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論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨の公表

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨の公表

学位規則第 8 条に基づき、論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨を公表する。

○氏名 阿藤 聡(あとう さとる)

○学位の種類 博士(スポーツ健康科学)

○授与番号 甲 第 1247 号

○授与年月日 2018 年 3 月 31 日

○学位授与の要件 本学学位規程第 18 条第 1 項 学位規則第 4 条第 1 項

○学位論文の題名 レジスタンストレーニングによる筋肥大制御機構の解明

○審査委員 (主査)藤田 聡 (立命館大学スポーツ健康科学部教授) 田畑 泉 (立命館大学スポーツ健康科学部教授) 橋本 健志 (立命館大学スポーツ健康科学部教授) 中里 浩一 (日本体育大学保健医療学部教授)

<論文の内容の要旨>

骨格筋は運動動作に必須であるため、特に筋力や筋パワーにそのパフォーマンスが依存 するスポーツ種目において重要である。また加齢に伴う骨格筋量の低下(サルコペニア)

は転倒による寝たきりの危険性のみならず糖尿病・心疾患などの生活習慣病の発症リスク を増加させるため、介護予防の観点からも筋量の効率的な増加方法の探索は社会的に重要 な課題となっている。

本博士論文はレジスタンス運動による筋肥大の制御機構について、運動効果を規定する 変数であると考えられる力積の重要性を、同じく運動効果に影響する可能性が示唆される 変数である筋収縮様式の違いに着目し、過去の研究の問題点を抽出した後に再検討した。

さらに運動時の力積のみでは説明することが困難な筋タンパク質代謝と筋肥大の現象に着 目し、運動時の力積の大きさ以外のトレーニングによる筋肥大を規定する可能性のある因 子として筋核の役割に着目し検討することを目的とした。本論文は文献研究(第 1 章)と 4 つの研究課題(第 2 章〜第 5 章)、そして統括論議(第 6 章)から構成されている。

第 1 章ではレジスタンストレーニングによる骨格筋量維持および増加の社会的意義つい て議論したのち、運動による骨格筋肥大とそのメカニズムについて既出の知見に基づいて 議論している。

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第 2 章では筋収縮様式の違いに伴って生じる力積の違いが、運動後の mTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)シグナル経路の活性化の程度に影響をおよぼしていると 仮説を立て、異なる収縮様式ではあるが力積は等しいレジスタンス運動が mTORC1 の活性化 レベルに及ぼす影響を検討した。その結果、力積が等しい条件下では運動後の mTORC1 の活 性化レベルには筋収縮様式の違いによる影響が生じないことが明らかになった。したがっ て、単回レジスタンス運動時の筋収縮様式の違いに起因する力積の大きさの差異が、運動 後の mTORC1 の活性化レベルの決定に関与する運動時の変数であることが示唆された。異な る運動様式に伴う筋収縮によって負荷される力積の大きさ依存的に運動によるタンパク質 合成応答が増大する可能性を示した。

第 3 章では mTORC1 シグナル経路の上流に位置する分子である Akt が細胞内のタンパク質 分解機構の制御にも関わっていることから、力積が等しい条件下ではレジスタンス運動時 の筋収縮様式の違いは筋タンパク質分解に関与する細胞内シグナルの活性化レベルに影響 を与えないという仮説の基、力積が等しい条件下でレジスタンス運動がタンパク質分解の 制御機構に及ぼす影響を検討した。結果として、タンパク質分解と筋収縮様式との関係を 明確にはできなかったものの、力積が等しい条件下では、レジスタンス運動後の筋タンパ ク質分解に関与する分子の活性化は収縮様式の違いに関わらず同様に生じることを観察し た。

第 4 章ではレジスタンス運動による筋核の増加率によって筋肥大の程度を説明できると いう仮説の基、生理的な条件下で筋核の前駆細胞である筋サテライト細胞の機能障害が生 じ運動誘発性の筋肥大応答が健常時に比較して減弱する 2 型糖尿病に着目し検討を行った。

その結果、トレーニングによる筋核の増加率と筋肥大率には相関関係が認められ、筋核の 増加率によって筋肥大の程度を説明することができる可能性が示唆された。

第 5 章では筋核の数が単回レジスタンス運動による筋タンパク質合成の亢進に影響を及 ぼすという仮説を立て、廃用性筋萎縮モデルを用いて、筋萎縮により細胞質体積あたりの 核数が増加した(筋核密度の増加)状態における単回のレジスタンス運動が筋タンパク質 合成に及ぼす影響を検討した。その結果、筋核におけるリボソーム生合成の低下がレジス タンス運動によるタンパク質合成の亢進を制限する可能性を示した。

第 6 章では統括論議を行い、本博士論文の結論として単回レジスタンス運動によるタ ンパク質代謝の変化、特にタンパク質合成の調節には力積の大きさが重要であることを議 論した。また筋核はリボソーム生合成機構としてレジスタンス運動による筋肥大応答に関 与することを結論づけた。

