 木    功

肝 細 胞 癌 に お け るマ イク ロウ ェー ブ照 射抗 原    賦活 法に よる p53 免疫組織化学染色の有用性

―生物学的悪性度およびアポトーシスとの関連一

学位論文内容の要旨

  教 室 で は 、 肝 細 胞 癌 ( 以 後 、1{CC) の生 物学 的悪 性度 評価 にお い て、 腫瘍 核DNA量

(DNA ploidy pattern) を指 標と して 検 討し てき たが 、筆 者ら はproliferating cell nuclear antigen(PCNA)の 免疫 染色 から 求め た標 識率 (以 後 、PCNALl)も1{CCの増殖 能 、 悪 性度 と関 連し 、そ の悪 性度 指標 と なり うる こと を認 めた 。さ らに 、筆 者ら は新 鮮凍 結標 本を 対象 とす るp53の免 疫染 色を 施行 し、p53の 免疫 染色 上の発現がHCCの生物 学 的 悪 性度 の指 標に なり うる こと を報 告 した 。し かし 、そ の方 法で は対 象を 新鮮 凍結 標 本 と した ため に、 組織 構築 上の 詳細 な 検討 やret,rospectlve studyな どが 困難 であ った。

  そ こ で筆 者は この 問題 点を 解消 する た めに 、ホ ルマ リン 固定 標本 を対 象と しう る、

マイ ク口 ウェ ーブ 照射 を用 いた 抗 原賦 活法 (以 後、MWーAR法 )に よるp53免疫 染色方法 を施 行し 、こ の有 用性 につ いて 検 討し た。 さら に、p53がア ポ トーシスに関与 している 可能性を検索するために、アポトーシス関連 抗Lew jsY(LeY)抗体であるBM−1/J IMROに よる免疫染色を同時に施行し、検討した。

    対 象お よび 方法 1, 対象

  1992年1月 から1993年3月 まで に当 科で 初回 切除 し たIICC症 例中 、適 切な 新鮮 凍結 標 本 を採 取し えた48症 例 を対 象と した 。年 齢は34歳 より71歳 、平均58.8土7.9歳、性別は 男 性36例、 女性12例 で あっ た。 .

2. 免疫 染色 方法 と判 定方 法

  1)ホ ルマ リン 固定 パ ラフ イン 包埋 切片 の免 疫染 色: 通常 のp53免疫 染色 (LSAB法 、 DAKO社 製キ ット )とMW―AR法に よるp53免疫 染色 を 施行 した 。すなわち、4触mのパラフ ィ ン 包埋 叨片 を脱 パラ フイ ンし 、過 酸化 水素 水に よ り内 因性 ベル オキ シダ ーゼ を阻 止 し た 。さ らに 、正 常ヤ ギ血 清に より 非特 異的 反応 を 阻止 し、 つい で一 次抗 体と して 抗 p53モノ ク口 一ナ ル抗 体(DOー7、DAKO社、xso)を4℃、 一晩反応させた。その後、キッ 卜 の ビオ チン 標識 二次 抗体 を反 応さ せ、 最後 にぺ ル オキ シダ ーゼ 標識 スト レプ トア ビ

‑99

(2)

ジン 溶液 を反 応さ せた 。発 色はDABで 行い 、核 染色 にはMayerのへ マト キシ リン を用い た。 また 、MW−AR法に おけ るマイク口ウェーブ照射は、 過酸化水素水による内因性ペル オキシダーゼの阻止後に、lOmMクエン酸緩衝液(pll6.O)中で家庭用電子レンジを用い て、500W、5分間 、3回 施行 した 。照 射後 、検 体を 蒸留 水 で充 分に 洗浄 し、 前述 の免疫 染色 法を 続行 した 。染 色性 の判 定は 、検 鏡に より 肝癌 細 胞の 核が 染色 され てい るもの を染 色陽 性細 胞と した 。

