ジオトリフ
適正使用ガイドブック
Vol.
3
日本標準商品分類番号 : 874291 筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター・水戸協同病院 呼吸器内科 教授佐藤 浩昭
先生 はじめに ジオトリフ導入における対策の結果 ジオトリフの投与経過と副作用の発現 副作用管理対策の効果 早期介入のポイントと今後の課題 ジオトリフの実地臨床への導入にあたって ジオトリフの有効性(LUX-Lung 3) ジオトリフの副作用(LUX-Lung 3) ジオトリフ導入にあたっての課題 おわりに CONTENTS 1 2 副作用の管理体制の構築 副作用管理体制のポイントと役割分担 下痢の管理方法 皮膚科との連携による皮膚症状の管理 5 10 13ジオトリフの
副作用マネジメントの実際
~実地医療の経験から~
はじめに
筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター・水戸協同病院 呼吸器内科佐藤 浩昭
先生2014年5月、世界初の不可逆的ErbBファミリー阻害剤であるアファチニブ(ジオトリフ
®)が発売
され、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対する新しい治療薬剤として期待されています。
2014年の肺癌診療ガイドラインにおいては、非扁平上皮癌、EGFR遺伝子変異陽性、PS 0~1、
75歳未満の患者に対しては、EGFR-TKI単剤(ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ)が推奨度
Aとして記載されています。
ASCO 2014では、国際共同第Ⅲ相臨床試験LUX-Lung 3とLUX-Lung 6の統合解析結果により、
ジオトリフによる生存期間の延長が報告されており、近年の個別化治療の流れを考えると大きな意
味をもつと考えられます。
一方で、ジオトリフを含めた分子標的治療薬の使用においては、薬剤ごとの特徴に応じた副作用
の管理が重要です。これらの副作用は担当医師のみで管理できるものではなく、皮膚科医、薬剤
師、看護師など多職種が連携しながら患者さんを支えていくことで、薬剤の効果を最大化すること
ができると考えています。
本冊子では、水戸協同病院における、ジオトリフを適正に導入するための取り組みについて紹介
させていただきます。当院での取り組み内容が、実地臨床下でジオトリフを投与する際の一助とな
れば幸いです。
EGFR-TKI:上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤Yang JC. et al.:Lancet Oncol 16(2), 141, 2015 本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された Yang JC. et al.:Lancet Oncol 16(2), 141, 2015 本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された
ジオトリフの実地臨床への導入にあたって
ジオトリフの有効性(LUX-Lung 3)
「警告・禁忌を含む使用上の注意」等につきましては、DI頁をご参照ください。 EGFR-TKIを含む化学療法未治療のEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者を対象に、ジオトリ フ群と化学療法群[ペメトレキセド(PEM)+シスプラチン(CDDP)]を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験 (LUX-Lung 3)では、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はジオトリフ群が11.1ヵ月、 PEM+CDDP群が6.9ヵ月とジオトリフ群で有意な延長が認められた[ハザード比0.58、95%信頼区間 0.43-0.78、p=0.001(両側層別ログランク検定)]1)。日本人のサブグループ解析では、PFSはジオトリ フ群で13.8ヵ月、PEM+CDDP群で6.9ヵ月という結果が示された2)。さらにLUX-Lung 3と同様の患者 を対象としたLUX-Lung 6の統合解析かつ探索的な解析が行われ、化学療法と比べ、生存期間を延長す ることが報告された(図1、図2)3)。Common mutation(Del 19/L858R)における全生存期間(LUX-Lung 3 & 6統合解析)
図1
Del 19における全生存期間(LUX-Lung 3 & 6統合解析)