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<論文審査の結果の要旨>

事前審査の段階では、以下の点が指摘された:文章および図のレイアウトの改善、文献 研究の内容の不足、データに基づいた考察の妥当性、筋核数あるいはその増加率と筋肥大 の程度の関係性、筋タンパク質分解に関わるシグナル応答と筋タンパク質分解マーカーの 不一致、トレーニング強度についての用語の定義、筋核の量と質に関してのこれまでの見 解と今回明らかになった点の議論、など。しかし、本審査においては、コメントに対して 十分かつ丁寧に対処し、構成の体系性が改善され、研究方法の適切性も確認できた。

本論文では序論において筋タンパク質代謝や筋肥大のメカニズム、およびレジスタンス 運動による筋タンパク質代謝の変化に関する先行研究が詳細にレビューされており、引用 文献は量・質的にも適切であると判断できた。文献研究では、とりわけレジスタンス運動 による mTORC1 シグナル経路の活性化とそれに伴うタンパク質翻訳効率化の重要性が指摘 されている。その中でレジスタンス運動におけるトレーニング変数および骨格筋細胞の核

(筋核)が筋肥大に与える影響の検討が乏しいという問題点が浮き彫りにされている。レ ジスタンス運動を加齢性筋萎縮の主たる予防法として位置付けるにあたり、基礎的実験は 欠かせない。本論文では現在利用できるレジスタンス運動モデルの中でも最もヒトのレジ スタンス運動に近いとされる、げっ歯類を用いた皮膚直上からの腓腹筋電気刺激を選択し た。

このレジスタンス運動モデルを用いて以下の点を明らかにした。①レジスタンス運動に おける一過性の筋タンパク質同化および異化反応は筋収縮の形態に関わらず、発揮筋力に 筋力発揮時間を乗じた力積に依存する。②筋核数が減少している糖尿病モデルラットでは レジスタンス運動の繰り返しによるトレーニングに対する筋肥大適応が減弱する。③筋線 維単位体積あたりの筋核数が増加している萎縮筋線維はレジスタンス運動に対する筋タン パク質合成応答反応に差はないものの、筋タンパク質合成に関与する mTORC1 シグナルはむ しろ亢進している。以上の結果は生理学的な筋の可塑性に力積および筋核が影響を与えう るという学術的にも新規性の高い知見である。

総合討論ではレジスタンス運動およびレジスタンストレーニングが骨格筋形態に与える 影響について、力積をはじめとする力学的負荷および筋核の寄与という二つの観点から総 合的に考察し、レジスタンストレーニングの骨格筋肥大への処方のための最適化をはかる ことを試みている。その内容は外的因子である力積および内的因子である筋核の両面から レジスタンストレーニングを捉えることにより筋肥大機構の全容へ迫るものである。

各章の結論、解釈は妥当であり、学位論文としての構成においても、明確な論旨のもと、

体系付けられている。もちろん、部分的に未解明な課題や本研究で新たに抽出された課題

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は在るものの、それらを提示し、今後の展望として適切に捉えることができていることが 確認された。以上により、公聴会での口頭試問結果を踏まえ、本論文は博士学位を授与す るに相応しいものと判断した。

<試験または学力確認の結果の要旨>

本論文の公聴会は 2018 年 1 月 30 日(火)15 時 00 分~ インテグレーションコア大会 議室で実施し、続いて 15 時 50 分から同場所で口頭試問を行った。公聴会において申請者 は出席者の質問に対して十分な回答と説明を行い、本研究の意図、成果について参加者の 理解は深まったものと評価できる。

審査委員 4 名で行った口頭試問においては研究仮説の構築や具体な研究結果について幅 広い学術分野の観点から質問が投げかけられ、本研究課題が関与する運動生理学と分子生 物学の基礎・応用知識を含めた学力が確認された。質疑応答での具体的な内容としては:

筋サテライト細胞に機能障害が生じていたことを示すデータとして Pax7 タンパク質発現 の評価のみでのエビデンスレベルの妥当性、レジスタンストレーニングによる筋肥大と共 働筋切除による筋肥大の決定的なメカニズムの違い、運動指導現場におけるエキセントリ ック収縮の応用と今後の展望、など。

申請者は全ての質問に対して具体的に過去の文献に基づくデータと自らのデータを照ら し合わせながら、適切かつ端的に回答し、研究課題に対する理解力の高さを示した。さら に、質疑応答での建設的なコメントに基づいて本研究分野における新たな研究の展開も提 示された。本研究で得られた成果は、レジスタンス運動トレーニングの効率化を推進する うえで新たな可能性を提供するものであると判断できた。また本研究で得られた成果は、

レジスタンス運動トレーニングの効率化を推進するうえで新たな可能性を提供するもので あると判断される。

本論文の内容は既に二報の国際学術雑誌に掲載されており、高い学術的意義を有する研 究であることが確認された。したがって、上記の審査結果から、本学学位規程第 18 条第 1 項に基づいて、博士(スポーツ健康科学 立命館大学)の学位を授与することが適当であ ると判断する。

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