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タイの投資環境 これらの目的を達成するため BOT は政策金利の変更 (2016 年末現在では翌日物レポ金利を採用 ) 預金準備率操作 公開市場操作等を実施している 2000 年 4 月 BOT は金融政策を協議 決定するための金融政策決定会合 (Monetary Policy Committee:

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第 17 章 金融制度

金融制度

第17章

金融機関

1.

タイの金融機関の監督官庁はタイ中央銀行(Bank of Thailand:BOT)である。BOT は、通貨の 発行、金融政策の策定と実施、外国為替管理等に加え、金融危機から社会を守るメカニズムの構 築にも社会責任を負っている(The Bank of Thailand Act, B.E.2485、The Bank of Thailand Act, B.E.2551)。 2016 年 12 月末現在、BOT の監督下にある金融機関は、商業銀行 19 行、外国銀行支店 11 行、 ファイナンスカンパニー2 社などから形成されている。商業銀行と外国銀行支店を合算した総資 産額は 17.7 兆バーツ、与信残高は 11.4 兆バーツ、預金残高は 12.3 兆バーツである。商業銀行は、 総資産の 90.6%、与信残高の 94.2%、預金残高の 92.9%を占めているなど強い影響力を有してい る。 図表 17-1 タイの金融機関 (注)括弧内の数字は該当する金融機関の数を示す (出所)BOT より作成 中央銀行 (1) タイ中央銀行(BOT)は、1942 年に設立され、通貨の発行、金融政策の実施、外国為替管理、 金融機関の監督業務等を担っている。1942 年制定の旧タイ中央銀行法では財務相が BOT を監督 する権限を有すると規定されていたが、2008 年にタイ中央銀行法の改正案が成立し、従来の財務 相による統合的監督権限に代わって BOT の監督権限を強化した。現在は各専門分野別に設立され る委員会を通じて、監督機関の独立化や権限分散化が推進されている。 BOT は、金融政策の目的として、インフレの抑制、為替の安定、経済成長の 3 点を挙げている。 外国銀行の駐在員事務所(47) 資産管理会社(45) 特殊金融機関(8) ノンバンク クレジットカード会社(8) クレジットフォンシェ(3) タイで登録された商業銀行 金融機関 個人向けローン会社(34) ナノファイナンス(24) タイ中央銀行(BOT) 地場商業銀行(14) リテール銀行(1) 外国銀行の子会社(4) 外国銀行の支店(11) ファイナンスカンパニー(2)

