***(前2回に引き続き、最終回の今回は、「橘街道 プロジェクト」の具体的内容と今後の進め方について述 べてみます。)***
「橘街道プロジェクト」の具体的内容
これまで述べたとおり、「橘街道プロジェクト」は、 日本の菓子文化の発祥である橘の実に関する「ストー リー」を始めとして、関西を中心とした世界に誇るべき 我が国の「食文化」にあらためてスポットを当て、国内 及び国際的に広く広報し、その素晴らしさ普及させるこ とがその核心となる取り組みです。 さらには、これらをプラットフォームとして、農業、 観光関連産業、コンテンツ産業など様々な産業や活動と タイアップして地域経済全体を盛り上げていこうとする 取り組みでもあります。 お菓子そのものに関する取り組みの一つとしては、橘 の実をモチーフにした菓子のプロモーションをしたり、 新たに地域ごとの菓子を創作するなどの活動を通じて、 関西のみならず日本中で多くの人々が「橘の実フレー バー」とその由来を知っている状態を創出することが考 えられます。 先述(本誌4月号)のとおり、兵庫県の出石町では、「橘 のしずく」が既に人気を博していますし、奈良の大和郡 本稿は3回にわたって、連載します。「橘街道プロジェクト」の概要、背景と目的(3月号)、「橘街道プロジェクト」 の経緯(4月号)、「橘街道プロジェクト」の具体的内容、今後の進め方(5月号)。橘街道プロジェクト
~菓子を中心とした京阪神の文化や歴史をたどる街道をプロデュース~
近畿経済産業局 総務企画部長 中村 稔
第3回
山では、「お城の口餅」で有名な菊屋の菊岡さんによる 橘味の和菓子の試作も進んでいます。今後、橘味の「ポッ キー」などもできるかも知れません。 また、奈良の大和郡山市では、平城京から藤原京に至 る「中ツ道」を橘街道と呼んでいたことに因んで、実際 に発掘された橘街道の両側に1000本の橘の植樹を実施 して「橘の香りが溢れる道」を作ろうという運動も、菊 岡さんを始め、なら橘プロジェクト推進協議会会長の城 さんや尼ヶ辻フィールド代表の久保田さんらの農家の皆 さんなど地元の方々が中心となってスタートしていま す。 また、このような田道間守と橘の実のブームを起こし つつ、観光地を抱える自治体を始め、鉄道・船・航空機・ 道の駅等の交通関連事業、飲食業・旅館等の観光関連産 業などとともに「橘街道」、すなわち別名「関西スウィー ツロード」そのものをプロモートし、「ドイツロマンチッ ク街道」を凌ぐ観光コースとして世界中からのインバウ ンドの拡大に資することも重要です。 ちなみに、一説によると、このドイツロマンチック街 橘のしずく お城の口餅経済社会ビジョン「成熟」と「多様性」を力に~価格競争から価値創造経済へ~
第 2 回橘街道プロジェクト
~菓子を中心とした京阪神の文化や歴史をたどる街道をプロデュース~ 第1回 道は、ドイツ観光局の日本事務所が開設された際に、ド イツ人の初代事務所長が日本人をドイツに呼び込むため に、南ドイツの小都市を結ぶ道を「ローマに続く道」と いう意味の「ロマンチック街道」と名付けて観光コース として売り出したのが始まりだそうです。これに日本人 が飛びついて大挙して訪れたことから、今や世界的な観 光コースになっています。このように、「言ったもん勝ち」 ですので、「関西スウィーツロード」という位置付けで、 この「橘街道プロジェクト」を世界的な観光コースを生 むプロジェクトとしても進めていきたいと考えているわ けです。 なお、英語の辞書で見ると「スウィーツ」には、「愉快」 という意味もあるので、「関西スウィーツロードプロジェ クト」は、中国語風に訳すと「関西愉快街道計画」にな るかも知れません。旅してみて、美味しく、楽しく、嬉 しく、そして勉強になる「大粒(OTUB)の感動」が 発信できる「愉快街道」の形成が隠し味です。 その際、例えば、橘街道手形 をお菓子のおまけとして配布し、 当該手形を見せると橘街道プロ ジェクト参加企業や参加店舗、 交通機関などにより様々な特別 な サ ー ビ ス が 受 け ら れ る 等 の サービス産業のプラットフォームを形成し、菓子関係者、 (菓子関係者以外の観光・商業サービス関連事業者等の) 橘街道プロジェクト賛同企業、消費者(旅行者)の何れ もに裨ひ益えきする仕組みを提供するというのも一案です。 この橘街道手形は、グリコのおまけかも知れません し、ノーベルの飴の袋に印刷された橘街道のロゴマーク でも良いかも知れません。これらのおまけや袋を水戸黄 門の印籠のようにかざ すと、お寿司屋さんで 裏メニューのとってお きのネタが出てくると か、居酒屋では秘蔵の 特別美味しい酒がふるまわれるとか、劇場では予約の順 番が先になったり良い席がもらえるとかなどの特典があ れば、お菓子も売れるし、飲食店や劇場にはおまけや菓 子袋を持って客が次々と来るし、客は思わぬ特典がつい て喜ぶといった皆が得するWin-WIn関係が構築できる でしょう。こうしたプラットフォームを形成することが 「橘街道プロジェクト」の内容の一つです。 ここで、プラットフォームの具体例として、神戸パー ルパスポートについてご紹介しましょう。<参考>「神戸パールパスポート」活動
