デート
DV
に及ぼすジェンダー・ロールとパワー・リレーションの影響
岡本亮樹
福山大学大学院人間科学研究科
キーワード:デートDV,ジェンダー・ロール,パワー・リレーション
はじめに
近年,domestic violence (DV:ドメスティック・バイオレンス)やdating violence (デートDV)が社会的に問題視され
るようになってきている。デートDVとは,特定の恋愛関係における支配・被支配関係,虐待状況,主体性の侵害のこ とである(伊田,2010)。内閣府男女共同参画局が行った「男女間における暴力に関する調査」では,10代から20代 の結婚前に交際相手から,身体的,心理的,性的のいずれかの被害経験者は,2005年で,女性13.5%,男性5.2%, 2008年で女性13.6%,男性4.2%,2011年で女性13.7%,男性5.2%であり,女性の方が男性よりも被害経験者が多い ことがわかった。さらに,これらの暴力の被害にあわなかったという人も,自分が被害者であることに気がつい ていないだけで,潜在的には被害者になっている可能性も考えられる。 わが国では,2001年に「配偶者からの暴力及び被害者保護に関する法律(DV防止法)」が制定され,その後,2004 年に配偶者からの暴力の定義が拡大,保護命令制度の充実,市町村による配偶者暴力相談支援センターの業務の 実施,被害者の自立支援の明確化,警察本部等の援助,苦情処理,外国人・障害者等への対応などによる改正が 行なわれた。そして2008年には,生命等に対する脅迫を受けた被害者に関わる保護命令と電話等を禁止する保護 命令が新たに追加された (南野・千葉・山本・吉川・福島,2008)。しかし,DV防止法が改正され法律婚に加え て事実婚も保護する対象としながらも,事実婚の定義は狭義であり,同居していない恋人間に存在する暴力被害 に対しては,DV防止法の保護命令等が対象外となっている(富安・鈴井2008)。 デートDVとDVには共通点も多いが,青野(2010)は,デートDVは当事者にとっても周りから見ても流動的で あり,夫婦間暴力よりもいっそうみえにくく,法律による保護や救済の対象となりにくいため,暴力が潜在しや すいと述べている。このように,将来的にDVの加害者・被害者にさせないためにも,現在の若者たちの大きな 脅威となっている,デートDVの早期の対策が必要でないだろうか。以下に,デートDVを引き起こす要因につ いて説明する。 ジェンダー・ロール これまで,デートDVは一般的に,男性から女性への一方的な暴力である場合が多く,男性に能動性・女性に 受動性を求める従来のジェンダー・ロールの影響が指摘されている。青野(2001)は,デートDV の背景には,家 父長的な家族制度やジェンダー・ロールが背景にあることを指摘している。とくに,思春期・青年期にある若者 には,相手に気に入られようとか,相手を失わないようにという気持ちが強く,ジェンダー・ロールの影響が大 きいと考えられる(夫(恋人)からの暴力調査研究会,1998)。たとえば,赤澤(2006)は,恋人同士はジェンダー・ロ ールを重視し,これに従った行動をとりがちであると述べている。しかし,昨今では,女性の強さが感じられる 一方で,男性のひ弱さを感じる場面も多くなってきた(高井・岡野,2009)。また,最近では,暴力を振るう女性, 暴力を振るわれる男性と,女性から男性への暴力も多く報告されるようになってきた(松野・秋山,2009;森永・
Frieze・青野・葛西・Manyu,2011;White,2009)。このようなことから,ジェンダー・ロールが変化している現
代,ジェンダー・ロールがデートDVに与える影響を改めて検討する必要がある。
パワー・リレーション
夫(恋人)からの暴力調査研究会(1998)によれば,DVはパワーとコントロールの車輪のような構造になっており,
こうした構造によって,加害者のパワーとコントロールは揺るぎないものになっていくとされる。このように,
体の関係や,女性から男性への暴力も説明できるのではないだろうか。そこで,本研究では,パートナー相互の
パワーの関係(power relation:パワー・リレーション)をデートDVの主要な要因としてとりあげて検討する。パワ
ー・リレーションとして下記の3つをとりあげる。
社会的勢力 社会心理学では,対人関係において人が相手に行使するパワーを社会的勢力(social power)と呼び,
報酬勢力,強制勢力,正当勢力,参照勢力,専門勢力,情報勢力,魅力勢力があるとされる(Raven, 1992;Imai,
1991)。また,Scott(1985)は,女性が持ち得て男性を支配できるパワーとして,性的勢力(erotic power)を提唱して