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タイの投資環境

これらの目的を達成するため、BOT は政策金利の変更(2016 年末現在では翌日物レポ金利を採用)、 預金準備率操作、公開市場操作等を実施している。

2000 年 4 月、BOT は金融政策を協議・決定するための金融政策決定会合(Monetary Policy Committee:MPC)を発足させ、同年 7 月から四半期ごとにインフレーション・レポートを公表し、 景気やインフレの見通しを示している。 BOT はインフレ抑制や安定経済成長への政策を実施すると共に、金融セクターの競争力を高め る政策も進めている。2004 年には中期的な金融改革の指針となる金融セクター・マスタープラン Ⅰを発表している。同プランの目的は市場競争に基づく効率的且つ安定的な金融制度の構築であ り、金融サービスの普及促進、全ての利用者に対する公平性・中立性の強化を目指したものであ る。更に、2009 年には、①金融機関の業務コスト削減、②銀行間競争の促進とタイ国民の金融サ ービスへのアクセス拡大、③金融インフラ整備を目的とした金融セクター・マスタープランⅡが 政府により承認された。 商業銀行 (2) タイの商業銀行は歴史的に、1888 年に設立された香港上海銀行支店に始まるように、外国銀行 支店が先行して設立された。1906 年にタイ王室により設立されたサイアム商業銀行が最初の地場 銀行であったが、1940 年代までは外国銀行がタイ銀行業において大勢を占めていた。尚、大半の 地場商業銀行は 1940 年代以降に設立されたものである。このため、BOT は、1962 年制定の銀行 法において外国銀行支店の設置規制を強め、地場銀行の強化を図るようになった。以後、約 30 年 間に亘り、銀行新設は認められていなかった。1997 年のアジア通貨危機はタイ経済に深刻な影響 を与え、金融セクターに大きな再編をもたらした。当時 15 行あった商業銀行の内、6 行に国有化 を含む公的資金による介入が実施され、また外資による買収も実施された。 アジア通貨危機の影響から脱し、構造調整を通じて金融業の収益性が回復すると、2004 年の金 融セクター・マスタープランに基づくファイナンスカンパニーの普通銀行転換等を経て、現在、 19 行の地場商業銀行(地場銀行として登録している外資系銀行を含む)が営業を行っている(図 表 17-2)。 尚、金融再編の流れは継続している。政府傘下ないし政府が筆頭株主となっている地場銀行の 政府保有株式の売却を契機に、外国銀行による買収(例: 2009 年:バンクタイ銀行→CIMB タイ 銀行、2010 年:ACL 銀行→ICBC タイ銀行)や、他の地場銀行への売却(例: 2010 年:サイア ムシティー銀行)が実施された。2013 年には三菱東京 UFJ 銀行が最大 5,600 億円規模の株式公開 買い付け(TOB)によりアユタヤ銀行を買収することを発表した。タイでは、タイへ進出する外 国銀行に対し、1 拠点しか国内拠点を設立できないとする規制を導入していることから、2015 年 1 月にそれまでの三菱東京 UFJ 銀行はタイ支店をアユタヤ銀行に統合した。

