宇治群島の地形−宇治島−
著者
森脇 広
雑誌名
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers
巻
46
ページ
11-13
別言語のタイトル
Landform of Uttchima Island, Uji Islands
11
宇 治 群 島 の 地 形− 宇 治 島−
森脇 広
鹿児島大学法文学部
Landform of Uttchima Island, Uj i Islands
MORIWAKI Hiroshi
Faculty of Law, Economics and the Humanities, Kagoshima University
こ の 調 査 で 上 陸 し た 宇 治 島 は,中 新 世 後 期 の 安 山 岩 と 凝 灰 角 礫 岩 か ら な る(鹿 児 島 県 立 博 物 館,2005).対 岸 の 急 峻 な 向 島 と は 対 照 的 に,高 峰 は 海 抜80-90m の 高 さ で 比 較 的 そ ろ っ て お り,周 辺 は 緩 傾 斜 な 斜 面 が 広 が る (図1).最 高 峰 は 南 日岳 と酒 井 浜 東 方 の 峰 で,山 頂 高 度 は 海 抜95mで あ る.こ れ ら の 峰 は 小 火 山 体 で, 宇 治 島 は こ う した 小 火 山 体 の 集 合 した 島 で あ る と 考 え られ る. こ の 島 の 山 地 地 形 の 骨 格 は,小 浦 波 止 と 片 浦 波 止 の 谷 を 境 と し て,北 北 東 か ら南 南 西 に 延 び る3つ の 山塊 に よ っ て 作 られ る.そ れ らの 山 塊 の (2万5千 分 の1数 値 地 図− 開 聞−1999年 国 土 地 理 院 発 行 に よ る)
12 山地 斜 面 は,一 般 的 傾 向 と して 稜 線 の 東 側 が 急 で,西 側 は 緩 や か で,ケ ス タ 状 地 形 を な す(写 真1).山 塊 の 最 高 峰 は 島 の 東 縁 に偏 っ て い るた め,東 側 の 海 岸 は 比 高 の 大 き い 海 食 崖 が つ づ く (写 真2).緩 斜 面 は,東 方 に 高 く な る よ うに傾 斜 す る溶 岩 ま た は溶 結 火 砕 岩 の 層 理 面 と 山 麓 の砕 屑 物 に よ っ て 形 作 られ て い る. こ う した 非 対 称 の 山 地 地 形 は,火 山体 の 東 側 山 腹 斜 面 が海 食 に よ っ て 除 去 され て し ま っ た こ とに よ る.安 山岩 層 が 東 方 に 高 くな る の は,火 山 体 の 中心 の 多 く が 現 在 の東 岸 海 食 崖 の 峰 付 近 か,こ れ よ り東 側 の 海 域 に あ っ た こ と を 示 す.唯 一 東 側 山腹 が 侵 食 され て い な い 山体 は小 浦 波 止 の 北 側 に あ る もの で,小 浦 波 止 と片 浦 波 止 の谷 底 は こ う した 小 火 山 の 境 界 部 に 形 成 され た も の とい え る.二 つ の 谷 底 の 上 流 部 は 東 岸 の海 食 崖 に よ っ て 切 られ て,ウ ィ ン ドギ ャ ップ が 形 成 され て い る(写 真2).こ れ も東 岸 に よ り高 い 山 地 が 広 が っ て い た こ と を示 す 痕 跡 で あ る.
写真1 西側海域か らみた宇治島
13 写 真2宇 治 島 東 岸 の海 食 崖 と ウイ ン ドギ ャ ッ プ− 片 浦 波 止 の 谷− 最 大 の 流 域 は小 浦 波 止 の 谷 で あ る.山 腹 斜 面 に は 安 山岩 風 化 角 礫 と そ の 土 壌 が 形 成 され,植 生 の 発 達 に 寄 与 して い る.山 麓 緩 斜 面 は これ ら の 風 化 堆 積 物 の崩 壊 ・土 石 流 堆 積 物 か らな る(写 真3).小 浦 波 止,片 浦 波 止 の海 岸 近 くの 平 坦 地 は これ らの 堆 積 物 か らな る 小 扇 状 地 で あ る. 島周 囲 の 海 岸 は,比 高 の 大 き い海 食 崖 の 発 達 が 特 徴 的 で,現 成 の 波 食 棚 が 広 が る(写 真4).海 食 崖 下 に は,崩 壊 し た岩 塊 が しば し ば分 布 す る.細 粒 の礫 や 砂 で 作 られ た 海 岸 は片 浦 波 止 の 入 り江 な ど極 め て 限 られ る.