いる。パートナーの一方がすべてのパワーを所有し行使するというわけではなく,どのようなパワーを相手に行 使することが暴力に発展するかを検討する必要がある。 不均衡な関係 デートDVに関係のある二者関係の問題として,お互いの努力の程度が異なり,アンバランス (不衡平)な関係にある場合が考えられる。不衡平な関係とは,衡平性理論において,投入と成果の双方が衡平で あれば満足感を高め関係関与を深めるが,逆に不衡平な場合は満足感を低め関係関与を弱めるという考えである。 赤澤・井ノ崎・上野・松並・青野 (2011)は,衡平理論の立場から,大学生のパートナー関係と暴力傾向との関係 を調査した結果,不衡平な関係が,嫉妬,不安,抑うつのような強い感情を高め,デートDVの被害・加害を引 き起こしている可能性があることを見出した。このことから,一方が他方にパワーを行使するというという否定 的な側面だけではなく,お互いに何をしてあげて,何をしてもらっているか,それを両者がどのように認知して いるか,衡平・不衡平な関係もデートDVの一因となっていると考えられる。 物理的不平等 パワーとコントロールを生み出すような二者関係の要因として,物理的な不平等,すなわち, 体力(身体的能力),経済力,社会的立場の差がある。多くの女性は暴力の被害にあいたくないと思っている一方 で,自分より高身長で,力強くて,経済的にも自分よりも優れているような人に,恋人・結婚相手になってほし いと思っており,暴力の被害者になり得る状態をつくっている。そして逆に,体力や経済面で女性より劣る男性 は暴力の被害者になるのではないだろうか。 以上のことから,本研究では,デートDVを生起させ維持させる要因として,ジェンダー・ロール,社会的勢 力,関係の衡平性,物理的不平等をとりあげ,これらの要因がどのように関係しあってデートDVに影響を与え ているのかを検討する。 方法 調査対象者 中国地方のA大学,近畿地方のB,C大学,北陸地方のD大学の大学生,計306名に質問紙調査を実施し,交 際経験がないものと欠損値のあるものを除いた,男性 85 名(年齢:M=20.2,SD=1.4),女性 111 名(年齢: M=20.1,SD=1.5),計196名(年齢:M=20.2,SD=1.4)を分析対象とした。調査は2012年10月中旬に行なった。 質問紙の構成 (1)人口統計学的変数 性別,年齢,学年,所属(学部・学科) を回答してもらった。 (2)恋愛経験 恋人の有無,今までの交際人数について回答してもらった。 (3)ジェンダー・ロール 鈴木(1994)の15項目からなる,平等主義的性役割態度スケール短縮版を用いる。同調 査では,回答方法は,1(ぜんぜんそう思わない)~5(まったくそのとおりだと思う)の5件法だったが,本研究では, 1(全くそう思わない)~4(非常にそう思う)の4件法で答えてもらった。得点が高いほど性役割に対して平等主義的 であり,低いほど伝統主義的であると判定される。 (4)社会的勢力 Imai(1991),今井(1993)の社会的影響力尺度から,報酬勢力,強制勢力,正当勢力,参照勢力, 専門勢力,魅力勢力を各2項目ずつ, 恋人相手に適応ができるように若干語彙を修正した12項目と新しい勢力と して性的勢力を作成し,自ら作成した項目を2項目,計14項目を,1(全くそう思わない)~4(非常にそう思う)の4 件法で答えてもらった。
(5)関係の衡平性 中村(1991),和田・山口(1999)の社会的交換尺度から,①自己投入:これまでの付き合いにお いて,自分が相手との関係にどの程度尽くしているか,②他者投入:これまでの付き合いにおいて,相手が自分 に対してどの程度尽くしているか,③自己成果:これまでの付き合いにおいて,自分がどの程度報われているか, ④他者成果:これまでの付き合いにおいて,相手がどの程度報われているかの,計4項目を用いる。同調査では, 回答方法は,1(全く尽くしていない;全く報われていない)~7(非常に尽くしている;非常に報われている)の7件法 だったが,本研究では,1(全く尽くしていない;全く報われていない)~4(非常に尽くしている;非常に報われてい る)の4件法で答えてもらった。 (6)物理的不平等 恋人と年齢,身長,体力,経済力,周りからの評価にどれくらい差があるかを調べるため, 年齢は1(自分より年下)~3(自分より年上)の3件法,身長,力の強さ,経済力,周りからの評価については,1(自 分より低い)~3(自分より高い)の3件法で答えてもらった。 (7)デートDV デートDV被害・加害実態を調べるため,身体的暴力,精神的暴力,性的暴力を含む尺度を用いる(小 泉・吉武,2006)。