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第 17 章 金融制度 図表 17-2 地場銀行の主要勘定残高(2016 年 12 月末、単位:100 万バーツ) (出所)BOT より作成 ひとくちメモ 6: タイの金融再編 日本の 1990 年代初頭のバブル崩壊後と同様、1996 年のバンコク商業銀行の経営破綻を契機に、タイ でもファイナンスカンパニー(FC)の経営不安が表面化し、更に 1997 年のアジア通貨危機で財務状況 の悪化した金融機関の不良債権処理、資本注入、整理・統合等の金融制度改革が避けて通れない状況と なった。 タイの公的金融支援の枠組みは、国際通貨基金(IMF)と日本の主導によって構築され、金融システ ム改革もその支援条件に沿って推進されてきた。 まず、1997 年 10 月に FC の再編・不良債権処理を担う金融再生庁(FRA)を設立するとともに、金融 機関に対する増資計画の提出を義務付け、不動産融資で経営破綻に陥り、営業停止中の FC58 社の経営 再建計画の策定等の施策を講じた。その結果、12 月にそのうちの 2 社のみに営業再開を認め、残りの FC56 社の閉鎖とその優良債権を引継ぐラタナシン銀行(商業銀行)の新設を決定した。 その後 1998 年 8 月には、自己資本比率規制の強化、不良債権の定義の厳格化に加え、貸倒引当金の 計上基準の設定と 2000 年末までの達成の義務付け等の自助努力を促すとともに、3,000 億バーツの国 債発行による公的資金注入を中核とする金融機関への資本増強支援、民間の資産管理会社(AMC)の設 立と不良債権の AMC への移管、等を含む包括的金融支援策を策定して、政府は本格的な金融システム再 建に乗り出した。 この再建策を機に、金融機関の大幅な再編が進んだ。 【破綻認定により処理され消滅した銀行】 ● バンコク商業銀行 1998 年 2 月に BOT が接収。同年 12 月に優良資産をクルンタイ銀行に継承の上、清算消滅 ● バンコク・ユニオン銀行 1998 年 8 月に BOT が接収。同年 12 月にバンクタイ銀行に改称して消滅 ● レムトン銀行 1998 年 8 月に BOT が接収。同年 11 月、政府系ラタナシン銀行に統合されて消滅 ● ファースト・バンコク・シティ銀行 1998 年 2 月に BOT が接収。同年 12 月にクルンタイ銀行に統合されて消滅 総資産 貸出 総預金 金額 シェア (%) 金額 シェア (%) 金額 シェア (%) 1 ANZ BANK (THAI) PUBLIC COMPANY LIMITED 28,242 0.2 9,077 0.1 996 0.0 135.07 2 BANGKOK BANK PUBLIC COMPANY LTD. 2,838,799 17.7 1,777,103 16.6 2,116,659 18.5 18.17 3 BANK OF AYUDHYA PUBLIC COMPANY LTD. 1,805,967 11.2 1,302,638 12.2 1,102,914 9.6 14.16 4 BANK OF CHINA (THAI) PUBLIC COMPANY LIMITED 43,946 0.3 21,164 0.2 21,996 0.2 36.55 5 CIMB THAI BANK PUBLIC COMPANY LIMITED 295,623 1.8 193,189 1.8 183,877 1.6 15.58 6 INDUSTRIAL AND COMMERCIAL BANK OF CHINA (THAI) PUBLIC COMPANY LIMITED 158,151 1.0 93,797 0.9 92,024 0.8 17.19 7 KASIKORNBANK PUBLIC COMPANY LTD. 2,467,252 15.4 1,589,192 14.9 1,798,440 15.7 18.17 8 KIATNAKIN BANK PUBLIC COMPANY LIMITED 220,312 1.4 167,442 1.6 110,209 1.0 18.53 9 KRUNG THAI BANK PUBLIC COMPANY LTD. 2,614,798 16.3 1,734,199 16.2 1,975,158 17.3 16.88 10 LAND AND HOUSES BANK PUBLIC CO.,LTD 209,695 1.3 138,051 1.3 149,639 1.3 13.75 11 MEGA INTERNATIONAL COMMERCIAL BANK PUBLIC COMPANY LIMITED 20,212 0.1 15,287 0.1 11,675 0.1 27.52 12 SIAM COMMERCIAL BANK PUBLIC COMPANY LTD. 2,661,442 16.6 1,850,637 17.3 2,021,454 17.7 17.44 13 STANDARD CHARTERED BANK (THAI) PUBLIC COMPANY LIMITED 190,701 1.2 32,284 0.3 52,180 0.5 26.29 14 SUMITOMO MITSUI TRUST BANK (THAI) PUBLIC COMPANY LIMITED 29,260 0.2 19,903 0.2 8,607 0.1 86.87 15 THANACHART BANK PUBLIC COMPANY LTD. 906,868 5.6 632,310 5.9 677,807 5.9 19.15 16 THE THAI CREDIT RETAIL BANK PUBLIC COMPANY LIMITED 39,334 0.2 32,887 0.3 32,905 0.3 13.80 17 TISCO BANK PUBLIC COMPANY LIMITED 260,751 1.6 213,994 2.0 155,951 1.4 19.60 18 TMB BANK PUBLIC COMPANY LIMITED 820,172 5.1 568,335 5.3 599,021 5.2 18.14 19 UNITED OVERSEAS BANK (THAI) PUBLIC COMPANY LIMITED 451,743 2.8 308,971 2.9 324,081 2.8 18.27 合計 16,063,268 100.0 10,700,462 100.0 11,435,594 100.0

-地場商業銀行19行

自己資本 比率 (%)