  症 例と して の免 疫染 色性 の判 定は 、こ の染 色陽 性細 胞 の標 識率 によ り行 い、 以下の 如く 分類 した 。

@ 染 色 陰 性 ( 一 ) ニ 陽 性 細 胞 を 全 く 認め なぃ もの ――  二 二 コ

◎ 染 色 弱 陽 性 ( 土 ) : 陽 性 細 胞 が10% 未 満 の も の ― ―

◎ 染色 陽性 (十 冫ニ 陽性 細 胞が10% 以上 かつ80% 未満のも二二コ

@ 染 色 強 陽 性 ( 廿 ) : 陽 性 細 胞 が80% 以 上 の も の − ―

p53免 疫染 色陰性 例

p53免疫 染色陽性 例

  2) 新 鮮 凍 結 標 本 の 免 疫 染 色 :7Hmの 薄 切 切 片 を 作 製 し、 冷ア セト ン固 定後 、通 常 の免 疫染 色を 施行 した 。こ の 場合 の判 定は 、筆 者ら のこ れま での 報告 に従 い、 検鏡 の 強拡 大像 で少 なく とも3視野 以上 に肝 癌細 胞の 核の 染色 像 を認 めた もの を、p53免疫 染 色陽 性例 とし た。

  3)BM−l/JI MROによ る免 疫染 色: ホル マリ ン固 定パ ラ フイン包埋組織の連続切片を 対象 とし て、BM―1/J IMRO( 日本 抗体 研究 所、xso)を1次抗 体と する 通常 の免 疫染 色 を 施 行 し た 。 細 胞 質 の 染 色 像 を 認 め た も の を 染 色 陽 性 細 胞 と 判 定 し た 。

    検討項目

1. MW−AR法 に よ る 免 疫 染 色 結 果 と 通 常 の 免 疫 染 色 法 の 結 果 を 比 較 検 討 し た 。 2.MW−AR法 に よ る 免 疫 染 色 結 果と 同じ 症例 の新 鮮凍 結標 本に 対す る免 疫染 色結 果の 相関を検討した。

3.MW―AR法 によ るp53免 疫染 色 の染 色性 と臨 床病 理学 的諸 因子 の相 関を 検定 し、 本法 が‖CCの生物学的悪性度の指標になりうる かを検討した。

4. アポ 卜一 シス の存 在が 疑わ れるp53の 少数 、散 在性 の染 色例 、す なわ ちMW―AR法の 染色弱陽性(土)26例において、パラフイ ン包埋連続切片におけるBM−1/J IMROによる免 疫染色陽性細胞とp53染色陽性細胞との関係について検討した。

  統計 学的 検討 はX2−testで 行 い、 有意 差検 定は 危険 率5%以下 を有 意差 あり とし た。

    結  果

1. 通常 のp53免 疫染 色で はす べ て染色陰性(ー)であったが、MW−AR法を 用いた免疫染 色 では 極め て良 好な 染色 像を 得 た。 その 結果 、p53免 疫染 色陽性例を12例 (25.0%)に 認 めた 。特 に、 この 内8例 はp53免疫 染色 強陽 性例 であ った 。

2. 新鮮 凍結 標本 に対 するp53免 疫染 色陽 性例 は10例で あっ た。 この 結果 とMW−AR法に よ る免 疫染 色結 果に 有意 の相 関 を認 めた 。

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(3)

3. MW−AR法のp53免疫染色陽性例はすぺて腫瘍径が2cm以上の進行例であった。p53免 疫染色陽性例の率は多結節癒含型や分化度のより低いものが有意に高値であり、また 被膜浸潤陽性群、門脈腫瘍栓陽性群および肝内転移陽性群で高値であった。さらに、

p53免疫染色強陽性例の率は、IICV抗体陽性群、組織学的分化度のより低いもの、門脈 腫瘍栓陽性群およびPCNA LI40%以上群で有意に高値であった。また、DNA ploidy patternのaneuploidのものは、p53免疫染色陽性例および強陽性例の率がともに高値 であった。

4.BM−1/、JIMRO染色陽性細胞とp53染色陽性細胞との関係が同一細胞と思われたもの は10例、また近傍の細胞と判定されたものは12例であり、両者に全く関連性を認めな かったものはわずか4例のみであった。