質問項目は各15項目であり,同調査では,回答方法は,はい(1点)・いいえ(2点)の2件法だったが,本 研究では,1(受けたことがない;行ったことがない)~3(たびたびうけた;たびたび行った) の4件法で答えてもらっ た。 手続き 授業担当教員,当該学部の学部長の許可得た上で,講義の時間内で質問紙を配布した。なお,倫理的配慮とし て,質問紙を配布する際に調査内容について説明し,回答したくない項目には無回答・無記入でよいということ を伝えた。また,プライバシーに関する質問が多いため,学生に持ち帰って回答してもらい,次の講義に持参し てもらって,回収するという方法をとった。回収は,プライバシー保護の為,調査票を封筒の中に入れ,密封し ておこなった。 結果 各変数の記述統計量 ジェンダー・ロール 平等主義的性役割態度に関する質問項目の15項目の合計点を,平等主義的性役割得点と した。全体,男性,女性別の平均値,SDを表1に示す。平等主義的性役割得点は,得点が高いほど,平等主義的 であることを示し,男性の得点が低いことがわかる。 社会的勢力 社会的勢力に関する12項目をImai(1991),今井(1993)を参考にして,報酬勢力,強制勢力,正当勢 力,専門勢力,参照勢力,魅力勢力に分類し,自ら作成した2項目を性的勢力と分類した。全体,男性,女性別の 平均値,SDを表1に示す。社会的勢力については,得点が高いほど,勢力をよく行使することを意味し,最も行 使する勢力は,男性では報酬勢力であり,女性では,強制勢力であった。また,行使しない勢力は,男性では正 当勢力,女性では参照勢力,専門勢力であった。 下 位 尺 度 最 小 値 最 大 値 全 体 男 性 女 性 ジ ェ ン ダ ー ・ ロ ー ル 平等主義的性役割態度 21.00 59.00 43.73(6.29) 41.92(6.05) 45.13(6.14) 報 酬 勢 力 1.00 4.00 2.63(0.71) 2.86(0.74) 2.45(0.63) 強 制 勢 力 1.00 4.00 2.56(0.68) 2.57(0.70) 2.56(0.67) 正 当 勢 力 1.00 4.00 1.78(0.64) 1.81(0.66) 1.76(0.62) 専 門 勢 力 1.00 3.50 1.77(0.62) 1.94(0.65) 1.64(0.57) 参 照 勢 力 1.00 3.50 1.75(0.65) 1.89(0.69) 1.64(0.60) 魅 力 勢 力 1.00 4.00 2.43(0.79) 2.52(0.84) 2.36(0.75) 性 的 勢 力 1.00 4.00 2.08(0.72) 2.22(0.76) 1.98(0.67) 社 会 的 勢 力 表1 平 等 主 義 的 性 役 割 態 度 と 社 会 的 勢 力 の 各 下 位 尺 度 得 点 の 平 均 ,SD デートDV デートDVに関する質問項目においては,ほとんどの項目でフロア効果がみられたため,4件法を2
件法に変換した。その後,デートDVに関する質問項目の15項目の合計点を算出し,被害・加害得点とした。全体, 男性,女性別の15項目の被害・加害の比率と被害・加害得点の平均値,SDを表2に示す。表2から,何らかの暴力 を一度でもされたことのある人の比率は,男性で76.5%,女性で74.5%であり,何らかの暴力を一度でもしたこと のある人の比率は,男性で75.3%,女性で65.8%であった。 全 体 男 性 女 性 全 体 男 性 女 性 11.2% 18.8% 5.4% 17.9% 20.0% 16.2% 9.2% 10.6% 8.1% 6.1% 10.6% 2.7% 54.1% 57.6% 51.4% 49.5% 45.9% 52.3% 12.2% 14.1% 10.8% 13.3% 15.3% 11.7% 15.3% 17.6% 13.5% 12.8% 18.8% 8.1% 19.4% 27.1% 13.5% 18.4% 18.8% 18.0% 16.3% 23.5% 10.8% 16.3% 17.6% 15.3% 29.6% 35.3% 25.2% 27.6% 23.5% 30.6% 19.4% 17.6% 20.7% 16.3% 21.2% 12.6% 9.2% 7.1% 10.8% 7.1% 16.5% 0.0% 10.7% 10.6% 10.8% 7.1% 16.5% 0.0% 16.3% 12.9% 18.9% 11.7% 23.5% 2.7% 4.1% 4.7% 3.6% 2.6% 5.9% 0.0% 15.8% 23.5% 9.9% 10.7% 16.5% 6.3% 19.9% 20.0% 19.8% 9.7% 12.9% 7.2% 