図2 0 全生存期間(月) 51 48 45 42 33 30 27 24 21 18 15 12 9 6 3 36 39 全生存率 ( % ) 100 80 60 40 20 0 ハザード比 0.59 (95% CI:0.45-0.77) p=0.0001 生存期間中央値 ジオトリフ群(n=236) 31.7ヵ月 化学療法群(n=119) 20.7ヵ月 at risk数 ジオトリフ群 化学療法群 230 113 236 119 22310321795 20287 19272 17363 16055 14551 13143 11738 9027 1450 389 221 16 01 00 0 全生存期間(月)24 27 30 33 42 45 48 51 21 18 15 12 9 6 3 36 39 全生存率 ( % ) 100 80 60 40 20 0 ハザード比 0.81 (95% CI:0.66-0.99) p=0.037 生存期間中央値 ジオトリフ群(n=419) 27.3ヵ月 化学療法群(n=212) 24.3ヵ月 411 199 419 212 390185173371343162141320 12428425111022510120183 18170 14152 3477 2358 3310 59 11 00 at risk数 ジオトリフ群 化学療法群 目 的:2つの非盲検ランダム化第Ⅲ相試験を基に、EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌患者に対するジオトリフの全生存期間(OS)延長効果を試験ごと、および統合解析(事 後解析)として検討する。 対 象:LUX-Lung 3または6に参加した、化学療法未治療かつEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者709例 方 法:両試験におけるジオトリフ群(40mg/日を連日経口投与)と化学療法群(ペメトレキセド+シスプラチン[PEM+CDDP]またはゲムシタビン+シスプラチン[GEM +CDDP])のOSについて、統合解析を実施した。 評価項目:OS 解析計画:試験ごとのOSについて、事前に規定したサブグループ解析として、性別、年齢、EGFR遺伝子変異別などで検討し、さらに正確な値を評価するため、2つの試験 の患者データを統合してOSの探索的な事後解析を実施した。
副 作 用:主なGrade 3/4の副作用として、LUX-Lung 3のジオトリフ群では発疹/ざ瘡16%、下痢14%、爪囲炎11%、PEM+CDDP群では好中球減少症18%、疲労 13%、白血球減少症8%が認められた。LUX-Lung 6のジオトリフ群では発疹/ざ瘡15%、下痢5%、口内炎/粘膜炎5%、GEM+CDDP群では好中球減少症 27%、嘔吐19%、白血球減少症15%が認められた。
ジオトリフ導入にあたっての課題
ジオトリフの導入にあたって副作用の適切な管理を行うために、腫瘍内科医、皮膚科医、薬剤師、看護 師らが一堂に会し、各医療者が同一の目線で患者さんを支援できる仕組みを検討した。 はじめに、臨床試験の結果を踏まえて、我々は課題として以下のような見解を示した(表3)。 呼吸器内科:佐藤 浩昭
先生 ジオトリフについては、新しい世代のEGFR-TKIということで非常に期待を持って、早く から使える機会を待っていました。しかし、ジオトリフの前評判としては、有効性は期待で きそうであるが、副作用の発現頻度が高く、管理が難しいという声が多くを占めていまし た。そこで私たちは、ジオトリフの効果を活かすために、腫瘍内科医、皮膚科医、薬剤師、 看護師とともに、どのような対応を準備しておくべきかという観点で議論を開始しました。 ■下痢 ・副作用として薬剤性の下痢に対処した経験が少ない ・ロペラミドの投与は、低用量での投与しか経験したことがない ・下痢に対する教育と矛盾 (下痢を止めてはいけないという意識が根付いているが、 ジオトリフによる下痢については必ずしもこの限りではない) ■皮膚症状を含むその他 ・ゲフィチニブ・エルロチニブと同様の副作用管理で対応可能 ・治療決定時から医療スタッフや皮膚科医との連携が必要 ジオトリフ導入にあたっての課題 表3ジオトリフの実地臨床への導入にあたって
1)Sequist LV. et al.:J Clin Oncol 31(27), 3327, 2013 2)Jones H. et al.:社内資料 国際共同第Ⅲ相試験(LUX-Lung3) 3)Yang JC. et al.:Lancet Oncol 16(2), 141, 2015 4)ジオトリフ適正使用ガイド 1)~3)はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された
ジオトリフの副作用(LUX-Lung 3)