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タイの投資環境 【最近の銀行業界の動向】 ● 2010 年 4 月、中国商工銀行(ICBC)が、総額 138 億バーツでタイの ACL 銀行を買収 ● 2010 年 4 月、タナチャート銀行(TCAP)がサイアムシティ銀行(SCIB)を吸収合併 ● 2013 年 7 月、三菱東京 UFJ 銀行がタイの大手商業銀行アユタヤ銀行の子会社化を発表。株式公 開買い付け(TOB)により、最大 5,600 億円で発行済み株式の最大 75%を取得 ● 2014 年 11 月、みずほ銀行はタイの商業銀行大手、サイアム・コマーシャル銀行(SCB)と商業 銀行業務、投資銀行業務、リテールビジネスに関する業務協力覚書を締結 ● 2015 年 1 月、三菱東京 UFJ 銀行はアユタヤ銀行にタイ業務を統合。それまでの三菱東京 UFJ 銀 行バンコク支店は営業を終了し、アユタヤ銀行バンコク・サトーン支店となった ● 2016 年 12 月、英スタンダード・チャータード銀行は、2017 年内にタイのリテールバンキング 業務から撤退することを発表。同事業はタイのティスコ・フィナンシャル・グループに売却す ることとなっている。リテール事業の規模が小さく、リターンが見込めないことが原因とみら れている。尚、法人・金融機関向け業務、商業銀行業務は引き続きタイで実施する予定 外国銀行支店 (3) 2016 年 12 月末現在、フルバンキング業務が可能なフルブランチ免許を有する「フルブランチ 外国銀行支店」には、日系 2 行、欧米系 6 行、アジア系 3 行の計 11 行が挙げられる(図表 17-3)。 中でも日系 2 行の存在感は大きい。タイに進出している日系企業数やその経済活動規模が大きい ため、貸出(外国銀行支店全体)に占める割合はみずほ銀行が 33.0%、三井住友銀行が 20.2%で あり、それぞれシェアの 1 位、2 位に位置し、2 行合計で外国銀行支店全体の 5 割以上を占める。 地場の商業銀行との比較においても、日系 3 行は中位行並みの貸出残高を有するに至っている。 尚、三菱東京 UFJ 銀行は、バンコク支店をアユタヤ銀行に統合したため、2015 年 1 月以降、外国 銀行の統計からは外れており、アユタヤ銀行として計上されている。 図表 17-3 在タイ外国銀行の主要勘定残高(2016 年 12 月末、単位:100 万バーツ) 総資産 貸出 預金 金額 シェア(%) 金額 シェア(%) 金額 シェア(%) 日系銀行

1 MIZUHO BANK, LTD. BANGKOK BRANCH 547,642 33.0 247,676 37.4 377,318 43.0 19.73 2 SUMITOMO MITSUI BANKING CORPORATION 334,672 20.2 213,933 32.3 165,408 18.9 25.45 小計 882,314 53.2 461,609 69.6 542,726 61.9

-欧米系銀行 0.0 0.0

3 BANK OF AMERICA, NATIONAL ASSOCIATION 62,537 3.8 4,900 0.7 28,120 3.2 18.87 4 BNP PARIBAS 65,612 4.0 5,850 0.9 10,904 1.2 16.11 5 CITIBANK, N.A. 214,056 12.9 84,710 12.8 135,186 15.4 14.73 6 DEUTSCHE BANK AG. 80,304 4.8 18,180 2.7 24,918 2.8 21.82 7 JP MORGAN CHASE BANK, NATIONAL ASSOCIATION 59,067 3.6 1,521 0.2 10,330 1.2 15.64 8 THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD. 225,163 13.6 65,164 9.8 105,691 12.1 18.70 小計 706,739 42.6 180,325 27.2 315,149 35.9

-アジア系銀行 0.0 0.0

9 INDIAN OVERSEA BANK 11,328 0.7 3,347 0.5 8,879 1.0 29.92 10 OVERSEA-CHINESE BANKING CORPORATION LIMITED 38,478 2.3 8,286 1.3 7,655 0.9 55.29 11 RHB BANK BERHAD 19,248 1.2 9,221 1.4 2,676 0.3 17.18 小計 69,054 4.2 20,854 3.1 19,210 2.2 -合計 1,658,108 100.0 662,789 100.0 877,085 100.0 -外国銀行11支店 自己資本 比率 (%)

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第 17 章 金融制度 ファイナンスカンパニー (4) ファイナンスカンパニーはタイ独特の金融機関である。商業銀行とは異なり、資金の預け入れ に対して預金証書の代わりに約束手形を発行して資金を調達し、個人や事業者に融資を行ってい る。ピーク時には 250 社あまり存在していたが、1997 年のアジア通貨危機を契機にその殆どが淘 汰され、現在は地場系、外資系それぞれ 1 社ずつの計 2 社となっている(図表 17-4)。個別企業の 規模(総資産、貸出等)でも、商業銀行や外国銀行支店に比べて小さいことが窺える。 図表 17-4 ファイナンスカンパニーの主要勘定残高(2016 年 12 月末、単位:100 万バーツ) (出所)BOT より作成

金融市場

2.