神戸は国内の真珠取引の8割以上を占める真珠 の街ですが、真珠の需要拡大のためには、真珠を 使うシーンを作り出す必要があります。そこで、 真珠を身につけて神戸の街を歩くと、様々な特典 がある仕組みが創られました。すなわち、QRコー ド[P.59図参照]を携帯電話のカメラ機能で読み 込み、パールパスポート画面をダウンロードして 画面メモしておけば、神戸に真珠を身につけて訪 れ、このパールパスポートを参加店舗に示した消 費者が割り引きサービスや通常受けられない特殊 なサービスなどを受けられます。これが、パール パスポートという取り組みです。 真珠をプラットフォームとして、多くの参加店 がサービスを提供することにより、真珠業界と参 加店舗の両方がメリットを得る上に、消費者も特 別なサービスを受けて喜ぶという、三者の間での Win-Win関係を生み出す仕掛けです。 是非、皆さんもこのパールパスポートを携帯電 話にダウンロードし、男性も女性もおしゃれに パールを身につけて神戸に出かけ、ショップ、レ ストラン、ホテルなどで特別なサービスを楽しん で下さい。 橘街道のロゴ 橘街道手形なお、「橘街道プロジェクト」は、「攻めの農業」を実 現する出口戦略として機能することも期待しています。 例えば、先述(本誌4月号)のとおり、和歌山県有田 市のみかん農園の的場さんと和歌山市のパティシエの三 鬼さんのタイアップ[P.59図参照]は、農産物のみかん がスウィーツとして消費者に直接届けられるという意味 で、農業の高付加価値化の典型と言えるでしょう。ル・ パティシエ・ミキでは、「的場農園のみかんで作ったケー キ」と銘打って大人気の「みかんの紀婦人」が販売され ており、TPPとは無関係に国産みかんの高付加価値市 場を生み出しています。今後、こうしたタイアップ事業 が、こんなに美味しいみかんがどうやって作られるのか を世界中の人が見に来て味わう農業観光にもつながるこ とが期待されます。ちなみに、パティシエの三鬼さんは、 いつか農園の中にスウィーツ・ファクトリーを作るのが 夢であると話され ていますが、これ がみかん農園観光 の柱になるかも知 れません。 また、比叡ゆば のメーカー「ゆば八」では、健康食品としてのゆばの原 料を「近江大豆」(滋賀県産)という国産大豆に限定し ており、日本の大豆需要の9割以上が輸入品で満たされ ているという状況の中で、やはりTPPとは無関係に国 内農業産品を高付加価値化する役割も担っておられま す。 さらに、ホテルと農業の連携事例として、兵庫県・淡 路島の最南端に位置し、大変おしゃれで素敵な「滞在型 リゾートホテル」として有名な「ホテルアナガ」(南あ わじ市)[P.59図参照]の総支配人で総料理長の中野さ んは、淡路たまねぎやハーブや鳴門オレンジといった地 元淡路島の特産品をふんだんに使ったとても美味しくて ヘルシーな料理やスウィーツを提供されています。【写 真1、2】 このように、香川選手や長友選手のような日本のサッ カー選手が個別補助金を受けるのではなく「Jリーグと いう活躍の舞台」を用意されたことによって世界レベル になっていったように、日本の農業にとっての「活躍の 場」を広げていくことにも「橘街道プロジェクト」が役 立てば良いと考えているところです。 さらに、先ほどのWin-Win関係を生むプラットフォー ムの形成に加えて、「橘街道プロジェクト」への参加業 界同士のリンクの一例として、真珠業界と日本酒業界の タイアップも始まっています。すなわち、稲穂の先っぽ に米粒に見立てた小さな真珠をあしらったデザインの日 本酒ソムリエバッチを作成し、利き酒師やソムリエに身 に付けてもらうとともに、その廉価版レプリカを酒造見 学コースのショップにおいて、見学の思い出に買っても らうという案です。まさしく「思い出を売る」タイアッ プです。 【写真1】 大玉で甘味の強い 淡 路 島 玉 ね ぎ は、 ホテルアナガには 欠かせない食材の 一つ 【写真2】ハーブ畑で、フェンネルの香りを確かめる。かごを 持って摘んで歩いたハーブや野草を、すぐにホテルに持ち帰 り、フレッシュな香りそのままに、ゲストに提供することも (※上記写真2点、キャプション出典:週刊ホテルレストラン 2011 年 12 月 23 日号(株式会社 オータパブリケイションズ刊)) (60 ページへ続く) 「ゆば八」の製品