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3 まえがき本書は 筆者が新聞記者時代に先輩から教わったり 後輩に教えたりした作文の技術や練習方法を ビジネスパーソンや学生でも使えるよう整理したものです 想定しているのは 社内の報告書やプレスリリース 大学のレポート 就職活動のエントリーシート(志望動機書)などです エッセイなどの 読み物 のほか

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Academic year: 2021

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まえがき

本書は、筆者が新聞記者時代に先輩から教わったり、後輩に教えたりした作文の技術や練習方 法を、ビジネスパーソンや学生でも使えるよう整理したものです。 想定しているのは、社内の報告書やプレスリリース、大学のレポート、就職活動のエントリー シート(志望動機書)などです。エッセイなどの「読み物」のほか、メールやSNSといったネ ットで使う文章にも応用できるでしょう。言い換えれば、実用文を、正確に、わかりやすく書く 技術について説明しています。 急 い で 断 っ て お く と、 「 新 聞 記 事 は 良 い 文 章 の 見 本 だ 」 と い う つ も り は あ り ま せ ん。 章は無個性で味気ないという批判は、昔からよく聞きます。紋切り型の表現が多く、文学が好き な人には「悪文」にしか見えないかもしれません。 それは、新聞の文章が「規格品」だからです。あとで詳しく説明しますが、新聞の文章は徹底 的に「標準化」されています。紙面には様々な種類の記事がありますが、よく観察すると、その ほとんどは「既製の部品」を「共通のパターン」に従って組み立てただけです。 最も重要な構成

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も、ニュースは 「逆三角形」 、論説は 「三部構成」 、コラムは 「起承転結」 、長めの企画記事は 「起 承展転結」といったように、たった 4つの型に集約されます。 いわば大量生産品なのです。 しかし、文章を「情報を伝える道具」だと割り切るなら、そのことのメリットは、 「味気ない」 といったデメリットを上回ります。 まず、書き方のルールさえ知ってしまえば、誰でも簡単にマネができます。 入社時に作文の試験があるので、新聞社には「それなりに文章が書ける人」が多いのは事実で す。ただ、全員に文才があるというわけではありません。中には小説家や詩人になるような人も いますが、能力にはかなりばらつきがあります。正直にいうと、ぜんぜん書けない人も入ってき ます。 それを半年から 1年ほどで「商品になる文章」を書けるまでに育てることができるのですから、 特殊な才能や修行を必要としないことは明らかです。例えば小説家を育てようと思っても、こう は い き ま せ ん。 新 聞 記 者 に と っ て 本 当 に 大 変 で 時 間 が か か る の は、 「 埋 も れ て い る 情 報 を 発 掘 し て裏をとる」という技術の習得であって、 「文章を書く」ことではないのです。 記者式の文章のもう一つのメリットは、応用の幅が広いことです。紙面を眺めると、大半は事 実を淡々と伝えるニュース記事です。しかし、他にも社説などの論説から、子供向けの解説、エ ッ セ イ 風 の 読 み 物 ま で 揃 っ て い ま す。 中 に は 小 説 仕 立 て の 記 事 さ え あ る こ と に 気 づ く で し ょ う。 これだけの種類の文章が書ければ、たいていの用は足りてしまいます。 し か も、 こ れ ら は す べ て、 「 少 な く と も 義 務 教 育 を 終 え た 人 に は わ か る 」 よ う に 書 か れ て い ま

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す。そう書かなければならないという業界のルールがあるからです。要するに、美しいかどうか、 うまいかどうかはともかく、読みやすいことにかけては折り紙つきなのです。 本書の、この文も記事と同じ方法で書いています。そう見えないとすれば、文体が新聞ではあ まり使わない「です・ます調」だからでしょう。ためしに語尾を「だ・た」か「だ・である」に 替えてみてください。新聞でよく見る文になるはずです。今度は、末尾を「〜だニャン」か「〜 でござる」に変えてみましょう。ネコやサムライが話しているような文になります。 こ こ ま で 変 え る と、 指 摘 さ れ て も 新 聞 記 事 の 文 体 に は 見 え な い で し ょ う。 し か し、 「 新聞記事と同じなのです。 つまり、 新聞で使われている文章術を身につければ、大学やビジネスで使う固い文から、ブロ グなどに載せるやわらかい文まで、幅広く書ける ということです。 本 書 は、 一 般 的 な 文 章 術 に と ど ま ら ず、 「 何 を 書 く か 」 と い う 構 想 を 練 る 方 法 や、 文 込 む 情 報 の 収 集 の 仕 方 に つ い て も 解 説 し ま し た。 「 文 章 が 書 け な い 」 と い う 人 の 多 く が、 章力よりは、こうした「文章以前」の部分で問題を抱えていると思うからです。 ただ、すでに書くテーマがあり、材料も揃っている人は、 1〜 3章を飛ばして読んでも構いま せん。すでに書き終えた文章があり、それをわかりやすく推敲、編集したいという人は、 章を読んでください。

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文章を書く心構えや 練習方法を知りたい 1、9、終章 対応する章 目的 構想や取材など 「書く前の準備」について知りたい 2~4章 テーマや材料は揃っていて、 今すぐ執筆を始めたい 4、5章 書き終えた文章を推敲し、 わかりやすく編集したい 6~8章 本書の使い方

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目次 ◉ 迷わず書ける記者式文章術

まえがき

 

3 第 1章  

文章を書くとはどんな作業か

... 大 事 な の は 「 何 を 書 く か 」  14 「 文 章 が 書 け な い 」 理 由   16 な ぜ 記 者 は 過 酷 な 条 件 で 書 け る の か   19 モ ジ ュ ー ル ・ 段 落 ・ 文   21 新 聞 ス タ イ ル は 応 用 範 囲 が 広 い   23 速 く 書 く た め の 基 本 戦 略   24 第 2章  

構想を練る

... ... ... 文 章 の 種 類 を 決 め る   28 テ ー マ を 決 め る   31 読 ま せ ど こ ろ の 設 定   34

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発 想 法 の 3パ タ ー ン   36 ブ レ ー ン ス ト ー ミ ン グ   42 第 3章  

取材の方法

... ... ... 45 メ モ の と り 方   46 裏 を と る   48 資 料 で 確 認 す る   52 現 場 、 現 物 、 現 人 に あ た る   53 イ ン タ ビ ュ ー の 方 法   55 掘 り 下 げ て 聞 く   58 第 4章  

設計図を描く

... ... ... 61 設 計 図 を 作 る   62 仕 様 を 確 認 す る   63 文 体 を 決 め る   65 ス ケ ル ト ン の 基 本 項 目   67 仮 見 出 し を 立 て る   69

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見 出 し の 表 現 方 法   73 要 旨 を ま と め る   74 4つ の 基 本 パ タ ー ン   75 説 明 は 逆 三 角 形   77 レ ポ ー ト は 三 部 構 成   79 読 み 物 は 「 起 承 転 結 」  80 長 め の 読 み 物 は 「 起 承 展 転 結 」  82 モ ジ ュ ー ル の 中 の 構 成   85 段 落 の 役 割   86 「 本 論 」「 展 」 は 3パ タ ー ン   88 「 起 」 の 書 き 方   90 第 5章  

文を書く

... ... ... ま ず 、 ざ っ と 書 い て み る   96 読 み や す い 文 を 書 く 三 原 則   97 「 40 − 60」 の 原 則   98 「 1文 1意 」 の 原 則   100

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受 け 身 形 を 使 わ な い   101 リ ー ド を 書 く   103 段 落 の 中 の 「 文 」 の 並 べ 方   108 補 足 文 の 入 れ 方   111 客 観 性 の あ る 表 現 を す る   113 と り あ え ず 文 章 を 締 め る た め の 表 現   115 第 6章  

読みやすい文章とは

... ... 117 読 み 手 に 頭 を 使 わ せ な い   118 読 み に く い 原 因   121 漢 字 の 割 合 は 3分 の 1程 度   124 漢 字 を 減 ら す 方 法   126 親 し み の あ る 言 葉 を 選 ぶ   130 語 順 を 入 れ 替 え る コ ツ   132 単 調 さ を 防 ぐ こ と も 必 要   133 分 割 の コ ツ   136 体 言 止 め は 最 小 限 に   140

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第 7章  

推敲する

... ... ... 読 み 上 げ れ ば 難 点 が わ か る   144 不 要 な 言 葉 を 削 る   145 読 点 の 打 ち 方   151 語 句 の 説 明 書 き   154 第 8章  

説得力を高める

... ... 写 真 を つ け る   158 イ メ ー ジ 図 を 描 く   160 デ ー タ で 伝 え る の は 「 大 き さ 」 と 「 変 化 」  161 グ ラ フ を つ け る   162 表 を つ け る   165 具 体 例 や た と え 話 を 入 れ る   166 描 写 は 「 絵 に 描 け る 」 よ う に   168

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第 9章  

トレーニング編

... ... ... 171 説 明 力 は 「 お 絵 描 き ゲ ー ム 」 で   172 記 者 会 見 を 速 報 記 事 に す る   178 積 極 的 に 添 削 を 受 け る   181 文 章 構 成 の 練 習 法   183 終   章  

本質を突く文章術

... ... 185 「 わ か り や す さ 」 と 偏 向 は 紙 一 重   186 イ メ ー ジ に 訴 え る   188 「 本 質 を 突 く 」 方 法   191

あとがき

 

194 文章修行のための読書案内   196 参考文献   198 付録   201

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第 9章  

トレーニング編

... ... 説 明 力 は 「 お 絵 描 き ゲ ー ム 」 で   172 記 者 会 見 を 速 報 記 事 に す る   178 積 極 的 に 添 削 を 受 け る   181 文 章 構 成 の 練 習 法   183 終   章  

本質を突く文章術

... ... 「 わ か り や す さ 」 と 偏 向 は 紙 一 重   186 イ メ ー ジ に 訴 え る   188 「 本 質 を 突 く 」 方 法   191

あとがき

 

194 文章修行のための読書案内   196 参考文献   198 付録   201

1章

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本題に入る前にお断りしておきたいことがあります。この本を読んで文章術を覚えたとしても、 そもそも「書くべきこと」 「書きたいこと」が明確でなければ文章は書けない、ということです。 これは英会話の勉強とよく似ています。文法を理解し、単語を覚え、ネイティブの先生から発 音の仕方を習っても、ぜんぜん会話ができない人はたくさんいます。それは「英語の知識や発音 のテクニックがない」からではなく、そもそも、外国人に伝えたいこと、聞きたいことがないか らです。逆に必要に迫られれば、知識が乏しくても、それを総動員して、自分の意思を伝えるこ とができるものです。 文 章 も、 大 事 な の は う ま く 書 け る か ど う か で は な く、 「 何 を 伝 え る か 」 で し ょ う。 つ ま ら な い 考えを、どんなに美しくわかりやすい文章で綴っても、他人の心を動かすことはできません。こ れは一流のコックさんでも、食材が腐っていたり、そもそもなかったりすれば美味しい料理を作 れないのと同じです。 これは、私が記者修行をしてきた実感でもあります。確かに様々なパターンの記事を書けるよ うになるには、一定の知識と訓練が必要です。しかし、記者が基本的な技術を身につけるのに必 要な期間は、だいたい半年から 1年くらいです。 逆に、記者として一生修行が続くのは「情報を集めて分析する」という部分です。人や組織が

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隠していることを、どうすれば聞き出すことがで きるのか。手に入れた情報の真偽を確かめるには どうすればいいのか。その価値をどういう基準で 評価すればいいのか

。つまり、書くべき情報 を集める技術の方は、試行錯誤し、議論しながら 磨きをかけていく必要があります。 この点をあえて強調するのは、文章を書くこと の本質について考えてほしいからです。 記者をはじめとした「物書き」は、文章を操れ ることにプライドを持っています。このため、文 章術について教えるときにも、つい高尚な行為で あるかのように説明しがちです。実際、文章の書 き 方 を 指 南 す る 本 を 読 む と、 「 ひ た す ら き写す」といった、修行めいたアドバイスを目に することがあります。しかしそれは、技術の価値 を 過 大 に 評 価 さ せ、 「 何 を 書 く か が 重 要 う事実を見えにくくしてしまいます。 本 書 の 狙 い は、 「 ど う 書 く か 」 に つ い 文章 中身 大事なのは文章ではなく中身

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安直かつ簡便な方法を提案することです。文章を書くことにロマンを感じている人は、マニュア ル化されたノウハウに反発を感じるかもしれません。しかし、あえてそうする意味は、本来の目 的である「何を書くか」を考える作業に、最大の労力を注いでほしいからです。 実際、新聞に書かれている文章が規格品だからといって、中身がないとはかぎりません。内容 が重要であれば、出来合いの文体で書いても、人に深く考えさせたり、感動させたりすることは できます。観賞用の文章ではない実用文は、それで十分なのです。

世の中には、 「長い文章を書くのが苦手だ」という人がたくさんいます。 しかし、そういう人でも、家族や友達と 1時間以上話すことはあるでしょう。おしゃべりな人 な ら、 言 葉 を す べ て 文 字 に 置 き 換 え れ ば、 1日 で 本 1冊 分 ( 10万 字 以 上 ) に な る こ と は 珍 し く な いはずです。 しかも最近ではSNSで100字くらいの文章は日常的に書いているという人がほとんどです。 ところが、パソコンや原稿用紙を前にすると、全く言葉が浮かんでこないのです。 こういう人たちには、大きく分けて三つのタイプがあります。 ①書き言葉に慣れていない

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まず「書き言葉」に慣れていない人です。同じ日本語ではありますが、話し言葉と書き言葉で は、表現が微妙に異なります。とくにレポートや報告書の文体は、日常で使わない言い回しを多 用するので難しく感じます。 ただし、これは慣れの問題で、文章が書けない本質的な原因ではありません。母国語として日 本語に親しんできた人なら、どんな文体であれ、一つの「文」を書けないというケースはほとん どないはずだからです。 ②書くべきことがない そもそも「書くべきことがない」 、というケースは、案外多いものです。 文章は、誰かに何かを伝えるという目的で書くものです。他人に読ませるつもりがない日記で さえ、 「未来の自分」に向けて書いているといえます。 言 い 換 え れ ば、 「 日 本 語 を 書 く 能 力 」 が あ っ た と し て も、 そ も そ も「 伝 え る べ き 何 か れば、文章を書くことはできない のです。 こういうタイプの人は、文章術を学ぶより、誰かに話したくなるような経験をたくさんしたり、 物事について深く考えて自分の主張を持つようにしたりする方が、ずっと効果的でしょう。アウ トプットの前に、インプットが決定的に不足しているわけです。

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③構成ができない さて、 「文が書けて」 「伝えるべきことがある」にもかかわらず、文章が書けないのはどういう ケースでしょう。これは「構成ができない」ことが原因です。 文章とは「文」の集まりです。 1冊の書物について考えてみましょう。例えば新書は普通、 12万字程度の分量があります。こ れは400字詰め原稿用紙にすると300枚くらいになります。原稿用紙を 1枚埋めるのに四苦 八苦している人にとっては途方もない分量に感じられるでしょう。 しかし 1冊の新書でさえ、中身を分解してみると数十字から100字程度の「文」の集まりで しかありません。文がいくつか集まって「段落」になり、段落がいくつか集まると「節」になり ます。節のかたまりである「章」を並べることで 1冊の本ができるわけです。 もっとも、ただ並べればいいというものでもありません。それぞれの文が、段落の中に適切に 配置されている必要があります。 SNSのように、せいぜい 2〜 3文の組み合わせであれば、構成を考える必要はほとんどあり ません。直感的に、思いついたことを順に書いていけば用が足ります。 しかし、長い文章になるほど構成の持つ重要性は高まります。本 1冊が 12万字で、 1文の平均 が100字 だ と し ま し ょ う。 本 は1200の 文 が 集 ま っ て い る こ と に な り ま す。 文 を 並 べ る 順 列・組み合わせは膨大な数になります。それらを読みやすく並べられるかどうかが、 「書ける人」 と「書けない人」を分ける決定的な差なのです。

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ただ、私たちは長編小説を書こうとしているわけではありません。幸いなことに、 学校で課さ れるレポートや、ビジネスで必要とされる報告書などは、ある程度、構成のパターンが決まって います 。さらに、文体や言葉遣いにも一定のルールがあります。それさえ踏まえていれば、上手 い下手はともかく、実用に足る文書を作ることはできるのです。

新聞記者は記事を書くのが仕事です。私も日経新聞に就職してからというもの、くる日もくる 日 も 原 稿 を 書 く こ と に な り ま し た。 そ の 意 味 で は、 ジ ャ ー ナ リ ス ト は 名 文 家 で は な 「文章を書くプロ」だとはいっていいでしょう。 しかし、同じように文章を書く仕事でも、記者の執筆作業には作家や研究者などとは異なる特 徴があります。 まず、短い制限時間の中で原稿を仕上げなければなりません。ニュースは締め切り時刻に配慮 し て 発 生 し て く れ な い か ら で す。 と き に は、 「 今 起 き た ニ ュ ー ス を 10分 以 内 に ま と め ろ た命令を受けることもあります。 オフィスも静かな環境ではありません。あちこちから怒鳴り声が上がり、付けっ放しのテレビ や、 速 報 を 伝 え る 通 信 社 の ス ピ ー カ ー か ら、 絶 え ず 音 声 が 流 れ て い ま す。 「 静 か な 環 境 くり考えながらでないと書けない」という人なら仕事にならないでしょう。

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そうした厳しいプレッシャーにさらされている にもかかわらず、なぜ記者は原稿が書けるのでし ょう。 その答えは、一言で言えば文章の徹底した「モ ジュール化」です 。 モジュールとは、ある機能を持つように組み合 わされた部品の集まりのことです。 と、聞いてもピンとこない人は、模型屋さんな どで売っている電動モーターを思い浮かべてくだ さい。モーターも、磁石やコイル、軸などの部品 を組み合わせて「何かを回転させる」という機能 を持たせたモジュールだからです。 モーターは、他の機能を持つ複数のモジュール と 組 み 合 わ せ る こ と で、 ド ロ ー ン ( 無 人 機 ) や パ ソコンといった、多様なジャンルの製品を生み出 すことができます。このように、異なる機能を持 つ「部品の集まり」を利用して、様々な製品を生 み出すという設計思想がモジュール化です。モノ エンジン 車台 車輪 車体 モジュール化の例

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づくりの世界では、このモジュール化が進んでいます。パソコンや自動車、住宅までもがモジュ ールを組み立てることで作られているのです。

実は、新聞の文章もこれと同じ仕組みで作られています。 記 者 が 書 く 文 章 に は、 「 序 論・ 本 論・ 結 論 」 や「 起・ 承・ 転・ 結 」 な ど、 構 成 に 一 定 ンがあります。このうち「序論」や「転」などが、モーターや車輪といったモジュールに当たり ます。 さらに、このモジュールを分解すると、100〜150字程度の 段落 (パラグラフ) になります。 この段落も、 「事例の紹介」 「背景説明」など、 1段落が一つの役を割り振られています。中には、 ニ ュ ー ス 記 事 の 冒 頭 に 置 か れ る「 リ ー ド ( 前 文 ) 」 の よ う に、 1段 落 で 一 つ の モ ジ ュ ー ているものもあります。 こうした段落を構成する 文 は、ネジや針金といった細かい材料に当たるといっていいでしょう。 現 代 の モ ノ づ く り で は、 こ う し た 部 品 に つ い て も 標 準 化 が 進 ん で い ま す。 形 や 大 き さ 世界で共通の型番が決まっているわけです。 記者の書く文章でもこの点は同じです。新聞やテレビといった報道業界では、共通する定型表 現がたくさん使われているのです。

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省庁のなかで政策が発案され、最終的に国会で承認されるケースを例にとりましょう。 あ る 省 の 部 局 で、 政 策 の 構 想 が 浮 上 し て 検 討 が 始 ま っ た こ と が 取 材 で わ か っ た 場 合、 記 者 は 「 (〜省が) 検討に入った」という表現を使います。 これは全国紙、地方紙、通信社、テレビなどで共有されている暗黙のルールです。同じことを 言うだけなら、 「話し合いがもたれた」 「実現に向けて模索が始まった」といった無数の異なる表 現ができます。しかし、こうした状況を表すときは、所属する新聞社が違っても、みんな「検討 に入った」と書くのです。 さらに検討の結果、省として実現に向けて具体的なアクションを起こすことが決まれば「〜す る方針を固めた」と書きます。最終的に国会で法案が成立すれば、断定調で「〜法案が可決成立 し た 」 と 書 き ま す。 つ ま り 状 況 に よ っ て ど の 表 現 を 選 ぶ か が、 業 界 全 体 で「 標 準 化 ( ル ー ル 化 ) 」 さ れ て い る わ け で す ( こ の 点 に つ い て は 拙 著『 新 聞 の 正 し い 読 み 方 』 で 詳 し く 解 説 し て い る の で、 興 味のある方は読んでみてください) 。 言い換えれば、記者は原稿を書く際に、作家のようにどんな表現をするかで悩む必要はありま せん。あらかじめ決まったラインナップの中から「選ぶ」だけなのです。こうした仕組みは、原 稿を限られた時間内に仕上げる際には大きな強みになります。 新聞記者は、新人教育の時期にこれらのルールや部品を徹底的に叩き込まれます。いったんこ の執筆システムを頭に入れてしまえば、どんな過酷な状況でも原稿を書けるようになるのです。 このことは、私たちが文章を書く際にも重要な示唆を与えてくれます。

参照

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