金融政策の変化と金利動向 (1) 2000 年 5 月以降、タイの金融政策はインフレターゲットを中心に運営されている。ターゲット レンジは 2009∼2014 年までは生鮮食品とエネルギーを除いたコアインフレ率で 0.5∼3.0%の範囲 とされていたが、2015 年以降は国民視点での分かりやすさに重点が置かれ、総合 CPI に変更され、 ターゲットレンジは 3.0%を中心に±1.5%とされた。 2016 年 12 月現在のターゲットレンジは、2.5%±1.5%(総合 CPI、前年同月比上昇率)とされ ている。実際に、コアインフレ率と政策金利の推移は、概ね連動していることが窺える(図表 17-5 参照)。 2008 年のリーマン・ショックの影響で、政策金利は同年 12 月(3.75%)から 2009 年 4 月(1.25%) にかけて 2.50%ポイント引き下げられたが、足下の国内経済の回復やコアインフレ率の上昇で、 2010 年 7 月(1.50%)、8 月(1.75%)、12 月(2.00%)、2011 年 1 月(2.25%)、3 月(2.50%)、4 月(2.75%)、6 月(3.00%)、7 月(3.25%)、8 月(3.50%)と、9 回に亘って 0.25%ずつ引き上げ られた。しかし、その後は再び数ヵ月ごとに 0.25%ずつの引き下げられており、2015 年 4 月以降、 2016 年 12 月現在に至るまで、政策金利は 1.50%に据え置かれている。 総資産 貸出 総預金 金額 シェア (%) 金額 シェア (%) 金額 シェア (%) 地場ファイナンスカンパニー

1 BANGKOK FIRST INVESTMENT AND TRUST PUBLIC CO.,LTD 5,595 37.3 1,400 17.4 3,381 30.3 46.41 小計 5,595 37.3 1,400 17.4 3,381 30.3 -外資系ファイナンスカンパニー

2 ADVANCE FINANCE PUBLIC COMPANY LIMITED 9,395 62.7 6,639 82.6 7,775 69.7 17.57 小計 9,395 62.7 6,639 82.6 7,775 69.7 -合計 14,989 100.0 8,039 100.0 11,156 100.0 ファイナンスカンパニー2社 自己資本 比率 (%)

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タイの投資環境 図表 17-5 政策金利とコアインフレ率、主要金利の推移 (出所)BOT より作成 金融市場の構造 (2) 商業銀行の貸出金利と預金金利は、BOT の政策金利に連動はするものの、いずれも商業銀行が 自由に設定している。 短期金利に関しては、地場商業銀行では最優遇貸出金利(MLR)を基準とするローンの金利が 指標とされる。但し、日系の外国銀行等の外資企業向け貸出の場合は、銀行間取引市場における 金利を基準とした市場連動型金利になっており、MLR を基準とするケースは少ない。尚、コール 市場も存在するが、取引量が少なく、金利水準の変動が大きい。預金金利は、金額の多寡、取引 相手、期間に応じて異なる金利が適用されているようである。 長期金利に関しては、49 年までの超長期を含んだイールド・カーブが市場で形成され、参考と されている(図表 17-6)。タイの債券評価機関のタイ債券市場協会(ThaiBMA)が発表する 10 年 物長期国債の利回りの推移(2016 年)をみると、1 月(2.36%)、2 月(2.13%)、3 月(1.71%) にかけて 2%を切る水準で推移していたが、5 月(2.34%)以降は 2%を割ることはなく、12 月時 点の利率は 2.67%となっている。 -2% 0% 2% 4% 6% 8% 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (暦年) 政策金利 総合CPI MOR MLR

(7)

第 17 章 金融制度 図表 17-6 タイ国債のイールド・カーブ(2016 年) (出所)BOT より作成

資本市場

3.