LUX-Lung 3のジオトリフ群における下痢及び発疹/ざ瘡の発現率は、それぞれ95.2%(218/229 例)、89.1%(204/229例)であり、Grade 3以上の発現率はそれぞれ14.4%(33/229例)、16.2% (37/229例)であった(表1、表2)。 日本人におけるGrade 3以上の下痢、発疹/ざ瘡の発現頻度はそれぞれ20.4%、20.4%であり、既存 のEGFR-TKIと比較して発現頻度が高くなる可能性が考えられた。下痢の多くは投与初期(1週間以内) に出現し(図3)、発疹/ざ瘡は少し遅れて、1~2週間前後に出現することが多い(図4)。 このほか発現頻度の高い副作用として口内炎(72.1%)、爪の異常(61.1%)なども認められている4)。 LUX-Lung 3における下痢の発現(ジオトリフ群) 表1 表2 LUX-Lung 3における発疹/ざ瘡の発現(ジオトリフ群)全Grade Grade 1 Grade 2 Grade 3 Grade 4
全症例 (n=229) 204 (89.1%) 69 (30.1%) 98 (42.8%) 37 (16.2%) 0 (0.0%) 日本人 サブグループ (n=54) 53 (98.1%) 11 (20.4%) 31 (57.4%) 11 (20.4%) 0 (0.0%) Grade:CTCAE 3.0版、発現症例数(発現率%)
全Grade Grade 1 Grade 2 Grade 3 Grade 4
全症例 (n=229) 218 (95.2%) 106 (46.3%) 78 (34.1%) 33 (14.4%) 0 (0.0%) 日本人 サブグループ (n=54) 54 (100.0%) 22 (40.7%) 21 (38.9%) 11 (20.4%) 0 (0.0%) Grade:CTCAE 3.0版、発現症例数(発現率%) 下痢の初回発現の時期別発現率 図3 図4 発疹/ざ瘡の初回発現の時期別発現率 31.4% 51.9% 32.8%38.9% 14.8% 1.9% 7.0%3.7% 発現時期(日) 1~7 8~14 15~28 29~84 発現率 (非累積) ( % ) 100 80 60 40 20 0 LUX-Lung 3 全症例 LUX-Lung 3 日本人 62.4% 81.5% 19.7% 14.8% 6.6% 1.9% 5.2%0.0% 発現時期(日) 1~7 8~14 15~28 29~84 発現率 (非累積) ( % ) 100 80 60 40 20 0 LUX-Lung 3 全症例 LUX-Lung 3 日本人 ジオトリフ適正使用ガイド ジオトリフ適正使用ガイド ジオトリフ適正使用ガイド 佐藤 浩昭 先生作成 ジオトリフ適正使用ガイド
副作用の管理体制の構築
副作用管理体制のポイントと役割分担
当院は呼吸器内科単独の病棟であるが、呼吸器疾患以外の患者さんも空いていれば入室可能という、 混合病棟の側面を持っている。そのため、通常の診療業務の中で看護師は多種多様な業務に携わってお り、看護師が混乱をきたさないように配慮した管理体制を必要とした。そこで、通常業務の中にジオトリ フの副作用管理方法を適合させる必要性に基づき、看護師の意見も積極的に取り入れながら、薬剤師、 研修医を含めたすべてのスタッフが統一した形で患者さんに対応できる管理体制を構築した。 当院で実施しているジオトリフの管理方法のポイントを以下に記す(表4)。 ■皮膚科連携(詳細p8~9) ①入院する前に、皮膚科医にジオトリフ処方開始の連絡を入れ、入院時の受診予約をする。 投与開始前日には、必ず皮膚科を受診するよう患者を指導する。 ②外来移行後:呼吸器内科受診と同日に皮膚科を再受診し、皮膚症状のチェックと患者指 導を徹底する。 ジオトリフ導入時の管理方法のポイント 表4 ■下痢の対応表の作成(詳細p7、図5) ■継続指示書による指示・依頼事項の確認 各医療者は、基本的に依頼や報告事項も含め、患者さんに関わるすべての情報を電子カル テに入力し、連絡ミスを防止する。 ■服薬時間(午前11時) 混合病棟において、最も業務しやすく、負担が増加しない時間に設定した。 ■退院後は呼吸器内科受診の同日に皮膚科も受診し、皮膚症状のチェックと指導を実施する。 ジオトリフを適切に管理するための各医療者間の役割分担は、以下のように決めている(表5)。 呼吸器内科:籠橋 克紀