77.0% 76.5% 74.5% 69.9% 75.3% 65.8% 2.63 3.01 2.33 2.27 2.84 1.84 (2.88) (3.18) (2.59) (2.27) (2.84) (2.08) 被 害 自 分 の 意 見 や 都 合 に 合 わ な い か ら と い っ て , イ ラ イ ラ を ぶ つ け た り 怒 っ た り す る 腹 を 立 て た と き , す ぐ に 別 れ 話 を 持 ち 出 す 勝 手 に 携 帯 の 着 信 履 歴 や 交 友 関 係 を チ ェ ッ ク す る 行 動 を 制 限 し た り , 監 視 し た り す る 嫌 が っ て い る の に ポ ル ノ グ ラ フ ィ ー を 無 理 や り 見 せ た り , 似 た よ う な 行 為 を 要 求 す る 冗 談 の つ も り で , 軽 く 小 突 い た り , 蹴 っ た り す る 腹 を 立 て た と き , 目 の 前 で も の を 投 げ つ け た り 壊 し た り す る 腹 を 立 て た と き , 殴 る フ リ を す る 腹 を 立 て た と き , 大 声 で 怒 鳴 る 項 目 腹 を 立 て た と き , 長 い 期 間 無 視 す る 加 害 腹 を 立 て た と き , 身 体 を 掴 ん だ り , 叩 い た り , 殴 っ た り す る 表2 デ ー トDV被 害 と 加 害 経 験 の 比 率 被 害 ・ 加 害 得 点 平 均(SD ) わ ざ と 嫌 な 呼 び 方 で 呼 ん だ り , 馬 鹿 に し た り 見 下 し た よ う な 言 い 方 を す る 断 わ ら れ て も , 無 理 矢 理 セ ッ ク ス す る 避 妊 や 性 感 染 症 予 防 に 協 力 し な い 断 わ ら れ て も , 無 理 矢 理 , キ ス し た り , 身 体 を 触 っ た り 抱 き つ い た り す る 何 ら か の 暴 力 を1度 で も さ れ た ・ し た 衡平性 衡平性に関する4つの質問項目の全体,男性,女性別の平均値,SDを算出し,次に,公式にしたがっ て,過大利得群,衡平利得群,過小利得群の3群に分類した。全体,男性,女性別の項目の平均値,SDと分類の 比率を表3に示す。ちなみに, 衡平な状態とは,当事者同士が認知する投入/成果の比が等しい場合,すなわち OUTp/INPp−OUTo/INPo=0の場合のことである。表3から,男女ともに,過大利得群の比率が最も高く,過小利得 群の比率が最も低いことがわかる。 全 体 男 性 女 性 自 分 は 相 手 に 尽 く し て い る (INPp) 2.81(0.79) 2.86(0.82) 2.77(0.77) 相 手 は 自 分 に 尽 く し て い る(INPo) 3.10(0.76) 3.01(0.75) 3.16(0.76) 自 分 は 報 わ れ て い る (OUTp) 3.11(0.73) 3.13(0.72) 3.09(0.75) 相 手 は 報 わ れ て い る(OUTo) 2.73(0.78) 2.79(0.82) 2.68(0.75) 50.5% 44.7% 55.0% 37.2% 42.4% 33.3% 12.2% 12.9% 11.7% 表3 衡 平 性 項 目 の 平 均 ,SDと 衡 平 性 の 比 率 過 大 利 得 群 衡 平 利 得 群 過 小 利 得 群 項 目 物理的不平等 恋人の年齢,身長,体力,経済力,周りからの評価の差の比率を算出した。全体,男性,女性 別の結果を表4に示す。表4から,男性は恋人を,自分より年齢,身長,体力が低いと認知し,女性は恋人を, 自分よりも,身長,体力,経済力が高いと認知していることがわかる。 全 体 男 性 女 性 全 体 男 性 女 性 全 体 男 性 女 性 恋 人 の 年 齢 13.8% 23.5% 6.3% 52.0% 61.2% 45.0% 34.2% 15.3% 48.6% 恋 人 の 身 長 38.3% 85.9% 1.8% 7.7% 8.2% 7.2% 54.1% 5.9% 91.0% 恋 人 の 体 力 35.7% 80.0% 1.8% 11.2% 15.3% 8.1% 53.1% 4.7% 90.1% 恋 人 の 経 済 力 14.8% 23.5% 8.1% 40.3% 47.1% 35.1% 44.9% 29.4% 56.8% 恋 人 の 周 り か ら の 評 価 12.2% 14.1% 10.8% 49.0% 51.8% 46.8% 38.8% 34.1% 42.3% 表4 物 理 的 不 平 等 の 分 布 項 目 自 分 よ り 低 い 自 分 と 同 じ 自 分 よ り 高 い デートDVに及ぼす要因の検討
デートDVの加害・被害には,平等主義的性役割態度,社会的勢力,関係の衡平性,物理的不平等が影響を及ぼ すというモデルを想定し,構造方程式モデルによってモデル検討をおこなった。また,モデル作成前に,あらか じめ報酬勢力を除外して分析をおこなった。これは,報酬勢力の性質が,他の勢力と違い相手に何らかの利益を 与えている勢力のためである。次に,男女で同一のモデルが適応可能かどうかを検討するために,男女別に分析 を行った。解釈が可能な範囲で誤差相関を設定する修正を加えた結果,モデルの適合度は男性では,χ 2 =74.28,p <.001,GFI=.89,AGFI=.83,RMSEA =.06,女性ではχ
2
= 106.19,p <.001,GFI=.88,AGFI=.82,RMSEA=.08とな った。この結果から,男女ともに同一のモデルが適応可能だと判断し,男性および女性を母集団にした多母集団
同時分析を行った。分析の結果,モデルの適合度は,χ
2
=204.48,p <.001,GFI=.87,AGFI=.82,RMSEA=.06とな
り,モデルは採用可能であると判断した(図1,2)。また,分析時に,物理的不平等の恋人との周りからの評価, 社会的勢力の強制勢力が有意ではなかったので,分析から除外した。以降,男女別に結果を記述する。 物 理 的不平等 デートDV被害 デートDV加害 .... 1111 3333*** ***** 平等主義的 性役割態度 -- .... 444 34333 * * * * **** **** .... 2222 9999*** ***** **** .... 0000 6666*** ***** 年齢 身長 体力 経済力 衡平性 性的 魅力 参照 専門 正当 .... 8888 1111 .... 333 63666**** **** . .. . 222 82888* ******* **** . .. . 2222 1111* ******* **** .... 777 57555 .... 6666 4444* ******* **** .... 4444 3333* ******* **** . .. . 5555 8888* ******* **** .... 6666 2222* ******* **** 図1 共分散構造分析の結果( 男 性) GFI=.873 AGFI=.820 RMSEA=.055 ***p<.001 **p<.01 *p<.05 注;値は すべて標準化 係数で、誤差変 数の記述は省 略 した。 社会的勢力 物 理 的不平等 デートDV被害 デートDV加害 . .. . 1111 7777**** 平等主義的 性役割態度 -- .... 5555 3333* ******* **** .... 3333 9999*** ***** **** 年齢 身長 体力 経済力 衡平性 性的 魅力 参照 専門 正当 .... 5555 7777 .... 333 63666**** **** .... 2 22 2 8888 * * * * **** **** . .. . 1111 6666* ******* **** .... 6666 0000 .... 5555 8888* ******* **** .... 3333 8888* ******* **** .... 5555 6666* ******* **** .... 5555 6666 * * * * **** **** .... 2222 3333* ******* **** .... 1111 0000* ******* **** 図2 共分散構造分析の結果(女性)
GFI=.873 AGFI=.820 RMSEA=.055 ***p<. 001 **p< .01 *p <.05 注;値はすべて標準化係数で、誤差変 数の記述は省 略 し た。 社会的勢力 男性における影響 まず,社会的勢力に及ぼす平等主義的性役割態度の影響はβ=-.43(p<.001)であった。しかし, 物理的不平等,衡平性に及ぼす平等主義的性役割態度の影響はみられなかった。このことから,平等主義的性役割
態度が低ければ,社会的勢力を行使するということがわかる。次に,デートDV被害に及ぼす影響は,社会的勢力, 物理的不平等,衡平性のすべてで見られなかった。また,デートDV加害に及ぼす物理的不平等の影響はβ=.06(p<.01), 社会的勢力の影響はβ=.13(p<.05),デートDV被害の影響はβ=.29(p<.001),衡平性の影響は見られなかった。このこと から,デートDVの発生には,デートDVの被害経験が最も影響を与えているということがわかる。 女性における影響 まず,社会的勢力に及ぼす平等主義的性役割態度の影響はβ=-.53(p<.001)であった。しかし, 物理的不平等,衡平性に及ぼす平等主義的性役割態度の影響はみられなかった。このことから,平等主義的性役割 態度が低ければ,社会的勢力を行使するということがわかる。次に,デートDV被害に及ぼす,衡平性の影響は β=.23(p<.01),物理的不平等,社会的勢力の影響は見られなかった。また,デートDV加害に及ぼす衡平性の影響は β=.10(p<.001),社会的勢力の影響はβ=.17(p<.05),デートDV被害の影響はβ=.39(p<.001),物理的不平等の影響は見ら れなかった。このことから,このことから,デートDVの発生には,デートDVの被害経験が最も影響を与えている ということがわかる。 考察 本研究では,デートDVを生起させ維持させる要因として,平等主義的性役割態度,社会的勢力,関係の衡平 性,物理的不平等をとりあげ,これらの要因がどのように関係しあってデートDVに影響を与えているのかを検 討することを目的とした。デートDVの被害・加害の要因には,ジェンダー・ロールの影響が指摘されてきたが(青 野,2001),昨今では,女性から男性への暴力も多く報告されるなど (松野・秋山,2009;森永ら,2011;White, 2009),ジェンダー・ロールが変化している現代において,ジェンダー・ロールがデートDVに与える影響を改め て検討する必要があると考えた。そこで,本研究では,デートDVをパワーによって相手のコントロールするこ とであると再定義することにより,加害と被害の表裏一体の関係や,女性から男性への暴力も説明できると考え, パートナー相互のパワーの関係(power relation:パワー・リレーション)をデートDVの主要な要因としてとりあげ て検討をおこなった。パワー・リレーションには様々なものがあるが,本研究では,社会的勢力,関係の衡平性, 物理的不平等に注目した。 まず,デートDV被害経験率は,男性で76.5%,女性で74.5%,加害経験率は,男性で75.3%,女性で65.8%で あり,被害・加害経験率のどちらも,女性より男性の方が高かった。このことから,女性は,男性からの暴力に 慣れており,暴力を暴力と自覚していない,または,暴力だとわかっていないということが考えられないだろう か。 次に,構造方程式モデルによってモデル検討をおこなった結果,平等主義的性役割態度については,男女とも に社会的勢力に影響がみられ,物理的不平等,衡平性,デートDV被害・加害への影響はみられなかった。先行 研究の井ノ崎(2008),小泉・吉武(2008)は,ジェンダー・ロールは,デートDV被害・加害と関連があると述べて いるが,本研究では,平等主義的性役割態度の直接的な影響はみられなかった。これは,近年の若者のジェンダ ー・ロールの変化が考えられ,ジェンダー・ロールの変化が直接的にデートDVに影響を及ぼさなかった原因で はないかと考える。 物理的不平等については,男性でのみデートDV加害に影響がみられ,恋人の年齢,身長,体力,経済力が自分 よりも高いと認知しているほど,デートDV加害をすることが示唆された。つまり,男性は自分よりも弱くて従順 な恋人に対しては暴力を振るわないが,自分よりも強くて,経済的にもまさっている女性に対して,いらだちを 感じ,暴力をおこなってしまうのではないだろうか。 衡平性については,女性でのみ,デートDV被害・加害に影響がみられ,自分が過小利得であるほど,デート DVの被害者になり,加害者にもなるということが示唆される。すなわち,女性は,自分の利得が少ないときに,
被害・加害者になるということである。赤澤ら(2011)は,親密な二者関係においては,過小利得者の関係の満足 度が低く,関係性の不均衡から,自身の状況に不満足感を抱きやすく,否定的感情が喚起されやすいと述べてい る。つまり,本研究の結果は,こういった否定的な感情が,デートDVの被害・加害を引きおこすのではないかと 考えられる。 社会的勢力については,男女ともにデートDV加害に影響がみられ,社会的勢力の行使がデートDV加害を引き 起こしていることが示唆された。このことから,社会的勢力を行使するという,高圧的な態度がデートDVを引き 起こす要因になっていることが考えられる。 デートDV被害については,男女ともにデートDV加害に影響がみられ,デートDVの被害経験が加害の要因にな っていることが示唆される。つまり,被害を受ければ受けるほど,暴力を振ってしまうということである。 