    考  察

  1[CCにおけるp53の免疫組織化学的発現が、生物学的悪性度の指標となるとした論文 は少ない。そこで筆者は、マイク口ウェーブ照射による抗原賦活法(MW−AR法)を用い た免疫染色を試みた。筆者の方法は、lOmMクエン酸緩衝液中で家庭用電子レンジを用 いて照射したが、この方法により初めてホルマリン固定標本のp53免疫染色が良好とな った。また、本法の結果は同一症例の新鮮凍結標本に対する通常の免疫染色結果と有 意に相関した。一方、本法によるp53免疫染色陽性例および強陽性例の率が高かった HCCの臨床病理学的因子は、一般にI{CCの臨床的進行例に多く認められる因子であった。

これより、本法によるp53の免疫組織化学的発現の有無はHCCの生物学的悪性度判定上、

有用な指標にな冬と思われた。

  近年、アポトーシスは腫瘍細胞の増殖活性においてマイナス的に作用する点で、重 要な意義をもつことが判明してきた。しかし、著者が検索しえた範囲内では、HCC切除 組織におけるp53とアポ卜ーシスとの関連を免疫組織化学的に検討した論文はなかっ た。そこで、アポ卜一シスの存在が疑われる症例に対してBM一1/J IMROによる免疫染色 を施行し、この染色陽性細胞とp53染色陽性細胞の関係を検討した。その結果、これら が同一、あるいは近傍の関係であったものを84.6%に認めた。これより、少数、散在 性に染色されたp53は自身を含めた周辺の細胞にアポトーシスを誘導している可能性 のあることが免疫組織化学的に示唆された。

    結  話

1.ホルマリン固定標本に対するp53免疫染色は、MW―AR法により初めて染色良好とな った。また、このMW―AR法による免疫染色結果は同一症例の新鮮凍結標本に対する通常 の免疫染色結果と有意に相関した。

2.本法によるp53免疫染色陽性例および強陽性例の率が高かったI[CCの臨床病理学的 因 子 は 、 ‖ CCの 臨 床 的 進 行 例 に 多 く 認 め ら れ る 因 子 で あ っ た 。 3.本法により少数、散在性に染色されたp53はアポトーシスの誘導に関与している 可能性のあることが免疫組織化学的に示唆された。

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(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

   肝細胞癌におけるマイクロウェーブ照射抗原    賦活 法に よる p53 免疫組織化学染色の有用性

―生物学的悪性度およびアポトーシスとの関連―

   肝細胞癌(以後HCC )の新鮮凍結標本を対象とするp53 の免疫染色で は、組織構築上の詳細な検討やretrospective study などが困難であ った。本研究では、この問題点を解消するために、ホルマリン固定 標本を対象としうる、マイクロウェーブ照射を用いた抗原賦活法(

以後、MW ― AR 法)によるp53 免疫染色方法を施行し、この有用性につ いて検討レた。さらに、p53 がアポ卜ーシスに関与している可能性を 検索するために、アポトーシス関連抗Lewj sY (LeY )抗体であるBM ―1 /J IMRO に よ る 免 疫 染 色 を 同 時 に 施 行 し 、 検 討 し た 。

     研究方法

   対象は 1992 年1 月から1993 年3 月までに当科で初回切除したHCC 症例 中 、 適 切 な 新 鮮 凍 結 標 本 を 採 取 し え た 48 症 例 と し た 。    免疫染色方法として、 1 )ホルマリン固定標本の免疫染色は通常 のp53 免疫染色(LSAB 法)とMW ―AR 法によるp53 免疫染色を施行した。

一次抗体は、抗p53 モノク口ーナル抗体( DO 一7 、DAKO 社、xso )を用 いた。また、MW ―AR 法におけるマイク口ウェーブ照射は、lOmM クェン 酸緩衝液(pH6.O )中で家庭用電子レンジを用いて、500W 、 5 分間、3 回施行した。染色性の判定は、検鏡により肝癌細胞の核が染色され ているものを染色陽性細胞とした。症例としての免疫染色性の判定 はこ の染 色陽性 細胞の 標識率 により行い、以下の如く分類した。

純 信

   

西

(5)

@ 染 色 陰 性 ( ― ) : 陽 性 細 胞 を 全 く 認 め な い も の ー ー     疫 染 色

@ 染 色 弱 陽 性 ( 土 ) : 陽 性 細 胞 が 10% 未 満 の も の ー 一 Jp53免 1     陰 性 例

◎ 染 色 陽性 ( 十 ) : 陽性 細 胞 が

     ヵ 丶つ 80 % 架 謠 勞寺 の    コ p53 免疫 染 色

@ 染 色 強陽 性 ( 廾 ) :陽 性 細 胞 が 80 %以 上 のも の―ー    陽性 例

  2 )新鮮凍結標本の免疫染色は、 7 ロm の薄切切片の冷アセ卜ン固 定後、通常の免疫染色を施行した。この判定は、検鏡の強拡大像で 少なくとも3 視野以上に肝癌細胞の核の染色像を認めたものをp53 免 疫染色陽性例とした。

  3 )BM ―1/J IMRO による免疫染色は1 )と同じホルマリン固定パラ フイン包埋組織の連続切片を対象とレて、BM ー1/J IMRO (日本抗体研 究 所、 xso )を 1 次抗体とする通常の免疫染色を施行した。細胞質 の 染 色 像 を 認 め た も の を 染 色 陽 性 細 胞 と 判 定 し た 。

     検討項目

1 .MW −AR 法による免疫染色結果と通常の免疫染色法の結果の比較。

2 .MW −AR 法による免疫染色結果と同じ症例の新鮮凍結標本に対する免 疫染色結果の相関。

3 .MW ―AR 法によるp53 免疫染色の染色性と臨床病理学的諸因子の相関 の検定および HCC の生物学的悪性度の指標としての本法の有用性。

4 .アポ卜一シスの存在が疑われるMW ―AR 法の染色弱陽性(土)例におけ る、パラフイン包埋連続切片のBM −1/J IMRO による免疫染色陽性細胞 とp53 染色陽性細胞との関係。

     研究結果

1 .通常のp53 免疫染色ではすべて染色陰性(―)であったが、MW −AR 法 を用いた免疫染色では極めて良好な染色像を得た。その結果、p53 免 疫染色陽性例を 12 例( 25% )に認めた。特に、この内8 例はp53 免疫染 色強陽性例であった。

2 .新鮮凍結標本に対するp53 免疫染色結果とMW ―AR 法による免疫染色

(6)

結果に有意の相関を認めた。

3 . MW ー AR 法のp53 免疫染色陽性例はすぺて腫瘍径が2cm 以上の進行例で あった。また、 p53 免疫染色陽性例の率および p53 免疫染色強陽性例 の率が有意に高かった因子は組織学的分化度のより低いもの、被膜 浸潤陽性、門脈腫瘍栓陽性および PCNA L140 %以上などの HCC の臨床 的進行例に多く認められるものであうた。

4 . BM ―1/J IMRO 染色陽性細胞とp53 染色陽性細胞との関係が同一細胞と 思われたものは 26 例中 10 例、また近傍の細胞と判定されたものは12 例と高率であっだ。

   以上より、ホルマリン固定標本に対するp53 免疫染色は、MW ― AR 法 により初めて染色良好となり、この MW − AR 法による p53 の免疫染色性 は HCC の生物学的悪性度の指標になりうる点および本法により少数、

散在性に染色されたp53 はアポトーシスの誘導に関与している可能性 のあることが免疫組織化学的に示唆された。

   審査にあたって、葛巻教授より免疫染色されるp53 の性状およびBM

‑1/J IMRO の認識するアポ卜ーシスのタイプについて、西教授よルヒ 卜 HCC におけるp53 のDNA における変異および頻度について、細川教授 よりMW ― AR 法による抗原賦活作用の機序とその特異性について、浅香 教授より MW ー AR 法による蛋白変性の可能性について、などの質疑があ ったが、申請者は概ね妥当な回答を行った。

   本研究では、 HCC のホルマリン固定標本に対する p53 免疫染色にお

いて、MW ―AR 法をlOmM クエン酸緩衝液中で家庭用電子レンジを用いて

行い良好な染色性を得た点およぴp53 がアポトーシスに関与する可能

性のあることを免疫組織化学的に示唆した点で意義があり、学位の

授与に値するものと考える。

参照

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