先生 当院では、医療者間の指示・報告にミスが起きないように、医師だけでなく、医療スタッ フも電子カルテに患者さんの副作用情報を記載し、常にダブルチェックしてミスリードが 起きないようにしています。また、患者さんご自身に排便回数の記録を付けてもらい、各 医療者は回診時には必ずそれを確認します。特に当院で注意していることは、患者さん ご自身で副作用の頻度や状況が判断できていない場合には、ジオトリフの服用を避けるようにしている点 です。ご自身で便が何回出ているかわからない方だと、まだジオトリフをお飲みいただける状況ではない かなと考えています。また、当院ではジオトリフの投与が決定した段階から皮膚科医が積極的に関与して くれています。皮膚科医がスキンケアも含めて早い段階から関与してくれていることが、ジオトリフの皮膚 症状を早い段階からキャッチでき、上手くジオトリフを管理できている要因となっているかもしれません。 当院の各医療者の役割 表5 職種 (投与日前日)入院当日 (投与日)入院2日目 入院期間 退院時 外来診療時 主治医 治療の説明 セット処方治療の説明 副作用確認 退院説明 診察副作用確認 薬剤師 お薬の説明 自己管理指導 服薬指導 緊急時の対応 (副作用確認) 看護師 スキンケア入院生活全般 便の性状や排便回 数の確認 スキンケアの確認 皮膚症状の観察 日常生活の指導 (副作用確認) 皮膚科医 皮膚症状の説明 薬剤の処方及び 説明 外用剤の塗布の 練習 スキンケアの確認 皮膚症状の確認 スキンケアの指導 基本的に呼吸器 内科を受診した 日と同日に受診 顔、爪、背中の 副作用観察下痢の発現 Grade 1~2 (排便回数増加6回以内/日) (排便回数増加7回以上/日)Grade 3以上 ジオトリフ継続 +ロペラミド(1~2mg/回) ジオトリフ休薬 +ロペラミド(1~2mg/回) 10mg減量して投与再開 +ロペラミドは継続 48時間を超える下痢又は 患者さんが忍容できない場合 Grade 1以下に回復 ポイント: ①ジオトリフは、ほぼ100%下痢をきたします。 ②初回発現時よりロペラミドで対処し、脱水に十分注意します。 ③少し緩い便(軟便)でのコントロールを目指します。 ④ロペラミドは1日最大10mgまで。超える場合はジオトリフを休薬します。 下痢の対応表 図5
下痢の管理方法
我々はジオトリフの特徴的な副作用である下痢に対し、各医療者間で共有できる対応表(図5)を作成 している。これにより、薬剤師、看護師から研修医まですべてのスタッフが共通の認識の下に患者さんに 下痢の管理を説明できる体制が整えられた。 当院では原則として、ジオトリフ投与開始時より、ロペラミド(2mg/日)を定期内服させることとし、 1日最大10mgまでの使用をルール化している。 ロペラミドの承認された用法・用量は「ロペラミド塩酸塩として、通常、成人に1日1~2mgを1~2回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減 する。」です。 記載されている薬剤の使用にあたっては各薬剤の添付文書をご参照ください。皮膚科との連携による皮膚症状の管理
当院では、常勤の皮膚科医がおり、分子標的治療薬に伴う皮膚症状に対して積極的なサポートが得ら れている。ジオトリフの投与が決まった段階で速やかに皮膚科医に連絡し、入院当日に皮膚科外来の 予約を入れることとし、内服治療開始とともに皮膚科医の介入が開始される仕組みを取り入れている。 当院における、ジオトリフ投与の際の皮膚科医としての取り組みは以下のとおりである(表6)。 また、スキンケア(表7)と皮膚症状(表8)への対応では以下のような薬剤を用いている。 ジオトリフ投与における皮膚科医の取り組み 表6 【入院当日:皮膚科外来にて】 ・各種皮膚症状についての説明。 ・使用する薬剤の説明。 ・スキンケアの方法やステロイドの塗り方について実地練習を実施。 【退院時】 ・退院後に起こりうる皮膚症状とその対応を説明する(特に爪囲炎について)。 ・外用ステロイドによる副作用について説明する。 ・ご家族に対し、スキンケアの介助についてお願いする。 【外来移行後】 ・呼吸器内科の外来受診日に合わせ、皮膚科外来の予約を取るように指示する。 (週1回又は2週に1回) ・皮膚症状の状況に応じて、外用ステロイドの種類を変更する。又は治療薬を追加する。 ※外用剤の塗り方自体は同じであるため、入院中に指導を徹底し、 患者さん自身で実施できるようにすることが、ジオトリフの治療継続 のポイントである。 【入院期間中(病棟回診時):約2週間】 ・2~3日毎に病棟を回診し、皮膚の変化などを患者さんから聴取する。 ・スキンケアなども含めて外用剤の塗布が患者さん自身でどの程度できているかを確認する。 ・看護師の介助がどの程度必要であるかのレベルを確認しながら経過を観察する。 ・爪囲炎は入院期間中に発現する可能性が少ないため、処置方法について再度説明を実施する。 スキンケアに用いている薬剤 表7 目的 薬剤 ポイント 保湿 ヘパリン類似物質 ローション製剤 (1日2回以上、室内の湿度を保つ)入浴や洗顔、水仕事の後は、15分以内に塗布 保清 (清潔) 弱酸性の泡石鹸 複数回の洗顔を避け、こすらない ナイロンタオルなどは避ける(綿タオル) 保護 (遮光など) SPF20~30以上の日焼け止めのクリーム 男性では電気カミソリの推奨 1日1回ではなく、複数回塗り直す副作用の管理体制の構築
副作用の管理体制の構築