Frieze(2005)は,相手に暴力をふるうかどうかの最大の要因は,相手から暴力を受けたかどうかであることだと述 べている。また,青野ら(2011)は,デートDVには,「やられたらやりかえす」という特徴があり,暴力は相互的 なものであるとのべており,本研究の結果からも,デートDVには「やられたらやりかえす」という特性があるの ではないかと示唆された。 本研究では、デートDVの生起メカニズムの検討を行った。その結果,男女ともに社会的勢力がデートDV加害 の要因になっていることが示されたが,他の要因は性別によってかなり異なることが明らかになった。すなわち 男性においては物理的不平等がデートDV加害,女性においては衡平性がデートDV被害・加害を生起しているこ とが示された。しかし,本研究では,男性のデートDV被害を引き起こしているものがないか検討できなかった。 今後は,男性のデートDV被害を引き起こしているものを早急に検討していく必要があるだろう。 引用文献 赤澤 淳子 (2006). 夫婦関係における衡平モデルの検討関係満足度および個人の充実感におけるカップル間の 比較 人間学研究,5,35-46. 赤澤 淳子・井ノ崎 敦子・上野 淳子・松並 知子・青野 篤子 (2011). 衡平性の認知とデートDVとの関連 仁愛大 学研究紀要 (人間学部篇),10,11-23. 青野 篤子 (2001). ジェンダーと暴力・平和 心理科学研究会(編) 平和を創る心理学 ナカニシヤ出版 pp. 44-57. 青野 篤子 (2010).デートDVはなぜ? 柏木恵子(編者) よくわかる家族心理学 ミネルヴァ書房 p. 44. 青野 篤子・周 玉慧・森永 康子・葛西真記子 (2011). 日本と台湾の大学生の恋愛における葛藤解決方略 黄 自進(編)日本の伝統と現代 中央研究院人文社會科學研究中心・亞太區域研究専題中心 pp. 559-592.
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謝辞
本研究の実施あたって,アンケート調査にご協力いただきました,仁愛大学の赤澤淳子先生,徳島大学の井ノ崎
敦子先生,四天王寺大学の上野淳子先生に深く感謝し,心よりお礼申し上げます。最後に,本論文を作成するにあ
The influence of gender-role and power-relation on dating violence Ryoki Okamoto
Dating violence has increased among young couples and it has become a serious social problem in the Japanese society. The studies in this field have found many factors, but there are few which explores their relationships and which focuses on gender-role or power-relation. The purpose of this study is to clarify the occurrence mechanism of dating violence and the influence of gender-role and power-relation on dating violence. The questionnaire survey was administered to 306 college students, and 85 men and 111 women who had experienced dating relationships were analyzed. The questionnaire was constituted with the experiences of violence, feminist attitude (gender-role), social forces, (in)equity of relationship, and physical (un)equality. According to the structural equation model, physical inequality predicts perpetrating in men, inequity of relationship predicts both perpetrating and victimizing in women, and social forces predict perpetrating in both women and men.