1962 年 7 月、民間人によるパートナーシップ形態でタイに初めて証券取引所が設立された。し かし、当該取引所は政府が適切な指導を行わなったこと等から売買が少なく、1970 年代初期には 閉鎖に追い込まれた。 当初、証券市場の育成に消極的だったタイ政府に政策変更を迫ったのが 1969 年の世銀勧告であ る。世銀は開発融資の条件として国内資本市場の整備を強く勧告し、タイ政府は 1975 年にタイ証 券取引所(SET)を設立した。現在、SET には、株式、債券、デリバティブ、ETF 等が上場して いる。 また、1999 年 6 月、SET は資金調達の多様化を目的として、中小企業を対象とした証券市場で ある Market for Alternative Investment(MAI)を開設した。

尚、現在は草案段階とされているが、2017 年第 3 四半期をめどに、スタートアップに特化した 新しい取引所の開設が予定されている。 株式市場 (1) 1975 年に設立された SET は、当初、株式 14 銘柄、政府証券 2 銘柄の計 16 銘柄で取引を開始し た。1980 年代後半以降、海外からの直接投資の増加でタイ経済が発展したことに加え、1993 年に は米国金利の低下に端を発するアジアへの資金流入の過程でタイ市場にも大量の資金が流入し、 1994 年 10 月に SET 指数(月末終値)は 1,528.83 ポイントまで上昇した。 しかし、その後は米国や国内金利の上昇、不動産価格の下落、金融不安の拡大、アジア通貨危 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 (期間) (%)

(8)

タイの投資環境 機の発生、景気の低迷等で株価は急激に下落し、1998 年 9 月には 253.82 ポイントと、94 年 10 月 の 2 割以下の水準にまで低下した(図表 17-7)。 2003 年から企業業績の回復や世界的な株高を反映し、SET 指数も上昇に転じたが、リーマン・ ショックの影響で、2007 年末に 858.10 ポイントだった SET 指数は翌年 11 月末には 401.84 ポイン トに下落した。しかし、国内経済の回復が早かったため、2010 年 12 月末には 1,032.76 ポイント となり、リーマン・ショック前の水準を上回った。2016 年 12 月末時点の SET 指数は 1,542.94 ポ イントであり、上場企業数は 724 社、株式時価総額は過去最大となる 15.08 兆バーツの規模とな っている。 図表 17-7 株価指数(SET 指数)の推移 (注)月末終値。1975 年 4 月 30 日を基準日とし、その日の時価総額を 100 として算出 (出所)SET より作成 債券市場 (2) 1990 年代に入り、急速な経済成長を背景に、交通、電力、通信といった大型のインフラ整備や 産業発展に伴う大型の設備投資等のための資金需要が高まり、これに応えるために、1994 年に業 者間の債券流通市場が開設され、売買が開始された。しかし政府は、国債の期限前償還等による 公的債務の圧縮を進めていたこともあり国債の発行残高が少なく、当初は市場としてあまり機能 していなかった。 しかし、1997 年のアジア通貨危機とこれに伴う景気の悪化により税収が落ち込み、1998 年 9 月 会計年度から国債の発行額が増加し始めた。また、業者間の債券流通市場は同年に改組されてタ イ・ボンド・ディーリング・センター(TBDC)となり、格付機関の設立等とあいまって、その後 の債券市場の急成長を支えてきた。 2016 年末の債券残高は前年末比 8.4%増の 10.9 兆バーツ。構成比では、国債(T-Bill 除く)が全 体の 37.0%と最も高く、次いで政府機関債が 28.9%、社債が 25.9%と続き、これら 3 種類の債券 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (1975/4=100)

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第 17 章 金融制度 0.5%)が 1.2%。債券の中では特に政府機関債の構成比が上昇している。2004 年までは全体の 13% 程度であった構成比は、2005 年を境に急激に発行額が増加、ピーク時の 2011 年には全体の 37.1% を占めるに至った。なお、政府機関債の発行は全てタイ中央銀行(BOT)による。BOT が債券発 行を増加した目的には、海外からの大量の資本流入に対する為替相場・金利の安定、国内債券市 場の流動性・効率性の向上があるとされている。 図表 17-8 債券残高の推移 (出所)ThaiBMA 資料より作成 0 2 4 6 8 10 12 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 その他 国営企業債 社債 政府機関債 国債(T-Bill除く) (兆バーツ)

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