皮膚科:田口 詩路麻
先生 私は皮膚科医なので、「皮膚の副作用で治療をやめたい!と絶対患者さんに言わせな い」という信念でがん治療のサポートをしています。確かに皮膚の副作用は患者さんに とって辛いですが、「せっかくの良い治療を受けているのに中断してしまうのはもったいな いから、上手に管理していきましょうね」と、最初の指導から患者さんに伝えます。 とにかくセルフケアができるようになることを目標とした早期指導と、保湿やステロイド、経口抗菌薬な どによる早期介入が重要です。 特に男性の患者さんは普段スキンケアなどの経験がない方がほとんどですので、ジオトリフ投与前に、 病棟にて外用剤の塗り方を練習してもらうようにしています。いきなり全身に塗ることは難しいので、皮膚 症状が出やすい部位である顔や前腕部などに限定して塗ってもらい、慣れてきたら全身に拡げるように指 導しています。やはり徐々に習慣化させることが患者さん指導の上で重要ですね。塗り心地も重要ですか ら、できるだけ不快感を与えないように、クリーム基剤やローションなど剤型も考えて処方をするように心 掛けています。 抗がん剤治療が中止されると、それだけで寿命が縮まるため、目標は治療を継続できる環境を整備する ことに尽きます。例えば外用ステロイドで皮膚に多少の副作用が出ても、「それが何だ」というのが、ある意 味本音です。Very StrongやStrongのステロイドもおそれずに処方し、患者さんの皮膚症状をコントロー ルすることが最も重要であると考えています。今後は顔のざ瘡様発疹の予防や爪への対処(二次予防)と してアダパレン等、異なる作用機序の薬剤の可能性も探っていきたいと思います。 皮膚症状に対して用いている薬剤 表8 皮膚症状 薬剤 開始及び中止時期 発疹/ざ瘡 外用ステロイド 顔:ヒドロコルチゾン酪酸エステル クリーム 体:ジフルコルトロン吉草酸エステル クリーム ミノサイクリン 200mg/日 ジオトリフの投与前日~約3ヵ月間を 目処に判断 爪囲炎 ジフロラゾン酢酸エステル 軟膏 ミノサイクリン 200mg/日 退院時(開始後2週間を目処に判断) 皮膚乾燥 ヘパリン類似物質 ローション製剤 処方前日~約3ヵ月間 そう痒症 経口抗アレルギー剤 痒みが出た時点からジオトリフの投与経過と副作用の発現
当院では、発売後から2014年11月時点まで、7名の症例にジオトリフを投与した。ジオトリフが投与さ れた症例の概要(表9)と、休薬・減量につながった副作用(表10)を以下に示す。ジオトリフ導入における対策の結果
休薬・減量につながった副作用 表10 休薬・減量 下痢 皮膚症状 爪囲炎 その他 症例1 Day 43 Day 64 − − 症例2 Day 35 − − − 症例3 − − − − 症例4 − − − Day 25 胃潰瘍 症例5 − − − Day 23 口内炎 症例6 Day 27 − − Day 56 食欲不振 症例7 Day 43 − − − 年齢 性別 体表面積 EGFR 遺伝子 変異の タイプ 治療 ライン 投与期間 経過 症例 1 歳代60 女性 1.459 Del 19 2次 ジオトリフ 中止(PD) ロペラミド 症例 2 歳代70 女性 1.54 Del 19 3次 ジオトリフ 継続中 ロペラミド 症例 3 歳代50 男性 1.822 Del 19 4次 ジオトリフ 中止(PD) ロペラミド 症例 4 歳代70 女性 1.316 L858R 1次 ジオトリフ 継続中 ロペラミド 症例 5 歳代70 女性 1.382 Del 19 1次 ジオトリフ 中止(口内炎) ロペラミド 症例 6 歳代80 女性 1.43 Del 19 8次 ジオトリフ 中止(食欲不振) ロペラミド 症例 7 歳代70 女性 1.349 Del 19 3次 ジオトリフ 中止(PD) ロペラミド 5~6mg ジオトリフ 40mgday 0 day 50 day 100 day 150
ロペラミド 1~2mg 30mg 20mg 3~4mg ジオトリフ投与症例の状況 表9 当院では、ジオトリフ投与開始時より、ロペラミドを定期内服(2mg/日)させており、これまでの経験では、Grade 3 以上の重篤な下痢は発現しておらず*、主な副作用である下痢は管理可能であった。しかしながら、ロペラミドの定期 内服は画一的に実施するのではなく、患者の背景を踏まえて検討する必要がある。 皮膚症状に対しては、ミノサイクリン内服や強いランクの外用ステロイドなどを使用していくことで、皮膚症状をで きるだけ軽減することを目的とした、積極的な対応も取り入れている。皮膚科医が早い段階から関与してくれることに より、QOLを維持しながら抗がん剤治療を継続できている患者さんが増加している印象がある。 *症例3はオキシコドン(強オピオイド)をがん性疼痛のため使用しており、ロペラミドの定期投与は実施していない。
薬剤部: