H21.08.23 研修会 社会保険労務士・行政書士 髙本博雄
未支給年金が未支給?!
年金受給者が死亡すると必ず「未支給年金」が発生します。一定範囲の親族が条件を満たせば 受取ることが出来ますが、その親族の範囲に、甥や姪は含まれていません。少子高齢化が進む昨 今、甥や姪がおじやおばを介護したり、生活支援することも多々ありますが、そのような場合で も甥や姪は「未支給年金」を受取れません。 「未支給年金」の未支給?となります。 (平成 21 年 1 月 15 日 産経新聞「ゆうゆうライフ ひとり身のおば 介護にかかるお金」) 記事は「MSN産経ニュース」で見ることが出来ます。検索欄に「未支給年金」と打ち込んで下さい。 「過去記事検索」の 5 番目に出てきます。1.「年金受給日に死亡したら?」と2.「町内会長が生計 同一証明?」もお読み下さい。 《参照条文》 厚生年金保険法(略記:厚年法) (資格喪失の時期) 第 14 条 第9条又は第 10 条第1項の規定による被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至 つた日の翌日(その事実があつた日に更に前条に該当するに至つたとき、若しくは共済組合の組 合員若しくは私学教職員共済制度の加入者となつたとき、又は第5号に該当するに至つたときは、 その日)に、被保険者の資格を喪失する。 1.死亡したとき。 2.その事業所又は船舶に使用されなくなつたとき。 3.(略) 4.(略) 5.70 歳に達したとき。 (年金の支給期間及び支払期月) 第 36 条 年金の支給は、年金を支給すべき事由が生じた月の翌月から始め、権利が消滅した月で 終るものとする。(未支給の保険給付) 第 37 条 保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付で まだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄 弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その 未支給の保険給付の支給を請求することができる。 2 前項の場合において、死亡した者が遺族厚生年金の受給権者である妻であつたときは、その者 の死亡の当時その者と生計を同じくしていた被保険者又は被保険者であつた者の子であつて、そ の者の死亡によつて遺族厚生年金の支給の停止が解除されたものは、同項に規定する子とみなす。 3 第1項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその保険給付を請求していなかつたとき は、同項に規定する者は、自己の名で、その保険給付を請求することができる。 4 未支給の保険給付を受けるべき者の順位は、第1項に規定する順序による。 5 未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人のした請求は、全員 のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対してした支給は、全員に対してしたもの とみなす。 国家公務員共済組合法(略記:国共法) (遺族の順位) 第43条 給付を受けるべき遺族の順位は、次の各号の順序とする。 一 配偶者及び子 二 父母 三 孫 四 祖父母 2(略) 3(略) (支払未済の給付の受給者の特例) 第45条 受給権者が死亡した場合において、その者が支給を受けることができた給付でその支払 を受けなかつたものがあるときは、前2条の規定に準じて、これをその者の遺族(弔慰金又は遺 族共済年金については、これらの給付に係る組合員であつた者の他の遺族)に支給し、支給すべ き遺族がないときは、当該死亡した者の相続人に支給する。 2 前項の規定による給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その全額をその一人に支 給することができるものとし、この場合において、その一人にした支給は、全員に対してしたも のとみなす。
《解 説》 (1) 年金の支給期間(厚年法 36 条 1 項 14 条 2 号) 年金の支給は支給すべき事由の生じた月の翌月から始まり、権利が消滅した月で終わります。 一般的には 60 歳或は 65 歳に達した日に厚生年金或は国民年金の受給権を取得します。達するのは 誕生日の前日です。従って、誕生日の前日が属する月の翌月から年金が貰えます。4 月 1 日生まれ の人は 3 月 31 日に達するので 4 月から年金が貰えます。4 月2日生まれの人は 4 月1日に達する ので 5 月からの年金となります。 サラリーマンの場合、退職日が 3 月 31 日だと厚生年金被保険者の資格喪失日は 4 月 1 日で、受 給権が発生するのは同じく 4 月 1 日です。従って、年金が出るのは事由の生じた月の翌月ですから、 5 月からとなります。3 月 30 日に退職すると資格喪失日は 3 月 31 日で年金は 4 月から出ます。 そして、支給が終わるのは権利が消滅した時、死んだ時です。死んだ月まで年金が出ます。 (3)で触れますが、出来れば月の前半に死ぬのが良かろうかと思います。 (2) 年金の支払日(厚年法 36 条 3 項) 年金は偶数月の 15 日に前 2 ヶ月分が支払われます。年金は 2 ヶ月分後払いです。 ・4 月 15 日支払分は 2 月と 3 月の年金。 ・6 月 15 日支払分は 4 月と 5 月の年金。 実務上、最初の年金支給は可なり遅くなります。請求手続き受付け後 4 ヶ月ぐらい掛かります。 このときは奇数月でも支給されることがあります。その後は前記の通り、偶数月に前 2 ヶ月分の 支払いとなります。 (3) 未支給の年金 (1)及び(2)より、年金受給者が死亡すれば必ず「未支給年金」が発生します。 ・3 月 31 日に死亡すれば、4 月 15 日支払いの 2 月分・3 月分の 2 ヶ月分 ・4 月 1 日~15 日に死亡すれば、4 月 15 日支払いの 2 月分・3 月分の 2 ヶ月分と 6 月 15 日支払い の 4 月分1ヶ月分の合計 3 ヶ月分 ・4 月 16 日~30 日に死亡すれば、6 月 15 日支払いの 4 月分1ヶ月分 「MSN産経ニュース」の1.「年金受給日に死亡したら?」もご参照下さい。 (4) 未支給年金の請求権者(厚年法 37 条 1 項・4 項) 年金の受給者が死亡した場合の「未支給年金」は下記の者で、かつ、死亡の当時死亡した者と生 計を同じくしていた者が請求することが出来ます。順位は下記の順位の通りです。 一 配偶者
甥・姪は含まれていません。記事にもあるように、甥・姪が後見人或は相続人であっても「未支給 年金」は支給されません。「未支給年金」が未支給となります。 但し、柏年金相談センターでの過去 1 年間の私の経験では“未支給年金が未支給”になったケース は一度もありません。全て配偶者か子が請求しています。 とは言え、急速に進む少子高齢化に伴い、甥・姪が後見人或は相続人となるケースは増えてくると 思われます。後ほど触れるように、請求権者の範囲拡大が検討されて然るべきかと思います。 (5) 生計同一証明 通常“同居”していれば生計同一と認められます。死亡した者と請求者の住民票で確認します。 住民票上、死亡した者と請求者の住所が異なる時は、住民票のほかに第三者の生計同一の証明が必 要です。第三者とは、民生委員、町内会長、事業主、家主等となります。 この第三者の証明については、「MSN産経ニュース」の2.「町内会長が生計同一証明?」もご 参照下さい。 なお、実務では「生計維持」でOKの場合もあります。「生計同一」と「生計維持」はどう違うの かはよく分かりませんが、社会保険庁も緩やかに解し、出来るだけ支給する運用のようです。 (6) 請求者(厚生年金)と受給者(共済年金)の違い 厚年法 37 条 1 項、4 項と国共法 43 条 1 項、45 条 1 項の条文をよく読み比べて下さい。 国共法 43 条 1 項には兄弟姉妹は入っていません。一方、厚年法 37 条 1 項には兄弟姉妹が入ってい ます。一見すると厚生年金のほうが請求人の範囲が広いようですが、国共法 45 条 1 項には“支給 すべき遺族がないときは、当該死亡した者の相続人に支給する”となっており、共済年金のほうが 範囲は広くなります。 甥・姪がおじ・おばの面倒を見ているときは、甥・姪が相続人になれるケースであろうと思います。 相続人が「未支給年金」を受取れるとすれば、記事のような問題も解決します。言い方を変えれば、 記事にあるのは厚生年金・国民年金のケースであり、共済の場合は問題ありません。 近い将来、厚生年金と共済は一元化されることになっていますが、その際には厚生年金の「未支給 年金」の請求者の範囲は、共済の「支払未済の給付」の受給者の範囲に引き上げるべきだと思いま す。 (7) 葬式を行った者へ 健康保険では葬式を行なった者へ「葬祭費」が支給されます。当然葬式を行った甥・姪にも支払 われます。 身寄りの無い被後見人が死亡した場合、後見人が葬式を出す場合もあるようです。その費用は20 万円位とか言われています。健康保険の「葬祭費」5 万円は随分助かるようです。 「未支給年金」も葬式を行なった者へ支給されるとすれば、後見人の負担は随分軽くなります。 「未支給年金」も葬式を行った者へ支払うべきだと思いますが、皆さんは如何お考えでしょうか。
健康保険法 (埋葬料) 第百条 被保険者が死亡したときは、その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行う ものに対し、埋葬料として、政令で定める金額を支給する。 2 前項の規定により埋葬料の支給を受けるべき者がない場合においては、埋葬を行った者に対 し、同項の金額の範囲内においてその埋葬に要した費用に相当する金額を支給する。 国民健康保険法 (第二節 その他の給付) 第五十八条 保険者は、被保険者の出産及び死亡に関しては、条例又は規約の定めるところによ り、出産育児一時金の支給又は葬祭費の支給若しくは葬祭の給付を行うものとする。ただし、特 別の理由があるときは、その全部又は一部を行わないことができる。 2 保険者は、前項の保険給付のほか、条例又は規約の定めるところにより、傷病手当金の支給 その他の保険給付を行うことができる 柏市HP 葬祭費 加入者が亡 くなったと き 葬祭を行った人に 50,000 円が支給されま す 印鑑、保険証、施主を証する書類(領 収書、会葬礼状等)、施主の預金通帳